静岡県NIE推進協議会

「新聞に触れる機会を」 実践校教諭ら交流会-静岡

2018年07月15日(日)付 朝刊


 県NIE推進協議会(安倍徹会長)は14日、NIE実践交流会を静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で開いた。日本新聞協会の指定を受けた実践校の教諭やアドバイザー、新聞関係者ら25人が出席し、実践への情報共有や課題について話し合った。
 実践校の静岡聖光学院中・高の伊藤大介教諭は「各紙を読み比べるなどして新聞を研究し、年度末に体育館で発表する活動を行っている」と同校の取り組みを紹介。「先輩の発表を聞くことでいろんな分野に興味を持つことができる」と効果を説明した。
 このほか「新聞を通して他校の取り組みを知ることができ刺激になる」「保護者を巻き込んで新聞に触れる機会を増やすことが重要」などの声が上がった。アドバイザーの浜松市立与進北小、山崎章成教諭は「新聞の魅力を伝え、理解してもらえるような取り組みを継続してほしい」話した。

 

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NIE実践へ情報共有する参加者=14日午後、静岡市駿河区の静岡新聞放送会館

月刊一緒にNIE@しずおか=論理的思考力 新聞で育成 教科書と記事 両方読む習慣を-常葉大大学院 中村孝一教授

2018年07月07日(土)付 朝刊


 県NIE推進協議会の2018年度総会がこのほど、静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で開かれ、常葉大大学院の中村孝一教授が「NIEと国語学力の形成―論理的思考力の育成と新聞活用」と題して講演した。中村教授は「国語教育に今求められている論理的思考力を子どもたちが身に付けるためには、新聞を教育に取り入れることが有効だ」と力説した。
 

 2020年に施行する新学習指導要領を念頭に、国語科で習得するべき力と新聞の活用の仕方について解説した。
 児童・生徒の論理的思考力に課題があるとした中央教育審議会(中教審)の答申に触れ、「具体と抽象の関係性に着目しながら、説明文を読み解くことを小中学校では教えている」と現在の指導内容を説明した。
 課題解決のために有効なツールとして挙げたのは新聞。記事を要約した「リード文」に抽象的な事柄が記され、2段落目以降に具体的な内容が書かれていることを紹介し、「授業で学んだ読み方を実践すれば、初めて読む新聞記事でもある程度は小中学生も理解できる。教科書の文章と新聞記事の両方を読む習慣を付けることで、論理的思考力を高められる」と強調した。
 急速に情報化が進展する社会では、多様な情報を的確に理解し、考えの形成に生かしていくことが求められる。新学習指導要領で「情報の扱い方に関する事項」が新設されたことにも注目し、「情報に慣れるには、複数の新聞の読み比べや、一つの記事の中から具体と抽象の関係、主張や根拠を読み取る授業が有効だ」とアドバイスした。
 新学習指導要領では「読書」の定義を「本に加え、新聞、雑誌を読むことを含む」としたことも紹介。小中高を通じて読書指導を充実させる必要性を示した中教審の答申を踏まえ、「読書の習慣付けに新聞を読むのもいい。指導のバリエーションが出て、NIEの発想が広がるはず」と新聞活用の創意工夫を呼び掛けた。

 

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論理的思考力を高めるための新聞活用について講演する常葉大大学院の中村孝一教授=静岡市駿河区の静岡新聞放送会館

 

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■新聞記事の感想文募集 児童生徒が対象-静岡新聞社

 静岡新聞社は、県内の小学生から高校生までを対象にした「2018年度しずおか新聞感想文コンクール」(県教育委員会など後援)の作品を募集している。同コンクールは、児童・生徒が新聞を通じて活字に親しみ、読解力と表現力を養うとともに、地域や社会への関心を高めることを目的としている。
 課題は、18年1月1日から8月31日までに新聞に掲載された記事の感想。応募対象は小学4年生以上で、小学生、中学生、高校生の3部門。賞は各部門で最優秀1点、優秀賞2~3点、奨励賞などを選んで表彰し、応募者全員に参加賞を贈る。
 応募方法は、応募要項で確認する。応募要項の請求と問い合わせは静岡新聞社読者部内「しずおか新聞感想文コンクール」事務局<電054(284)8984>(平日午前9時~午後5時)へ。

 

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■紙面授業-地歴公民 天守再建は大仕事(山崎典明先生/常葉大常葉中・高)

 本校のある常葉大学水落キャンパスは、徳川家康が晩年を過ごした駿府城の「外堀」、正確には「三の丸堀」の北東の角にあります。駿府城公園では、現在静岡市による天守台の発掘調査が進んでいます。その結果、天守台の規模が江戸城を超える大きさであるという調査発表が2月にあり、静岡新聞紙上でも報道されました。
 駿府城天守閣は、完成直後の1607年焼失、家康お気に入りの大工の棟梁中井大和守正清によって再建されながら、1635年の再度の火災でその姿を消した「幻の天守閣」です。その姿が描かれた静岡市所蔵の「東海道図屏風」も昨年修復が終わりました。県立中央図書館所蔵の「駿府城御本丸御天守台跡之図」などの史料もあり、7階建ての勇壮華麗な天守閣の実像が、鮮明になるかもしれません。
 3月の新聞報道によると、田辺信宏市長は石垣による整備も視野に「天守台広場整備計画」を見直す考えを表明しています。これが実現すれば、天守閣再建への期待も高まります。周辺地域の観光にも好影響が期待できます。
 ただし、問題はその費用です。石垣構造での天守台復元には、多い場合で100億円前後、さらに天守閣の再建に140億円程度必要という試算もあります。市の第3次総合計画の「五大構想」は「歴史文化の拠点づくり」を掲げていますが、平成30年度の当初予算でついた額は8億円です。天守再建は大事業だと分かります。
 さらに、天守を囲む「本丸堀」再建なども考えれば、工事には十年単位での期間を要します。つまり、現役世代だけでなく、中高生世代も関係ある案件で、若い世代の意見が大切となります。
 発掘調査は今後、今川期の段階に入ります。その成果にも期待したいと思います。

 

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(16)「見出し比べ」のススメ

 私の学校では朝読書の時間に「新聞タイム」を始めました。記事を読み、自分の考えを書いたり、見出しを付けたりする活動です。
 記事を読む際、特に意識させているのが「見出し」です。子どもたちには、①少ない文字数で記事の内容を適切に伝えていること②読み手を引きつける表現になっていること-に着目して、見出しを読んだり、付けさせたりしています。
 見出しは新聞の命とも言える部分です。見出しによって、記事に対する読み手の印象は大きく変わります。
 例えば、水泳平泳ぎ五輪メダリストの北島康介選手が引退を決めたレースの記事は、「北島 五輪出場逃す」という見出しもあれば、「北島 涙の完全燃焼」というのもあり、新聞社の伝えたいことによって見出しは違ってきます。ですから、子どもたちには新聞の「比較読み」を勧めます。 また、自分の付けた見出しを仲間と比べさせ、見方や伝えたいことに違いがあることに気付かせます。
 記事に見出しを付けるNIEの活動はとてもやさしい取り組みですが、効果は絶大です。
 (焼津豊田中・矢沢和宏)