静岡県NIE推進協議会

「学び 深まる機会に」 実践7校が活動成果報告-静岡 

2019年02月17日(日)付 朝刊


 教育に新聞を活用する取り組みを展開する県NIE推進協議会は16日、県内の実践指定校による報告会を静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で開いた。小中高7校の教諭が2~3年間の活動内容を発表し、「子どもたちの学びが深まる機会になった」「継続的な活用に苦労した」などと得られた成果や課題を説明した。
 発表したのは、富士宮市立上井出小、静岡市立井宮小、浜松市立西都台小、静岡市立観山中、静岡聖光学院中・高、県立三島南高、県立遠江総合高。
 各校はNIEの目的を、伝える力や情報収集力、主体的に学ぶ力を伸ばすことに設定。朝に新聞を読む活動、切り抜き記事の要点や感想を書き込んだノートを回していくスクラップリレー、取材や編集を体験する新聞づくりなどを実施した。
 教諭の感想では、読解力の基礎が身に付いた▽子どもの興味が広がる様子が分かった▽教諭同士でも時事問題の話題が増えた-といった報告があった。一方で授業内容に沿った記事選びの難しさや、子どもに興味を持たせる授業の進め方などに課題が残ったとの指摘もあった。

 来月2日付、4月6日付朝刊「一緒にNIE」面に詳報

 

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新聞を教育に活用した取り組み内容を報告する教諭=16日午後、静岡市駿河区の静岡新聞放送会館

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=写真や広告、切り貼り楽しむ 作品作り、情報選択の基盤に-静岡・井宮小 新聞コラージュ

2019年02月02日(土)付 朝刊


 静岡市葵区の市立井宮小の1年生は、色鮮やかな新聞広告や写真を切り貼りし作品を作る「新聞コラージュ」に取り組んでいる。作品のイメージに合う模様や形を選び取ることで感性を磨くと同時に低学年のうちから新聞に親しんでもらうことが狙いだ。

 記事に注目したスクラップや要約は語彙(ごい)の少ない小学校低学年の児童には難しい。そこで同校の中村都教諭(59)が考案したのが新聞コラージュ。
 図工の時間、課題は「おしゃれで目立つきれいなチョウを作ろう」。児童は新聞をチョウの形に切り取った台紙に自分のイメージに合うような色合いの紙面を選び思い思いの形に切り取る。時計の文字盤、富士山の景色、イルミネーションの写真など素材は多種多様。台紙に貼り付けていけば個性豊かなチョウができあがる。児童が互いに紙面を見せ合いながら「僕ここ使ったよ」などという会話が自然に生まれる。
 中村教諭によると、紙面にさまざまな色合いがある新聞はコラージュにぴったりだという。例えば一口に「赤」といっても新聞には濃い赤から薄い赤までそろっている。折り紙のような単色の赤とは違う微妙な色合いがあることで児童がどの「赤」がイメージに合うか深く考えることになる。
 「自分の作りたいチョウを想像しながら新聞から必要な模様や色を選び出すことは立派な情報リテラシー」と中村教諭は話す。後に新聞記事を読むようになった際に、多数ある記事の中から自分に必要な情報を選ぶことの基盤にもなるという。
 他にも親子で新聞や時事問題に触れるきっかけになるよう、参観日に児童と親が一緒に紙面から片仮名言葉を見つける授業を行ったりしている。
 NIEの利用は今まで国語や社会の分野に傾いていた。図工の授業でも取り扱えないかと試行錯誤を重ね、15年程前からコラージュを取り入れ始めた。「県内の教員向けに実践方法を伝える機会をつくりたい」と中村教諭は意気込む。

 

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課題からイメージした新聞コラージュに取り組む児童=静岡市葵区の市立井宮小

 

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紙面から見つけた片仮名言葉を貼り付けたワークシートを見る中村都教諭

 

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児童が紙面を自由な形に切り取り制作した新聞コラージュ作品

 

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■実践指定校が成果 報告-16日、静岡

 県NIE推進協議会は16日午後2時から、NIE実践指定校7校の実践報告会を静岡市駿河区登呂の静岡新聞放送会館で開く。参加無料。
 2~3年間かけてNIEに取り組んできた富士宮市立上井出小、静岡市立井宮小、県立三島南高、静岡聖光学院中・高、浜松市立西都台小、静岡市立観山中、県立遠江総合高の担当教諭が、成果や課題を発表する。
 参加希望者は8日までに、県NIE推進協議会事務局<電054(284)9152>へ申し込む。

 

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■紙面授業-社会 今に続く日ロ友好 飛龍高 山本哲示先生

 昨年秋から北方領土問題がにわかに動き出しました。新聞紙面でも度々大きく取り上げられ、日ロ関係への関心も高まっています。本県は日ロ関係と深く関わりがあるのを知っているでしょうか。
 両国の国交の始まりは1855年2月7日に伊豆半島下田の地で「日露和親条約」が締結された時からです。その際に日本とロシアとの国境、ロシア船の補給のための箱館、下田、長崎の開港などが決められました。条約締結のために来日したロシア人とのさまざまな交流の様子は今に伝えられています。
 江戸幕府との間で国交の交渉が開始された直後、安政南海大地震が起きました。この地震と津波によりロシア全権は乗艦ディアナ号を失いますが、命の危険を顧みずに救助にあたった地元漁師たちの尽力により500余人の乗組員は無事上陸できました。
 当時の航海記録に「日本人は私たちのところにやってきて遭難への哀悼を表した。愛想のよい慰めの微笑[ほほえ]み...その他の行動が私たちの悲しみを和らげてくれた」とあります。
 ロシアに帰国する船の建造の地に戸田(現沼津市戸田)が選ばれ、この地で日本初の洋式帆船「ヘダ号」が完成しました。現在、戸田造船郷土資料博物館にはプチャーチン提督の肖像画が残され、「わが魂をこの地に永久に留めおくべし」とプチャーチンのメッセージが記されています。
 昨年8月、ロシアの大学生が日ロ友好の歴史を学ぶために戸田を訪問しました。164年たった今でも当時の日本人の心をこめたおもてなしを記憶しているのですね。
 2020年には東京五輪・パラリンピックが開催されます。伊豆市は自転車競技の開催地。このスポーツの祭典を通じて、日ロ関係の始まりのように後世に残る日本人と外国人との交流が生まれれば素晴らしいことだと思います。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(23)新聞身近な台湾高校生(実石克巳/静岡高)

 昨年12月、静岡高校の修学旅行で台湾へ行き、私立大華高級中学校(日本の高校に相当)と学校交流を行った。
 その際、台湾の高校生に片っ端から聞いたところ、ほとんどの生徒が新聞を毎日読んでいた。理由は選挙があったからだった。台湾では、選挙権獲得後の最初に一票を投じる若者を「首投族」と呼び、大きな勢力となるそうだ。
 本校でも市の選挙管理委員会より本物の投票箱などを借りた自治会長選挙など啓発活動を行っている。3年生は時期によっては相当数の者が選挙権を有する可能性もある。しかし、実際に選挙があっても新聞を読み、候補者の所信表明を比較検討してみるかは、なかなか難しいだろう。
 主権者教育に限らず、新聞を身近にするにはアクションを学校が起こす必要があると考える。英語科と連携して、日本の文化発信の記事を英訳させる、許される範囲で記事を印刷・配布して、比較読みのきっかけを作る。事あるごとに、新聞記事の話題を生徒に提供する具体的行動を根気よく繰り返す。草の根のNIEの実践が一番の近道だろう。
 (静岡高・実石克巳)