静岡県NIE推進協議会

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=新聞記事 聞いて親しみ 要約し放送 学び深まる-静岡・清水飯田小

2019年05月04日(土)付 朝刊


 静岡市清水区の市立清水飯田小は5、6年生の放送委員が気になる記事を選び、お昼の放送で紹介する活動を行っている。放送委員にとっては新聞記事を通して読解力や要約力を養うことができ、放送を聞く児童は耳から情報を入れるという新しい新聞との関わり方で低学年でもニュースに関心を持つようになるという。

 月に1度の委員会の時間に、約20人の放送委員が1カ月分の新聞を点検。担当する小川訓靖教諭(43)は「見出しには記事の80%が詰まっている」とし、「まず見出しだけを見て気になる記事を見つけて」と指導する。子どもたちは新聞を読む際、文字の多さに抵抗感を覚え、全部を理解しようとして挫折してしまうという。見出しだけに注目させることで新聞そのものを遠ざけてしまうことを避けるのが狙いだ。
 次に取りかかるのが記事の要約。低学年にも分かるよう記事をかみ砕くことで内容をより深く自分の中に落とし込む。放送委員は記事の要約と感想をまとめ、給食の時間の校内放送で読み上げる。全校児童が耳から情報を取り入れて新聞に親しんでいる。
 放送をきっかけに他の授業での学びとつながったことも。東京五輪・パラリンピックのピクトグラム決定についての記事を放送委員が紹介した日、あるクラスでは道徳の授業でピクトグラムを取り上げていた。放送を聞いて、同クラスでは「これ、道徳で勉強したね」という声が生まれ、より学習が深まったという。
 放送委員の子どもたちは「新聞は図工の時、机に敷くものだと思っていたけどいろいろなことを知ることができて楽しい」、「家でも読むようになった」と新聞への抵抗感が減った様子。小川教諭は「自分で見つけて(要約を)書くことで新聞に親近感がわくのでは」と分析する。
 廊下にはNIEコーナーを設置し、災害やオリンピックなど社会の関心度が高い記事を紹介。子どもたちの興味を引く漫画に関する記事などを近くに置く工夫も。小川教諭は今後について「委員会だけでなくクラス、学年と実施する規模を広げたい」と意気込んだ。

 
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選んだ記事の要約や感想を放送する児童=3月中旬、静岡市清水区の清水飯田小

 

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学校の廊下に設置したNIEコーナーで新聞を紹介する小川訓靖教諭

 
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■紙面授業-国語 最適解を導く視点 島田樟誠高 小宮幸代先生

 変化の激しい今の、これからの社会を幸せに生きていくためには、さまざまな資質・能力が必要となります。その一つが想定外の出来事に対して、自ら考え、他者との対話を通して判断し、実行する力です。そこでは、正解のない問いに対してより良い答え、いわゆる最適解を導くことが求められます。現代社会で最適解を導くためには、主観的なものの見方ではなく、さまざまな視点から物事を客観的に捉える意識=他者意識が必要となります。
 例えば、近年、世界規模で発生している異常気象への対応として、全小中学校にエアコンが導入されることもその一つです。エアコンの設置が正解かどうかは分かりません。しかし、生徒や保護者、税金などのさまざまな視点から検討しながら、その時にとっての最適解を求め続けなければなりません。
 「グローバル社会を生き抜き、言語も文化も異なる"強烈な他者"に自分の意見を届けるためには、筋道を立てて伝える力=論理力が必要である」。これは、教育評論家の出口汪先生が講演会で語った言葉です。
 視点を変えることで、見え方・感じ方が変わります。自分の意見を相手に伝えるためには、社会の情勢を知ること(情報)+伝えること(テクニック)の両輪が必要です。
 新聞にはこの二つが備わっています。情報はもちろん、誰が読んでも発信者が伝えたい内容が伝わるような筋道=論理があります。新聞を読むことで、独りよがりにならない伝え方を学ぶことができます。
 新聞を活用して情報をキャッチすると同時に、他者意識をもった伝え方を磨くことが可能です。そして、他者意識をもち、最適解を求める場面を設定していくことが、これからの学校や授業者の役割であると感じています。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(26)新旧記事の比較読み

 「イチロー選手引退」は大きな記事になりました。その時、私は新聞スクラップで19年前の記事「イチロー選手、大リーグ挑戦」を見つけました。この新旧の記事を比較してみると、「イチロー選手が何より野球を愛し、アメリカで頑張る強い意志を最後まで貫いたこと」が実感でき、感動しました。
 新聞には即時性があり、最新の記事にはもちろん価値がありますが、古い記事でも活用の仕方次第で新たな価値が生まれます。まさに「古くても新聞」です。新旧の記事を比較したり、特定のテーマの記事を継続して読んだりすることで、変化や変遷が見つかり、面白さが倍増します。
 私が集めた野生動物の出没に関する記事からは、出没時期や場所、種類などに傾向があることが分かりました。訃報広告から、家族や社会の変化を読み解く方もいます。
 最近では、新元号、サクラエビ漁、オリンピック・パラリンピック、SDGs、プラごみ対策、iPS細胞治療、AI、18歳選挙権、消費税、はやぶさ2、藤井聡太七段など、追い掛ける価値がありそうな記事は数えきれません。
 そのためにも、関心を持った記事をとりあえずスクラップしておくと、後で大きな力を発揮すると思います。
 (焼津豊田中・矢沢和宏)