静岡県NIE推進協議会

実践指定校に14校 報告書配布を継続-推進協総会

2019年06月23日(日)付 朝刊


 新聞を学校教材に活用するNIE(教育に新聞を)の普及に取り組む県NIE推進協議会は22日、2019年度の総会を静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で開き、実践指定校14校を選定した。
 安倍徹会長は「自分の行動によって相手がどのような気持ちになるか想像する力を、NIEを通して養っていかなければならない。本年度も協力を仰ぎたい」とあいさつした。取り組みなどをまとめた報告書の県内全小中高への配布は、昨年度に続き本年度も実施することを決めた。11月にはNIE教育の公開授業も行う予定。
 実践指定校の担当教諭は「子どもたちにとって新聞をより身近なものにしていく」などと抱負を述べた。
 実践指定校は次の通り。
 新規 伊豆の国韮山南小、吉田自彊小、湖西白須賀小、浜松城北小、小山中、浜松西高、常葉大付属橘高▽継続 西伊豆田子小、静岡清水飯田小、菊川西中、清水西高、富士宮西富士中、川根本町本川根中、静岡聴覚特別支援学校

 

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抱負を述べる実践指定校の教諭ら=22日午後、静岡市駿河区の静岡新聞放送会館

新聞で道徳授業充実へ 実践向け指導共有 自彊小教員が研修会 吉田

2019年06月13日(木)付 朝刊


 NIE(教育に新聞を)の取り組みを推進する吉田町立自彊小は12日、新聞記事を題材にした道徳の授業の研修会を同校で開いた。同校の教員約30人が互いの指導を公開し、評価し合ってよりよい授業について考えを深めた。

 6年1組の授業テーマは「高齢者の運転」。高齢ドライバーによる事故が増えている現状や、免許証の自主返納制度を紹介する記事を教材として使用した。「高齢者は運転しない方がいいのか」という教員の問い掛けに対し、児童は「事故で命を失う人がいる」「田舎では生活が不便になる」などと理由を挙げて活発に意見を発表した。
 この日はNIEに詳しい常葉大教育学部の中村孝一教授が研修を視察。中村教授から授業への新聞の取り入れ方を教わりながら、教員らは授業で良かった点などを共有してより充実した教育の実践に向け意見交換した。

 

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新聞記事を教材にして道徳の授業を展開する教員=吉田町立自彊小

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=環境問題考える力 育む サクラエビ不漁 「週刊YOMOっと」活用 多彩な写真、解説 視野広がる-静大付属静岡中

2019年06月01日(土)付 朝刊


 静岡新聞社発行の子ども向け新聞「週刊YOMOっと静岡」を活用し、"駿河湾の宝石"とも呼ばれるサクラエビの記録的不漁の現状を学ぶ特別授業が5月24日、静岡大付属静岡中(静岡市葵区)で開かれた。身近な海を入り口に、世界の環境問題など正解のない問題を考え抜く力を育む狙い。同大の教育学部生や教育学研究科の大学院生ら5人が、同学部の藤井基貴准教授(43)の指導の下、授業を行った。

 「最近、駿河湾のサクラエビが不漁だそうです。どうして取れなくなってしまったんでしょうか」。学生が1年A組の約35人に呼び掛けた。サクラエビの食の現状を伝えるため、学生と同校教諭らで20年前と現在の静岡市の食卓を比較する寸劇を披露した後、生徒たちは4月28日付「週刊YOMOっと」の記事を熟読した。
 記事では、サクラエビが静岡を代表する味覚である一方、不漁に伴って、厳しい漁獲規制が敷かれていることや、一人一人が環境を大切にする意識を高める必要があること-などがカラフルな写真とともに記され、長きにわたり潤沢だった漁獲が近年、原因不明の不漁に陥っていることを学んだ。
 生徒はグループに分かれて、不漁と関連するキーワードを考えた。「YOMOっと」を読みながら、乱獲や環境汚染、気候変動などの単語を付箋に書き出し、理由を熱心に議論。その上で、漁師、東京五輪、工事、静中生(自分自身)など、学生が用意した10枚のカードを使い、不漁と関連が強そうな順に並べ替え、近い発想の付箋をカードに貼り付けたりカードを線で結んだりして、さまざまな要素が互いに関係し合っていることを視覚を通して確認した。
 「不漁の原因は取り過ぎだとばかり思っていた。新聞が手元にあると考える基になり、視野を広げて議論できる」と新聞の活用の良さを語る山口琳音[りんと]さん。柿平悠さんは「新聞記事が分かりやすくまとまっていて議論しやすかった。今後もサクラエビの記事を注目して読みたい」と授業を振り返った。
 (「サクラエビ異変」取材班)

 

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「週刊YOMOっと静岡」を活用しサクラエビの不漁について学ぶ静岡大付属静岡中の生徒=5月24日、静岡市葵区の同校

 

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「週刊YOMOっと静岡」を読みながら、サクラエビ不漁の関連要素を付箋に書き込む

 
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■22日にNIE講演会 豊富な実践例紹介-県推進協
 県NIE推進協議会(安倍徹会長)は22日、NIE講演会を静岡市駿河区登呂の静岡新聞放送会館で開く。
 2019年度総会後の午後3時からで、帝京大学経済学部の古家正暢教授が講師を務める。演題は「『今、ここにある現実』と向き合うNIE-新聞とともに歩んだ社会科教師のライフヒストリー」。長年の教員としての経験を基に、豊富なNIEの実践例を紹介する。講演会だけの一般聴講も受け付ける。無料。
 問い合わせは同協議会<電054(284)9152>へ。

 
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■紙面授業-地理・歴史 文化財保護の意義 オイスカ高 谷野正成先生

 4月16日、フランスの有名な世界遺産であるノートルダム大聖堂が火災に遭いました。新聞でも大きく取り上げられ、記憶に新しいという方も多いのではないでしょうか。同じような悲劇が日本でもあったことはご存じですか。
 1949年に法隆寺の金堂壁画が焼損するという出来事が起きました。これを機に制定された法律が文化財保護法です。文化財を傷つけるということは誰もが無意識にでもやってはいけないということを理解しているでしょう。しかし、それが時として議論の対象になることがあります。
 沼津市の高尾山古墳の例を見ていきましょう。高尾山古墳は3世紀前半から半ばにかけて造られた前方後方墳です。3世紀前半から半ばというのは邪馬台国の女王卑弥呼が活躍をしていた時期と重なります。そんな時期の古墳が静岡県内にあるのです。ただ、そのような高尾山古墳も取り壊すことが決まっていた時期がありました。その理由は主要道路建設です。
 沼津市のホームページによれば、沼津南一色線という、国道と国道を結ぶ道路であるということが説明されています。その建設予定の道路が高尾山古墳と重なってしまったのです。これに対して、道路建設・古墳取り壊しを推進する団体と古墳の保存を推進する団体が生まれ、活発に議論が行われました。この議論は両方の団体の主張が通るように調整が行われています。
 今紹介した話は、文化財保護がより良い住民の生活と対立する例の一つです。本来、文化財は保護されるべきものですが、過去の遺産を守るのか、それとも現代の暮らしを良くするのか、あるいは両立する知恵を出すか、ぜひ皆さんも考えていただけたらと思います。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(27)記事を読み共感力醸成

 過日、おいの結婚式に出席した。その時の上司のスピーチは、NIEが社会人教育としても十分通用することを再認識させるものであった。外資系の最先端ビジネスで、最も重要な条件は「共感力」だとのこと。これは筆者がNIEを実践する上での最大テーマではないか! 日ごろのNIE実践における「目的」を明確にするため、概略を紹介したい。
 現在ビジネスの現場では、異なる領域の複数の専門家が協力してプロジェクトを遂行する。その場では互いの「共感力」が肝要で、それを醸成するには毎日の新聞購読が最も効果的というのだ。
 なぜなら記事の内容は悲喜こもごもである。悲しい出来事には心からかわいそうと思い、事件ならば原因を類推する。不祥事ならば、私ならどうしただろうと反省してみる。つまり新聞を読んで、自分以外の何者かになり、他人を思いやる訓練をすることが有意に働くそうだ。
 学校で新聞記事を読んで思考する、という練習を積むことがそのまま社会人になった際に有効なツールとなる。NIEは目先の教育効果ではなく、将来を見据えた学びの方法なのである。
 (静岡高・実石克巳)

 
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■2019年度しずおか新聞感想文コンクール 小中高生作品 9月9日まで募集

 静岡新聞社は、県内の児童・生徒を対象にした「2019年度しずおか新聞感想文コンクール」の感想文を募集している。
 同コンクールは、子どもたちが新聞を通じて活字に親しみ、読解力と表現力を養うとともに、地域や社会への関心を高めることを目的に開催。関心のある記事であればジャンルは問わない。「記事を読み、考えをまとめる機会として活用してほしい」と事務局は呼び掛けている。
 応募規定は以下の通り。
【対象】小学4年生~高校生
【部門】小学生の部、中学生の部、高校生の部
【課題】2019年1月1日~8月31日の新聞記事を読んでの感想
【応募方法】事前に事務局から応募要項を取り寄せ、応募する。要項は「静岡新聞NIE」ホームページ内からダウンロード可。
【締め切り】9月9日必着
【賞】各部門で最優秀賞1点、優秀賞2~3点、入選2~3点、奨励賞。応募者全員に参加賞を贈る。また、各部門から学校賞(団体賞)を選ぶ。
【発表】上位入賞作品は静岡新聞紙上に掲載
【表彰式】12月7日、静岡 新聞放送会館
【問い合わせ・要項請求先】静岡新聞社読者部内「しずおか新聞感想文コンクール」事務局<電054(284)8984>へ。