静岡県NIE推進協議会

文章力に手応え 実践校教諭ら成果語る 静岡

2019年07月21日(日)付 朝刊


 NIE(教育に新聞を)の取り組みの活性化を図る県NIE推進協議会(安倍徹会長)は20日、本年度の実践校交流会を静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で開いた。実践校10校の担当教諭や新聞関係者ら約30人が出席し、活動の成果や課題を共有した。
 富士宮市立西富士中の渡辺操教諭は、生徒に新聞記事の要約や感想を書いてもらう取り組みを報告。「文章を書く力やまとめる力が付く生徒が増えてきた」と手応えを語った。
 別の担当教諭からは「小学校低学年の学習で新聞を有効に活用するのが難しい」「教諭の間でも新聞活用に温度差がある」などの課題も出た。
 NIEアドバイザーを務める焼津市立豊田中の矢沢和宏校長は「新聞は子どもの関心を広げていくツール。実践校同士で意見を交わし、授業での活用に生かしてほしい」と呼び掛けた。
 

20190721.jpg
取り組み成果や課題を報告するNIE実践校の担当教諭ら=20日午後、静岡市駿河区の静岡新聞放送会館

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載="学びに向かう力"新聞で 「感性揺さぶるツール」 帝京大・古家正暢教授 講演-県NIE推進協議会総会

2019年07月06日(土)付 朝刊


 県NIE推進協議会の2019年度総会がこのほど、静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で開かれ、帝京大経済学部の古家正暢教授が「今、ここにある現実と向き合うNIE」と題して講演した。古家教授は37年間の教員経験から得た実践事例や反省点を紹介。「学びを人生や社会に生かそうとする"学びに向かう力"を養うため、新聞の活用法を再考すべき」と主張した。

 東京都の中学や高校で社会科を指導してきた古家教授は、授業に新聞を取り入れ始めたきっかけとして、宗教に関する授業で新聞記事を用いたエピソードを披露した。生徒に配布した記事は、ヒンズー教徒の列車運転手が、神聖とされる牛を避けようと鉄橋の上で急ブレーキをかけ、列車が橋から転落した内容。生徒は記事を通し、ヒンズー教徒の宗教観や戒律は日本人とは異なることを実感したといい、新聞の有用性を説いた。
 古家教授は、生徒の自己主張を促そうと、新聞に意見を投稿することを推奨したという。その上で「実名を出して公の場に投稿することは、批判の対象になる可能性がある。そのことも生徒に伝えなければならない」と注意を促した。
 小学4年生の児童が作った新聞スクラップの作品も紹介。プラスチックごみをテーマに選んだ児童は新聞記事の読み込みから学習を発展させ、実際にリサイクル工場を見学したという。工場へ運ばれなかったごみは海外へ輸出されて海に投棄される恐れがある一方、工場に持ち込まれれば全てリサイクルされることを知り、工場の増設とプラスチックに頼りすぎない生活を提言した。古家教授は「新聞スクラップを契機に、より深い学びにつながることがある」と強調した。
 自らの経験を踏まえ、「授業で学んだことをより深く考えたり、その結果を発信したりと、感性を揺さぶる授業のツールとして新聞は有効」とNIEのさらなる発展を呼び掛けた。
 

20190706.jpg
学びに向かう力を養うための新聞活用法を話す古家正暢教授=静岡市駿河区の静岡新聞放送会館

 
               ◇........................◇

 

■紙面授業-国語 思考実験のススメ 浜松学院高 仲手川裕史先生

 「先生、さっきの化学、実験とても面白かった」。私の現代文の授業が始まった時、生徒が開口一番に言った言葉です。理科の先生たちは、広い特別教室に豊富な実験器具、試薬、そして彼らの幅広い知識で、知的好奇心をくすぐるさまざまな実験を行っています。
 その生徒が「国語には実験ないからなぁ」なんて言っていたので、「実験もするよ」「本当に!?」―ということで、実験を行いました。実験と言っても「思考実験」というものです。「もし、こうだったら」と仮定し考える実験です。
 「水槽の中の脳」や「トロッコ問題」などを紹介し、生徒にテーマを設定してもらい、グループワークをしてもらいました。
 この思考実験。もちろん、国語だけでなく、他教科でも行っています。例えば、理科で出てくる「理想気体」や「摩擦のない水平な直線のレール」も、実際には存在しません。これら存在しない物体が「ある」と仮定して、科学の基本的な原理にのっとって「思考実験」を行い、それらを基にPV=nRTやx=vtなどの公式を導き出しています。仮定から理論を組み立てる能力は、さまざまな場面で役立ちます。
 最近、米中貿易摩擦や日韓関係などに関する記事が新聞に載らない日はありません。こうした国際情勢を考えるときに、「なぜこうしないのか」「もう、こうすればいいじゃん」と、思うことがたくさんあると思います。しかし、その選択肢をとった時に、「その後どうなる?」「さらにその後は?」と考えることが必要だと思います。
 安易で短絡的な結論に至らないためにも、常に考え続け、より良い「選択」や「結論」を導き出す能力。そんな能力を育ててくれる思考実験。ぜひ、皆さんもしてみてください。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
               ◇........................◇

 

■NIEアドバイザーのワンポイント講座(28)新聞情報 常に感度高く

 日々の授業で新聞を取り入れていく場合、さまざまな活用方法があるかと思います。「主体的・対話的で深い学び」を実践していくために、筆者が心掛けていることは、まず常に新聞記事に関する情報にアンテナを張っていることです。
 昨年NIEの公開授業を行う際、外国人労働者の問題が国会で議論になっていました。関連する新聞記事で授業計画を練っていたところ、就職氷河期世代に関する別の記事が目に留まりました。この時、新聞を読み比べたことで、労働者の問題を国内・国外の広い視点で考えることの大切さに筆者も気付くことができました。その結果、複数の記事で生徒が多角的な視点を得て、学びを深める授業づくりにつながったと思います。
 また、新聞記事の後追いも意識しています。先日の高1の政治経済の授業で氷河期世代雇用30万人増という政府の骨太方針案の記事を扱いました。公開授業で扱った記事のその後を生徒に示すことで、学びのつながりを意識することができたと思います。
 多角的な視点に立つことができる新聞記事を、これからも活用していきたいと思います。
 (静岡聖光学院中・高・伊藤大介)

新聞の読み方学習 6年生80人が受講 NIE実践指定校の自彊小 吉田

2019年07月05日(金)付 朝刊


 NIE(教育に新聞を)実践指定校の吉田町立自彊小は4日、新聞の読み方講座を同校で開いた。6年生約80人が受講し、新聞の魅力や効率的な読み方を学んだ。
 静岡新聞社読者プロモーション局の担当者が講師を務めた。「(インターネットよりも)新たな出会いや発見がある」と新聞を読む楽しさを伝えた。実際に新聞を開きながら、見出しやリード文の役割なども教えた。
 児童は新聞記事を題材にした感想文の書き方も学習。記事を一つ選び、読んで強く感じたことや伝えたいことを書き出すなどして、感想文を仕上げるこつを学んだ。
 毎朝、一面を部分的に読んでいるという甲賀愛実さん(11)は「リード文を中心に読むなど、これからは工夫し、読むページを増やしたい」と意欲を見せた。

 

20190705.jpg
6年生が新聞の効率的な読み方などを学習した講座=吉田町立自彊小