静岡県NIE推進協議会

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=世界の問題 新聞と実験で「自分ごと」に 身近な体験とつなぐ 静岡・清水飯田小 「海洋プラごみ」テーマに公開授業

2019年12月07日(土)付 朝刊


 NIE実践指定校の静岡市立清水飯田小(同市清水区)でこのほど行われた、新聞記事を使った総合学習の公開授業。5年生27人が海洋プラスチックごみに関する新聞記事を通し、身近な環境問題を考えた。

 担任の小川訓靖教諭の狙いは、地球レベルで進む環境汚染を子どもたちに自分の問題として考えてもらうこと。新聞記事は、社会情勢に目を向け多角的な観点で考えるきっかけと位置付ける。
 小川教諭はまず、海洋ごみの影響で死んだジュゴンの記事や、マイクロプラスチックが人体に与える影響を説いた論説記事など3種類の記事をグループごとに配布、子どもたちは7分で読み込んだ。
 「分からない漢字は飛ばして、大体の内容をつかもう」。小川教諭の助言で、子どもたちは気になる部分に線を引きながら概要把握に取り組んだ。3人一組で記事に見出しを付ける場面では、なかなか答えを出せないグループも見られたが、子どもたちから「見出しに入れたい言葉に丸をつけよう」といった言葉も飛びだした。
 「記事をただ読ませるだけでなく、いかに自分ごととして考えさせられるかが重要」と言う小川教諭。子どもたちに「マイクロプラスチックって目に見える?」「私たちに関係あるかな?」と問い掛けた。最初はけげんそうな表情を見せた子どもたちも、以前、地元の山原川で自然探索を行ったワークシートを取り出すと「山原川にもごみが落ちていた気がする」との声が上がった。
 さらに、海洋ごみを子どもたちに身近な問題として捉えてもらうために、小川教諭が取り出したのは地元三保松原の海岸の砂。砂を入れたビーカーに水を入れてかき混ぜると赤や緑色のプラスチック片が浮かび上がった。子どもたちは「三保の海岸全部で考えたらすごい量」などと素直な驚きの声を上げ、海洋ごみが身近にも存在することを実感した。
 小川教諭は「新聞記事を通し、世界の話題と身の回りのことがつながる喜びを味わってほしい」と話した。
 

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児童が考えた見出し

 

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三保海岸の砂に水を混ぜる実験を行う児童=静岡市清水区の清水飯田小

  
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■紙面授業-美術 自分だけの表現を 藤枝順心中・高 佐藤滋先生

 新聞を開くと見開き2㌻に、SNS(会員制交流サイト)などインターネット関連の記事がありました。トランプ米大統領の投稿の半数以上が攻撃的内容であるという記事、その隣には時の人、環境活動家グレタ・トゥンベリさんの呼び掛けに援助の手を差し伸べる人々の記事、そしてその左側のページには文化芸術欄があり、美術雑誌出版社の新しいネット配信に関する記事が掲載されていました。こうした記事を比べてみると、SNSは一瞬で情報を発信し良くも悪くも変化を生みだすことが分かります。
 新聞記事はその配置によってもいろいろなアイデアにたどり着くきっかけになります。
 また、私が静岡新聞でよく読んでいるコーナーが「窓辺」という夕刊コラムです。以前、浜松アーツ&クリエイションディレクター菱沼妙子さんのコラムを読んで感銘を受け、実際に会いに行きました。それは「今なぜ芸術教育が必要なのか」という見出しがつき、自ら課題を見つけ、答えを生み出せる力を芸術によって強化できるのでは? という提案でした。切り取って今も手帳に挟んでいます。
 皆さんには、自分なりの表現方法がありますか? 美術デザインであったり、文芸であったり得意な分野で良いのです。自らの手でじっくりと作る姿勢を忘れず、スピード社会に押し流されないよう、しっかりと立ち行動するクリエイティブな力(創造力)をつけてください。これからの芸術教育は他の教科との共有性を持ち、実社会に問い掛けのできる教科になっていかなければならないと思っています。作品制作に頑張る生徒を見ていつも励まし、励まされている日々です。学ぶこと、創作することのすてきさ、素晴らしさをぜひ伝えていきたいと思っています。
 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(33)「地域欄」進路切り開く種

 年末が近づくにつれ、高校3年生の進路にさまざまに関わる場面が増えてきます。筆者は生徒に対し、社会に目を向ける重要性から新聞記事の活用を薦めてきました。
 最近、自ら進路を決めていった生徒たちの中で印象に残っているのが、将来、地域に関わる公務員などの仕事に就きたいという生徒に対し、地元の問題になっている記事を継続的に読み取り、スクラップすることを薦めた場面でした。
 読者は見出しの大きさなどから新聞の一面に目を奪われがちですが、地域欄の地元の行事などの記事が将来の進路につながっているということに気付かせることも大切な関わり方だと考えています。
 2019年はラグビーワールドカップが本県でも行われましたが、官民がさまざまな形で協力する記事が連日、報道されていました。直接関わっていなくても、その事実を知ることが地域社会との関わりの大切な一つだとも思います。
 志望する大学に合格した喜びの笑顔の土台には、自身の生きてきた地域社会とのつながりがあることを、これからも記事の事実を通して伝えていきたいと思います。
 (静岡聖光学院中・高・伊藤大介)