静岡県NIE推進協議会

月刊一緒にNIE@しずおか=読解、発信力 新聞で育成 社会に目を向ける契機に 常葉大橘高「タチバナクエスト」

2020年01月11日(土)付 朝刊


 NIE実践指定校の常葉大橘高(静岡市葵区)では、英数科の1、2年生を対象に、新聞を使った選択授業「タチバナクエスト」を毎週実施している。テーマに沿った新聞記事を読んで、自分の意見を他者に伝えることで、社会への興味関心を持つとともに、読解力や発信力を育むことが狙いだ。

 この日は大学入学共通テストの「英語民間試験導入延期」をテーマに授業を実施。生徒12人は3グループに分かれ、記事を読む前に自分の意見をワークシートに記入。その後、グループごとに英語民間試験の導入について論じた社説や記事を読み込んだ。分からない単語や面白いと感じた部分に線を引きながら内容を確認し、生徒同士で意見を共有。「英語新入試の問題点は」「英語力とは」など教諭が用意した設問を考え、代表生徒が他のグループの生徒に記事の内容をプレゼンした。
 生徒からは「試験費用を考えると所得によって格差が生まれる」「テストの種類が多いので評価が曖昧になるのでは」などの意見が上がった。その上で、テーマに対する自分の意見を再度、ワークシートにまとめ、記事を読んで考えを深めることができたかを確認した。同校2年の福井千晴さん(16)は「授業を通じて、自分の意見を自信を持って伝えられるようになった」と成長を語る。
 タチバナクエストは、NIE担当の塚本学教諭を中心に3年前から始めた。併せて、スクラップノートも作成し、タチバナクエストや他科目の授業でも活用している。生徒がテーマ設定し、自由に新聞記事を選択してノートに自分の意見を記す。
 「いずれも社会に目を向けるきっかけづくりに非常に有効」と評価する塚本教諭。社会の出来事に触れ、視野を広げることは「興味関心の域を大きく広げ、生徒の成長を後押しする力になっている」と強調した。

 

2020011101.jpg
新聞記事を活用して意見交換する生徒ら=2019年11月中旬、静岡市葵区の常葉大橘高

 

2020011102.jpg
生徒が新聞記事をまとめたスクラップノート

  
               ◇........................◇

 

■紙面授業 地理・歴史 世相を読み解く鍵 静岡大成中・高 山本翔生先生

 昨年6月から長期間続く「香港デモ」。新聞紙面でもたびたび大きく取り上げられました。6月、「逃亡犯条例」改正案に反対する抗議活動としてデモは始まりました。9月の香港政府による法案撤回表明後、大規模デモはより大きな民主化を求めるものへと変化し、現在も続いています。
 なぜ香港がこのような状況になってしまったのか歴史を見てみましょう。
 1840年に起こったアヘン戦争が大きく関わっています。当時の清国を破ったイギリスは、南京条約で香港島を譲り渡すことや貿易の拡大を認めさせました。さらに、1898年に残りの香港を99年間の期限付きで借りることを認めさせたのです。その後、1997年7月1日に香港はイギリス植民地から、中国の特別行政区になりました。長い年月をかけて香港は中国とは全く異なる形で経済発展を遂げ、今ではアジアNIES(新興工業国・地域)としてアジア最大の金融センター、かつ重要な港湾都市となりました。このように、香港は中国でありながら中国とは違う政治・経済政策が行われ、「高度な自治」が認められた「一国二制度」の状態にあるのです。
 では、中国はどのような政治・経済政策のもと建国70年を迎えたのでしょう。また、香港を長らく植民地支配してきたイギリスの議会制度はどのようなもので、EU(欧州連合)からの離脱問題(BREXIT=ブレグジット)は世界経済にどれほどの影響があるのでしょう。
 こうした世相を読み解く鍵を見つけたり身の回りで起きていることを解決したりするために、社会科目があります。地理分野と歴史分野の土台の上に公民的分野が存在し、土台部分をしっかりと身に付けることで、今後求められる「思考力」がより豊かになるのではないでしょうか。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

               ◇........................◇

 

■NIEアドバイザーのワンポイント講座(34)SDGs 付箋で「見える化」

 皆さんは、SDGsを知っていますか。2030年までに地球の問題を解決する取り組みのことで、未来を変える17のゴール(目標)を設定しています。そのゴールに向かって、一人一人ができることを見いだし、行動を起こそうというものです。そのためには、まず地球の問題を理解するところから始めなければなりません。
 そこで、新聞を使ったSDGsの「見える化」を紹介します。これは、神奈川県NIE推進協議会の公開セミナーで行われたものです。新聞には、この17のゴールと関連する記事が多数掲載されています。ゴールを意識し読み込むことで、おのずと課題が見えてくるので、それらを色分けして見える化していきます。SDGsのゴールには、全世界共通のアイコン(色とマーク)が決められています。そのアイコンを17種類のSDGs付箋として記事に貼るのです。
 同じ記事でも個々の読み方や問題の捉え方が異なると、同じ色の付箋が付くとは限りません。付けられた付箋の意味を皆で共有し、問題解決に向けて行動していくことは、物事を自分ごととして考えるきっかけとなるはずです。
 (静岡井宮小・中村都)