静岡県NIE推進協議会

「新聞で社会に関心」 県内実践4校 成果発表

2020年02月23日(日)付 朝刊


 教育に新聞を活用する取り組みを展開する県NIE推進協議会(安倍徹会長)は22日、県内の実践指定校による報告会を静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で開いた。中学校と特別支援学校計4校の教諭が2~3年間の活動内容を発表し「子どもが社会への関心を広げる学習に活用できた」などと成果を語った。
 発表したのは県立静岡聴覚特別支援学校と、川根本町立本川根、富士宮市立西富士、菊川市立菊川西の3中学校。各校の教諭は記事への意見を交換した討論会や、数学や国語など教科を横断して新聞を活用した学習を紹介。「子どもがニュースに対する自らの考えを持った」と手応えを語った一方、「授業内容に合った記事を探すのは大変だった」と課題も挙げた。
 県内各地の学校関係者ら約70人が出席。安倍会長は「発表内容を各校での取り組みに反映させてもらえたら」と呼び掛けた。
 

 4月4日付静岡新聞朝刊「一緒にNIE」面に詳報

 

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教育に新聞を活用した取り組みを報告する教諭=22日午後、静岡市駿河区の静岡新聞放送会館

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=記事基に考察、議論 現代文授業で新聞活用 受験多様化に対応 星陵高(富士宮)

2020年02月01日(土)付 朝刊


 富士宮市の星陵高で、現代文の授業に新聞記事を取り入れた実践的な試みが進められている。AO入試をはじめ受験形態が多様化し、大学が求める力も変化する昨今。記事を基に生徒が意見を交わし、問題を理解することで、小論文などに必要な考える力や社会への関心を養う場となっている。

 同校で行われた1月中旬の授業。英数科総合コースの文系2年生が、本紙に掲載された記事を基に考察を始めた。題材は「男性の美容への関心の高まり」。男性がメークをし、外見の印象を良くすることでビジネスや就職活動に生かす動きをまとめた記事だ。論文問題が添えられていて、各自がどう思うか賛成・反対の立場でまとめるのが終着点となる。
 生徒は早速、グループに分かれて議論を始めた。タブレット端末を活用し、裏付けとなる資料や文献を探していく。議論が進むと、各グループの代表が自身の考察に対して根拠となる情報を交えて発表し、クラス全体で共有する。
 議論は週に計4コマある現代文の授業時間を使う。賛否が分かれる題材を扱い、議論の途中で生徒の立場が変わる場合もある。
 この取り組みは5~6年前、現在は大学進学指導課長を務める奥村裕樹教諭が始めた。当初は生徒が新聞記事の要約や感想などを書き、奥村教諭が添削して返信する一対一のスタイル。そのやりとりを発展させ、クラス全体で議論を深める形式を確立した。
 取り組みを開始してから、難関とされる大学にAO入試や推薦で合格する生徒の率が上昇してきているという。2年の芦沢真優さん(17)は「視野や見聞が広がり、自然と力が伸びている」と手応えを語る。奥村教諭は「取り組みは畑を耕しているようなもの。新しい常識をつくっていく世代の生徒たちが今に対する疑問を持ってもらいたい」と話す。
 (富士宮支局・白柳一樹)

 

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新聞記事を基に議論を深める生徒たち=1月、富士宮市の星陵高

 

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自身の意見を述べる生徒

  
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■紙面授業 地歴・公民 入試 公平性保って 常葉大橘中・高 塚本学先生

 大学受験が本格的になり、受験生はラストスパートの時期です。昨年は大学入学共通テストの「英語民間試験導入」で、学校現場は混乱しました。文部科学大臣の「身の丈」発言により、導入が延期されたことは新聞でも大きく報道されました。
 私は地歴・公民の教師ですから、この件で中国の「科挙制」を連想しました。科挙制は、隋の時代の587年に始められ、清代の1905年まで継続された役人選抜試験です。その目的は、貴族の子弟の役人世襲を防ぐことです。科挙が万民に門戸を開放した制度であったことは画期的でした。家柄も血筋も問わず、誰でも科挙を受けることができるという精神だけでも、当時の世界では、類をみない制度といえましょう。それが極めて公平に行なわれたことも利点に挙げられます。答案審査は姓名を見ずに、座席番号だけで行われました。ペーパーテストで「公平」な選抜を行い、人民の中の最も賢明な者を登用しようとしたのです。
 今日の英語民間試験導入は、まさに「公平」という点が問題の一つではないでしょうか。経済力や住んでいる場所という、本人の努力だけではどうにもならない要素が結果の差に結び付きかねないことが問題なのです。
 科挙がかくも長く行われ、周辺地域にも影響を与え続けたことに注目する必要があります。この制度の永続を可能ならしめた中国の社会文化の基盤を著名な歴史家、宮崎市定は、「科挙なるものは本来、文を重んずる精神の上に成立した」と述べています。
 なるべく公平であり、また受験がゴールではなく、入学した大学で学問をスタートするんだという意欲がわく入試であってほしいものです。なぜなら大学こそが、文を重んじる世界の入り口になるのですから。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(35)チバニアン 地球史身近に

 理科の教科書にある、ただ一言で表現される結論を紡ぎ出すために、科学者は日夜研究に勤[いそ]しんでいる。研究が深まり、新しい言葉が生まれ、認められる。理科授業で、最新の科学成果を紹介すると、生徒たちは、目を輝かせて熱心に学ぶ。科学研究の最前線の話題を分かりやすく伝える新聞記事を探してみよう。関連する記事を読ませた後、生徒の理解に応じた補足説明を行うとよい。
 地球史の学習で、欧米の地名に由来するなじみのない名称を覚えるのに苦労する生徒もいるが、彼らに紹介したい記事が「地球史に『チバニアン』 千葉の地層から」(1月18日付静岡新聞)だ。国際地質科学連合が、約77万年前~約12万年前の地質時代を千葉県の地層から「チバニアン(千葉時代)」と命名することが正式に決定したのだ。
 記事の見出しに大きく「チバニアン」とあり、ユニークな名称なので、思わず声に出して読む生徒がいる。行政や地元の人々が一丸となって協力した命名に至るまでの過程やその他のエピソードも興味深い。
 地質分野の学習を、「覚えにくく暗記しなければならない学習」ではなく、「多数の人が関わる創造的な研究の成果を学ぶこと」と感じてもらえるのではないだろうか。
 (清水西高・吉川契子)

  
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■指定校が実践事例を報告 22日、静岡で県推進協

 県NIE推進協議会は22日午後2時から、実践報告会を静岡市駿河区登呂の静岡新聞放送会館で開く。
 実践指定校としてNIEに取り組んできた富士宮市立西富士中、川根本町立本川根中、菊川市立菊川西中、県立静岡聴覚特別支援学校の担当教諭が、2~3年間の取り組みの成果や課題を発表する。
 参加希望者は14日までに、県NIE推進協議会事務局<電054(284)9152>へ申し込む。参加無料。

  
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■全国大会は11月都内で

 教育現場で新聞を活用する「NIE」の実践報告や情報交換をする「第25回NIE全国大会東京大会」(日本新聞協会主催)が11月22、23の両日、都内で開かれる。
 例年、全国大会は7月下旬~8月上旬に開かれるが、今年は東京五輪・パラリンピック開催と重なることから、時期をずらした。
 会場は、初日が日本大学文理学部百周年記念館(東京都世田谷区)、2日目が十文字中学・高校(同豊島区)。詳細は追って発表される。

 
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■19年、写真で振り返り 横浜、来月29日まで

 2019年の国内外の報道写真を集めた「報道写真展」(ニュースパーク、東京写真記者協会主催)が3月29日まで、横浜市のニュースパーク(日本新聞博物館)で開かれている。
 新聞、通信、放送の同協会加盟35社の写真記者が撮影した膨大な報道写真から300点を厳選。天皇陛下の即位を祝うパレード「祝賀御列の儀」やラグビーワールドカップ日本大会、台風19号の被災現場など、19年の時代をとらえた写真を、「一般ニュース」「企画」「スポーツ」「文化芸能」と多様な分野で紹介している。昨年8月に本紙夕刊で連載した「県鳥サンコウチョウ」の写真も展示している。
 開館時間は午前10時~午後5時(入館は午後4時半まで)。月曜休館。入館料は一般400円、大学生300円、高校生200円、中学生以下無料。
 問い合わせはニュースパーク<電045(661)2040>へ。