静岡県NIE推進協議会

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=社会問題 記事で気付き 吉田・自彊小で公開授業 「コロナ禍 自分にできることは」議論 深く読み込み視野広く

2020年11月07日(土)付 朝刊


 NIE実践指定校の吉田町立自彊小でこのほど開かれたNIE教育研究発表会。国語、社会、道徳の授業を同校教諭が公開した。新型コロナウイルス感染症に関する新聞記事を活用しながら授業を展開し、児童は多角的な視点から学びを深めた。

 社会科の授業は、森祐介教諭(34)が4年生約30人に対して行った。テーマは「コロナ禍の生活の中で自分たちにできること」。外出の自粛による家庭ごみの増加、マスクのポイ捨て、ごみを収集する作業員の感染リスクといった社会問題を伝える記事を選び、児童に読んでもらった。

 森教諭の音読に合わせて傍線を引くなどして記事に目を通した児童ら。「使い捨てではなく、繰り返し使える布マスクをなるべく使う」「マスクのポイ捨てをしないように周りの人に呼び掛ける」と、ごみを減量する方法を積極的に発表した。

 「新聞記事を根拠に考えてみて」。森教諭のアドバイスを受けてさらに記事を深く読み込むと、児童に新たな気付きが生まれた。ごみ収集の作業員や清掃員の感染リスクを踏まえ、「ごみ袋からマスクが飛び出さないよう、別の袋に入れてから捨てる」などと、違った視点からの意見が出てきた。

 県内小中学校の教諭など教育関係者約70人が参加した。自彊小は実践指定校2年目で、休み時間や読書の時間に新聞を読む児童の姿がよく見られるようになったという。森教諭は「子どもたちが自分の思い込みではなく、ニュースを読んで物事を考えることで、視野が広がっている」と効果を実感する。

 公開授業の後に行った全体会では、同校の取り組み状況を参加者が共有した。教室内に設けている「新聞コーナー」や、朝の会で日直が興味を持った記事をクラスメートに紹介する「新聞スピーチ」など、日常的に新聞に親しむことを目的とした取り組みを同校の担当教諭が説明した。

 

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森祐介教諭(右)の授業で新聞記事を読み込む児童ら=吉田町の自彊小

 

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■紙面授業 理科 陸守る茶草場農法  不二聖心女子学院中・高 平本政隆先生

 6月、コロナ禍で減少した茶の販売を促進するために、JA静岡経済連などが国の支援を活用し、県内の学校等に茶の配布を検討しているというニュースが新聞に掲載されました。既に各校への配布は始まっているようです。

 日本一の生産量を誇る茶どころである静岡の茶草場農法が世界農業遺産に認定されているのはご存じでしょうか。茶草場農法とは茶草場と呼ばれる草地から草を刈り取り、茶園の畝の間に敷き込む伝統農法で、土壌の状態が良くなり、おいしいお茶ができるといわれています。認定されているのは掛川地域4市1町ですが、県内で広く実践されています。本学院は裾野市にありますが、約69ヘクタールのキャンパス内にある不二農園でも100年以上前から茶草場農法で茶を栽培しています。

 茶草場は絶滅危惧種を含む豊かな生物多様性が見られる貴重な環境でもあります。毎年、人の手が入り、草刈りが行われる茶草場で豊かな生物多様性が見られるというと、意外に思われるかもしれません。生物基礎の授業では植生遷移を学びます。草地は時間がたつと、樹木が侵入してきます。樹木が育ち、地面に届く光が少なくなると、草地を好む多くの植物は生育ができなくなり、植物の種類は減ってしまいます。人が草を刈り、樹木が侵入する前に遷移を止めることで、地面に多くの光が届き、多様な植物が生育できる環境が保たれるのです。

 茶草場農法は、茶栽培という人間の営みと生物多様性とがうまく両立していることが高く評価され、世界農業遺産に認定されました。静岡のおいしいお茶を飲みながら、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の17の目標のうち、15「陸の豊かさも守ろう」や、人間と自然との共生について考えてみてはいかがでしょうか。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(44)新聞で学んだ「音楽の力」

 このコロナ禍において、文化や芸術は不要不急なものとする向きがあります。私自身も「衣食住ではなく、娯楽のひとつ」と思っていた音楽。しかしこの時期に音楽と向き合う意味を考えさせてくれたものがあります。

 現在は歌うことも楽器で演奏することもままならず、音楽への取り組み方を見失っていた矢先、本校では音楽集会を開催することになりました。選曲する段階で、「この状況下で何ができるのだろう」と考えた時、ある新聞記事を思い出したのです。それは、小学校の音楽会で決して主役になれない地味な楽器カスタネットを主要パートにした小学生向けの合奏曲を紹介したものでした。子どもたちに記事を見せると「やってみたい...」と反応。そこでその合奏曲を音楽集会で演奏しました。

 いつもは脇役の子どもたちが飛沫[ひまつ]心配なしのカスタネットで主役になり、のびのびと自分の演奏表現ができたことが、音楽の楽しさへとつながったのです。

 最近は「コロナ禍に音楽の力」と銘打った見出しが目につきます。新聞記事で「音楽って楽しい」の気持ちを育ててみませんか。

 (静岡井宮小・中村都)