一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

学習広がる教材予習新聞

2012年04月29日(日)付 朝刊


  個人学習から発表まで発展性のある「教材予習新聞」を紹介する。

【個人作業】

  下記のA3プリントに予習内容や感想などを記事形式で執筆していく。後程、全てのパーツはバラバラに切り離し再構築されて一枚の新聞に仕上げるので、全て署名記事にし、文責を明確化しておく。ここまでを個人学習とし、つまりは予習を新聞紙面のスタイルに表現させたものである。検索の際は、友人との重複を避ける・大学など信頼できる発信元から引用するよう注意を促す。
  さらに言語活動の充実を目指す場合は、グループ学習・発表まで発展させる。

【資料形成の討論】

  班を作り、それぞれ発表者・司会者・切り抜き係・貼り付け係など役割分担を行う。司会者が中心になって、各パーツにメンバーのどの記事を採用するか話し合う。全員が納得したら、係はそれぞれ採用された記事を台紙に貼って、一枚の新聞にまとめ上げる。話し合い学習は明確な結果を求めるよう設定すべきであり、この場合は誰の記事が発表資料に採用されるか、という点が該当する。

【発表学習】

  グループで実作した新聞を資料として発表を行う。発表者は3分で自分たちの新聞の良い点・創意工夫点・特徴などを、わかりやすく大きな声で発表する。メンバー全員が前に出て、発表者の補佐(資料の提示など)を行う。ただ、教壇に立つ場合でもA3では小さ過ぎるので、電子黒板や投影機などを積極的に利用すると良いだろう。発表学習には生徒の相互評価が効果的だ。評価の明示化を図るとともに、評価する責任の重要性を認識させたい。

(実石克巳/静岡市立高)

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社会科教師の役割とは

2012年04月22日(日)付 朝刊


  「選挙の投票率が低いのは、社会科教師の努力不足と自覚せよ」とは、亡き恩師の言葉である。低調な投票率の原因は他にもあるに違いないが、社会科の目標が「公民的資質の育成」、すなわち、「社会生活上の権利や義務の理解に基づいて、正しい判断や行動のできる能力や意識を育て上げること」である以上、私は個人的に相当な心配をしている。私の授業を受けた生徒たちは、成人後に選挙権を行使しているのだろうか…。
  私が社会科の授業で新聞を使う理由は、公民的資質の育成に新聞記事が役立つと考えているからに他ならない。例えば、東日本大震災に関する紙面には、基本的人権、国会の仕事、内閣の役割、地方自治と民主政治、企業の社会的責任など、教科書の内容に結びつく記事がびっしり詰まっていた。記事の中の生々しい事実が、学ぶべき内容と生徒たちとの距離を縮め、理解を促すことにつながる。さらに、複数の記事を一覧し、問題を多面的にとらえられるのが新聞の強みである。新聞の活用を通して多様な見方や考え方をした経験が、将来的に正しい判断や行動を自ら引き出すことにつながっていくであろう。できることならば、簡単に答えを出せないような問題にも前向きに立ち向かうような人材が、一人でも多く現れることを期待している。
  ところで、学校という現場には、解決の難しい問題が散在している。中には、どう考えても教育活動とは関係ないことが原因の場合もしばしばある。そして、その多くが「親離れ、子離れが遅れている家庭」、もしくは、「子どものことを学校に任せきり(丸投げ)にしている家庭」が関係しているように思われる(統計的裏付けはない)。子離れがうまくいかない保護者も学校に任せきりの保護者も間違いなく学校から巣立ったはず。ということは、「家庭が絡んだ問題が学校で発生するのは、教師の努力不足」として自覚すべきなのか…。
    ◇

  県内の教諭がNIE実践を隔週交代で紹介します。
(内藤純一/浜松学芸中・高副校長)

全ての教育活動の基盤に

2012年04月15日(日)付 朝刊


  小学校の学習指導要領に新聞の活用が盛り込まれて、1年がたちました。記事の活用は、NIEが生まれる前から多くの先生が取り組んできました。NIEの活動では、記事の活用だけでなく、新聞の機能の活用、新聞作りに取り組みます。新聞とそのノウハウをまるごと活用することによって、記事から知識を得るだけでなく、思考力や判断力、表現力、社会へ積極的に参加する態度などを養うことができるのです。
  「新聞は難しいので、高学年でもなかなか取り組めない」という声を耳にします。確かに、記事の全てを小学生が理解するのは難しいと思います。物語文や説明文は、最後まで読まないと一番言いたいことを理解できません。ところが、新聞は全てを読むことを想定して書かれていません。興味関心に応じて読みたい記事を読めばいいのです。それどころか、「見出しで5割、リードで9割」という言葉があるように、見出しだけでも記事のおよその内容を知ることができるのです。それも無理な場合は、写真だけを見ても言いたいことが分かることがあります。「1枚の写真は100行の記事に勝る」と言われることがあるほどです。
  下の図を見てください。情報活用の実践力を養うため、1年から6年までどの学年でも、様々な教科・領域の学習を通して情報の収集の仕方や選択、整理、発信の仕方を学びます。そうした力を養うのに、新聞作りのノウハウを学ぶことが大いに役立ちます。
情報の収集は、人にインタビューしたり、本や資料を使って調べたりする学習で、どの学年でも行います。低学年の国語の教科書にインタビューの仕方のポイントが書かれていますが、新聞記者の取材の仕方を生かすことができます。同様に、情報の選択や整理、発信の段階でも、新聞記者のノウハウを生かすことできます。
  このように、NIEで身に付ける力は特定の教科に限定されず、全ての教育活動の基盤になるのが大きな特徴です。今回の学習指導要領では、中学年では「複数の種類の文章を集めて編集し、見出しを付けたり記事を書いたり、割り付けをしたりする」ことを学びます。高学年では「編集の仕方や記事の書き方に注意して新聞を読むこと」を、内容が多岐にわたることや、図や写真、配置などの割り付け、逆三角形の構成、見出し、リード文、報道記事や社説・コラム・解説記事などを通して学びます。
  NIEの学習は、「子どもたち一人一人に新聞紙がないとできない」と心配しなくても大丈夫です。教科書にポイントを押さえた資料が載せられています。また、紙面を黒板に貼ったり、印刷したり、大画面のモニターに映したりするなど、提示の仕方を工夫しましょう。全員に持たせる場合でも、日付が違ったり、違う社の新聞を使ったりした方が気付くことが増え、深まりのある授業ができることもあります。 小学校のどの学年でも、NIEに積極的に挑戦することをお勧めします。
(山崎章成/浜松曳馬小)

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楽しみながら"隅々まで"

2012年04月08日(日)付 朝刊


  新聞の代表的な特徴である「一覧性や網羅性」を学ぶ実践を紹介します。楽しみながら、新聞の隅々まで目を通します。活動を1~2選ぶことも可能です。
  この活動を通して子どもたちは、「新聞はすべてが学ぶ要素・情報の宝箱」「暗く重い記事だけでなく、明るく喜びにあふれた記事も多い」と実感します。
  対象は小学校高学年~中学生で、総合的な学習や学級の時間、国語などで行うとよいと思います。
  まず、ウオーミングアップを行った後、記事の見出しで「しりとり」をします。広告は除き、最後が「ん」で終わらないよう、できるだけ多く続けます。
  グループごと、しりとりの最高数を発表すれば、拍手が起こると思います。
  「喜怒哀楽」探しでは、喜怒哀楽のうち一番多い記事は何か、「人数を板書するなど目に見える形で記録しておく」「予想した理由も聞いておく」ことがポイントです。後で、実際に見つけた結果と比較し、話し合うための材料です。
  人によって分類に違いが出れば、さまざまな見方や判断があることを学ぶ絶好の機会となります。
  また、記事には予想していたよりも「楽」や「喜」が多くて驚くことと思います。特に、地域版では多く見つかり、これらの記事から生き方を学べることも発見できると思います。

(矢沢和宏/島田川根中校長)

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思考力育成を段階的に

2012年03月04日(日)付 朝刊


  平成22年度全国学力・学習状況調査において、「新聞やテレビのニュースに関心がある」と回答した子どもの平均正答率が高い傾向が見られたそうです。
  日々のニュースには、教科の学習の予習・復習となる要素が盛り込まれています。一瞬で消えるテレビよりも、スクラップして繰り返し読むことができる新聞ニュースは、思考力を育む上で効果があります。
  例えば、理科授業で、科学記事をスクラップする課題を出しても、新聞を読むことに生徒が慣れていないうちは、記事を上手に探すことができないかもしれません。
  教師が複数のスクラップ例を用意しておき、それを参考に探すように指示すると良いでしょう。
  テーマを決めてスクラップさせる場合は、生徒の発達段階に十分配慮し、生徒が探しやすいテーマを設定するべきでしょう。
  グループでの共同作業を取り入れて見つけた記事を紹介し合ったり、グループごとのスクラップ枚数を競い合ったりと、さまざまな工夫を行うと楽しく学べます。
  記事の感想を書かせてみると、初めはごく短い文章しか書かないかもしれません。直接生徒に質問して感じたこと・考えたことを発言させ、より詳しく記入するよう促します。ある程度まとまった文章が書けるようになったら、投書欄への投稿に挑戦させてはいかがでしょうか。
学校の教室から、新聞という窓を通じて、生徒が社会への関心を高め、思考力が育つことを期待したいものです。
(静岡中央高・吉川契子)

語彙を増やし国語力強化

2012年02月26日(日)付 朝刊


  国語は、すべての教科の根幹に関わる。なぜ、そのように言われるのか。それは英語であろうが数学であろうが、脳内においては、日本語でもって思考しているからである。知的な頭脳活動の根本である以上、国語力の獲得は学業成就のための必須条件なのだ。
  さて、その「国語」を教科として考えた場合、どうすれば実力アップが望めるのかを以下に記す。まず、知っている言葉の数を増やすこと。語彙[ごい]が増えれば、思考力が伸びる。思惟[しい]のクオンティティーが増えるとは、まさに頭が良くなることと同義。次に、知識量を増強せよ。これすなわち、物識りになれ、という意味だ。情報の引き出しが増量されれば、さまざまな内容を比較し選別し、適切な答えを引き出す判断力が強化されるだろう。
  ここまで読んできて、なんだこれでは全然具体的じゃないではないか、と思われるかもしれないが、実は「ひたすら読み、一途[いちず]に考え、とにかく書く」ことが最も効果的な学習方法なのである。学問の伸長に、近道はない。まずは毎日、新聞を読むべし。高校生のジョーシキではなく、世間一般の常識を習得せねばならぬ。さまざまな事象に対し、「何故~なのか」と疑問を抱け。そして原因を推察し、根拠を明示しつつ文章を書くのだ。
  確かにこれら一連の作業は、非常に疲れる営みだ。しかし学習とは、微々たる存在の、離離たる自分を見つめ直すことでもある。刻苦勉励の後、新たな自我を表出するとき、諸君は真の国語力が付いたことを自覚できるに違いない。健闘を祈る。
(静岡市立高・実石克巳)

疑問や感動の積み重ね

2012年02月19日(日)付 朝刊


  「情報読解力を育成するNIEの教育的効果に関する実験・実証的研究」(日本NIE学会・日本新聞協会共同研究プロジェクト)の成果が発表されました。この研究は、NIEが、小・中・高校のそれぞれの段階でどのような教育的効果があるかを、3年にわたって全国規模で研究したもので、私も研究協力者として参加しました。
  この研究によると、NIEでは、以下の五つの情報読解力を育てることができることが明らかにされました。
  新聞から知的な問題や実践的な問題を発見することができる「問題発見力」。発見した問題を解決するために必要な情報を受信する「情報受信力」。知的な問題「なぜ、どうして」を解決していく「探求力」。実践的な問題「どうしたらよいか、どの解決策がより望ましいか」を解決していく「意志決定力」。解決した情報を発信する「情報発信力」の五つです。
  情報過多の時代を生きる子どもたちは、あふれる情報に触れるだけで分かったと勘違いしてしまう危険性があります。新しい情報に出合った時に「これはどういうことだろう」「へえ、すごいことが起きているな」と、自分なりの意見や考えをもつことができて、初めて理解することができたと言えると思います。
  日々の新聞記事を読むことを通して、疑問をもったり、感動したりすることを積み重ねることによって情報読解力を身に付けていくことができると思います。
(浜松曳馬小・山崎章成)

魅力的な記事の提供に期待

2012年02月12日(日)付 朝刊


  私は毎年、NIEの全国大会に参加します。どの開催県でも、県の個性を生かした実践に感心させられます。来年は静岡で開催されますが、静岡らしいNIEとして発信できるものは何でしょうか。
  実は、日本のNIEは1985年に静岡で初めて提唱されました。来年の全国大会は原点の地に還[かえ]るわけです。
  私はNIEの原点を、子どもの目が輝く魅力的な新聞活用と考え、「やさしいNIE」と名づけました。その例を紹介してみます。
  新聞はどこを開いても新たな学びのきっかけが見つかります。自分の可能性を広げる「情報の宝箱」です。まず開いてみることです。
  豊かで前向きな生き方をタイムリーかつ簡潔に紹介してくれるのも新聞です。夢や希望がつまったハッピーニュースが数多く載っています。混迷を深める時代を生きる指針にもなりそうです。
  新聞の比較読みで、伝え方の違いが発見できます。また、他のメディアが伝えているニュースを、新聞ではどう書いているのか見るのもたいへんおもしろいと思います。
  このような魅力的な新聞活用には、学校や家庭の努力が大切ですが、新聞社の役割もますます大きくなっていると感じます。三者の連携が相乗効果を生むのです。
  丁寧な解説が工夫され、新聞も活用しやすくなりましたが、今後はさらに、教材化につながる魅力的な記事の提供が期待されます。
  静岡大会がNIEの原点を確認する場になることを願っています。
(焼津大村中教頭・矢沢和宏)

面接に備えて早くから

2012年02月05日(日)付 朝刊


  大学のAO入試や推薦入試の面接で、「最近の気になるニュース」や、志望学部に関連するニュースについて問われるケースがかなりあります。この対策として新聞を読むように薦める先生方も多いのではないでしょうか。
  私が2年生の時理科授業を担当したAさんのことをご紹介します。夏休みに理科に関わる新聞スクラップの宿題を出したところ、Aさんは余白にイラストや感想を入れたカラフルなスクラップ帳を提出してくれました。夏休みに時間をかけて新聞に向き合い、必要な情報を新聞から探し、考える習慣を身につけました。
  彼女はその後、新聞を読む習慣を継続しました。そして、翌年、センター試験を利用した推薦入試に挑戦しました。面接では、志望学部に関連するニュースを話題に、適性と思考力を問う質問があったそうです。普段新聞を読んでいたAさんは無事質問に答えることができました。そして、教科試験も十分準備していたため、念願の合格を果たしました。
  受験生は学校の定期試験や、センター試験対策・志望校の教科試験や小論文対策など、多くのことをこなさなければなりません。1・2年生のとき新聞を読む習慣が身についていない生徒が、3年生になって新たにこれを身につけるのは非常に難しいと思います。
  AO入試・推薦入試を検討している生徒は、1・2年生のうちに、楽しみながら無理なく新聞を読む習慣を作ると良いでしょう。
(静岡中央高・吉川契子)

見出しから内容"探る"

2012年01月29日(日)付 朝刊


 新聞の閲読を、小説問題の受験対策とすべし。
 これは何も新聞の隅々まで精読せよ、ということではない。時間がないことは重々承知している。では、具体的にどうすればよいのか。最も効果的な方策は、以下の通り。「見出しから記事内容を連想する日々の訓練を、自らに課せ」。これを特筆大書しておこう。短文から背景内容を想起する頭脳活動は、小説読解の第一歩であり、毎日の鍛錬がその向上を促す。部活動の練習を考えてみよ。日頃のトレーニングこそを大切にし、試合前日に詰め込みの長時間特訓などすまい。しかしながら、勉強ではこの愚行をおかす者のいかに多いことか。
 見出しからストーリーを想起するためには、物語の基本構造を予め認識しておく必要がある。小説には概して共通したパターンが存在し、それは離脱・試練・獲得・解明と分類可能だ。物語の主体をはじめとするほとんどの要素に多様な対立項が設けられ、対応する内容が絡み合いながらストーリー展開する仕組みと理解しよう。多くの試験問題は、変化の過程認識が理解されているかを問うてくるので、相対する項目・要素を確認し、変遷を文章から読み取る必要がある。
 新聞にはさまざまな対立項が掲載されているので、因果関係を意識するには最適な教材といえる。追跡記事では推移の時間軸を意識し、根拠を探りながら読む癖を身につけよう。多角的な変容はどのような帰着をもたらしたか、自己の着想の成果を咀嚼[そしゃく]しつつ判読することが、小説問題への対処の第一歩なのだ。
 (静岡市立高・実石克巳) 

自分に合った読み方を

2012年01月22日(日)付 朝刊


 小学校の低・中学年の子どもが、新聞記事を一人で読むのは難しいことです。そんな子どもたちでも、写真を手がかりにすると、どんなニュースが載っているか知ることができます。1日の新聞の中から、1枚でもいいので何を伝えたい写真か考えることができればすばらしいと思います。新聞の写真は、記事の中で最も言いたいことや文章だけでは表現できない重要なことを伝えています。写真から感じたことを家族と話し合ったり、その日の日記に新聞の写真を1枚貼って感じたことを書いたりしていくことをお勧めします。
 写真を通して新聞のおもしろさを味わうことができたら、見出しを読むことに挑戦しましょう。見出しは、記事が最も言いたいことを10文字前後にまとめています。「絵本テーマのかるたに挑戦」「自然の力 工夫で生かせ」など、小学校の中学年でも理解できる見出しは記事の中にいくつかあります。そんな見出しを切り取ってノートに貼っていくと、大事なことを簡潔にまとめる力を養うことができます。
 高学年になると、日々の新聞の中に本文まで読める記事が見つかるはずです。大切なことは①見出し②リード文③本文の第1段落の順に書かれています。最後まで読み通すことができなくても、リード文や本文の第1段落を読むことができれば記事の概要を知ることができます。
 自分に合った読み方を身に付け、日々の社会の動きに積極的に目を向けていきましょう。
 (浜松曳馬小・山崎章成)

「楽しむ」をきっかけに

2012年01月15日(日)付 朝刊


 「楽しむ」ことがNIEの基本です。最近の脳科学では、「脳が身体をつかさどる」のでなく、逆に「身体表現が脳をつかさどる」ことがわかってきました。例えば、「新聞を読む」という身体表現を始めると、脳は「楽しいから読んでいる。新聞は楽しいにちがいない」と認識するのです。ですから、読み始めるきっかけをつくることが大切です。
 その一つとして本校では、放送専門委員の企画で、昼の放送に「今日のトップニュース」のコーナーを設けています。放送当番の生徒がその日の新聞から自分で選んだトップ記事の内容と感想を全校に紹介します。「タイミングを考えて記事を選ぶとみんなから反響があります」「この企画は全校生徒に好評です」と、担当した生徒たちがうれしそうに話してくれました。
 また、テレビなど他のメディアで知ったニュースを、新聞ではどう伝えているのか確かめることも、楽しく読むきっかけになります。
 お正月の箱根駅伝をテレビで観戦した方も多いでしょう。5区山登りで今年も大活躍した東洋大の柏原選手。「自分が苦しいのはわずか1時間。(被災した地元の)福島の人たちに比べれば…」と話していました。
 新聞を読んでみると、他の選手も皆、「1秒を削り出す」という強い思いで、被災地に元気を届けようと走ったことがわかりました。大会記録を大幅に更新して優勝した東洋大の強さの秘密は、そこにあると実感しました。生徒たちはどんな感想を伝えてくれるのか楽しみです。
 (焼津大村中教頭・矢沢和宏)

調べ学習に過去記事を

2012年01月08日(日)付 朝刊


 静岡市指定の文化財「教導石」をご存じでしょうか? 静岡県庁本館近くにある、1886(明治19)年に建立された、高さ約180㌢の石碑で、正面に「教導石」、右側面に「尋ル方」、左側面に「教ル方」と彫られています。正面の文字は、山岡鉄舟の筆になるといわれ、一般市民の質問とその回答を側面に貼って用いていました。
 興味を持った本校生徒Kさんは、夏休みを利用して調べることにしました。その時役立ったのが過去の新聞です。
 静岡県立図書館歴史文化情報センター(静岡市葵区追手町)では、明治以降県内で発行された新聞のコピーを公開しています。Kさんは同センターに通って、教導石建立の経緯等について、当時の記事を丹念に調べました。
 新聞は年月日が明記されているため、出来事の経過を順を追って知るのに便利です。また、目的とする記事以外の部分から当時の社会の様子が垣間見え、教導石建立に至る時代背景を推測することもできました。
 Kさんは新聞以外の資料も探して調べ、その成果をリポートにまとめ、学校文化祭や、グランシップで開催された県中部定時制通信制合同文化祭でも発表し好評を博しました。
 過去記事閲覧は図書館利用が経済的なのではないかと思います。県内の各図書館では、コピーの他、縮刷版やマイクロフィルムで各紙の記事を閲覧できます。調べ学習に活用してはいかがでしょうか。
 (静岡中央高・吉川契子)

小説読み解く「共感力」

2011年12月25日(日)付 朝刊


 新聞にはさまざまな地域の人々のさまざまな出来事が、ワンサカと掲載されている。これらの事象を、自分とは無関係な他人事だと思って読んではいないだろうか。
 この軽く読み流してしまう閲覧方法は、実は国語の小説問題対策としては最悪の読文スタイルだ。何故ならば小説問題とはスナワチ、登場人物の心理とその変容を把握することに本質がある。人数は3人以下、会話の前後で各人の心理状態が変化する場面が、出題に好都合として狙われるだろう。その際、喜怒哀楽の心情語そのものが問題になることはあり得ない。つまり、周辺表現から人物の心理を推理し、変遷を把握することが読解ということになる。すると、必然的にその処方箋としては語彙[ごい]を獲得しつつ、常日頃から、人はどのような心理状況の際にどう表現されるのか。この書かれ方のときはこの心象風景になる、という法則性を想定しつつ、文章を読む練習をしていかなければならない。これを筆者は「共感力の育て読み」と称している。
 特に小説では、登場人物の周囲の状況描写はその人間の心理を表している場合が多い。故に、いつも「このような時、この人物の心理状態は如何[いか]なるものなのか?」という想像をしながら読む訓練が必要である。新聞に掲載されているさまざまな人間模様の全てについて、当事者や関係者の身になって、つまり感情移入をしながら読んでみよう。他人の感情を想像しながら読む力こそが「共感力」なのであり、このような心理分析こそが、小説を味わう醍醐味[だいごみ]でもあるのだ。
 (静岡市立高・実石克巳)

年末年始は企画が満載

2011年12月18日(日)付 朝刊


 年末年始になると、紙面に多くの特集記事が載せられます。
 年末には、一年の重大ニュースや流行語、ヒット商品などが取り上げられます。この一年の世の中の動きを、私たちが住む静岡県についてだけでなく、日本や世界を対象とした出来事についても、見やすくまとめて教えてくれます。こうした記事は、その年を振り返る貴重な資料になります。
 重大ニュースは年末恒例の企画ですから、何年か続けて保存していくと、何年にどんな出来事があったのかを調べたり、世の中の移り変わりを学んだりするのに役立ちます。
 年始の特集は、新聞社によって、その年によっても内容が異なります。その年に行われる大きなイベントや「今年を占う」といった企画は似たようなものが載せられますが、その新聞社独自の視点による特集記事も数多くあります。元日の新聞は、何種類かの特集記事のために分厚くなっています。普段の新聞記事は、すでに起きた出来事を知らせることが多いのに対し、年始の特集記事はこれから起こる出来事を分かりやすく解説しているのも大きな特徴です。年末の特集記事と同様に、後で役立ちそうな記事は保存しておくことをお勧めします。
 新聞は、主に静岡県民を対象に発行されている静岡新聞のような「県紙」のほか、発行地域が数県に及ぶ「ブロック紙」、全国を対象とする「全国紙」があります。
 「県紙」は、全国や世界のニュースを知らせますが、県民にかかわるニュースを多く取り上げます。
 (浜松曳馬小・山崎章成)

家族で新聞広げ語らう

2011年12月11日(日)付 朝刊


 新聞を家族で楽しむ「ファミリー・フォーカス(家族NIE)」という活動があります。
 例えば、11月に、氷点下の車中で愛犬が祖父と孫の体を暖め続け、2人が無事救出された「北海道の自動車転落事故」の記事がありました。この記事を読んで、家族でその状況を想像しながら、感想を出し合えば、誰もが温かい気持ちになれるのではないでしょうか。動物への愛着も深まりそうです。
 先週は、「公務員ランナー」の川内選手が日本人トップの3位となり、ロンドン五輪代表に名乗りを上げた「福岡国際マラソン」の記事がありました。この記事の写真や見出しを見ながら、川内選手の驚異的な粘りの秘訣を家族で話し合ってみれば、学ぶ点がたくさん発見できることと思います。
 このように、子どもが関心をもった(もちそうな)ニュースについて、漢字の読みや難しい言葉の意味を教えながら、家族でじっくりと新聞記事を味わうのです。
 そして、子どもが言った感想などをほめれば、子どもに自己肯定感が育まれ、新聞への関心はさらに高まります。社会情勢にも強くなり、一石二鳥です。NIEは、活動を認めてくれる相手がいると効果が倍増します。
 寒い冬には、暖かい部屋で、家族一緒に新聞を広げて語り合うのがお勧めです。
 (焼津大村中教頭・矢沢和宏)

自然観察に役立つ情報

2011年12月04日(日)付 朝刊


 理科学習には自然の直接体験がとても大切です。子どもたちは、十分な時間をかけて自然を観察すると、規則性に気づいたり、美しさに感動したりします。その経験が多いほど、理科学習に意欲的に取り組むようになります。自然の直接体験に役立つヒントが、新聞にあるという例を紹介します。
 近年、日の出・日の入りをじっくり観察したことがない子どもがいるそうです。夜間照明の影響で、月を観察する機会も以前に比べて少なくなっているのではないでしょうか。学校で太陽や月の学習をするとき、日常観察している子どもは早く理解することができます。太陽や月の観察に関連する新聞情報を見てみましょう。
 静岡新聞の朝刊社会面の天気欄「あすの暦」に、「日出・日入・月出・月入・月齢」が掲載されています。これを手がかりに太陽や月の観察を意識づけることができます。子どもさんの年齢に応じて観察の着眼点を工夫してみると良いでしょう。
 日食や月食の紹介記事は、その直前に掲載されることが多いものです。子どもたちに記事を示して、観察を勧めましょう。
 静岡新聞の週刊子ども新聞「YOMOっと静岡」11月27日号に、次の土曜日、12月10日の皆既月食が取り上げられています。今回の皆既月食は、土曜日の深夜で観察計画がたてやすく、空の高い位置で皆既となるなど好条件に恵まれています。記事を教室やご家庭のカレンダーに貼り付け、「あすの暦」を参考に日ごとの月の変化を観察しつつその日を待ち、安全に気をつけて、観察してはいががでしょうか。
 (静岡中央高・吉川契子)

試験と重なる新聞言語

2011年11月27日(日)付 朝刊


 確認しておこう。新聞にはいくつかの種類の言語が混在していることを。記事言語・見出し言語・解説言語などだ。同様に国語の試験においても、複数の言語が同時存在している。つまり、本文言語・設問言語・選択肢言語である。多くの人はこれら全てを混同し、さらには自分だけの「個人語」で理解しようとするために、正答までたどり着かない。揚げ句の果てには、国語の勉強方法が解[わか]らない、と文句を言う。
 国語という教科の、考えて読む文章に向き合うとき、思考0%の個人語を捨てよ。そして、それぞれの言語の種類を見極め、違いを認識し、深く考えて読む思考言語へ脳内翻訳せよ。現代文は英語と同じ勉強法である。単語の意味・文法・解釈だ。辞書を引かずに英語を勉強する者がいないように、現代文でも辞書は必携。言葉の意味が解らないのに、文章の内容が解るはずがない。単語の意味をおさえたら次は、解釈である。この訓練に最適な教材が新聞だ。新聞の記事言語と見出し言語の相関関係は、そのまま試験の本文言語と選択肢言語のそれと重複する。また、記事は冒頭に重要事項がまとめられるが、評論文も同じ文章構造である。具体例に惑わされず、どの部分を集中的に確認するのか、記事の本文からなぜこのような見出しが生み出されたのか。整理記者の頭脳活動をなぞりながら読むとき、それはそのまま有効なセンター試験の評論文対策となっていることを得心してもらいたい。特に苦手とする人が多い、内容合致問題に対しては有効な対策となり得ると断言できる。
 (静岡市立高・実石克巳)

ニュース選ぶ基準とは

2011年11月20日(日)付 朝刊


 「犬が人にかみついてもニュースにならないが、人が犬にかみつけば立派なニュースになる」という言葉があります。世界各地で日々起きている無数の出来事の中で、どのようなものが新聞記事になるのでしょうか。
 以前、東京にある新聞社で作る「新聞編集整理研究会」がニュースについて話し合いました。そこでは、ニュースを選ぶ基準として、①新しさ②人間性③社会性④地域性⑤記録性⑥国際性を指摘しました。
 新聞は、半日サイクルで新しいニュースを伝え続けます。時には、他の新聞社が取り上げない重要なニュースが紙面を飾ることがあります。世の中の出来事の多くは、人と深く関わっています。そこに関わった人々の人間性あふれる生き方は、読者の胸を打ちます。
 社会的な影響力や読者の関心があること、時代を反映した出来事ほど、大きなニュースになります。また、同じ出来事であっても、自分の住む地域で起きた場合と遠くで起きた場合とでは、受け止め方が違います。ニュースは、読者との関わりの度合いが重要になるのです。
 紙面になったニュースは、何度も読み返したり、保存したりすることができます。記事を保存しておくことで、ニュースを知るだけでなく、資料として役立てることもできます。
 グローバル化が進む今、環境や人口問題など、多くの出来事は地球規模で考える必要が増し、ニュースの国際化は増すばかりです。
 紙面を飾る記事が、どんな基準で選ばれたか考えるのもおもしろいですね。
 (浜松曳馬小・山崎章成)

「社会参画」高める窓口

2011年11月13日(日)付 朝刊


 「未成年者でも政治に参加できる!」と教えてくれた新聞記事があります。「歩きたばこ禁止条例」の成立に努力した静岡市の大石悠太君の記事です。
 今、積極的に社会に参画し、よりよい社会を築こうとする子どもの育成が求められています。しかし、いくら「社会参画の意欲をもて」と言われても簡単にはできません。どこにどう働きかけたら自分の願いが実現していくのかの道筋、つまり社会に参画する方法を学ぶ必要があります。
 この道筋を具体的に示し、勇気を与えてくれたのが大石君でした。大石君は、自分の考えた「たばこの害がない、よりよい社会」を単なる願いで終わらせませんでした。自らのぜんそく発作の経験を踏まえた受動喫煙の研究をもとに、小学校時代から署名・請願などの活動で周囲に働きかけました。そして、中1の時に「歩きたばこ禁止条例」の成立(平成16年)にこぎつけたのです。
 社会に参画する意欲をもつためには、まず社会を知ることです。その窓口の一つが新聞です。新聞を通して社会の風を感じ、「教室で学んだことが現実の社会で起きている。自分にできることもあるのではないか」という意識が高まっていきます。
 この学びは、静岡県が目指している、「未来をひらくため、よりよい社会づくりに参画する有徳の人づくり」に直結するものではないでしょうか。
 (焼津大村中教頭・矢沢和宏)

連載企画、生徒に好評

2011年11月07日(月)付 朝刊


 各教科や特別活動の目的に即した企画連載が始まったら、スクラップしておき、授業で役立てたいものである。
 例えば、静岡新聞の連載記事「M9・0 東日本と東海地震 ゼロからの出発」。「歴史津波に学ぶ」シリーズは、県の調査結果を基に、古文書等による安政東海地震の津波被害を紹介した。授業で生徒たちに紹介したところ、好評だった。
 生徒は東日本大震災のニュースを見聞きしており、大津波の被害の恐ろしさを知り、来るべき東海地震でも津波が発生することを心配し、これに対して備えなければならないという意識が強い。そのための情報を得たいと思っている。そこへ、身近な地域の過去の津波被害を取り上げたこの特集コーナーは、時宜を得たものであったと言えよう。企画連載は、大きな事件などの後でそれをテーマに掲載されるので、生徒が大事件の後、詳しく「知りたい」と考えているとき、その気持ちにマッチしたタイミングで掲載されることも好評である要因なのだろう。
 企画連載は、他の記事と違って目立つ。「カット」と呼ばれる、目立つ小タイトルがつけられており、お気に入りの企画連載を探すのは容易だ。そして、多くの連載記事は四角枠で囲まれ、切り抜き作業が簡単でスクラップしやすい。臨場感を持った現場描写や、感情を、ストレートに書かないがにじませた文章表現、署名入りであることも親しみを感じさせる。
 新聞を読む習慣が身についていない生徒たちも「読みたい」と感じる記事を、選択して紹介していきたい。
 (静岡中央高・吉川契子)

社説読み小論文の練習

2011年10月30日(日)付 朝刊


 作文と小論文は、どこが違うのか。まず、作文は感情や感覚などフィーリングを重視する。感じたことや思ったこと、感想をそのまま文章にすればよい。つまり、作文には理由がいらないのだ。それに対し、小論文は理由・根拠を挙げ、それを基とした考察が為されなければならぬ。さらに、文章の構成も結論・根拠・結論の換言という三段論法で、これはまさに新聞における社説の文体なのである。
 例文を挙げよう。
 ▼私はJ先生が嫌いだ。大嫌いである。近寄っただけで鳥肌が立つ。見るだけで虫酸が走る。とにかく感覚的に嫌なのである。
 ▼J先生は教員として失格だ。何故ならば、女の子ばかりをヒイキする。つまり、J先生は良い教員とは言えないのである。
 二つの文章の違いが分かるであろうか。
 作文の方は一切の反論ができず、そこで議論は終了してしまう。いくらどうしようもないJ先生だって、どこかにほんのわずかくらいは良いところがあるんじゃないの、とかばっても、「それでも私は嫌い」と言われたら、オシマイである。一方、小論文のほうは異なる見方ができる。ヒイキされた女の子の側から見れば、成績アップとなる訳だ。つまり、具体例から考察を経て導き出される結論=論理があり、違う視点からのアプローチが可能で、内容に発展性があることが小論文といえる。以上の点を念頭に置いて、新聞記事を読んでみよう。社説などは、特に小論文そのものの構成になっているはずだ。文末表現を参考にしながら、社説を読み込んで小論文の練習に取り組もう。
 (静岡市立高・実石克巳)

自分なりの切り抜きを

2011年10月23日(日)付 朝刊


 新聞には、学校の授業や日ごろの生活に役立つ記事がいくつも載っています。そんな記事を、スクラップしておくと便利です。スクラップする際は、新聞社名と発行年月日、朝夕刊のいずれかを必ず記録しておきましょう。スクラップの主な方法としては、次のようなものがあります。
 一つ目は、日々の新聞から気になる記事や役立ちそうな記事を切り抜き、スクラップするものです。切り抜いた順にスクラップブックに貼っていくのが一般的です。教育や環境、歴史等、ジャンルごとにスクラップブックを分けておくと、記事を見返すのが容易になります。
 二つ目は、一つの出来事について記事を集めてスクラップするものです。出来事の発端から結末まで見わたすと、その出来事について深く考えることができます。
 三つ目は、切り抜いた記事を読んで感じたことや考えたことを記入するものです。毎日一つ記事を選び、自分の思いを綴[つづ]っていくと、記事を通して社会のさまざまな動きを学ぶことができます。
 四つ目は、特集記事や解説記事をスクラップするものです。記事が集まると、手製のデータベースを作ることができます。
 スクラップブック以外に、記事を貼った台紙をバインダーで閉じる方法があります。必要な記事を取り出しやすく、集まった記事を分類し直すのに便利です。また、記事を台紙に貼らずにクリアファイルに入れるのも一つの方法です。
 (浜松曳馬小・山崎章成)

前向きな生き方"凝縮"

2011年10月16日(日)付 朝刊


 新聞には必ず「人」が登場します。「多くの人の生き方と出会うことができる」という意味で、新聞には読書に勝るとも劣らない魅力があると思います。さまざまな分野で活躍する人の充実した生き方を、タイムリーかつ簡潔に紹介してくれているのです。
 「人」を紹介する新聞のコラムには、夢や喜び、生きる上での努力や工夫がつまっています。最近のコラムでは、「もったいないを広めたマータイさん」「77歳ヨット8度目世界一周の斉藤さん」「わさび火災警報装置を開発した田島さん」などが目を引きました。
 コラムだけではありません。ニュース記事やスポーツ記事にも、結果だけでなく、結果に至るまでの努力や苦悩などの過程が詳しく書かれています。
 例えば、女子サッカー「なでしこJAPAN」の活躍に、勇気を与えられた方も多いのではないでしょうか。私自身、彼女たちの記事を読んで、日本人としての新たな価値観を示してくれたのではないかと感じました。それは、周囲に感謝しながら、目立たなくともひたむきに目標達成を信じてあきらめず、そして、悲壮感とは無縁に、楽しみながら世界の頂点を目指した、誇り高い生き方です。
 時には、「人の生き方から学ぶ」という目的を持って新聞を読むことをお勧めします。特に、地方版には身近な人を紹介する記事が数多く載っています。新聞の再読性・保存性を生かして、記事とじっくり向き合い、豊かで前向きな生き方を発見する喜びを味わってみてください。
 (焼津大村中教頭・矢沢和宏)

難解な研究を易しく解説

2011年10月09日(日)付 朝刊


 今年もノーベル賞受賞者が発表される時期になりました。毎年この時期になると、日本人科学者がノーベル賞を受賞されるかどうかに関心が高まります。
 日本人科学者がノーベル賞を受賞されると、新聞各紙は大きく取り上げます。私の担当する理科の授業でもそれらを取り扱います。受賞理由となった研究の内容をわかりやすく説明し、受賞者の人柄を紹介する新聞記事に、生徒たちは興味を示します。
 スポーツ選手が目標に向かって最善の努力を積み重ねる姿勢は、新聞記事でもしばしば取り上げられ、多くの人の感動を呼びます。ノーベル賞を受賞される科学者のお人柄もクローズアップされますが、研究に情熱を注ぎ、努力される姿は、スポーツ選手に抱くのと同じような感動を生徒に与え、生き方指導にも活用できます。
 生徒は人柄にまず興味を示します。しかし、ノーベル賞の研究内容は難解で、それを理解することなど、生徒たちには難しいのではないか、という先入観を持たれる方もあるかもしれません。ところが、日本人のノーベル賞受賞は世間から注目されるからか、最近の新聞記事では、難しい理論もきれいなカラーのイラストや写真を用いて、わかりやすく理解しやすいように工夫して表現されています。ノーベル賞を伝える新聞記事を読んでいた生徒が、自主的にイラストを紙に書き写し、研究内容を理解しようとしたことがあります。
 ノーベル賞の研究を、新聞記事を利用して授業で紹介するときには、新聞記事の記述を補って生徒にわかりやすい言葉で解説しています。そして、その研究の内容が、理科の教科書のどの部分と関連があるのかを説明し、生活との関わりについても言及します。私たちの日常生活は、科学の恩恵を受けて成り立っていること、それは基礎的な理論を積み重ね、研究を深化発展させた結果であることを確認させて、普段の授業への興味と意欲を高めたいものです。
 (静岡中央高・吉川契子)

文章生む力こそ第一歩

2011年10月02日(日)付 朝刊


 コラムを書き写すな!と、声を大にして言いたい。考えてもみよ、受験生諸君。いくら名文とはいえ、他人の文章をただ書き写すだけで文章力がつくはずがなかろう。断っておくが、私はコラムの筆写そのものを否定しているのではない。大学の小論文入試が要求している文章力はつかないと言いたいのだ。
 何故[なぜ]ならば、何ら思考せずに文を書き写しても小論文に必要な論理構成力・独創的発想は身につかぬ。文章を生み出す苦しみこそが、実力養成の第一歩と考えよ。次にコラムと小論文では文体が異なる。小論文は冒頭に結論を置くことが鉄則だが、コラムは結びでの話題転換や余韻の妙を良しとするではないか。さらに、書写は文を見た瞬間からいきなり清書し始めてしまうものだ。だが、これは小論文執筆では最も忌避すべき姿勢だ。必ずアイデアの構成メモを書き、順番を整理してから書きださなければならない。
 だいたい、コラムは文章の達人とも言える人が豊富な知識・体験を駆使しての文章だ。膨大な量の受験勉強をしながら、緊迫した入試会場で初めて読んだ問題を元に要求される文章と、根本的に異なることは自明の理であろう。
 では、今行うべき対策は何か。まず、五月までさかのぼって自分の進路に関連する記事を読み込み、基礎知識を獲得せよ。そしてとにかく書いてみることだ。もし、どうしても文が書き出せない場合は、社説の文章構造を参考にすること。主張内容・文末表現・実例引用法を、そのまま自分の書かねばならぬ内容に当てはめて書いてみよう。過去問は、できれば十年分は確認したい。

(静岡市立高・実石克巳)

写真からも多くの情報

2011年09月25日(日)付 朝刊


 「すぐれた一枚の写真は、百行の記事に値する」という言葉があります。「優勝を喜び合う〝なでしこジャパンイレブン〟」や「東日本大震災の被災の様子」など、印象に残っている写真は、だれにでもあると思います。記事を読めない幼児や小学校低学年の子供でも、写真を見ると、何を訴えているのか気付くことがあります。
 今日の新聞をめくり、どんな写真が載せられているか調べてみましょう。
 新聞の写真は、多くの場合、人を入れて撮られています。写真に動きが生まれ、写真の中に写っている物の大きさを理解する手がかりになるからです。事故現場の写真の場合は、どんな危険がある場所か、事故はどの程度かなど、できるだけ多くの情報を写すようにしています。また、写真には、絵解きといわれる説明文が付いています。写真を理解しやすくするために、人物の名前やどこで起きたことかなど、写真だけでは読み取ることができないことを言葉で補っています。つまり、写真と絵解き、見出しを見れば、記事のおおよその内容を把握することができるのです。
 なでしこジャパン優勝を伝える写真は、その試合を象徴する瞬間として沢選手がトロフィーを掲げる表彰式が撮られ、東日本大震災の写真では被災地で復興に力を尽くす多くの人の姿が撮られています。
 写真を見ることで、その記事で最も言いたいことを理解することができると思うと、新聞を読むことが楽しくなってきませんか。
 (浜松曳馬小・山崎章成)

中まで開いて味わって

2011年09月18日(日)付 朝刊


 「やさしいNIE」について、さまざまな場でお話をする機会があります。教員だけでなく、ご高齢の方や主婦・子育て中の方など、実にさまざまなみなさんを対象に、「新聞活用のおもしろさや楽しさ」のお話をするのです。その時には、新聞の特徴をより深く理解してもらうために、いつもゲーム的な要素を取り入れています。
 「見出し・しりとり」もその一つです。5、6人のチームで、新聞記事から切り抜いた見出しをしりとりができるようにたくさん並べて、勝敗を競うのです。誰もが夢中になって取り組みます。
 中でも、最も興味をもって取り組んでくれるのが、「喜怒哀楽の記事集め」です。まず、「喜怒哀楽のうち、最も多いのはどれに関係する記事だろうか」と問いかけます。多くの方は、トップ記事に事件・事故の記事が多いというイメージから、「怒」や「哀」に関係する記事が多いだろうと予想します。しかし、実際に自分たちで記事を集めて比べてみると、意外にも「楽」や「喜」が多くて、みなさん驚くのです。
 新聞には、「ハッピーニュース」がたくさん載っています。そこには、現実に生きている人たちの夢や希望、努力がつまっています。これは新聞の大きな魅力の一つです。トップ記事だけでなく、新聞を「中まで開いてじっくりと味わう」ことをお勧めします。きっと、新聞を毎日読みたいと実感させてくれるニュースに出会えることと思います。
 (矢沢和宏・焼津大村中教頭)

災害記事から注意喚起

2011年09月11日(日)付 朝刊


 台風12号により紀伊半島が豪雨災害に見舞われ、本県でも安倍川の川岸が削られたり、土砂災害により集落が孤立するなどの被害が発生した。被災された方々にお見舞いを申し上げます。
 四季の変化は日本人の暮らしに豊かな恵みをもたらしている。その一方で、梅雨時の大雨や台風などの激しい気象現象は、河川のはん濫や土砂災害などを引き起こし、人々の生活や生命を脅かす。
 激しい気象現象により社会生活に大きな影響をもたらす災害が発生した場合、被害を伝える新聞記事を教室に掲示したり朝の会で取り上げたりして、気象災害への注意を喚起したい。
 気象災害は梅雨時や台風の襲来する時期に発生しやすい。理科の授業で天気を学習する前なら予習となり、学習後なら復習となる。
 総合的な学習の時間や、特別活動の題材として取り扱う方法もある。新聞記事を読んだ後、被害を未然に防ぎ、軽減するための対策を考えさせても良いだろう。テレビ・ラジオ・インターネットの防災気象情報について調べさせたり、地域に発生した過去の気象災害について調べるなどの展開も考えられる。
 本県では過去、狩野川台風災害があり、その後も台風により深刻な害を被ってきた。児童生徒には、気象災害のニュースが自分の生活と無関係でないことを、機会を捉えて伝えたい。教科書との関連、授業の年間計画や児童生徒の発達段階に応じて指導方法を工夫したいものです。
 (静岡中央高・吉川契子)

未来切り開く「静岡力」

2011年09月04日(日)付 朝刊


 静岡県人ならば、静岡に詳しいことは必須条件である。地域力は、今や有力な自己ピーアールの手法なのだと考えよ。もちろん観光案内をするのではないので、自分の将来の進路に、どの記事がどのように絡められるのかを模索しながら読まなければならない。また、一見何の変哲もない記事が、どこでどのように関連づけられるのかは全く予測不可能なので、いざというときのために頭の引き出しに入れておくという意識も必要だ。NIEはこの付加価値性に優れた教育方法であり、スローフード的に学習効果が現れると認識しておこう。
 さて、その地域力、すなわち我々の「静岡力」に威力を発揮させるための記事の読み方は、以下の通り。すなわち静岡独特の文化や産業、自然、特産物を複数組み合わせ、己の進路に結び付けて思考せよ、ということだ。例えば、県立大学薬学部とお茶などは良い例であろう。お茶の成分を薬に活かせるならば、伊豆の温泉と毛生え薬があっても良いかもしれない。
 これらの「静岡力」の組み合わせは、突飛で通常ならば人が考えも付かないような内容が理想だ。その組み合わせを自分の進路といかに関連付け、いかにオリジナリティーを創成するかを考えつつ記事を読む必要がある。「静岡力」こそ自分の未来を切りひらく最大の武器と考え、日本だけでなく世界を相手に戦えるアイデアのツールとして獲得すべきではないか。新聞には、そのような人生のヒントが満載されているとしたら、徒[あだ]や疎[おろそ]かに読むことはできないはずだ。
(静岡市立高・実石克巳)

記録するための必需品

2011年08月28日(日)付 朝刊


 新聞記者が取材に出かけ、そこで得たことを正確に記録したり、記事に書いたりするための必需品を紹介します。これらは、子供たちが自由研究や調べ学習をするときの参考になると思います。
 ①携帯電話 取材先や新聞社と連絡を取る時に使います。取材した内容や写真を新聞社に送るのにも役立ちます。
 ②デジタルカメラ 取材にカメラマンが同行しないときは、記者が写真を撮ります。
 ③ICレコーダー インタビューしたことをもらさず記録することは、正確に記事を書くために重要なことです。取材先で目にした資料や感じたことを音声にして記録することにも使われます。
 ④パソコン 取材した内容や写真を新聞社に送ったり、情報を得たりするために使います。ほんの数分前まで取材していた記者がパソコンに原稿を入力し、そのまま新聞社に送ることもあります。
 ⑤ペン・メモ帳(ノート) 取材した内容を記録するのは、ペンとメモ帳が基本です。取材相手の表情や取材を通して感じたことなど、IC機器では記録できないことも多くあり、筆記用具は手放せません。
 ⑥腕章・記者証 取材先だけでなく、周りの人にも記者としての身分を示すことは取材を円滑に行うために重要です。
 取材を成功させるために、だれに何を聞き、どんな写真を撮るか等、事前に考えておく必要があります。そのために、取材に行く前に下調べをしっかりし、分かったこととさらに知りたいこと、疑問に思ったことを整理しておくことも大切です。
(浜松曳馬小・山崎章成)

比較読みして相互交流

2011年08月21日(日)付 朝刊


 7月の水泳世界選手権200メートル平泳ぎ、「北島康介選手の銀メダル獲得」を皆さんはどう受け止めましたか。
 「北島 銀 復活への序章」、「北島 失速 銀」。どちらもこの事実に関する新聞記事の見出しですが、新聞によって見出しや写真などの表現の仕方がずいぶん違いました。
 よく吟味された新聞の情報ですが、記者が意図を持って書き、新聞社が目的を持って編集していますので、新聞によって伝え方は違ってきます。そのため、一つの情報を鵜呑[うの]みにしないで、「比較読み」することが大切です。あふれる情報に振り回されやすい時代だからこそ、「比較読み」によって情報を選択・整理し、批判的・批評的に読み取ることは大切な能力になってきています。
 それに加えて、まったく同じ記事でも人によって、その情報の受け取り方はさまざまです。そこに、仲間の考えを聞き、自分の考えを確かめる「相互交流」の必要性が生まれてきます。
 このように、主体的に情報を読み解き、さらに、それを自分のものにして発信する「活用的読解力」の育成には、新聞の活用が大いに役立ちます。新学習指導要領の柱である「言語活動の充実」にも結びつく学びです。
 もちろん、「活用的読解力」を身に付けるには、新聞の「比較読み」だけではなく、テレビ、インターネットなど他のメディアとの比較も大切です。そうすることにより、新聞を活用するよさや新聞の役割もより明確になってくると思います。
 (焼津大村中教頭・矢沢和宏)

要点集約授業に便利

2011年08月14日(日)付 朝刊


  私は、担当する理科の授業で、学習内容に関連する新聞記事を紹介している。新しい記事のみでなく、過去にスクラップした記事を用いることもある。
  例えばこの6年間、毎年授業で提示しているのが、2006年8月、国際天文学連合の総会決議で、冥王星が惑星から除外されたことを伝える記事だ。
  観測技術の進歩により、冥王星と似たような星がたくさんあることがわかってきた。それらを惑星と認めると、惑星が増え続けることになる。議論して惑星の科学的な定義を定め、採決した結果、冥王星は惑星でなくなったのである。
静岡新聞は、同年8月25日、「冥王星、惑星から除外」と報じた。カラーのイラストと表をつけ、惑星の定義骨子を左下に配し、短時間で要点がつかめるようまとめられている。
  地学の授業では、太陽系の惑星を説明する単元がある。「惑星は『水金地火木土天海冥』の九つ」と覚えてきた生徒も多い。「惑星は八個になった」と結論を教えるだけでなく、いつから、なぜ、そうなったのかを知らせたい。新聞のレイアウトは工夫されており、限られた授業時間の中で、生徒に説明する資料として便利である。
(静岡中央高・吉川契子)

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決断力養う"経営戦略"

2011年08月07日(日)付 朝刊


 NIEは短期と長期の目標を設定し、それぞれのスパンのテーマに応じた実践をしなければならない。やみくもに行き当たりばったりの新聞記事利用ではなく、実践する自分にとってどのようなメリットがあるかをあらかじめ模索し、実践した結果を最大限に有効利用するのだ。新聞を前より読むようになった、などというような漠然とした効果を強調したところで、NIE実践が推進されるわけがないだろう。事実を客観的に伝える文章力を身に付ける、広範な知識を獲得できる、など具体的な成果を明示し、現実社会で実際的に役立つことを証明してこそ、広まるのである。つまりは、経営戦略を持ってNIEを行わなければならない。教育戦略・あるいは学習戦略と言い換えても良かろう。受験勉強とは自分の人生の経営戦略立案に他ならず、NIEはその人生を経営する上での単なるツールにすぎない。しかし新聞という情報ツールをうまく使いこなすことは、社会生活を営む上での必要事項である。何故ならば、知らないということは悪であり、情報を持たないということは民主主義社会においては決定的に損だからだ。ただ、現在は情報過多の状態になっており、これは情報不足よりも深刻だ。重要な情報が埋もれ、活用できない状況に陥っている。
 今後、将来を担う人材の条件として、膨大な情報の中から必要なものだけを取捨選択し、迅速な決断をする能力が要求されるだろう。NIEは面倒であるが、そのような必ず必要となる能力を獲得できるメリットがある。ならば当然、実践すべきなのではないか。
 (静岡市立高・実石克巳)

素材に着目、自由研究に

2011年07月31日(日)付 朝刊


 新聞を使った自由研究の例を紹介します。
 一つ目は、テーマを決めて記事を切り抜き、考察を加えるスクラップです。集めた記事を読み直すことによって、「なぜ事件が起きたのか」「自分の生活とのかかわりは何か」など、思いを巡らし、記事と一緒に自分の考えを書き加えることで一つの研究になります。
 二つ目は、写真の活用です。スポーツ面や社会面を見ると、記事を読まなくても、写真を見るだけで何を言いたい記事なのか予想がつくものがあります。そんな新聞の写真の撮り方を生かして、デジタルカメラを使い、興味のあることについて取材するとおもしろいと思います。
 三つ目は、広告の分析です。曜日ごとに多く載る業種があったり、読んでほしい人の性別や年齢層に違いがあったりすることに気づくと、なぜそうするのか興味がわきます。また、旅行の広告の中には国内よりも海外に行く方が安い例が見つかるなど、研究したいことが見つかるかもしれません。
 四つ目は、4コマ漫画です。起承転結がはっきりしていて小学生でも読み取ることができる漫画を探しましょう。そんな漫画に、題をつけたり、台詞[せりふ]の一部を考え直したり、5コマ目を作ってみたりすることで、研究の手がかりを見つけることができます。
 この夏休みに、新聞を生かした自由研究に取り組むことができるといいですね。
 (浜松曳馬小・山崎章成)

「逆三角」と「起承転結」

2011年07月24日(日)付 朝刊


  新聞を利用して、「わかりやすい文章」や「読者の興味を引く魅力的な文章」を学ぶのも、効果的な『やさしいNIE』の一つです。
 まず、「わかりやすい文章を書く」ためには、新聞記事の逆三角形の構成(見出しで結論を先に示し、その後で理由や説明を書く)が参考になります。自分の言いたいことをより明確に相手に伝える書き方を新聞記事から学ぶのです。
 また、「読者の興味を引く魅力的な文章を書く」ためには、新聞のコラム(筆者の意見・考えが入る部分)や四コマ漫画が利用できます。人を引きつけるために、「起承転結」を意識して書くのです。
 私は、よく四コマ漫画を使います。まず、出だしで「何かな?」と疑問をもたせ、「そのことか」と思わせた後、「えーっ」と驚かせ、最後に「落ち」を付けて、「なるほど」と納得させる。このパターンに当てはめて書く練習をすると、子どもたちはすぐに四コマ漫画の見方が上達し、「この四コマ漫画は起承転結がはっきりしていておもしろいね」「これは、人を引きつける構成がもう少しだね」などと評価できるようになります。
 新聞記事のように「逆三角形」で伝えるか、四コマ漫画やコラムのように「起承転結」で引きつけるか、TPOによって使い分けることが大切です。新聞への投書もそれぞれの良さを生かして書くよう指導していますが、この練習は、プレゼンテーションやスピーチの上達にもつながっているように思います。
(焼津大村中教頭・矢沢和宏)

夏休みは家庭で楽しく

2011年07月17日(日)付 朝刊


 子供たちが楽しみにしている夏休みが始まる。新聞学習の家庭での実践を「ファミリーフォーカス」と呼ぶ。夏休みは「ファミリーフォーカス」の絶好の機会である。
 夏休みに広く社会のことに眼を向けて欲しい。社会の様々な分野のニュースを幅広く扱っている新聞はそのための教材となる。普段子供さんが読んでいない記事にも目を向けさせたい。ただし、最初から難しい記事を読ませるのでは長続きしない。手始めに子供さんの興味・関心・理解力に応じてテーマを決めて、家族に報告する係を担当させてはいかがだろうか。
 朝刊の配達予定時刻を子供さんに知らせておく。例えば「朝○時頃に朝刊が配達されるから、○時の朝ご飯までに○○(テーマ)のことを捜して教えてね」というように依頼する。
 「新聞のトップ記事」「今日の予想最高気温」「季節の写真」など、取り組みやすいテーマから始める。様子を見てテーマの難易度を下げたり、習慣が身についたら難易度を上げるのも良い。
 夏休み中、子供たちは生活のリズムを崩しがちだ。朝刊読みを一日のリズムに入れることは、規則正しい生活を送るためにも効果的だ。子供さんが忘れている時はさりげなくユーモアを交えて催促しよう。
 口頭で報告させるだけでなく、スクラップしたり、カレンダーに簡潔に記録させたりするなど様々な工夫をすると楽しい。テーマ以外の記事に子供さんの興味が広がってきたら、家族で話題にすると良いだろう。
 楽しく取り組むためには実体験と組み合わせることが効果的だ。テーマにこだわらずに新聞に報じられた自然現象の観察や行事の見学なども取り入れて、思い出深い夏休みを。
 (静岡中央高・吉川契子)

自己評価と相互評価を

2011年07月10日(日)付 朝刊


  新聞を利用して学習活動を行った場合、スクラップ作りにせよ発表にせよ、必ず必要になるのが評価だ。教員の評価を児童・生徒が確認する前に、自己評価をさせよう。客観的に自己を捉え、相対的に己を評価する活動は今後ますます重要となってくるに違いない。

 次に、生徒同士が行う相互評価を挙げる。学習内容でいかに友人を判断するか。評価にはどのような責任を伴うのか。評価することの重みを、身をもって経験することも重要な学習の一環である。以上のように多面的な基準で評価を行い、児童・生徒の普段の授業とは異なる、新たな可能性を見いだしてみよう。
  今回は評価する際の規準例を、案として提示する。
(静岡市立高・実石克巳)

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視野広がる一覧性魅力

2011年07月03日(日)付 朝刊


 新聞の魅力の一つに、一覧性があります。
 新聞を、一面から最終面までめくってみましょう。一面は、その日のニュースの中で重要なものを集めています。紙面に限りがあるため、大きなニュースになると、他の面に関連するニュースが書かれることもあります。記事のリード文の終わりに「関連記事2、3面へ」などと書かれている場合は、その面を探すと関連する記事を読むことができます。
 2面以降を見ると、「総合面」「国際面」「経済面」「特集面」「スポーツ面」「番組面」「地域面」「社会面」など、ニュースがジャンルごとに分けられています。それぞれのニュースは、記事の量や見出しの大小、写真の有無などによって、事件や事故の大きさが一目で分かります。
 新聞をまるごと見渡すと、世の中では様々な事件や事故が起きていることに気付きます。そうした出来事の多くは、それまでの自分にとって未知の世界でのできごとです。紙面を見渡すことで、今まで知らなかったことに気付き、視野を広げ、新しい世界を知ることができるのです。それこそが新聞の一覧性の魅力です。
 一面から最終面まで、大きな見出しや写真に目を通し、これはと思うニュースを探してみてください。そうして出合った気になるニュースは、記事をじっくり読み深めていきましょう。新聞は、小説などとは違い、どの面のどの記事からでも読むことができる情報の宝庫です。
 (浜松曳馬小・山崎章成)

新聞投書、反響にやる気

2011年06月26日(日)付 朝刊


  『やさしいNIE』では、スクラップした記事について自分の考えや提言などを発信することも重視しています。発信先(相手)や発信目的、発信内容などを明確にして発信すると、子どもの学ぶ目標が明確になり、学ぶ意欲も増大します。また、発信先からの反応があり、さらに考えが深まります。
 校内での発表や掲示、家庭での会話などの発信方法もNIEには効果的ですが、私はあえて新聞紙面に投書し、社会からの反響を問うように勧めています。投書が採用されれば、多くの人から声をかけられ、認められ、最高の自己肯定感を味わえます。さらに、その投書に関してやりとりが続くおもしろさもあります。
 例えば、エコキャップ運動の大切さを訴えて採用された中学生の投書に対しては、「自分にもできそうな福祉活動を教えてくれてありがとう」と、小学生が投書を返してくれました。また、津波警報を甘く見ないよう投書した中学生には、県の危機政策課からの返答がありました。
 子どもの投書の内容には、参考になることが実に多くあります。子どもの視点から社会を見ると、大人には気づかないことが見えてきますし、大人ができないと始めから決めつけていることが恥ずかしく思えることもあります。これも、NIEの大きな成果の一つではないでしょうか。
(焼津大村中教頭・矢沢和宏)

新聞作りで思考力養う

2011年06月19日(日)付 朝刊


 昨年夏は記録的な猛暑であった。担当する授業で、「猛暑」をテーマに共同のスクラップ壁新聞作りの授業を実施した。生徒の活動は次の通りである。

 [1]「猛暑」の記事の選択、収集(スクラップ)
 [2]新聞記事の分類
 見出しを基に四つの小テーマを決め、スクラップがいずれに属するかを検討し、分類した。
   ① 記録的猛暑の気温・猛暑のメカニズム
   ② 猛暑が動植物に与えた影響
   ③ 猛暑が社会経済に与えた影響
   ④ 猛暑の緩和策
 [3]新聞記事の整理・読解
 小テーマごとに、分担を決め、記事を画用紙に貼り付けた。興味を持った箇所に線を引いて記事を熟読し、見出し・感想を手書きした。
 [4]壁新聞の完成と展示
 最後に、全ての画用紙を貼り合わせると、猛暑についての大きな壁新聞が完成した。静岡県中部高等学校定時制通信制生徒合同文化祭(平成23年1月28日・グランシップ)に展示出品した。

 生徒たちは猛暑を体験していたが、この一連の作業以前には原因を知らず、緩和策を考えていなかった。新聞を読み、猛暑の広範な影響を知ると、発展的な内容である「猛暑のメカニズム」に興味を抱き、猛暑の緩和策も真剣に考えた。展示により、校外にも考える材料を提供できた。
 現代的な課題の解決に必要な思考力を養う上で効果があった一例である。

(静岡中央高・吉川契子)

情報の取捨選択が重要

2011年06月12日(日)付 朝刊


  前回の戦略的スクラップノートに関して、多数の問い合わせがあったので図で示す。しかし、この図の通りに書いても意味はない。創造的なノートとは、他人から聞いて創るものではないだろう。自ら思考せず、すぐ人に聞こうとする他力本願的な姿勢については、猛省を促したい。
  NIEとは、自ら情報の取捨選択をし、クリティカルシンキングの後に独自性を発信することが、テーマのひとつだ。左記の図を下敷きにして、新しいタイプのスクラップノートを自ら手で作り上げてもらいたい。そして、自らの向上のためにどう努力したらよいのか、希望をかなえるためには何をしたらよいのか、自分を見つめ直してNIEに取り組んでみよう。
(静岡市立高・実石克巳)

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編集のノウハウを活用

2011年06月05日(日)付 朝刊


 教育に新聞を活用する三つの方法を紹介します。
 一つ目は、新聞記事そのものの活用です。教師や子どもが新聞記事を学習に生かしたり、保護者が子育てのあり方を学んだりすることなど、新聞活用の王道です。日々の出来事を伝える新聞記事を、タイムリーにその日に学ぶ授業で使うことは難しいため、記事を切り抜いて保存しておくことをお勧めします。
 二つ目は、新聞編集のノウハウの活用です。新聞記事を発行するために、情報を収集・選択し、分かりやすく編集、素早く発信する一連の活動は、教育の現場でも大いに役立ちます。新聞記者の取材のノウハウは、子どもたちの調べ学習に生かすことできます。取材記者だけでなく、カメラマンの仕事も、紙面のレイアウトを考える記者の仕事も、子どもたちの学習に参考になることばかりです。
 三つ目は、新聞作りです。学校教育では、学習のまとめに新聞作りをすることが、どの学年でも何度となくあります。新学習指導要領の全面実施にともない、これからの新聞作りは逆三角形の構成や見出し、リード文の活用などを意識して、より分かりやすい表現方法を学ぶことになります。
 このように、NIE(教育に新聞を)は、学校の学びと子どもたちが実際に生活している今の社会とを結ぶ懸け橋になる魅力のある取り組みです。
 (浜松曳馬小・山崎章成)

自分と社会の接点実感

2011年05月29日(日)付 朝刊


 『やさしいNIE』の基本中の基本は、「スクラップ」です。気に入った新聞記事を切り抜き、ノートに貼り、新聞名、掲載日、感想・意見などを書き込みます。「スクラップ」というとアナログで時代遅れと思われるかもしれませんが、手作りだからこそ、おもしろくなって「はまってしまう」のです。
 「スクラップ」には、手と頭を使い、創り上げていく楽しさや情報を自分だけのものにしていく実感があり、それにより自己肯定感も高まります。加工や保存が容易で、何回も見直せるという新聞の特徴も生かせます。また、立ち止まってじっくりと記事を読み返すことは、通り過ぎていく情報が多いスピード時代では、かえって効果的で意味があります。
 私は、「かかわりスクラップ」と名付け、子どもたちに取り組ませています。新聞記事は社会と自分との接点を知る窓口です。「スクラップ」を続けると、「授業で学習していることは、実際に身近な社会でおきている、自分にもかかわることなんだ」と気づき、「自分と社会とのかかわり」を感じていくのです。
 子どもたちは様々なテーマをつくって記事を「スクラップ」します。「テーマが芸能やスポーツに偏る心配はないの?」とよく聞かれますが、心配はありません。子どもたちのつくるテーマは実に個性豊かで様々です。もちろん、スポーツや芸能の記事を集めても、そこから人の生き方や社会的な背景を考えたりするような奥の深いテーマづくりをします。
 次回は、この「かかわりスクラップ」をもとに自分の意見や提言を発信する『やさしいNIE』について紹介しようと思います。
 (焼津大村中教頭・矢沢和宏)

「理科」を生活に生かす

2011年05月22日(日)付 朝刊


 文系の進路を希望している生徒が、理科や数学の学習を怠ることがある。また、理系に進学を希望している生徒も、理科が日常生活のどの場面で利用されているかを考える、応用力に欠けている場合がある。
 文系・理系どちらの進路に進むにしても、誰もが自然の変化の影響を受け、理科の知識を応用して作られたものの中で生活している。だから、理科や数学の知識は皆にとって必要であり、またそれらの知識を活用すれば、賢く生活ができるものだ。
 新聞には理科に関係した記事がたくさんある。生徒が理科の授業で今までに学習したことや、これから学習することが、日常生活のどのような場面で活用されているのかを、確認させることができる。子供たちの学習段階に応じ、興味を持ちやすい記事を探し、継続的に紹介することを心がけると良い。
 例えば、季節の話題や気象災害など、四季の変化に応じた暮らしに関わる話題に着目させる。これらの記事とともに、天気情報(降水確率や最高気温・最低気温・天気図)を見ることを習慣にすると、子供たちは気象情報を上手に利用できるようになる。
 連日伝えられている東日本大震災の新聞記事。将来発生すると予想されている東海地震に対する備えをする上で、学ぶべきことが多くある。防災対策の重要性を説きつつ、地震の発生メカニズム、津波の特徴や被害などを、教科書の学習事項と関連づけて学ばせたいものである。
 (静岡中央高・吉川契子)

戦略的スクラップ作ろう

2011年05月15日(日)付 朝刊


 新聞を利用して推薦合格を狙うのならば、「戦略的スクラップ」を実施しよう。それには漫然と記事を切り貼りして自己満足に浸るのではなく、己の興味・関心がどのように形成されたかを明確にアピールできるスクラップでなければならない。
 具体的には、まず広い範囲の記事に関心を寄せ、徐々に集める記事を進路希望の分野に絞り込んでいこう。つまり、自分は好奇心旺盛な人間であるということ。どうしてその領域を追究したいと考えるようになったのか。以上2点が明確に伝わるよう、意識的にスクラップ帖を創造するのだ。
 次に記事を収集したら、内容についての考察を書き、必ず教員の添削を受けること。往々にして受験生は独善的意識に陥りがちなので、客観的な指導を受け是正する姿勢が望ましい。さらに添削を受けたら必ずリライト、もう一回書き直しをしてみよう。2度目に書いた文章の方がはるかに良いものとなっているはずだ。
 このように書きためたスクラップ帖は、推薦書類と共に送付してもらうよう担任にお願いする。その際、返却依頼を忘れないこと。貴重な思考の記録であり受験の武器でもあるので、真の理解者が現れるまで使い続けなければならない。
 ちなみに自分に都合の良い記事など、そうそう簡単にあるわけではない。不断の努力の継続性が推薦に値するのであって、簡単に検索できるネットでは武器になり得ないだろう。
 ここまでやって不合格にされたら、そのような見る目のない大学には進学しなくてよろしい。大学は学生を選ぶことができるが、受験生だって大学を選択できるのだ。
 (静岡市立高校・実石克巳)

5W1Hで文章簡潔に

2011年05月08日(日)付 朝刊


  小学校の低学年では「大事なことを落とさないように聞く」「簡単な構成を考えて文章を書く」ことを学習します。この学習に生きるのが、新聞の記述に用いられる5W1H。新聞は、いつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、何を(What)、なぜ(Why)、どのように(How)の六つの要素をおさえて、ニュースを正確に分かりやすく伝えています。この六つの要素を意識すると、何を言いたいのか分かりやすい文章を書くことができます。新聞記事のリード文は、伝えたいことの概要を5W1Hをおさえて書いているので、簡潔で分かりやすい文章になっています。
新聞記事の見出しは、5W1Hの中で重要なことを二つ以上盛り込むようにして作っています。そのため、読者は見出しを読むだけで、何を言いたい記事かを読み取ることができます。作文にどんな題を付けたらいいのか悩んだら、見出しの手法を真似することをお勧めします。
「新聞は小学生には難しい」と言う声を時折耳にしますが、新聞のもつノウハウは、小学校低学年の学びの基盤になっているのです。記事の全てを読めないからと新聞と距離をおくのではなく、それぞれの発達段階に応じた新聞の読み方を身に付けることが大切です。
※実際の新聞記事を読むと、「なぜ」等の要素が抜けていることがあります。これは、新聞は全てが把握されていない出来事も素早く報道するためです。
(浜松曳馬小・山崎章成)

新たな学びのきっかけ

2011年05月01日(日)付 朝刊


 私がおすすめする『やさしいNIE』は、誰でも簡単に取り組めて長続きします。その秘訣は、楽しむことにあります。無理に新聞を使うのでなく、新聞の特徴を生かしながら記事への関心を高め、学びの必然性の中で楽しく新聞を使うのです。楽しく学ぶ姿を認めほめ励ませば、子どもの学ぶ意欲に灯をともすこともできます。
 では、新聞のどのような特徴を利用すれば、このようなNIEができるのでしょうか。一覧性、網羅性、解説性、詳報性、記録性、携帯性、即時性、啓発性、再読性…など、新聞には数多くの特徴があります。その中から今回は、他のメディアと比較して際だった特徴でもある、新聞の「一覧性・網羅性」に注目してみます。
 新聞を開くと実に様々な分野の記事を一度に見ることができます。その記事には、内容が一目でわかる工夫された見出しやわかりやすい写真・資料が付いています。しかも、記事は真四角でなく、入り組んで配置されています。そのため、今まで自分が関心のなかった分野の記事も自然に目に飛び込んでくるのです。これが大切です。
 新聞は学びのあらゆる要素が詰まった宝箱です。関心のなかった分野も見ることになれば、新たな学びのきっかけができ、自分の可能性を広げることにつながります。私は常に「新聞を開くと未来が開く」と言っていますが、新聞は広げて眺めるだけでも意義があるのです。これも簡単で効果的な『やさしいNIE』の一つですね。
 次回は、新聞記事を自分だけのものにしていく「スクラップ」について紹介します。
 (焼津大村中教頭・矢沢和宏)

見出しや写真に注目を

2011年04月24日(日)付 朝刊


 新聞記事は基本的に、見出し、リード文、本文で構成されています。ニュースの内容を分かりやすくするために図・写真・グラフなどが添えられることもあります。子供たちにリード文や本文を、一言一句丁寧に読ませることは難しい場合もあります。新聞に親しませることを目的とする場合、まず最初は、見出しや図・写真に注目させるのも良いでしょう。
 見出しの大きさはニュースの価値の大きさを表します。例えば、大きな自然災害を報じる日の新聞の一面の見出しを、その前日の新聞の一面の見出しと比較してみると、違いの大きさに子供たちは驚くことでしょう。
 カラーで表現した分かりやすいグラフやイラストがあれば、見出しと、そのグラフ・イラストから、記事の内容の概略をつかむことができる場合もあります。子供たちには見出しとグラフに注目させ、周囲の大人が、分かりやすい言葉で解説すると、子供たちもニュースの内容を理解できます。
 子供たちは写真に興味を持つことが多いと思います。季節の花や風景、スポーツ選手の活躍の様子など、心を和ませたり、勇気づけられたりする写真を探してみると良いでしょう。読者の投稿する、季節だよりの写真・日常生活の何げない人と人との交流や地域のお祭りの写真などの中にも、心を打つ力作が寄せられていることがあります。授業で写真に注目させる場合、凄惨な事故現場など、刺激が強い写真の取り扱いは避けるように、十分配慮する必要があります。
 (静岡中央高・吉川契子)

説得力ある文章を習得

2011年04月17日(日)付 朝刊


  高校教育において新聞記事を活用する最大の目的は、ズバリ大学入試・入社試験対策であろう。特に、大学入試では新聞記事から小論文のテーマが出題されることが多く、約8割の国公立大学が導入しているという調査結果もある。
 これは単に暗記力のみの学力を測るのではなく、文章を正確に読み取り、自分の考えを分かりやすく書く能力を要求していることに他ならない。それには、日常的に自ら情報を求め、重要度に応じて取捨選択する。そして、思考の結果を適切に表現する訓練を行う必要がある。単に与えられた教材をこなす受け身の姿勢では、小論文入試には太刀打ちできないのだ。常に「なぜ?」という意識を持ちながら新聞を読み、自分の希望分野の知識を増やしていこう。説得力のある文章を書くためには、幅広い知識が必要であり、こればかりは一朝一夕で身につくものではない。
 入試で引用される記事は、5月から10月までのものが多い。希望の分野に関連する記事をスクラップし、新聞記事の文体をまねて説得力のある文章を書いてみよう。説得力のある文章とは、冒頭に自分が考えた結果、すなわち結論を最初に書いてしまうことだ。次に、何故そのように考えたかの理由と実際に自分が経験した体験例を補足しよう。最後にもう一回、結論を冒頭部分とは別な表現に変えて繰り返し、強調すると完璧だ。四つの段落を同じ字数でまとめると、構成のしっかりした文章となる。
 社説やコラムなどの文章構造が、このパターンの良いお手本となるはずだ。
(静岡市立高・実石克巳)

生活に役立つ学びに

2011年04月10日(日)付 朝刊


  小学校の学習指導要領に「新聞」に関わる扱いが多くなりました。「新聞」を学習することによって、生活に生きる学び方が身に付き、全ての教科領域に今までにない深まりと広まりを生むことができます。
 私のコラムの最初の話題として、新聞記事の「逆三角形の構成」を紹介します。一番大事なことを最初に簡潔に書き、その後に補説する文章形態です。一般的な文章は、物語文でも説明文でも結論は最後に書かれています。そのため、その文章が何を言いたいかは最後まで読み進めないと分かりません。その一方、新聞記事は、まず最初に結論を書きます。読者は、その結論に興味をもった場合、詳しく知るためにその後の記事を読み進めていけばいいのです。「逆三角形の構成」は、情報過多の社会の中で、知りたい情報を素早く見つけるのに大いに役立ちます。こうした構成を学ぶことで、冒頭で言いたいことをズバリと相手に訴えるプレゼンテーションの手法を身に付けることにもなります。
 今日の新聞をめくり、興味を引いた記事を見つけてください。新聞記事は、一番言いたいことを見出しで書き、およその内容をリード文にまとめます。リード文がない記事の場合は、記事の第1段落(または第2段落まで)で概要を知ることができます。その後の記事が補説です。情報を得るためにも、発信するためにも「逆三角形の構成」は大きな力になります。
(浜松曳馬小・山崎章成)

新聞活用し学力向上

2011年04月03日(日)付 朝刊


  池上彰さんと斎藤孝さんの共通点をご存じですか。実は、最近の著作の中で、「新聞を読む子は大きく伸びる」、「新聞の活用こそが日本を救う最強の道」などと、二人とも新聞による学力向上を明言しているのです。実際に、全国学力調査では、「新聞などのニュースに関心のある子どもは正答率が高い」という結果も出ています。
 最近よく耳にするPISAという国際的な学力調査の結果からは、日本の子どもたちの学力低下が心配されています。しかし、私が知る限り、新聞を活用した学習を積み重ねている子どもたちの学力はむしろ向上していると思います。新聞記事を読み、その内容に関わる提言を読者コーナーに投稿しようという私の授業でも、それを実感しています。情報を自分の問題としてとらえ、個性的な視点から深く考えている子どもたちの提言内容には脱帽です。今強く求められている活用型読解力は確実に育っているのです。まさに静岡県が目指す「有徳の人」づくりにも結びつく力です。
 新聞を学習に活用していく活動をNIE(エヌ・アイ・イー)といいます。「Newspaper In Education」の略です。静岡県のNIEアドバイザーをしている私がおすすめするのは『やさしいNIE』です。『やさしいNIE』とはどのようなものなのか、その魅力をこれから毎回、具体例をもとに紹介していきます。どうぞよろしくお願いします。
(焼津大村中教頭・矢沢和宏)