一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

言いたいこと伝わる写真

2012年05月27日(日)付 朝刊


 「あなたにとって一番印象に残っているニュースは何ですか。」
 こんな質問に対し、ニュースの概要とともに、写真(映像)が浮かんでくる人が多いのではないでしょうか。新聞記事を読むのは難しくても、新聞の写真が何を言いたいのかを考えることは小学校低学年の子どもでもできます。
 小学校の国語の教科書を見ると、写真を見て題名を付けたり、何を言いたいかを考えたりする教材が中学年でいくつか紹介されています。また、2年から6年までの多くの教科書に、デジタルカメラを使って写真を撮る方法について紹介されています。
 NIEの大事な要素である新聞の機能学習の一つに、写真の撮り方を学ぶことがあります。デジタルカメラの普及によって、小学校1年の子どもでも手軽に写真を撮ることができます。その一方で、被写体になった子どもは、どこでもピース、いつでも笑顔というのが多く見られます。その結果、撮りためた写真を後で振り返った時、どこで撮ったのか、何をしていた時なのか分からなくなっては大変です。
 新聞のスポーツ面を例にすると、どのチームが勝ったのか、だれが活躍したかなど、写真を見るだけで分かります。なぜ分かるのか、紙面を通し学び、子どもたちが写真を撮る際にぜひ生かしたいものです。そんなコツを会得するために、私が何度か指導してきた例を以下に紹介します。
 教師や保護者が記事に書かれていることを補足したり、記事の内容を一緒に話し合ったりすると、子どもの興味が記事に書かれた内容に進んでいきます。(山崎章成/浜松曳馬小)


「自分の言いたいことが伝わる写真を撮ろう」学習展開例

可能性伸ばす学習方法

2012年05月20日(日)付 朝刊


 私の学校では、高校3年生の学校設定科目、高校2年生の総合学習、高校1年生の現代社会の授業において、NIE学習を行っています。
 NIE学習の良さは、さまざまな角度からのアプローチが可能であり、教員も生徒と一緒に学ぶことができることです。授業で選ぶ新聞も、地方紙、全国紙、高校生新聞や、英字新聞など、その時の学習テーマに沿って変えます。また、インターネットから検索可能な、新聞社のデータベースは、素材の宝庫です。特定の日時や、テーマを決めて新聞を検索する場合には有効的なツールです。多くの素材の中から、何を選択し、何を学習するのかは教師の腕の見せ所でもあります。
 NIE学習の基本は、新聞を切り抜き、感想を書くことですが、ただ、切り抜くだけではなく、しずおか新聞感想文コンクールや、新聞切り抜きコンクールに参加することで生徒のやる気が高まります。時事能力の向上という目標を立て、ニュース時事能力検定試験にも、昨年度からチャレンジしています。また、年度末には、新聞社の「声の欄」への投稿も行っています。
 私の授業を体験した生徒が、静岡新聞に投稿した記事の一部を掲載します。(3月30日朝刊)
 『私はNIE学習で新聞に興味をもつようになりました。新聞社によって記事の書き方が違うことに気づき、とても面白いと思いました。見出しが大きい時は、衝撃が大きい出来事であることなど、いろいろと学ぶことができました。さまざまなコンクールに参加して、世間で今何が起こっているのか、深く知ることができました。自分の財産になるような経験でした。これから社会に出る時に、とても必要な力をつけることができたと感じています』
 平成25年度から開始される、高校の新学習指導要領では、全教科で新聞を活用することを位置づけています。どの教科で、どの素材をもとに、どんな学習を行うのか。子どもの視野を広げ、可能性を伸ばしていくひとつの学びの方法として、NIE学習があります。

(川上博/東海大翔洋高)

金環日食を機に太陽学ぶ

2012年05月13日(日)付 朝刊


 5月21日にせまった金環日食に多くの人が関心を寄せています。この機会に、「太陽」をテーマとしたNIEを提案します。
 まず、理科の授業などで、金環日食を取り上げた新聞記事を紹介しましょう。本年4月8日付静岡新聞週刊「YOMOっと静岡」は、1~3面を使った大特集を組んでいます。カラー写真や図を多用し、その大きさ、レイアウトは児童生徒の興味を喚起するのに適切です。教科書と関連づけて説明したり、児童生徒の発達段階に応じてわかりやすい言葉を補ったりするなど工夫するとよいでしょう。
 子どもたちは、この珍しい天文現象に高い関心を寄せるでしょう。太陽を直接見ないこと、観察に夢中になって交通事故に巻き込まれないことなどに注意し、安全に観察するように細心の注意を払うよう呼び掛けましょう。
 太陽についての記事を探してみます。太陽表面の写真や太陽研究を報ずる記事がありました。授業で紹介し、子どもたちにも、各自で探してみるよう呼び掛けてみましょう。
 さらに学習を深めるために、書籍や国立天文台のWebページなども利用して探求学習をさせてみても良いと思います。
 5月21日当日の夕刊もしくは翌日の朝刊で金環日食が紹介されるはずです。記事をスクラップするようアドバイスします。
 金環日食の後、児童生徒は太陽についてきっと、強い興味を持ってくれると思います。
 太陽から放射されるエネルギーは、地球をあたためており、晴れ・曇り・雨の気象変化、雲や風などあらゆる気象現象の源となっています。このことを説明した上で、日々の気象変化に着目させ、関連する新聞記事も探してみます。
 お天気欄の見方を基本事項として解説します。そして例えば、先日大きな被害をもたらした竜巻や、浜松まつりで空に舞い上がる凧[たこ]の写真入り記事を紹介し、風の恵みと風のもたらす災害の両面に着目させて、気象を学ぶ大切さへの興味を喚起します。
 太陽放射のエネルギーで植物が光合成を行い、有機物を合成し、人間は衣食住にそれらを役立てています。また、石油・石炭・天然ガスには、過去の太陽エネルギーが蓄えられており、人間はこれを利用しているのです。そして、原子力発電所の深刻な事故以後、太陽光発電が注目され、高い期待が寄せられています。太陽は地球環境に大きな影響を及ぼしており、太陽と人間生活は深い関わりがあり、その例はまだ他にもたくさんあります。
 太陽と人間生活の関わりを感じる記事を探してみましょう。子どもたちにヒントを与えると、彼らの自由な発想で太陽に関連するさまざまな記事が見つかることでしょう。あらためて、太陽が人間にとってなくてはならない存在であることが実感できるのではないでしょうか。学習を通じて、自然に対する畏敬の念や、学ぶことの楽しみに気がついてくれることを期待したいものです。(吉川契子/静岡中央高)

20120513図1.JPG

 

音楽の喜び記事で実感

2012年05月06日(日)付 朝刊


 小学校では昨年度から学習指導要領に新聞が取り入れられ、教科書にも新聞を使って行う活動が数多く紹介されている。しかし、授業の中のどのような場面でどのように使っていけばいいのかわからない、という先生方もいるだろう。
 新聞は手段であって目的ではない。今まで資料として使っていたものを新聞に置き換えてみれば意外と簡単にできると思う。もちろん国語や社会では、記事を読むこと自体が教科の学習に結びつけやすい。しかし、国語や社会の教科以外に取り込んでいくのは難しいのだろうか。私は、情操教育である音楽を軸とした総合的な学習の時間に新聞を取り入れてみた。
 数年前、学校代表として市の音楽学習発表会に参加することになった。しかし単学級の学年で指導者は自分一人、それに外国籍の子どももおり、どう指導していったらいいのか悩んでいた。その時、「音楽って楽しい。」という一枚の新聞記事を目にし、楽しく歌う気持ちを育てクラスをまとめていくことにした。
 音楽鑑賞教室では、「音楽って楽しい。」という気持ちがあふれるアーティストをゲストに呼び、演奏や鑑賞している様子を新聞記者に取材してもらった。それが記事として翌日の朝刊に載った時の子どもたちの喜びようと言ったら…。音楽の授業では合唱や合奏の技術を磨き、総合的な学習では新聞を通じて心を育て、クラス全員が「音楽大好き」の気持ちで発表会に臨むことができた。
 家庭科領域で料理を扱ったとしても、それは火を使っての化学反応である理科の学習につながる。体育でサッカーをやっても、シュートなどのボールの動きは物理に通じる。教科書ではそれぞれの教科の基礎を学び、新聞記事を使って物事を総合的に捉えていく力をつけていくことができるのではないだろうか。
 新聞を使っての学びは学校教育の中で終わるのではなく、生涯教育として継続していって欲しい。生涯教育としての学びが、真の学びであることを信じて疑わない。(中村都/静岡中田小)