一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

記事と接する機会もって

2012年07月22日(日)付 朝刊


 「わあ、かわいいサル。リスザルっていう種類なんだって」
 「赤ちゃんがお母さんの背中に乗っているよ」
 「本当だ。なんだか気持ちよさそうだね」
 「この赤ちゃん、まだ生まれて1カ月もたっていないらしいよ」
 ワークシート「静岡新聞で学ぼう」を前に小学校3年生の子どもたちが話し合っている様子です。
 新年度が始まってから、常に新聞のある環境をつくろうと廊下の一画にNIEコーナーを設けました。子どもが興味をもちそうな記事や授業で役立ちそうな記事、ワークシートなどを随時掲示しています。
 小学生の子どもにとって新聞全てを読みこなすのは難しくても、写真や見出しなどを手がかりにすれば内容を理解できる記事はいくつもあります。写真や見出しは遠くからも目立つため、新しく貼り替えると子どもたちが集まってきます。詳しい内容を知るためには、記事の文章を読むことが必要になります。上級生が下級生に教えたり、前後の文から内容を推測したりするなど、さまざまな工夫が見受けられます。このように記事と接する機会を繰り返しもつことによって、新聞に興味をもち、その子なりの新聞の読み方を身に付けていくことができます。
 新聞は、物語や説明文とは違い、紙面を最初から最後まで読む必要がありません。一つの記事についてみても、大事なことは最初に書いてあるので、全文を読まなくても内容を理解することはできます。日々の新聞の数多くの記事の中から気になる記事を素早く見つけ、知りたい情報を的確に得ることができるようになれば、新聞が大好きになっているはずです。
 ワークシート「静岡新聞で学ぼう」は、今年の5月8日から静岡新聞ウェブサイト「静岡新聞NIE」のコーナーに掲載され、さまざまなジャンルのものをダウンロードして使用することができます。
(山崎章成/浜松曳馬小)

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浜松曳馬小

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記者を手本に学校新聞

2012年07月15日(日)付 朝刊


 新聞活用教育は、NIE学会などが三つに分類している。①新聞の記事、写真、図などを資料として使う「新聞活用」②編集のしかたや記事の書き方に注意して読む「新聞機能学習」③取材、編集、発信を通じて情報モラルを学ぶ「新聞作り」である。
 新聞の機能を考えるとき、「新聞」は他のメディアに比べて意外と速く、正確で詳細、グラフや表があって分かりやすい情報を伝えている。宅配制度や新聞記者や通信社の働きぶりに敬服である。TV・ラジオやインターネットは台風、地震、事件など同じ情報の繰り返しばかり。新聞記者の発信した情報が他のメディアに広がっていくのであり、知りたい交通情報や被害状況などは「TVやインターネット」より「新聞」の表現方法が勝っている。とはいっても、週刊誌や新聞社の別冊、特別号、震災に関する書籍が相次いで発行され、まさしくマルチメディア社会ではある。
 新聞作りに関して、新聞社に学ぶことは多い。取材力がすばらしい。記者の力、組織の力、通信手段の高速化、情報処理力だ。文科省の「生きる力、情報処理能力、伝える力」などは「記者の働き」そのものだ。文科省は伝える力、言語活動に重きを置き、「習得と活用」を目玉にしている。「習得は吸収とかインプット」「活用は発信、表現、アウトプット」である。記者に学ぶことは多く、取材して情報を取捨選択し、発信表現していく一連の新聞社の活動をお手本に学校新聞「神明タイムズ」が毎日発刊できている。子どもたちは「記者を育てることが正しく情報を伝えることだ」と気付いた。
 さて、静岡新聞の「YOMOっと静岡」は英語コーナーが4ページを占め、英語を身近に感じさせることに貢献している。大人がいかに関わって、噛[か]み砕いてあげられるか。新聞は子どもが自分だけで読めるだろうか。「親子で読もう」と呼びかけたり、地域で読み合う「地域NIE」の活動を展開したりして、まず記事を集めることを継続するといい。

(横井純夫/磐田・神明中)

継続目指し指針づくり

2012年07月01日(日)付 朝刊


 昨晩の嵐(注:6月19日/台風4号)の傷跡が生々しい。歩道には街路樹の太い枝が散らばり、強風で飛ばされた看板や瓦礫[がれき]が積まれている。通勤途中のコンビニエンスストアは辛うじて営業しているが店内は暗い。そうか、停電だ。案の定、わが職場も一切電気が通らない。この原稿も私物のノートパソコンを内蔵電源で起動して書いている。電話は通じずテレビもパソコンも使えない、愛用のスマートフォンも充電できず残存電池量も残りわずかだ。それでも、である。新聞は届いた。もちろん一時的ではあるが外部からの情報が断たれたこの状況で、現在、私の唯一の情報源は職員室に配られる新聞のみである。普段は何気なく置かれている新聞であるが、今日はやけに存在感があるではないか。
 本校では職員室の他に、各教室にも毎朝新聞が配られる。静岡新聞および全国紙3種の計4紙を、生徒は毎日自分の教室で読めるのである。そうした取り組みもあってか、本校がNIE実践校に指定されその活動を報告させて頂いたのは2007年のことである。地歴公民科を中心に、注目すべき新聞記事を生徒が集めて日々更新する大型掲示板の設置や中等部での学級新聞作成、各クラスでの新聞を使った学級運営など多彩な実践活動を行った。生徒たちの積極的な参加が実を結び、我々実践者一同も相応の手応えを感じる事ができた。
 しかし、それが継続できなかった。2年間の実践活動期間の終了と共に学校をあげてのNIE活動は開店休業状態となり、そのまま息を潜めてしまっているのが本校の偽わらざる現状である。そこで一つ検討しているのが、NIE活動を「総合的な学習の時間」の一環として取り込む事である。そのステップとして、まず入学から卒業までNIE活動に体系的に取り組むための指針となるシラバスの作成に本年度は取り掛かる予定である。教室に置かれたまま今は沈黙している新聞たちにもう一度息を吹き込むために、ぜひ本腰を入れて取り組みたい。
(永田泰大/日大三島高・中)