一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

県内アドバイザー講座
記事で地元の魅力再発見

2012年11月25日(日)付 朝刊


 自分が住んでいる「地域」を取り上げた新聞記事に目を向けてみましょう。地方版には地域に関係する記事が数多く掲載されています。それらの記事には、「地域の魅力」や「地域に暮らす人々の努力や工夫」が詳しく書かれていることと思います。
 今回は、このような記事を生かして、「身近な地域の魅力を再発見し、地域の活性化を考える」実践を紹介します。地域への愛着がわき、地域のことをますます知りたくなる実践です。小学校高学年から中学生が対象で、社会科や総合で扱うことができます。

 ■地域のよさ探す
 まず新聞記事から「私たちが住む地域の魅力を見つけよう」と子どもたちに投げかけ、「身近な地域に関係する記事集め」を行います。教師が集めておいた記事を教材として提示することも可能ですが、子どもたちにあらかじめ知らせ、記事の切り抜きを集めさせておくのがよいと思います。その際、日付や新聞名をメモしておくよう指示します。
 集めた記事は、拡大投影機などを使って全体に紹介したり、3~4人のグループなどで紹介し合ったりします。その上で、「わたしたちの住む地域の魅力は何か」を話し合います。
 左の新聞記事は、大井川と安倍川が「泳ぎたいと思うきれいな川」に認定されたという例です。この記事から、二つの川は清流として魅力に溢れていることがわかります。

 ■活性化策考える
 このようにして、地域の魅力を発見できたら、子どもたちに「地域の魅力を生かして、地域を活性化させる方法を考えよう」と促します。
 この記事の例では、「たくさんの人に来てもらえるように、清流を生かして観光に力を入れよう」、「きれいな水を利用して、飲料水を売り出そう」など、地域活性化のさまざまなアイデアが出てくると思います。子どもたちの柔軟でおもしろいアイデアを大いに認め、価値づけましょう。

 ■具体案を発信
 最後に、これらのアイデアをグループで出し合って、より具体的な提案の形にまとめます。その提案を市・町などの行政機関や地域の人などに伝える発信の場を設定しましょう。新聞に投稿するのもよいと思います。
 発信することで、子どもたちが気づかなかった視点から意見や感想がもらえるため、提案を再考し、学びを深めることができます。また、提案が採用され、実現していく可能性もあります。どちらにしても、社会との関わりを実感するよい機会となります。

 ■継続して活動を
 地域に関係する記事集めは、「NIEコーナー」を作って掲示するなど、継続して取り組み、息の長い活動にしていくことをお勧めします。
(矢沢和宏/島田川根中校長)

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面白さ伝えたい一心で

2012年11月18日(日)付 朝刊


 担当教科が社会と福祉なので教材になる記事は多く、学級担任として進路や生活指導に生かしたい記事にも事欠きません。話題にする、掲示する、印刷して配布する、学級通信に転載する、といった方法で日々新聞を活用しています。難しく考えると続かないのでNIE実践指定校の時のように特別意識はしていません。
 教科書が定番メニューならば、NIEはお勧め日替わりメニュー。その日の仕入れで工夫するシェフ同様、新聞を生かすも殺すも教員次第。ただし最終的には自主的に新聞を読む習慣をつけさせたいものです。
 きっかけづくりとして、夏休みなどの長期休暇に「新聞ノート」を宿題にします。貼るだけのスクラップではなく、主要記事の見出しをいくつか書き、関心のある記事や進路関連記事の短い感想を毎日書く、というものです。毎日目を通して記事を選び、コメントを書くのは、慣れるまでかなり時間がかかり、まとめてやることも困難なため、大きな負担を感じる宿題です。当然嫌がる生徒が多く、休み明けに提出できない者が毎回何人も出ます。これで新聞嫌いになられては逆効果ですし、提出されたノート点検も大変な苦労なのですが、20年以上続けています。それは、続けることで生徒たちの意識が確実に変化するからです。
 担任している高3のクラスで先日アンケートをとったところ、一人を除いて「新聞は必要だ」と答え、新聞の有用性や面白さがわかってきたという手応えを感じます。デジタル化が進みつつありますが、毎日定時に配達される紙ベースの新聞の方がまだ使い勝手は良いようです。ただし、大きすぎて広げにくいという声は常に多く、私自身も同感です。コピーをとるにも掲示するにも、教材として机に広げるにも扱いにくいのです。外国の新聞と比べても大きすぎです。小中学生向け新聞や週末の特集版のようなタブロイド版の一般紙が普及して、もっと生徒たちが新聞を手にしやすくなるといいなあと思います。
(中村さとみ/静岡サレジオ高)

県内アドバイザー講座
地域性意識し視野広める

2012年11月11日(日)付 朝刊


 下に示した新聞記事は、いずれも静岡新聞の1面です。二つを比べると、浜松版では「がれき灰処分」の記事がトップで扱われているのに対し、中部版のトップ記事は「国交40周年式典中止」に変わっていることに気付きます。中部版の「がれき灰」の記事は見出しも簡潔になり、リード文がなくなっています。「がれき灰処分」の問題は、浜松に住む人にとって最大の関心事であると判断され、浜松版でトップ記事になったと思われます。
 同じ事件を読んでも、自分の住んでいる街で起きた場合と遠く離れた所で起きた場合では、読者の関心は大きく違います。身近な所で起きた事件は、大きな記事にして紹介するのに、遠くで起きた時は小さな記事にしたり、紙面化されない場合もあります。また、身近で起きた大きな事件は、複数の紙面で扱ったり、何日も続報を載せることもあります。新聞記事は、読者との関わりの度合いによって扱い方が変わるのです。
 静岡新聞は、基本的に県内に住む人を対象に編集されていますので、全国的なニュースや世界的なニュースも「静岡から見た日本、世界」という視点が大切にされています。
 1面には特に大きな事件が載っていますが、その中にも県内に関わるものが意図的に盛り込まれます。また、地元のニュースをできるだけ提供しようと、「伊豆・東部」「静岡」「志太・榛原」「遠州」「浜松」の各地域版を設け、読者の住む地域の記事を載せています。
 「地域性」を意識しつつ、社会的に価値のある情報を分かりやすく情報提供をしているのは、新聞の大きな魅力の一つです。地域を学び、地域から世界へ視野を広める生きた教材として、新聞を活用していきましょう。

 【地域性を意識した実践のヒント1】
 新聞に載っている地名を書き出してみましょう。何日か続けて調べると、よく出てくる地名があることに気づきます。そうした地域は、自分の住む地域と深く関わっているために記事になりやすいこともあります。

 【地域性を意識した実践のヒント2】
 自分の住む市や町に関わる記事を赤鉛筆で囲んでみましょう。1面から最終面まで調べると地域版以外の紙面でも、自分の住んでいる地域のできごとがさまざまな形で記事になっていることが分かります。

 【地域性を意識した実践のヒント3】
 新聞に載っている地域や国を日本地図や世界地図から探し、色を塗ってみましょう。載った回数によって色を変えると、静岡県との結びつきの度合いを知る手がかりになります。塗り終えた地図をみわたすと、距離が遠くても結びつきが強い場合や近くても結びつきが薄い所があることに気づきます。どうしてそうなるか、話し合うとおもしろそうですね。

(山崎章成/浜松曳馬小)

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 ※(「アドバイザー講座」は隔週掲載します)

実社会を学ぶ"資料"に

2012年11月04日(日)付 朝刊


 私が社会科教諭として第一に心がけていることは、生徒にとって身近な出来事を教材にして授業を進めることである。子ども自身が実社会に目を向けながら社会科の学習内容を振り返ることによって、社会事象に対する認識がより実践的になっていくと考える。だから、実社会での出来事をニュースとして読むことができる新聞は、適切な資料といえる。
 私の実践例を一つ紹介したい。公民的分野で国会について学ぶ際、自民党から民主党への政権交代についての新聞記事を、タイムリーな教材として活用した。衆議院の議席数における「絶対安定多数」と「過半数」の違いから、民主党のその後の政治運営についての方向性を授業で話し合うことができ、子どもの政治への関心が高まった。
 他の教諭の実践も紹介しよう。授業者は、「原発の是非」を巡る新聞各社の取り扱いの違いを比較しながら、マスコミの与える情報について考察する授業を行った。新聞記事を鵜呑みにするのではなく、自分自身の判断力を持って、新聞を読む必要があるというものであった。
 まさにその通りであり、このことを踏まえないで新聞を教材として扱うことはできないと思う。
 知識や社会経験の少ない子どもたちは、新聞記事の内容について、自分の感性を頼りに判断してしまうのではないだろうか。子どもの感性による判断が悪いといっているのではない。それだけでは一義的なものに陥りやすいと思うのである。また、ある面、素直な感受性を持っている子どもは、無批判で記事の内容を受け入れ、納得してしまうこともある。そこで、もっと深く考察させるための工夫が必要になると思うのである。
(大嶽安司/沼津静浦中)