一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

県内アドバイザー講座
地震学習への興味深める

2012年12月23日(日)付 朝刊


 静岡県の子どもたちは、「将来、東海地震が発生する」と幼い頃から学んでおり、地震についての関心は高い。東海地震が発生した場合、甚大な被害が発生するであろう。しかし、地震についてよく知ることにより、日々の防災に役立てたり、地震が発生した時に、より適切な避難行動等を取ることができれば、被害を減らすことができる。そのために、児童生徒が地震を深く学ぶ気持ちを新聞記事を活用して育てたい。
 静岡新聞の地震関連の記事は充実している。地震についてのニュースを児童生徒が理解しやすい言葉や図を用いて表現している。授業で紹介したり、教室に掲示するなどして、地震に対する注意を喚起し、児童生徒が地震を理解し、学習を深める一助としたい。児童生徒の学習段階に応じて教師が資料を補い解説すると良いだろう。
 まず、東海地震と地震活動全般に対する関心を持たせるために、静岡新聞毎月第2、4日曜掲載の特集「いのち守る防災しずおか」から、「ウオッチ3連動」を見てみよう(記事①)。この図は、想定震源域周辺で最近2週間に発生した地震の震源分布図で、中央防災会議による東海地震、東南海地震、南海地震の各地震の想定震源域と、内閣府の有識者検討会による巨大地震の断層面がそれぞれ示されている。
 この間、静岡県内で有感地震が観測され、それ以外にも多くの小さな地震が発生していることがわかる。継続的にこのコーナーを見ていれば、日本は地震列島であることを実感できるだろう。
 図中の青い線は日本周辺のプレート境界を示す。各プレート名を記入し、駿河トラフの位置を確認させたい。海溝型巨大地震のメカニズムについてあらためて復習したい。南海トラフ沿いの巨大地震の発生にはある程度の規則性がある。南海トラフ沿いの想定震源域の、過去の大地震の発生時期について、静岡県地震防災ガイドブックや気象庁Webページなどに掲載されているので参照してみると良い。1854年の安政東海地震の後、東海地震の震源域で大地震が発生していないことを説明したい。このような学習は地震について学んだ後で実施すると、教科書の学習と日常生活の関連を意識させることができて学習効果が高い。
 国内で大地震が発生したとき、その記事に着目したい。12月7日夕方に、東北、関東で、震度5弱を観測する地震が発生した(12月8日付1面、記事②)。記事によると気象庁はこの地震は『東日本大震災の余震で、海溝の外側が震源となる「アウターライズ地震」との見解を示した』。
 高校の「地学基礎」の教科書には、「アウターライズ地震」は掲載されていない。しかし、静岡新聞の解説(同日付3面、記事③)はわかりやすく、教師が解説を添えれば生徒も理解できるので、発展学習教材として使える。地震に興味を持ち、研究してみたいと考える生徒にこのような記事を示し、専門的な学習への興味の扉を開くきっかけに使いたい。
(吉川契子/静岡中央高)

20121223図.JPG

時事の関心高まるN検

2012年12月16日(日)付 朝刊


 本校社会科では、NIE活動に教科として取り組んでいる。社会科という教科の特質上、新聞は生徒たちにとって身近な教材の一つである。新聞記事を通じて、テレビ・ラジオ等のその他マスメディアや、インターネットという生徒にとってもっとも身近な情報メディアを読み解く力を身につけてほしいと考えている。
 NIE活動の一環として、「ニュース時事能力検定(N検)」への挑戦を生徒たちに促しているが、先月の検定試験では、中学3年生が2級(高校生~大学生一般相当)に合格した。本校での「N検への挑戦」は4年目。年々受検者・合格者が増加しており、指導する社会科の教員自身も1級を取得した。来年度も「受検したい」「対策講座を開いてほしい」という声が上がっている。こういった検定試験を通して、クイズを解く感覚で楽しみながら時事問題に触れることが、新聞報道への関心を高めることにもつながるのではないか。
 また、今年度は中学3年生を対象として、「スクラップブック」を導入している。1~2カ月に1回程度、興味を持った新聞記事を専用のノートに貼り付け、記事に関する感想や意見を書き入れる、という形式で実施している。感想・意見には社会科教員がコメントを添え、貼付した新聞記事との整合性や多角的な視点で捉えているか等を加味し、総合的に評価している。回を追うごとにより深い理解や社会的な考えが表れてきており、授業内容と現実社会の問題が関連していることも実感できている様子である。
 本校は中高一貫校であるため、中学校での実践内容を高校でも継続実施することが比較的容易である。今年度は継続実施の一環として、夏休みに中学2年生には静岡新聞社主催「しずおか新聞感想文コンクール」、中学3年・高校2年生には日本新聞協会主催「HAPPY NEWS」への作品提出を課した。来年度以降も中高6カ年を通したNIE活動を行っていきたいと計画している。
(片山徹/静岡雙葉中・高)

県内アドバイザー講座
行事報告に"新聞"掲示法

2012年12月09日(日)付 朝刊


 2学期の終わりを迎え、学校ではさまざまな行事が実施されたことだろう。今回は、それらの行事を報告する際に効果的な、新聞形式掲示法を紹介したい。
 まず児童・生徒に、自分を取材させよう。予習・下調べ・採録とも言うが、せっかく新聞の形でまとめるならば、格好を付けた方が良いし、その方が子どもたちも気合が入るはず。あらかじめ記録の取り方を指導しておき、取材ノートにまとめるようにしておくと、スムーズに作業が進められる。
 次に、A4判の紙に2人分の枠と罫線を印刷し、発表資料を作っておく。学校でよく使用されるB5判を1人前とすると、掲示の際のスペースが広大になりすぎてしまう。かと言って、半分にすると情報量が少なすぎる。後述するが、掲示する際の手間と撤去の労力を考慮しても、この大きさが妥当であろう。
 さて、記録作成に取り掛かろう。先の資料用紙と付箋の配布だ。付箋は見出し記入用で、細長のものを2枚。文章量により、見出しの位置が変化するので、付け替えのきく付箋は効果的。上段の見出しは縦でも横でもよいが、写真や図、グラフなどは必ず入れるように指示する。写真が貼れない場合は、イラストでも良かろう。とにかく、確実に視覚的なデータは掲載しなければならない。資料掲示のポイントは、まず人目を引くカラーリング、次に内容の視認性だ。文章と図のバランスを考慮して配置しよう。下段の見出しは縦置きのみ。ポジショニングにおける調和の効果に知恵を絞るのは、今後に重要視されるプレゼンテーション能力養成に必要な学習だ。
 ちなみに、文章は縦書きで書かせること。日本語の場合、いちべつした時の情報獲得率は縦書きの方が高いそうである。完成したら作成した新聞を基に発表をし、評価を行う。特に、友人と比較しての自己評価は文章化させよう。客観的な自己認識育成に有用だ。
 いよいよ掲示。40人の学級ならば、A3判10枚で、クラス全員が収まる勘定だ。教室内のスペースが足りない場合は、廊下の壁に養生テープで貼り付けても良い。と言うより学校全体で情報を共有する観点から言えば、廊下展示のほうが効果的かもしれない。
 また、事後に掲示資料を印刷、冊子にする可能性も考えられる。サイズを固定化し、書式内容のみを生徒の創意工夫に任せておけば、原本を印刷機の上に置くだけでよい。表紙だけでも色画用紙にすれば、立派な冊子となるだろう。
 将来的には、さまざまな子どもの作品をスキャンしてPDF化し、データとして保護者に送信する時代が来るかもしれない。新旧の技術をいかに融合し、子どもたちの情報発信能力をどのように育成していくかが、この瞬間、現場にいる教員の課題なのである。

(実石克巳/静岡市立高)

20121209図.JPG

求められる「環境教育」

2012年12月02日(日)付 朝刊


 今、北極域では気温上昇により氷床が溶け出すなど急速な気候変動が起こっている。また、大規模な洪水や干ばつ、巨大ハリケーンなど世界各地で異常気象が報じられるように、地球温暖化をはじめとする地球的規模の環境問題は、人類の「生存権」をかけた21世紀の最重要課題となっている。こうしたことから、環境先進国をはじめ今、世界では生涯にわたる「環境教育」が求められている。
 「新聞を活用した環境教育(NIE)」は、20年間の私の経験から最も効果的な授業方法のひとつであると考える。例えば、地球温暖化問題では、新たな観測データや科学的知見が次々と報告され教科書ではその変化に到底追従できない。しかし、毎日届く新聞なら可能である。また、最先端のコンピューターやプログラム技術をもってしても自然の変化や世界各地で起こる異常気象を予測することは困難である。しかし、現実に起こっている災害を報じる新聞なら気象の異常を実感することができる。さらに、各国の自然や環境に対する価値観の違い、世界の経済動向、だれが大統領になったか等によっても、世界の温暖化対策は大きく変わる。こうしたことも新聞なら生徒も教師も共に深く考えることができる。
 さらに新聞は、多くの読者がおり社会的にも検証され、生涯にわたり家族で地域のこと、世界のことを話し合うことができる。環境教育で大切なことは、「関係性」「全体性(観)」「多様性」などを総合的に学び続けることである。そして、子供の素朴な疑問に大人が気付く「子供が大人を教育する」という「賢い家族」「賢い市民」づくりが、お茶の間で行われていくことが「新聞による環境教育(NIE)」の最も良い点であると考える。
 最後に、「教育のための社会」づくりに取り組む環境先進国スウェーデンの新聞社を訪れた時に聞いた「新聞は教科書ではありません。しかし、すばらしい教材です」との言葉をお伝えし、日々、「環境教育」「新聞を活用した教育」に取り組む先生方の参考になれば幸いである。
(飯尾美行/浜松城北工高)