一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

県内教諭の実践
=まずは写真から話題に

2013年01月27日(日)付 朝刊


 「子どもに新聞のスクラップをさせてみたいのですが、まだ難しそうで」
 先日の5年生の懇談会での、あるお母さんの言葉です。どうやら、新聞記事のスクラップを積極的に行っている同級生がいるという話を聞き、うちの子も…と思ったようです。
 昨年度まで、前任校でNIE主任だった私も当初は、小学生に新聞の内容を読み取るのは難しいのではと感じていました。しかし、NIE実践報告会で多くの実践例を聞いたり「新聞活用は目的ではなく、手段である」というお話をいただいたりする中で、難しく考えず、まずやってみようと思うようになりました。
 新聞の活用が始まると、教員側の抵抗感とは裏腹に、子どもたちは熱心に新聞を読み始めました。初めは、写真や広告などを見せ合いながら、楽しく話す子が多くいましたが、徐々に関心のある記事を読み込む子が増え始め、教室は静かになりました。難しい言葉を担任に質問する子も出始め、記事の内容を熱心に理解しようとする姿が見られました。新聞の活用を重ねていくと、子どもたちの中に社会への関心の高まりを感じられるようになりました。当日のニュースの内容や、話題の人物の名前や出来事を知っている子が多く増え、様々な授業でタイムリーな話題と結びつけて話すことができるようになりました。また、週末の家庭学習や長期休業中の課題として、新聞スクラップを始めたことも、新聞をより身近にしたのではないかと感じました。
 新聞をよく読む子は、客観的で等身大の言葉を話すようになるように思います。それは、新聞記事と対話しながら、自分自身とも対話するからではないかと思います。東日本大震災直後の記事は、子どもたちの意識もがらりと変えました。社会とつながり、自分の生きる世界を知ることで、子どもは考えるようになります。まずは、ご家族で一枚の写真から話題にしてみてはいかがでしょうか。
(小笠原秀通/浜松北庄内小)

県内アドバイザー講座
記事参考に生き方考える

2013年01月20日(日)付 朝刊


 新聞には、「自己の可能性に挑戦する、前向きで、すてきな生き方」に関係した記事やコラムがたくさん載っています。タイムリーでわかりやすく簡潔に人物を紹介しています。
 今回は、この記事を利用して、自己を見つめ、「自分の可能性を最大限に発揮する生き方」を子どもたちに考えさせる授業実践を紹介します。小学校高学年から中学生・高校生の道徳や学級活動、総合などで可能な実践です。
 記事の活用には、二つの方法があります。一つは、子どもたちに紹介したい「自分の可能性を最大限に発揮している生き方」に関する記事を教師側から提示する方法(表のA)です。授業の前半では、この記事を読み込み、「どのような点が自分の可能性を最大限に発揮した前向きな生き方か」を考えさせます。後半は、「自分にはどのような生き方ができるか」を考え、発表させます。この発表の内容は記述を残しておくことも大切です。
 もう一つは、「参考になる生き方」が載っている記事を、子どもたち自身が持ち寄る方法(表のB)です。前半では、これらの記事の「どのような生き方が参考になるか」を紹介し合います。そして、後半で、「自分の生き方」を考えさせます。記事の紹介や自分の生き方の発表は、帰りの会などにスピーチの機会をつくることもできます。
 事前に子どもたちに投げかけ、記事をスクラップさせておくと、紹介し合う材料が増え、うまくいくと思います。
 右上の記事①は「年齢に関係なく、自己に挑戦している女性」の例で、勇気をもらえると思います。また、右下の記事②は「三味線の魅力を伝えようとプロを目指す小学生」の例です。
 新聞には、同年代の若者の活躍や生き方が書かれた記事も多く載っていますので、子どもたちは身近に感じることと思います。
 このように、「新聞から生き方を考える」という視点には、NIEの大きな可能性を感じています。
(矢沢和宏島田/川根中校長)

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社会性を高める一助に

2013年01月13日(日)付 朝刊


 前任校の下田東中学校でNIE実践に取り組ませていただきました。2年間の実践を振り返ると、日本や世界のニュースについて生徒の関心が確実に高まったと感じます。2年間とも、2学期の4カ月、学級で新聞に目を通せるよう設定しました。一カ月ごとに違う新聞を読めるようにし、教室以外では図書室に閲覧コーナーを設けました。教室等に新聞が置いてあるので、多くの生徒が休み時間や昼休みに気軽に新聞を手に取り、気になる記事に目を通すようになりました。
 一方で、経済的理由などで、新聞を取らない家庭が徐々に増えつつあります。また、インターネットでニュースを見聞きし、新聞を利用しない傾向も増加しています。そういう状況下で、日常的に新聞を読んだり、記事について友達とあれこれ話したりすることが、生徒たちにとって、また、学校にとっても、新鮮であり、成長でもあったと思います。
 教科では主に社会の授業などで新聞が活用されてきましたが、実践期間中は教科のみならず、学級活動や道徳、総合的な学習、時には朝・帰りの会で取り上げられる回数がかなり増えました。また、すべての学級で当番活動の一環として、記事のスクラップと発表を取り入れたことにより、全生徒が新聞に関われたことが大きな成果であったと考えます。
 中学卒業は、義務教育を終え社会へ出るということを意味します。しかし、残念ながら生徒たちにはその感覚がほとんどありません。ほぼ全員が進学する今日では、それは無理のないことかも知れません。ただ、それでは中学校として社会に関心を持たせ、広い視野を育てるという役割を果たしていないまま卒業させてしまうことになります。そういった中で、2年間、NIE実践に取り組ませて頂いた意義は、非常に大きいと考えています。この実践が生徒たちの社会性を高める一助となってくれていることを切に願います。
(野口真樹也/南伊豆中)

県内アドバイザー講座
読み解くポイント探そう

2013年01月06日(日)付 朝刊


 「小学生の子どもに新聞を読ませたいのですが、何かいい方法はありませんか?」
 こうした質問を受けるたびに、下図のようなフローチャートを使い、「1年生から大丈夫ですよ」と答えています。
 今日の紙面を使って説明します。紙面をめくり、興味をもった記事を一つ選んでください。
 記事が決まったら、見出しやリード文、記事が読めるかどうか挑戦してみましょう。一般の新聞は、中学3年生程度の語彙[ごい]力があれば理解できるように編集されているので、一字一句全てを理解するのが難しいのは当然です。読めない字があっても大体の意味が分かれば大丈夫です。記事を読んだ後、何を言いたい記事なのか自分なりの言葉でまとめることができれば内容を理解できたということができます。長文の記事を選んだ場合は、リード文や記事の第一段落を特にじっくり読むようにしましょう。逆三角形の文型で書かれている新聞記事は、一番大切なことが記事の最初に書かれています。第二段落以降はその説明にあたる部分ですので、「全部を読み通せないとだめだ」と思う必要はありません。
 記事を読むことが難しい場合は、見出しを読むことに挑戦しましょう。見出しは、その記事で最も言いたいことを10文字程度の言葉を使って簡潔に表現しています。そのため、見出しを読むだけでも記事の要点を知ることができます。大人が新聞を読む場合でも、物語を読むように一面から最終面まで順に読むのではなく、見出しだけを飛ばし読みし、おもしろそうなものに出合うと記事を読み進める人は多いと思います。「記事を読めないから新聞を読まない」のではなく、見出しを読むことによって「○○○の事件が起きたらしい」「○○○の活躍、すごいね」と思うだけでも意味はあります。
 記事も見出しも読むことができなくても、写真から情報を得ることができます。報道写真は、記事で最も言いたいことを一目で分かるように撮ったり、文字だけでは伝えられないことや分かるように撮ったりしています。そんな写真を見た子どもが、写真から感じることの多くは記事が言いたいことに重なるはずです。写真を見て感じたことをつぶやく子どもに記事を読み解く大人が補説することができれば、新聞記事に興味をもち、自分でも記事を読んでみようとする姿勢を築くことができるはずです。
 新聞は、日々の社会で起きているさまざまな出来事が、見出しやリード文、記事、写真などを使って表されています。小学校の低学年の段階で、そうした記事から情報を得る術を身に付けることができれば、どんなに素晴らしいことでしょう。最初は写真を見るだけでも、新聞の魅力に気付くことができれば、やがては見出しやリード文、記事へと広まっていくので、ぜひご期待ください。

(山崎章成/浜松曳馬小)

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