一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

県内アドバイザー講座
=新聞の特徴、作り方学ぶ

2013年04月28日(日)付 朝刊


 NIEには、新聞記事の活用をはじめ、新聞編集のノウハウの活用、新聞作りの三つの領域があります。小学校3年生になると、この三領域のすべてについて国語科で学習します。以下の学習内容がどのように展開されているか、いくつか紹介します。

 【新聞の書き表し方を知る】
 新聞の紙面がどのようにレイアウトされているか、見出しやリード、記事、写真・図表がどのような役割を果たしているかを説明し、新聞は情報を分かりやすく伝えるために工夫していることを学びます。こうした教材は、教科書会社によっては高学年や中学、高校でも掲載されています。より効率の良い新聞活用をするために、新聞の書き表し方を学ぶのは小学校中学年がお勧めです。

 【強く心に残っていることを分かりやすく書く】
 ある教科書では、一番心に残っていることを分かりやすく書くために、中心になる事柄をはっきりさせるように指導しています。また、大事な会話とその時の様子を書くことで気持ちや様子を生き生きと表すことができることを指摘しています。会話の活用は、事実を中心とした客観報道を基本とする一般紙でもよく行われています。今日の紙面を見て、どのような会話文が掲載されているか探してみましょう。

 【見てきたことを学級新聞にまとめる】
 中学年の新聞作りでは、グループで作る方法がいくつかの教科書で紹介されています。どんな新聞を作るか考え、取材を行い、レイアウトを工夫し、見出しや写真などを工夫した紙面作りをするためには、中学年の段階ではグループで行う方が良いようです。
 小学校のさまざまな学習で新聞作りが行われますが、日記や作文を一枚の紙に書き写しただけのような新聞を時折目にします。
 はじめに結論を明記し価値ある情報をより分かりやすく発信する新聞の表現方法は、「起承転結」や「はじめ・なか・おわり」「問題提起・仮説・検証・結論」といった物語や説明文の形式とは大きく違います。多様な表現方法を身に付けることは、学習に深まりや広まりを生み出すことになります。

 【写真から物語を作る】
 「新聞を読みたくても漢字が読めなくて…」という声をよく聞きますが、そんな子どもたちでも写真を見て何を言いたいか感じ取ることはできます。今日の紙面を見ても、スポーツ面の写真を見ると、だれがどんな種目で活躍したか知ることはできます。事件や事故の写真でも、どんなことが起きたのかも分かるはずです。
 そうして読み取ったことを話し合うと一人では気付かなかったことに気付いたり、新たな疑問を生み出したりして、読み取りを深めることができます。ある教科書では、一枚の写真から感じたことを元に自由に物語を作る学習を展開しています。
 子どもたちは、こうした学習を通して、一番言いたいことは何か的確に読み取る方法を学び、自分なりの解釈を加えて発信するおもしろさを体験的に学ぶことができます。日々の新聞をめくり、心に響く写真に出合ったら感じたことを家族や友達と話し合うことができれば、それだけで立派な学習が成立します。
 NIEの学習は、国語をはじめ3年生以降のさまざまな学習で行われます。新聞にはどんな特徴があるのか、どんな魅力があるのか、どのように新聞を作ればいいのかなど、3年生の段階で学ぶことができれば、それ以降の学習の貴重な財産とすることができると思います。

(山崎章成/浜松曳馬小)

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県内教諭の実践
=指定終了後も活動話題

2013年04月21日(日)付 朝刊


 本校では、平成23年度までNIEの指定を受け、2年間、実践に取り組んできました。私は、研修主任として、全校体制での実践をお願いしてきました。先生方の多くの実践により、この2年間で子どもが新聞を手にする機会が格段に増え、新聞に対する親しみも増してきました。また、中学年以上の学年で単元のまとめに新聞作りを取り入れてもらうことで、新聞の構成を意識したり、見出しにこだわったり、学年に応じたまとめ方ができるようになりました。
 実践指定校でなくなった今では、新聞が届けられていた時のように、学校内で新聞に触れる機会は少なくなりました。
 しかし、授業での子どもたちの様子から2年間の実践で多くの力が身についていることが分かります。新聞記事の構成を学んだ子どもたちは、今でも見出しを意識したり、要約文を考えたり、読み手を意識したりしたまとめ方が身についています。
 また、先生方も、新聞への親しませ方やまとめ方の指導、活用の仕方など、自分が実践し身についたことを、現在の学級での指導に生かしています。
 本校では、実践したメンバーが減ってきた今でも職員室の会話の中にNIEの話題が挙がることが少なくありません。「新聞ありき」の実践ではなく、普段の授業の中で新聞をどのように活用できるかということが、自然と話題となっているのではないでしょうか。
 指定を受けた2年間は、それを意識した実践を進めてきたわけですが、必ずしも指導の流れに必然性を持った授業ばかりではなかったように思います。しかし、その2年間の実践が、今の職員室での自然な会話につながっているのだと思います。
 今後も学習を効果的に進めるためのNIEの実践で積み上げてきた力を授業の中で生かしていきたいです。
(石原芳彦/東伊豆町立稲取小)

県内アドバイザー講座
=「隕石落下」科学を身近に

2013年04月14日(日)付 朝刊


 新聞の科学記事を紹介する取り組みを1年間続けると、生徒たちは科学ニュースに関心を持つようになります。理科好きな生徒は、より深く知ろうとし、理科が不得手な生徒も理科と日常生活との関わりに気づくようになります。
 インターネットでも科学ニュースは入手できますが、生徒たちにとって、文章表現が、やや難解なものが見受けられ、授業で紹介するためには一工夫する必要があります。新聞記事は、生徒たちが短時間で理解できる、分かりやすい文章表現等が使われています。これらを用いて生徒の理科学習に対する関心を高めたいと思っています。
 ロシア南部ウラル地方のチェリャビンスク州に今年2月15日に隕石[いんせき]が落下し、大きな被害がありました。このニュースはテレビやインターネットでも大きく報じられ、生徒たちも高い関心を持っていました。
 ロシアの隕石事件が、静岡新聞で、どのように取り上げられたかを振り返り、生徒に示す時のヒントを、拾ってみましょう。
 2月16日朝刊は、「ロシア南部隕石落下」等と、3面にわたる大きな扱いで報じました(記事①)。授業時間最初の数分間で、これらの記事を使って、生徒たちに、出来事を紹介する場合は、要点を絞る必要があります。
 隕石落下の際に発生した衝撃波で建物に被害が生じ、割れたガラス片などで多数の負傷者が出たこと、隕石のふるさとが小惑星であること、今回の隕石は小さく、落下の予測が難しいことを、写真を見せながら説明すると、理解しやすいでしょう。
 2月17日朝刊は、米航空宇宙局(NASA)の分析結果を取り上げ(記事②)、3月3日の週刊「YOMOっと静岡」(記事③)は、今回の隕石落下のイメージ図、隕石とは何かについての説明、過去の主な隕石一覧、今から約6500万年前の巨大隕石地球衝突による恐竜絶滅などを紹介しています。
 中学校理科の教科書・高校地学基礎の教科書には、小惑星のことと、隕石による恐竜絶滅についての記述があります。関連する教科書のページを示すことにより、これらの新聞記事が、予習復習にも役立ち、科学的な理解の一助となります。
 記事③は、浜松科学館で常設展示している篠ケ瀬隕石(県天然記念物)を紹介しています。県内では他に、ディスカバリーパーク焼津でも隕石の展示を行っています。これらの科学館では、隕石に直接触れたり、磁石を近づけたりすることができます。また、奇石博物館(富士宮市)では、チェリャビンスク隕石の実物を、今年5月初旬まで展示しています。理科学習では、実験や観察が大切です。記事を読んだ児童生徒は、隕石に興味を持つと思います。科学館などで、隕石の実物を見るように勧めると良いでしょう。
(吉川契子/静岡中央高)

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県内教諭の実践
=記者の視点で考え深め

2013年04月07日(日)付 朝刊


 浜松日体中・高等学校は昨年高等学校50周年、中学校は11年を迎えた、私立中高一貫校です。ちょうど、中学校の創始期に「NIE教育」もスタートされ、2年間を実践校として指定いただきました。当時、教科書ではない教材として新聞を扱うことは、教師にも生徒にも新鮮に映りました。
 まず中学生を対象に、国語の授業の中で扱いました。本校は私学なので授業時数は豊富にあり、「着実な学び」「誠実な行い」をキーワードとしていますので該当学年や学校の理解があったことで指定されたと考えています。学校の理解がなかったり、授業時間確保が難しかったりすると、NIEを実践したいと願っても厳しい現実の前にあきらめざるをえないことがあるでしょう。本校は恵まれていると思いました。
 授業では、グループ学習形態をとりました。社会、政治、経済、国際、スポーツ、芸能、総合などの分野から選択し、さらに分野の中で材を決め、支給いただいた各新聞を読み比べ、気がついたことを用紙にまとめて、発表・掲示までをひとつの実践としました。評価は討論の方法を拝借して、発表内容から発表態度までいくつかの項目で互いを評価し合いました。この方法はどこにでもある陳腐、稚拙な実践でしたが、知識欲旺盛な生徒はなかなか楽しんでいたようです。
 時事問題に興味を持ち、各紙の時事に対する論調の違いに気づいたら、それを分析する、そして、記者の視点をもって考えを深めてくれたらいいと考えていました。しかし、生徒は記事を分析するだけでは飽き足らず、その時事の歴史や経過を調べたり、本当に意図するところは伝わるのか、分かりやすく書くためにどうするか、など表現方法まで追究したりと学習は派生していきました。
 この実践の後、社会科の協力も得てあらたな取り組みをしました。一つの事柄に対する深い考察から発表の言葉づかいに至るまで、現在でも授業のみならず、学校行事の中でも生きています。
(米山秀也/浜松日体中・高)

県内アドバイザー講座
=緊張ほぐす自己紹介新聞

2013年03月31日(日)付 朝刊


 明日から新年度。今までにない環境や組織、人間関係という未知の世界への突入である。特に新しい学校・クラスに初めて顔をそろえた生徒は緊張し、ピリピリしているはずだ。担任はいかに早くこの緊張状態を緩和させ、スムーズな学級経営をスタートさせるかに心を砕くに違いない。
 そこで今回はアイスブレイキング(初対面の際の、コチコチに固まった緊張状態を解凍するという意味)の一助として、自己紹介新聞&名刺交換を提唱しよう。
 まず、図③のような書式で、生徒に名刺を作らせる。基本書式に加え、ニックネームや部活などの一言情報を書かせよう。初対面同士の会話が弾むよう、内容を工夫させることが肝要だ。また、視覚的インフォメーションも忘れずに。
 次の名刺交換の際に、教員は名刺を受け渡しマナーをキチンと教授すること。将来的に取り入れられるであろう、キャリア教育の第一歩と認識されたい。今後、高校生も自分の名刺を持ち、学校外の人と名刺交換をする状況になるに違いないからだ。
 閑話休題。アイスブレイキングの第一歩はコミュニケーションから。とにかく、会話する環境をつくり出すべし。名刺交換は図②のごとくなるべく遠くの席の、つまり出席番号の離れた相手とやり取りできるようにセッティングすること。
 自己紹介新聞は課題にし、図①の書式で作成、目標や抱負は必ず記述させる。年度当初の緊張感をモチベーションに転化する、良いきっかけになるだろう。
 年度当初の学級運営のスタートをNIEと併せて実施し、教員自身も己の抱負を新聞というカタチを借りて表現してみたらいかがだろうか。
 (「アドバイザー講座」は隔週掲載します)

(実石克巳/静岡市立高)

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