一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

県内アドバイザー講座
=テスト対策生徒が"取材"

2013年05月26日(日)付 朝刊


 新学期が始まって学校生活に慣れ、そろそろ定期テストの準備をしなければならない。この時期、絶対に読まれる新聞とは何か。それは「テスト対策新聞」である。勉強方法と重点ポイント、そして予想問題を教科の先生にインタビューし、新聞形式でまとめてみよう。
 以下、これは筆者(高校・国語)を取材した生徒とのやり取りの模様である。3年生なので、センター試験対策を目標とした内容となった。
 「先生、今、暇ですか?」
 突然、国語準備室の扉が開けられた。
 「暇ではない。教員にはヒマという二文字は存在しないのだ」
 「分かりました。それでは僕も受験生になりましたので、国語の勉強方法を教えてください」
 「なにやら会話の続き方がおかしいような気がするが、まあいい。考えながら読み、考えながら書き、考えながら発言することが大切だ。大体、君たちは何も考えとらん。現に、君だって私の授業ではいつも寝てばかりいるではないか」
 筆者は、彼の授業態度を注意した。優秀な教員は、毛筋ほどの機会を捉えて生徒に説教するものなのだ。
 「分かりました。聞く価値があるときは、ちゃんと起きてるんですが。今度から寝ないようにします」
 「とてつもなく軽く見られている気がするが、まあいい。しかし国語といっても、評論・小説・古文・漢文とセンター試験は四つの分野に分かれているんだぞ。そんなことも知らんのか、受験生のくせして」
 筆者は、彼のうかつさを指摘してやった。有能な教員は、わずかなチャンスをものにして生徒の過ちを正してやらなくてはならないものなのだ。
 「分かってます。つまり、全ての分野についてそれぞれ教えてほしい、ということをまとめていっただけなんです」
 「全くもってチョコザイな言い方に聞こえるが、まあいい。よし、聞け」
 「聞いてます」
 「うるさい。とりあえずは、センター試験に対する心構えを叩[たた]き込んでやる。いいか、国語は初日の午後、お昼ご飯の直後に始まるんだ。これが何を意味するか、分かるか?」
 「いえ、分かりません」
 「そうだろう、分かっていたら寝てられないはずだ。食後の眠気に負けてしまう者は、本番でも能力が発揮できない。君などはすでに、2年間も眠気に耐える努力を放棄してきたことになる。また、あらゆるテストの中で国語だけは唯一、目ん玉を上下に動かしつつ思考するのだ」
 「なるほど、確かに。縦書きの本文・選択肢は国語だけですね」
 「やっと、私に同意したな。眼球の動きと脳の働きは関連性が深いと言われている。横から縦に、脳の思考回路を切り替えねばならん。そのためには今日からコツコツと一日一題、過去問を解け。特に現代文は長距離走のトレーニングと同じで、日頃のプラクティスが不可欠だ。短期の追い込みが通用しない分、毎日の積み重ねがモノを言う。いつものような一夜漬けでは太刀打ちできないぞ」
 筆者は、彼の見通しの甘さに意見した。敏腕な教員は、ほんのささいなきっかけを見逃さず生徒の向上心を刺激するものなのだ。
 「分かりました。いつになく説得力のある、アドバイスです」
 「返す返すも生意気な返答だが、まあいい。次は問題に取り組む順番だ。最後尾の漢文から古文・評論、そして小説と後から前に解いていけ。マークする場所を間違えるなよ」と言うと、またもや彼はすかさず問い返してきた。
 「なんで、一番最後の漢文から解き始めるんですか?」
 「おお、君にしては良い質問だ。このわずかな会話で、ここまで君の国語力が伸びるとは。私もなかなか捨てたものではない」
 「先生の指導力とは、全く関係ないように思うんですが」と言いながらもどうしても解答順番の理由が知りたいようだ。
 「それはだな、知識量と読解力の比率によるのだ。漢文は最も暗記事項のボリュームで勝負するし、イチバン読解力を必要とするのは小説なのさ。そして、読解のための思考には、それなりの時間が不可欠なんだよ」
 (7月21日に続く)
(実石克巳/静岡市立高)

県内教諭の実践
=意識高め学びを広げる

2013年05月19日(日)付 朝刊


 6年生の総合的な学習の時間のテーマを「自分の将来を見つめよう」と設定しました。どんな職業があるのかを知ることから学びをスタートしました。いろいろな職業に従事する方をゲストティーチャーに迎え、仕事の内容や向かう姿勢、生き方を学びました。そして、関心のある職業でグループを作り、仕事について調べていきました。子どもたちの意欲を高めるには、目的意識をもたせることが大切だとすると、どうしたらいいのか考えました。
 そこで、「職業について発信しよう」という活動を組んで、全国小学校新聞コンクールがあることを紹介しました。子どもたちは、自分たちが調べたことを新聞にすることや、それをコンクールに応募するということに興味を持って取り組み始めました。インターネットや本だけでなく、家族の協力を得て資料集めをしたり、グループごとに、新聞がどのように読み手に分かりやすくするための工夫をしているか話し合ったりしながら、夢中になって新聞づくりに取り組みました。
 卒業間近、新聞コンクールの結果が届きました。6年生133人が全員で取り組んだことが評価され、「奨励賞」を受賞しました。子どもたちは、新聞づくりを実践したことで、お互いの意見を大切にしながらコミュニケーションを図っていく力や、ものを創り上げていくために必要な創造力を高めることができました。
 また、4年生の「新聞記者の一日先生」の学習から学んだ、レイアウトの仕方や小見出しの作り方などを確かな力に変えていくこともできました。
 インターネットの活用が日常化している現代ではありますが、これからも、知識や情報を得る手段として、新聞のよさをより身近に感じることができるように、学習の中で新聞を活用していきたいと考えています。
(鈴木典子/浜松曳馬小)

県内アドバイザー講座
=「社会の今」感じる材料に

2013年05月12日(日)付 朝刊


 新聞は社会の様子や出来事をタイムリーに写真や資料などを使って紹介しています。「社会の今」を伝えることは新聞の大きな役割の一つです。
 今回は「社会と接する窓口」としての新聞の特徴を生かした社会科(地理・公民)の授業を紹介します。この場合、新聞記事を授業に活用する方法には、大きく分けて二つあります。

 ■課題設定に活用
 一つは、単元の始めに「追究課題を設定するための資料」として活用する方法(表のA)です。矛盾や疑問、驚きなどを生む記事がよいと思います。
 ただし、授業を行う際に、常にタイムリーな記事があるとは限りませんので、日頃から利用できそうな記事をスクラップしておくことをお勧めします。

20130512図.JPG
 左の新聞記事は、「水」を窓口にして先進国と途上国との南北問題を紹介しています。この記事を読ませ、「何が問題なのか」「水の他にはどのような例があるのか」「南北問題とはどのような問題か」を考えさせます。その上で、「どうしたら解決できるのか」の追究課題を設定します。
 南北問題の解決は簡単なことではありません。子どもたちは解決策を探りながら、そのことに気づき、自分の問題として受け止めます。知恵を出し合って考えた子どもたち自身の解決策は大いに認め、価値づけたいと思います。

 ■解決のヒントも
 もう一つの方法は、「追究課題解決のためのヒントや資料」としての活用(表のB)です。
 この場合には、教師だけでなく、子どもがスクラップしておくと材料が見つけやすくなります。新聞記事のデータベースなどから探すのもよい方法です。
 例えば、南北問題を学習する場合には、途上国への援助に関する記事や輸出入に関する記事などが見つかると思います。
 また、地域の活性化を考える学習の場合には、さまざまなアイデアが新聞に取り上げられています。これらの記事は授業に大いに活用できます。学習を身近に感じさせることにも役立ちます。

 ■アンテナを高く
 子どもたちに「社会の今」を実感させるために、新聞の活用はたいへんに有効です。授業に使える情報が新聞に載っていないか、常にアンテナを高くしておきたいと思います。

(矢沢和宏/島田川根中校長)

県内教諭の実践
=ニュースを自ら「知る」

2013年05月05日(日)付 朝刊


 本校は、私立の中高一貫校であり、私はNIEの活動を今から8年前に中学生の担任の時に行いました。このときは、学年全体で行い、国語科、社会科を中心としてあるテーマに沿って記事をまとめてみたり、また自分自身の意見を述べたりということをし、その成果を発表会という形式で行いました。中学生にとって、新聞というものは「身近にあって、遠いもの」というような感覚があったことを覚えています。しかし、生徒は新聞を読むことで、さまざまな発見をし、また刺激を受け、徐々に当たり前のように新聞を開く姿を目にするようになりました。今でも、中学校には新聞コーナーが置いてあり、休み時間には新聞を開く生徒の姿が見られます。
 このNIEの実践の後から、私は高校の担任を務めています。科目は地歴公民であり、日本史、地理、現代社会、倫理、政治経済を担当しています。その中で、たびたび時事的なことを教えることがあります。そのときに、「そうだったんだ」という生徒の反応が返ってくることがあります。本来、時事的なことは、「教えられること」ではなく自分自身で「知ること」だと私は思っています。
 現在、生徒にとって情報はあふれています。インターネット等で必要以上に情報が集まり、生徒自身は必要と、不必要の区別がつかないようになってきているように感じます。そのなかで、高校生として、また社会へ巣立っていく人間として、必要な情報を的確にとらえるためにも、私は新聞が担うものは大きいと思っています。
 その上で、生徒自身が新聞に興味を持ち、自ら新聞を開き、そこで気づき、刺激を受け、自らの糧となるようになってほしいと感じています。そして、時事的なことを「教えられること」ではなく、「知ること」として生徒がとらえていけるようになればよいと思っています。
(田中洋平/磐田東中・高)