一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

県内アドバイザー講座
=事実と意見を区別し書く

2013年06月23日(日)付 朝刊


 小学校中学年の国語科では、「疑問に思ったことを調べて、報告する文章を書いたり、学級新聞などに表したりする」学習が行われます。「設定した相手、目的や場面に応じて、書く材料の収集や選択の仕方、まとめ方などを様々に工夫する」、「学級新聞の特徴に基づいて書く」、「複数の種類の文章を集めて編集し、見出しを付けたり記事を書いたり、割り付けをしたりする」(学習指導要領「国語」解説)学習をするため、4年では以下のようなさまざまな学習を行います。

 【学級新聞を作ろう】
 新聞を作るために、どんな活動をすればいいのかを学習します。4年生の発達段階を考え、どの子にも新聞の作り方をきちんと身に付けるため、グループ新聞を作る教科書が数多く見られます。ある教科書では、①グループで新聞作りの計画を立てる②割り付けを考え、記事の分担をする③取材をし、記事を書く④新聞を完成させるという段階を踏まえて学習展開をしています。
 新聞作りの学習は、中学年だけでなく、高学年から中学、高校でも生かされる大切な学習です。新聞の特徴をおさえ、より多くの読者の心をつかむ新聞作りの方法を身に付けさせたいものです。

 【今月のニュースを選ぶ】
 日々の生活の中でニュースになりそうな出来事を選び、言いたいことを分かりやすく伝える文章を書き、発表する学習です。出来事を分かりやすく伝えるポイントの一つ目は、大事なことを落とさない、すなわち5W1H(いつ、どこで、だれが、何を、なぜ、どのように)をおさえることです。
 二つ目は、事実と意見・感想を区別して書くことです。事実を正確にとらえ、何が重要なのか分かりやすく伝えることができるようになれば、素晴らしいと思いませんか。「分かりやすい文を書く」「メモのとり方を工夫する」「インタビューの仕方を考える」学習でも、5W1Hをおさえることが重視されています。
 学習を学校の中でとどめるのではなく、子どもたちが生活する実社会に広げる必要性は、年々強く言われます。ニュースを選ぶ学習は、子どもの視線を校内から家庭、地域社会へと広げることになります。同様な取り組みは国語の授業だけでなく、朝の会や帰りの会などでも行うことができます。

 【広告から情報を得る】
 子どもたちが情報を得るのは、文章からだけではありません。写真や絵からも得ることができます。新聞を見ると、さまざまな記事と同じくらいの量の広告を目にすることができます。多くの広告は、商品を売るためにその商品の特徴や優れているところを、できるだけ多くの人にうまく伝えようとしています。そんな広告の読み取り方を理解すると、正しく情報を得るコツや情報発信のあり方を身に付けることができます。

(山崎章成/浜松曳馬小)

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県内教諭の実践
=子どもと共に考える場

2013年06月16日(日)付 朝刊


 学習や活動の取り掛かりとして、子どもの興味や関心からスタートすることが多くある。「子どもたちはどんな思いを持っているのだろう」そんな時、日常的に新聞の切り抜き活動を行っていると、子どもたち一人一人の興味や関心などをつかみやすい。「○○さんは、関係ある記事を貼っていたよね」「僕も読んだよ」そんな会話から授業がスタートできる。
 本校では、毎年、6年生の児童がキャリア教育(生き方指導)の一環として、講師を招いて『世界』について話を聞く機会がある。その事前準備として、新聞の切り抜きを行わせ、「今、世の中はどんな様子なのか」について気付きを持たせるようにしている。中には「テレビ欄とスポーツ欄以外、初めて読んだ」という子もいれば、「家で新聞をとっていないからコンビニで買ってきて読んだ」というような子もいる。
 しかし、そんな子たちが活動を進めていくうちに「新聞って面白いね」と口にするようになり、保護者からも「話をする時間が増えた」とか「子どもなりに真面目に取り組んでいる様子がうれしかった」などの言葉をいただき、ファミリーフォーカスの意味でも価値ある活動になっていることを感じた。
 ただ、子どもたちの選ぶ記事は楽しい内容のものばかりではない。昨年度は「いじめ」「体罰」など痛々しい記事が数多く掲示板に並んだ。教師としては目をそらしたくなるような内容である。しかし、子どもたちがそうした記事に興味や関心を抱いたことにより、私自身が、子どもたちと共に考える場を与えられたと考えるようになり、「真剣に子どもたちと向き合っていかなければいけない」という思いを持つことができた。
 6年生で切り抜き体験をした子どもたちが、今、中学校でも実践指定を受けNIE活動に取り組んでいると聞いている。小学校と中学校が同じ取り組みを重ねていった時、必ず『生きる力』となって身についていくにちがいないと楽しみにしている。

(矢部厚/島田五和小)

県内アドバイザー講座
=環境月間に温暖化問題を

2013年06月09日(日)付 朝刊


 6月は国の「環境月間」です。全国で環境保全のためのさまざまな行事が行われます。児童生徒の関心が高い環境問題の一つが「地球温暖化」です。環境月間に合わせて新聞の関連記事を見せ、理科の授業はもちろんのこと、特別活動や「総合的な学習の時間」で、この問題を児童生徒に考えてもらう時間を作りたいものです。
 最初に、「地球温暖化」について、解説します。中学校理科や高校地学基礎の教科書に、「地球温暖化」が取り上げられています。学習前なら予習になり、学習後なら復習になります。小学生の場合、環境省のWebページ等に、児童向けに地球温暖化問題を解説した資料がありますので、利用して説明します。二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスが増えることが、地球温暖化の原因の一つであることを紹介した上で、関連記事を読みます。
 今年5月9日、ハワイのマウナロア観測所で、大気中のCO2濃度が、初めて400ppmを超え、最高値を記録しました(記事①)。ハワイ島のCO2濃度は世界の指標とされています。このままCO2が増え続けると、異常気象が常態化するなどの深刻な被害が出るおそれがあります。
 CO2など温室効果ガスの排出増による地球温暖化の影響は高山の氷河にも及んでいます。2012年のアルプスの氷河面積が、1960年代後半から70年代前半に比べて4割近く減少しました(記事②)。専門家は、洪水の発生などを招くおそれがある、と指摘しています。
 世界地図でアルプスやハワイ島の位置を確認してみましょう。どちらも、人間活動の影響が少ないはずの地域にあります。産業活動により排出されたCO2は、風に乗って地球をめぐっているのです。
 5月20日、米オクラホマ州で巨大な竜巻が発生して大きな被害がありました。日本では、昨年5月6日につくば市を竜巻が襲い、深刻な被害がありましたが、それを上回るスケールでした。専門家は、地球温暖化が進むと、日本でも今回のオクラホマ州で発生したクラスの竜巻が起こり得ると指摘しています。静岡でも、時々竜巻が発生しています。今後、温暖化が進んだ場合、静岡県で巨大竜巻が発生する可能性もあります。竜巻の記事を提示し、より深刻な事態を起こさないために対策を考え、実行する必要があることを説きます。
 子ども達が興味を持ったら、温暖化防止のために各自で実施できる活動を提案してもらい、可能なところから学校や家庭で取り組んでみるとよいでしょう。
 取り組みは短期間で終わらせないで、これから暑くなる夏に向けて継続していくとよいでしょう。
 児童生徒を対象とした、地球温暖化防止についてのテーマで応募が可能な、エコ活動等のコンクールが多数あります。作文・小論文・実践活動報告・自然科学研究などジャンルも幅広く、個人・グループ・学級単位・学校単位など、応募形態も多様です。多くのコンクールの締め切りは9月です。夏休みに地球温暖化防止の研究に取り組み、応募してみてはいかがでしょうか。
(吉川契子/静岡中央高)

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県内教諭の実践
=社説の要約や記事比較

2013年06月02日(日)付 朝刊


 十数年前「総合的な学習の時間」が高校でも始まり、NIE実践指定校として配給された各紙を活用させていただいた。それ以前から社会科の政経や現代社会の授業で新聞記事を教材として使用したり、テーマを決め1週間分のスクラップをさせてみたりと自分なりに「新聞を活用」していた。
 そして、現在の三島南高では「新聞講読とマルチメディア」という名の「学校設定科目」(1クラス約30人)をこの3年間担当している。例えばテーマ「今日は社説について学ぶ」では、社説について簡単な説明をし、学校の職員室や自宅の古い新聞を配布し、各自が社説の要約を行う。
 このように新聞全体の構成、5W1H、1面、コラム、投稿、広告、国際面、経済面、社会面などのテーマで切り抜き感想や意見を書かせ、新聞に慣れさせる。静岡、朝日や、毎日、読売、日経、ブロック紙の東京、日刊スポーツ、静岡の夕刊、朝日の別刷りなどを活用した。
 一方、「マルチメディア」ではパソコン室で新聞社のウェブページから記事を検索し比較させた。また、廊下の掲示板などに貼られている「ニュース写真」を配布し、報道写真の問題点を解説し、配布された写真の問題点を考えさせた。こうして、さまざまな視点で授業を展開した。
 2学期後半からは最後の仕上げとして、「新聞づくり」(A4両面)に取り組んだ。アンケートについて解説し、各自が興味あるテーマでアンケートを作成(クラス対象)、1年から3年の各クラスに依頼し、集計・分析を行い、新聞1面に載せる。2面にはそのアンケートに関する新聞記事やブログをネットで検索し、自分なりの文章に仕上げ、パソコン室で完成させ、アンケート依頼したクラスへ配布した。
 「新聞づくり」以外は1時間で完成し提出させ、評価したが、1週間の課題にさせるなど各自がじっくり取り組める事も必要であろう。また、記事を使った「ディベート」も今後の課題である。

(杉山和信/三島南高)