一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

県内アドバイザー講座
=地域への関心を高める

2013年12月22日(日)付 朝刊


 ■地域社会への低い関心
 近年、地域や社会への関心の低い子どもが多く見られます。全国学力学習状況調査の結果からも、その傾向が読み取れます。「地域や社会で起こっている問題や出来事に関心がある」と答えた子どもは小6・中3ともに50%台、「地域や社会をよくするために何をすべきか考えることがある」と答えた子どもは小6で39%、中3で27%でした。

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 ■新聞活用で地域を学ぶ
 地域への関心を高め、社会参画を促すために、今回は「新聞を活用して地域のよさを再発見し、地域の活性化を考える【地域への提言】」という総合的な学習の時間の実践を紹介します。《新聞記事1》地域のよさや地域に暮らす人々の努力・工夫が具体的に書かれている新聞記事を利用して進めます。《新聞記事2》
 《表》をご覧ください。新聞は受信から発信まで多様な活用が可能です。新聞に紹介された地域の人をゲストティーチャーに迎えて学習もできます。
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 ■新聞の効果的な活用
 《表》の①の段階では、できる限り自分の住む地域に関係する記事を集め、地域のよさに着目させます。
 ②③の段階では、地域の活性化に関わる人から活性化の方法や積極的な生き方を学びます。他地域の記事でもかまいません。かえって、自分の地域に応用して考える参考になります。
 ④の段階では、行政機関や企業、地域などの多くの人に提言を聞いてもらうことが大切です。新聞に投稿して発信もできます。発信は地域との関わりを深めます。提言の実現を応援してくださる方も出てきます。実現すれば、社会参画意識はさらに高まります。

 ■複数の学習効果を生む
 このように、新聞の活用で地域社会への関心や参画意識を高め、生き方を学ぶことができます。また、必然的に新聞のさまざまな種類の文章に触れることになり、語彙[ごい]が増え、読解力や実用的言語能力の向上にもつながります。

(矢沢和宏/島田川根中)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載
=家庭学習の確保、継続を

2013年12月07日(土)付 朝刊


 ■新聞を毎朝めくって見る「朝パラ」/記事中の知っている漢字に丸付け-家庭教育プロデューサー酒井勇介さん講演から
 親子で一緒に新聞に親しみながら学力を伸ばすこつを解説する家庭教育講演会「賢い子に育てる!」(静岡新聞社・静岡放送主催)が11月、県内3会場で開かれた。講師を務めたのは、元学研社員で家庭教育プロデューサーの酒井勇介さん(51)=さいたま市=。「新聞は家族の教科書」と強調し、毎朝、新聞をめくる「朝パラ」や、記事中の漢字に丸付けをする新聞活用術などを紹介した。

 親は子供に「勉強しなさい」と言いがちだが、それならば家庭学習の時間割を立てよう。1年間365日続けるのは大変なので、250日続ける忍耐力を持つのが大事。3日に1回は休んでよい。
 小学生までの学習場所は、リビング・ダイニングと寝室。朝は新聞を「めくる、見る」を繰り返す「朝パラ」を実践してほしい。見出し、写真などたくさんの情報が自然と目に入ってくる。記事中の知っている漢字に丸を付けさせるのも有効。漢字も覚えるし、自然に本文を読むようになる。速読の力は全ての教科の基礎になる。

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 寝る前の10分間は、読書をさせよう。「読みなさい」と無理強いはせず、「朝パラ」と同じようにページをめくらせるだけでも続けてほしい。
 学習指導要領の改訂後、国際理解教育が重要視されている。小学3~4年生で47都道府県の位置と名称、世界の主な国の名称を覚える必要がある。新聞記事に出てきた県や国を、地球儀や地図で調べる習慣をつけさせるとよい。社会や地理、歴史を理解するための素地ができる。寝る前に2分間、英語を聞かせるのも効果的。リスニング力がとてもつく。

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 静岡県は2013年度全国学力テストで小6国語Aが都道府県別最下位だった。トップの秋田と静岡では、土日の勉強時間と、復習時間に大差がある。小6で土日に1時間以上、家庭で勉強している児童は静岡の場合、全国平均よりも低く約50%。一方、秋田は85%だった。家庭での時間割を持ち、実践していくことが学力向上につながる。

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 最後に強調したいのは、評価は「学力×道徳心」で決まるということ。どちらかがゼロならばゼロになる。新聞記事を読み、社会で実際に起きていることを題材に家族が話し合うことで、善悪の判断ができるようになる。新聞は「家族の教科書」。学習にも道徳教育にも積極的に活用してほしい。
 (図表は日本新聞協会編「1日3分で学力アップ 親子で賢く新聞活用」から)

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 ■実践指定校を募集
 県NIE推進協議会は2014年度の新規実践指定校(小中高校計9校)を募集している。指定期間は原則2年。静岡新聞など県内発行の7紙を一定期間無料で提供する。
 申し込み、問い合わせは同協議会事務局(静岡新聞社ふれあい読者室内)<電054(284)9152>へ。締め切りは25日。応募多数の場合は校種、地域などを考慮して決める。

月刊一緒にNIE@しずおか(創刊号)第1土曜掲載
=教育見直す良い機会 学力テスト親子話題に 新聞で読解力身に付く

2013年11月02日(土)付 朝刊


 静岡県が全国学力テスト小学6年国語A(基礎問題)で最下位だった問題は、県内の教育現場、さらに家庭にも大きな波紋を広げた。この問題を報じる新聞を囲んで、家族で話し合うこともあるという前静岡市PTA連絡協議会長の尾崎行雄さんに話を聞いた。
 (編集委員・土屋英也)

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学力問題を報じる新聞を見て話し合う(右から)尾崎行雄さん、文哉さん、瑞さん=静岡市葵区黒俣


 ■学力テスト親子話題に 新聞で読解力身に付く-前静岡市PTA連絡協議会長・尾崎行雄さんに聞く
 -子どもたちはこの問題を新聞で読んで、どのように受け止めていますか。
 「高校3年の娘、瑞(静岡英和女学院高)と中学3年の息子、文哉(藁科中)がいますが、2人とも関心はあるようです。息子は基礎学力に関わることなので、対策は考えた方がいいという考え。娘は全国学力テストの経験がないので、ぴんと来ない面もあると話しています」

 -校長名公表をめぐる問題も報じられました。
 「息子は上位でも下位でも、校長名を出すことにどんな意味があるのか分からないと言います。2人が通った小学校が上位に入っていたことは娘も喜んでいました。小規模校なので、密度の濃い指導が続いているのだと思います」

 -この問題の子どもへの影響は。
 「教育関係者がこの問題によるストレスで、子どもに悪影響を及ぼさないことを望むし、本県教育を見直すいいきっかけになったと、プラス思考で捉えてほしい」

 -国語を中心に教育の検証も進んでいます。
 「子どもに付けさせたい学力の捉え方にずれがあったのではないか。本県は、引き出された子どもの考えは全て正解、ということを基本に、表現力を育もうとする。一方、文部科学省が求める学力は、事象に対する明確な答えを出せる力なのだと思います」

 -学力向上の道筋は。
 「主体は学校。向上策を授業にどう取り入れるか、考えてほしい。教育行政は短期、長期両面で支援策を実行してもらいたい」

 -家庭にも大きな役割があるのでは。
 「今年の日本PTA全国研究大会で『教育の原点は家庭にある』と宣言されました。学力は教師の力だけではなく、家庭の教育力にも起因する要素が多分にあると思います。保護者も関心を持つだけでなく、学校と同じベクトルで学力向上に取り組んでほしい」

 -国語力向上には新聞活用も有効。
 「国語力は全教科の学力向上を導くものだと思います。速読、読解力を高めるのに、新聞は身近なよい素材。学校と家庭が協力して、新聞記事を活用した学習を進めることで、国語力を筆頭に全教科の学力向上につなげてほしい。『父さん、3日分の新聞持って来て』と言ってスクラップノートを作る息子の注文に『はいよ』と答え、家族で新聞を活用できることに感謝しています」

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 ■静岡県の国語教育=学力調査活用、授業修正を(高木まさき・横浜国立大教育人間科学部長)
 静岡市で生まれ育った私には、本年度の全国学力・学習状況調査において、静岡県の小学6年生の国語A問題の結果が全国最下位だったとの知らせは大きな驚きでした。そこで「学習指導要領(国語)」作成や昨年度まで「全国的な学力調査の在り方等の検討に関する専門家会議」に関わった経験を踏まえて、感想を述べさせていただきます。
 まず当然のことながら、本調査の結果は児童には何の責任もありません。データで見る限り、早寝早起きや宿題をすることなど、きちっとした生活習慣が身につき、地域の行事やボランティアへの参加の割合も高く、立派なものです。
 では学校の指導はどうでしょう。実は学校の先生方もがんばっています。児童の考えを引き出す発問の工夫、話し合い活動や総合的な学習の指導など、むしろ熱心に行っています。先生方の研修も他県より盛んなくらいです。
 そうなりますと、どこに問題があるのでしょうか。実はちょっと気になるデータがあります。まず研修は盛んでも、講師を招聘[しょうへい]する研修は少ない。また学力調査が学校で十分生かされていない。これはとても危うい。現場が勘違いをしたまま指導する危険性が増すからです。学力調査は、そうした事態も想定して、学習指導要領の考え方を具現化して授業改善に資するよう「専門家会議」が強く悉皆[しっかい]調査を求めてきたものです。その活用が十分でないまま、外から講師も呼ばずにいると修正されるべき点も修正されず、本来は誇るべき「教育現場の実態」に即した「仲間が作ったテスト」も逆効果になる危険性が出てきます。A問題の後半部分の結果が軒並み悪かったのは、その証しのようにも思われます。
 1980年代に、それまでの学習主体を無視するような読解指導を批判して国語科に読者論が導入されました。しかしそれは安易な学力観も生み出したため、修正されて今日に至っていますが、本紙記事を見る限り、静岡県ではそれが修正されていない可能性があります。「書くこと」にしても、見たまま感じたままを書くという生活綴方[つづりかた]的な伝統が修正されずにいることが危惧されます。要するに、身につけさせたい知識や技能、育みたい思考力等が曖昧なまま、ただ活動を繰り返してはいないでしょうか。
 そう考えますと合点のいくデータがあります。児童に質問した国語の勉強は好きか、大切だと思うか、内容は分かるか、社会で役立つと思うか、といった数値が軒並み低いことです。教師なら誰でも知っていることですが、勉強の苦手な子でも授業を評価する目は確かです。静岡県の児童の反応はその表れなのかもしれません。
 とはいえ、私は悲観していません。これだけ生活習慣がしっかりした児童に対して、こんなに熱心に向き合おうとしている先生方がいる。ちょっと修正を施せば状況は大いに改善されるに違いありません。その際、一助となるのがNIEです。日本のNIE発祥の地である静岡県の先生方の力を信じています。

 ▽たかぎ・まさき
 1958年、静岡市生まれ。清水東高―筑波大卒。上越教育大講師、旧文部省教科書調査官などを経て、2004年から横浜国立大教育人間科学部教授。12年4月から同学部長。日本NIE学会常任理事

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 ■浜松有玉小で公開授業
 県NIE推進協議会は28日午後2時40分から、NIE実践指定校の浜松市立有玉小で公開授業を行う。同校の浅野慶太郎教諭が6年生社会科で「戦争から平和へ」をテーマに授業する。
 教育関係者の参観を募集している。14日までに県NIE推進協議会事務局<電054(284)9152>へ。
 

県内教諭の実践
=投稿読み視点を転換

2013年12月15日(日)付 朝刊


 今夏、NIE静岡大会に参加させていただきあらためて、現代における「新聞」と生徒を取り巻く環境について考えさせられました。
 この20年で、携帯電話やインターネットが急速に発展、普及し、当初は大方便利なツールだと思われていました。インターネットが、ほとんどの家庭に普及し出すと教育現場でも変化が見え始めました。私が担当する保健の授業で、各生徒が1週間に一つ健康やスポーツに関する記事のスクラップ作りをしていました。ある年の最初の授業で、スクラップ作りの説明をしました。すると、生徒から「先生、家で新聞を取ってないんですけど、どうしたらいいですか」と質問が出ました。一瞬の驚きと、そんな家庭があるんだなと感じたことが思い出されます。それ以降、残念なことにその数が年々増え続け、1クラスで5人を超した年にスクラップ作りを諦めました。
 また、ガラケーからスマホへの機種変更は子どもたちの向く方向を大きく変えたように思います。児童期ゲームに熱中し、中・高校生でスマホに向かい、子どもたちの視点は常に仲間に向けられるようになりました。その傾向をより一層強くしたのは、SNSではないでしょうか。子どもたちは、いつも同級生の目、何を言っているのかに気を使っています。社会は、インターネットの普及により大量な情報が入りやすくなりました。しかし、教育現場の主役である生徒たちに入る情報は同級生のことであふれているのが現状です。
 そんな中、本校では1年生に視点を同級生から社会へと移動させるために、静岡新聞の「ひろば」の欄を活用しています。生徒たちに、「ひろば」の意見を印刷し、1週間に1度配布して感想や意見を書かせています。小さな一歩ですが、新聞を読み同世代の高校生がどのような事柄にどんな意見を持っているか知るところから始めています。そして、活字に触れ理解力を高め、感情をコントロールし、優しい子どもたちに成長することを願っています。
(山田忠/春野高)

県内アドバイザー講座
=効果的に読み、国語力養う

2013年12月08日(日)付 朝刊


 小学6年生、中学生以上の皆さんと、保護者、先生方にお願いします。今日の新聞の中から気に入った記事を一つ見つけましょう。記事が見つかったら、【問い】に答えて下さい。
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 4月の全国学力テストの中学校国語Bに登場した新聞記事の書き方の特徴を問う問題

 この問いは、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)でここ数年間に出題された問題をヒントに作成しました。
 全国学力テストに新聞に関する問題が出題された趣旨は、「必要な情報を得るために、新聞記事を効果的に読むことができるかどうかをみる」ことにあります。小学校の高学年の段階で、新聞記事の内容を的確にとらえ、必要な情報を得るために「逆三角形の構成」と呼ばれる、見出し・リード・本文の三つの関係を理解することが求められているのです。その上で、読者の目的に応じて記事の概要を読み取ったり、詳細な情報を取り出したりするなど、効果的な読み方を工夫することが必要であると指摘されています(「全国学力・学習状況調査調査結果について」国立教育政策研究所)。
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 国語の学力をいかに付けるか、県内各地でさまざまな人々が真剣に考えています。その一つの方法として、日々発行されている新聞を読むことをお勧めします。膨大な情報量が盛り込まれた大人向けに発行された新聞の全てを読みこなすことは難しいことですが、読める記事の読める箇所だけでもいいので毎日読むことが大切です。
 これからは既習事項を再構成する力だけではなく、初めて出合うことに対しても自分の考えを持ち、対応する力を養うことが要求されます。そうした力を育む可能性が、新聞にはあるのです。

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(山崎章成/浜松曳馬小)
 (「アドバイザー講座」は隔週掲載します)

県内教諭の実践
=投稿から社会と交わり

2013年12月01日(日)付 朝刊


 玉川中学校は、静岡市北部にある全校生徒18人の学校です。山間部にあるため朝刊の到着はまちまちで、朝の早い中学生が家で朝刊を見ることは難しい状況にあります。新聞に親しみ、新聞を窓口に社会とかかわる生徒を育てるためには、工夫が必要だと考えています。
 昨年度、3人の3年生とともに、社会科の授業で日本の領土問題について学びました。新聞記事や外務省のHP、雑誌の特集記事などの資料をもとに玉川版国際司法裁判所で議論をするという展開で、最後に自分の考えをまとめて新聞の投書欄に投稿しました。1人の生徒の文章を掲載していただき喜んでいると、それをきっかけに70代の方や高校生、中学生などから次々に意見が寄せられました。新聞紙上で地域や世代の異なる方々とかかわり、一方的に情報を受け取るだけでなく発信することで、社会参加の可能性が広がることを実感できました。
 今年度は、静岡新聞社総合メディア局の方を講師にお招きし、新聞データベースの活用方法について全校で学びました。生徒たちは自分の誕生日当日の出来事や、総合的な学習の時間に取り組んでいる課題のキーワードを検索し、記事を読んで理解を深めていました。データベースの記事検索では、「新しい順」や「古い順」に記事を並べて社会事象の変遷をたどったり、インターネット上の情報と比較したりして、資料としての新聞の特性や価値に気づくことができました。
 また、今年11月より生徒専用の新聞閲覧コーナーを開設しました。これは、卒業生のご厚意によって、毎日生徒用に届けられる新聞を活用させていただくものです。休み時間や放課後、生徒が新聞を広げている姿を時々見かけるようになりました。声をかけると「<学力>や<地域の防災>の見出しが気になったので」という答えが返ってきました。
 激しい変化と情報化の時代に、新聞を活用した学びの場を生徒たちに提供し、社会を見る眼を育てていきたいと思います。
(横井香織/静岡玉川中)