一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

県内教諭の実践
=持続発展考える材料に

2014年02月23日(日)付 朝刊


 天城中学校は「持続可能な開発のための教育(ESD)」を推進するユネスコスクールに、県下初(2009年)の認定校として登録された学校です。ESDに関しては主に、「総合的な学習の時間」を利用して「ふるさと天城」を舞台に、地域と環境の持続可能性を主軸に行ってきました。
 具体的には、天城の自然をどう守っていくのかを追究する中で、伊豆森林管理署に依頼し、天城山系に鹿柵を設置し、植生の経年変化を観察しています。その取り組みの様子は広く紹介されています。その他、多方面へ追究が及んでいますが、中学生の取り組みですので、どうしても視野が狭くなってしまいます。そこで大活躍しているのが、各社の新聞です。
 ESDの視点から、さまざまな新聞記事を切り取ってきては、自分の考えを書いてくる。今は社会科の授業で実施しているだけですが、最初の3分間「ESDタイム」を作り、4人1班で、担当の生徒が切り取ってきた新聞記事をもとに話し合いをしています。生徒達にとってこの活動は大変好評で、例えば、「僕は東駿河湾環状道路の開通は、伊豆半島の発展にとても有効であると思います」など、ESDの視点に沿って述べ合うことができています。
 さまざまな出来事を知り、視野が広がり、ちょっと大人になった気分を味わうことができる「ESDタイム」は人気の時間です。その効果が、社会科への関心を高めることにも一役買っています。
 とかく、自分に関係しないと思っている世界の国々の学習も、「地球の持続発展」の視点に立てば、同じ地球人だという立場から、人ごとでない問題としてとらえることができるようになります。また地域活性化のアイディアも満載されており、どうしてその地域が持続発展しているのかも、幅広く考えれるようになりました。
 私は「新聞はESDの宝庫」という気持ちを強く持ち、感謝しています。
(西原隆博/伊豆天城中)

県内アドバイザー講座
=「朝新聞」始めてみました

2014年02月15日(土)付 朝刊


 私の勤務する川根中学校では、『朝新聞』を始めました。「朝読書」の時間(15分間)を使い、1~2週間に1回行っています。

 ■『朝新聞』のねらい
 【資料1】のように、読解力・表現力などの学力向上のほか、社会のできごとや伝統文化、地域への関心を高め、さまざまな生き方を学ぶねらいもあります。

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 ■『朝新聞』の進め方
 【資料2】は1月に行った『朝新聞』の例です。地域活性化の工夫を学ぶため、学区に関係する記事の切り抜きを使いました。記事を読んで三つの問いに答えます。問いの1、2は主として読み取る力、3は条件にしたがって書く力をつけるためのものです。

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 【資料3】は「解答例と解説」です。生徒は帰りの会の中で、自分の解答と比べて確認します。生徒の解答を見ると、読み取りはできていますが、条件に合わせて書くことに課題がありました。次回はこの点をふまえた工夫が必要です。
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 ■どんな記事を使うか20140215 4.jpg
 新聞は、「社会の今」に触れるチャンスですから、その視点で『朝新聞』の記事を選ぶこともできます。
 また、新聞は魅力的な生き方をタイムリーで簡潔に紹介していますから、生き方を学ぶ視点での記事選びも効果的です。
 例えば、イチロー選手が日米4000本安打を達成したときには、「8000回以上の悔しさ 誇り」が記事の見出しになりました。この見出しを見るだけでも生き方がわかりますし、見出しをヒントに本文を読むとさらに理解しやすくなります。逆に、本文を読んでから、自分で見出しを付ける方法もあります。記事で最も伝えたいことを確認できるはずです。
 生徒や学校が取り上げられた記事も利用できます【右の記事参照】。

 

 

関心が薄れがちな年中行事や伝統文化を紹介する記事も有効です。
 これからも『朝新聞』で社会や地域への関心を高め、生き方を学びながら、地道に学力の向上に努めていきたいと考えています。
(矢沢和宏/島田川根中)

県内教諭の実践
=「新聞ありき」ではなく

2014年02月09日(日)付 朝刊


 11月28日、浜松市立有玉小学校のNIE公開授業を参観させていただきました。とはいえ、私はNIEの意味こそ知れども、実践はおろか授業への新聞活用の意識も低かった、いわば「NIE素人教師」でした。そのような私が、なぜNIE公開授業へ参加することになったのでしょうか。
 実は、同校の校長先生と教頭先生のお2人が、二十数年前、初任校で公私ともに大変お世話になった恩人であると同時に、常に背中を追い続けた大先輩だったからです。ゴールデンコンビが経営する学校で、学力向上への取り組みとして注目し始めたNIEの公開授業が行われることを、たまたま新聞で見つけました。必然的な再会は、私の使命であると直感し自ら参観を申し込んだ次第でした。
 さすがにNIE公開授業だけあって、指導案には「新聞記事」という言葉が10カ所も登場し、授業者のNIEに対する意識の高さと意気込みを感じました。
 本時で使われた新聞記事は、導入で扱った浜松市の不発弾処理に関するタイムリーな記事と、小学生朝日新聞に掲載された学徒出陣、学童疎開の紹介記事、軍事訓練、軍需工場、小学生国語教科書等の写真資料でした。そこから読み解いたことを付箋[ふせん]に書き込み、グループごと模造紙にまとめ、最後に各代表が発表するという展開でした。その様子から、子どもたちが日頃から新聞の読解に慣れ親しんでいることが十分うかがえました。
 例えば、当時の新聞統制下での記事(データ)を、国民がどのように考えていたかを問題として扱う展開も考えられましたが、本時の目標に到達させる効果的な資料活用という視点で考えると、それは浅はかな考えだと実感しました。つまりNIE授業は「新聞ありき」ではなく、子どもたちの実態やつけたい力に応じて、必要な資料を効果的に活用することが重要であることを学ばせていただきました。
 来年度、本校もNIE実践校への参加申し込みをしました。いきなり背伸びをせずに、まずは毎日読んでいる新聞の中から、授業で使えそうな記事があったら、切り抜くところから始めてみようと思います。
 そんな実践の積み上げを、いつかは2人の大先輩に見ていただけたら幸いです。
(望月敏行/富士田子浦小)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載
=新聞に親しむ 販売店が一役

2014年02月01日(土)付 朝刊


 ■新聞に親しむ、販売店が一役-学校で「命の授業」/切り抜き作品審査 
 新聞販売店によるNIE活動への取り組みが、県内で広がりを見せ始めている。子供たちに「命の大切さ」を伝えるために、新聞を活用したり、「まず新聞に触れてもらおう」と切り抜きコンテストを実施したりと、読者とじかに接する立場を生かし、地域に根差した活動を進めている。

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 藤枝市の藤枝江崎新聞店(江崎晴城社長)がNIE活動に取り組み始めたのは、2008年に同社の創業70周年記念で市内の全15小学校に自動体外式除細動器(AED)を寄贈したのがきっかけだった。ただ贈るだけでなく、使い方の指導も、と消防本部の協力を得て救急救命教室を各校で開いた。さらに救命措置が功を奏した事例などを新聞記者が新聞記事で紹介し、新聞の役割を伝える講座も加え、全体を「命の大切さを伝える授業」と位置付けた。
 この「命の大切さを伝える授業」は東日本大震災のあった11年以降、大きく変わった。同新聞店の取り組みや学校側の受け止めにも変化が見られたが、何より、新聞、テレビなどで震災の惨状を目の当たりにした子供たちの、「授業」に臨む姿勢が変わった、という。「授業」では被害を伝える紙面とともに、救援金寄託者の名前で埋まった紙面を紹介し、支え合いの大切さも伝えた。江崎社長は「充実した授業を展開するには、学校側とのコミュニケーションが重要。今後はさらに連携を密にしたい」と課題も見据える。
 地域の子供たちを対象に、昨年から「新聞切り抜きコンテスト」を展開しているのは、浜松市中区の柳原新聞店(柳原一貴社長)。新聞読者の広がりを図る中で、「子供のころから新聞に親しんでもらう」という長期戦略に行き着いた、と新村久予・本社統括部長は話す。

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 子供たちの興味を引くため、昨年6月に実施した第1回コンテストの表彰式はお笑い芸人のステージも組み合わせた。しかし、新村さんの目に映ったのは、お笑いステージではなく、切り抜き作品の紹介を食い入るように見つめる子供たちや家族の姿だった。そこで、8月の2回目、11月の3回目はお笑いステージと切り離し、2部構成とした。3回とも30~40件の応募があり、大きな変動はなかった。
 「表彰式では、応募全作品をプロジェクターでスクリーンに映し、審査員が1点1点講評するんです。子供たちはそれが楽しみなんですね」と話す新村さんは、「方向性が見えてきた」と新たな展開にさらに知恵を絞る。

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 ■NIE楽しくやさしく(2)=新聞を「見る」楽しみを
 スピード重視の現代社会が忘れていることに、「凝視する」「立ち止まって、落ち着いて、じっくり見る」という姿勢が欠けているという指摘があります。ある意味、現代人は「無駄を嫌う」傾向にあると言えるのかもしれません。
 例えばインターネットなどの情報機器を巧みに使いこなす人たちは、無駄なくほしい情報を直線的、効率的に引き出しています。私にとってはまさに神業です。それに比べ新聞は実に多彩な顔を持ち、時間軸、空間軸が織り込まれ、私たちの暮らしとの関わりや社会に生きる人々の喜怒哀楽がふんだんに盛り込まれています。情報を瞬時に手に入れたいと考えている人たちにとって、新聞はいったいどのような存在として見えているのか、大変気になる点です。
 そこで新聞のすべての記事に付けられている見出しに注目してみましょう。見出しは紙面を見て必ず目に入ってくるものです。見出しを見て多くの人はその記事を読むかどうか判断しています。一方、新聞の編集者も、短い言葉で素早く記事の中身が分かるように、文字の大きさや配置、書体にまで気を配って見出しをつけているといいます。新聞をじっくり読まなくても、新聞をパラパラめくりながら見出しを追うだけで、世の中の動きが瞬時に分かるといっても過言ではないでしょう。
 また新聞には、記事内容をビジュアル化した写真やグラフやイラストなどがふんだんに散りばめられており、多くの情報を「読み取る」というよりも「見る」という点が工夫・配慮がされているのです。
 新聞の見出しや写真などを「見る」ことは、私たちが何気なく触れただけ、「チラッ」と見ただけのものが鮮明に記憶されているという日常生活での経験のように、瞬時に社会や暮らしの状況、人々の生きざまなどを多面的・多角的に映し出したり、関連付けたりすることができるアイテムとなるのです。
 新聞を読むのではなく、まず新聞を「見る」楽しみを見つけてみてはどうでしょうか?
 (安藤雅之・常葉大大学院教授)

県内アドバイザー講座
=各教科に生かせる学び方

2014年02月02日(日)付 朝刊


 6年生の国語の教科書をみると、NIEにかかわるさまざまな学習が行われていることが分かります。NIEの学習を通して、情報を読み取る力をはじめ、考える力や書く力など、総合的に身に付けることができるのです。

 【新聞の投書を読み比べよう】
 新聞の投書を通して、自分の意見や主張を述べる時は、根拠となる事実や資料を使って理由付けをする大切さを学びます。この学習では、日記や作文を投書することを目的にするのではなく、読み手を説得するためのより効果的な意見文の書き方を指導することが大切です。

 【ふるさとの良さを紹介しよう】
 新聞やパンフレット、文集、ポスターなど、子どもたちが学習してきた表現方法の中で、より多くの人に分かりやすく情報を発信するためにどのような新聞を作ればいいのかを考えます。紙面作りに工夫をこらし、編集の仕方を実践的に学びましょう。

 【メディア・リテラシー入門】
 新聞やテレビ、ラジオ、インターネットなどの情報を鵜呑[うの]みにするのではなく、自分なりの価値判断で読み進めたり、より良い情報を選ぶ力を付ける大切さを学習します。メディア・リテラシーについては、「総合的学習の時間」「道徳」などでも学習します。

 【このニュース、わたしはこう思う】
 自分の意見がよく伝わるように発表の仕方を工夫したり、互いの考え方について話し合うことで多面的なものの見方をする大切さを学びます。「メディア・リテラシー」の学習同様、情報を鵜呑みにするのではなく、自分の意見をしっかり持ち、その上で人の意見を聞くことによって考えを深めたり広めたりすることが重要です。

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 【ニュースと編集について】
 インタビューのメモをもとに、伝えたいことをより分かりやすく表現するにはどうしたらいいかを新聞の編集の仕方を参考にしながら考えます。子どもの表現力を多様にする格好の教材です。
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 年間を通じて、小学校で行われているNIEにかかわる学習内容の一端を紹介してきました。お気づきの通り、1年から6年までどの学年にもNIEにかかわる教材があります。これ以外にも「広告の読み取り方」「新聞にまとめよう」といった学習は、社会や理科などさまざまな教科で行われています。そうした教材が、NIEにかかわることが意識されずに学習されているのが現状です。教師の皆さんには、NIEの世界を知ることによって「何をどのように教えたらいいのか」「より効果的な指導方法にどのようなものがあるか」をぜひ知ってほしいと思います。子どもや保護者の皆さんには、NIEは新聞記事を読むことだけではなく、日々の学習の基盤を作り、社会に出てからも役立つ学び方を学ぶものであることを、ぜひ分かっていただけたらと願います。
(山崎章成/浜松曳馬小)