一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

Q&A
=小学生には難しい?

2014年04月27日(日)付 朝刊


 NIEの魅力は分かりますが、小学生では一般紙を使うのは無理なのではないでしょうか。(浜松・保護者)
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 ■まず写真から読み進めて
 【答】新聞は、一番言いたいことが見出しや写真を使って一目で分かる工夫がされています。そのため、記事を読まなくても、見出しや写真から何を言いたいのか知ることができます。例えばプロ野球の記事では、写真を見ればどのチームが勝ったか分かります。
 新聞を最終面まで見わたしてみると、小学校の低学年の子でも興味を引きそうな写真が見つかるはずです。そんな写真について、何が分かるのかを話し合えば、記事を読む訓練になります。さらに、読める見出しがあればさらに理解の度合いが深まります。まずは写真、その後で見出し、本文の記事と読み進むにつれて、記事の理解もより確かなものになります。
 新聞も「大人になってから読めばいい」「難しいから読むのは無理」と思うのではなく、子どもの発達段階に応じた読み方を教えれば、新聞から情報を得る楽しさを味わうことができます。そうした経験を繰り返すうちに、一人で新聞を読めるようになっていきます。
 (浜松曳馬小・山崎章成=NIEアドバイザー)

Q&A
=同じ実践でいいか

2014年04月20日(日)付 朝刊


 新聞や冊子で実践方法が紹介され、県NIE推進協議会発行の報告書もあり、多くの実践例を目にしますが、同じことだけしていていいのでしょうか。何か新しい実践が必要ではないでしょうか。(静岡・中学校教諭)

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 ■アレンジ、改良して工夫を
 【答】さまざまな報告書や冊子、新聞、インターネットなどを通して、実に多くのNIEの実践を知ることが可能です。しかし、それらはあくまでも「例」です。
 学習のねらいや子どもたちの実態、タイミングなどで新聞の活用の仕方は異なります。「自校(自分)に合った実践をつくる」ことが大切ですが、まずは、学習のねらいや自校の子どもたちの実態に合うように「実践例を少しだけアレンジ」してみてはどうでしょうか。アレンジすれば、立派な「新しい実践」となります。実践を改良していけば、「自校ならでは・自分らしい」実践になっていきます。
 さまざまな実践例からアイデアを遠慮なくいただきましょう。多くの人が実践すれば、情報交換が活発になり、実践は深まっていくと思います。NIEに「こうしなければ」という決まった形はありません。自由に実践を工夫できるのがNIEの魅力の一つです。
 (島田川根中・矢沢和宏=NIEアドバイザー)

Q&A
=新聞取っていない

2014年04月13日(日)付 朝刊


 NIEに取り組もうと思うのですが、私のクラスには新聞を取っていない家庭があります。そんな場合は、どんな工夫をすれば良いのでしょうか。
 (浜松市・小学校教諭)

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 ■授業の目的に合った記事用意
 【答】NIEを実践することでどんな力を付けたいのか、考えてみましょう。「大事なことを押さえた作文を書かせたい」「魅力のある題名を付けさせたい」「校外学習の取材の仕方を教えたい」等、さまざまな課題が予想されます。こうした課題を解決するために、全員が家から新聞を持ってくる必要はありません。個々の課題を解決するために適した記事を教師が事前に用意し、どのような授業を展開したら良いのか考えることをお勧めします。
 授業では、特徴的な記事を使ってどの子にも着実に力を付けた後、今度は新聞から自分で探してみようと投げかければ、子どもたちは家庭でも自然に新聞に興味をもつようになります。ポイントは紙面の活用を目的とせず、新聞を活用した後、子どもたちにどんな力を身に付けさせるかを明確にした指導をすることだと思います。
 静岡新聞は、県教委、静岡・浜松両市教委と新聞活用協定を結びました。今まで以上に新聞紙面を積極的に使用することができますので、協定の内容を確認してください。
 (浜松曳馬小・山崎章成=NIEアドバイザー)

Q&A
=新聞ありき?

2014年04月06日(日)付 朝刊


 昨年度、実践校に指定されました。「NIE」というと、新聞ありきのような気がします。どのような取り組みが必要ですか。
(静岡・中学校教諭)

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 ■楽しく長続きすることが大切
 【答】「まず新聞ありき」では、新聞の活用が逆効果になることも考えられます。子どもたちの興味・関心や問題意識などの実態に合わなかったり、学習活動のねらいに結びつかなかったりするからです。
 NIEは「学習を効果的に行うための選択肢の一つ」と考えるとよいと思います。「授業や学習活動のねらいを達成するために新聞の活用が効果的」と判断したときがNIEの出番です。
 NIEは「楽しく、長続きする」ことが何より大切です。子どもの目線に立ち、子どもの関心や必要感、学習での必然性を重視して楽しく新聞を活用します。その際、新聞の特徴(一覧性、網羅性、即時性、詳報性、解説性、分析性、記録性、保存性、再読性、啓発性、加工性、吟味性、信頼性…)などのうち、どれが学習効果につながるのかを意識して活用しましょう。
 また、「新聞記者(新聞社)の仕事」「新聞づくり」「文章に見出しを付ける」など、新聞そのものを使わないNIEの実践も数多くあります。
(島田川根中・矢沢和宏=NIEアドバイザー)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載
=大学生活新聞を身近に

2014年04月05日(土)付 朝刊


 高校時代に「しずおか新聞感想文コンクール」(静岡新聞社主催)最優秀賞のほか小論文やエッセーなど数々の全国コンクールで最高賞を受賞した清水東高出身の城内[きうち]香葉[かえで]さん(慶応大2年)、過去4回の「いっしょに読もう新聞! コンクール」(日本新聞協会主催)で県内ただ1人、優秀賞を獲得した静岡城北高出身の宗野[そうの]幸紀[ゆき]さん(都留文科大3年)は、今も新聞を身近に、充実した大学生活を送っている。2人に新聞に対する思いを寄せてもらった。

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 ■自分のペースで理解-城内香葉(慶応大2年)
 この本に出合えて良かったと思うことがあるように、「この記事に出合えて良かった」と思う瞬間がある。
 ゆとり教育真っただ中の小学校の時、総合的学習が導入され、巴川の探検や、地域でのふれあい、新聞記事のスクラップに好奇心を詰め込んだ。環境保護、インクルーシブ教育、国際理解...。あのころ、少し背伸びをして興味を抱いた記事の宝のスクラップは、今の私の大学での研究にそのままつながっている。
 新聞媒体の魅力は、活字が物語るインパクトと、自分のペースで理解を進められる心地良さだ。新聞は、自分の関心の有無に関係なく「これくらいは知っておけよ」と語りかけ、世の中の注目度の高さは、見出しの大きさが示してくれる。
 また、地域に密着した話題が豊富だという点も魅力の一つだ。今にも手が届きそうな身近なニュースは、発見、周知から実践への足掛かりとなる。
 しかし、伝える側の難しさに触れ、考えさせられることも多い。がれきの受け入れ問題、高齢化問題など、関わる相手への配慮に欠けた○○問題という表現に違和感を覚え、もっと優しい伝え方はないものかと、文章表現を追究する。
 新聞は、読む、書くを新鮮に学ぶ場であり、世代を超えて共有できる課題や社会とのつながりがある。忘れ去られていく記事であっても、目にした瞬間心揺さぶられ、五感に働きかけ、善悪を考察していくことの意味は大きいはずだ。
 学校教育で、家庭で、新聞コンクールを通じて、ますます活発に意見交換できる場が増えることを願っている。

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 ■多角的な視点を養う-宗野幸紀(都留文科大3年)
 2月、江戸末期の「文久二(1862)年正月元日」と記された日本最初の新聞が京都で発見されたそうだ。
 近頃では、パソコンやスマートフォンといった電子端末を使い、インターネットから情報を得ることのほうが多いという人もたくさんいるだろう。また、それらの機能の中には、自分の興味のある分野や内容のみに絞りこんで情報を得るというサービスもあるそうだ。
 しかし、そのような情報の得方では、得られる情報に偏りが生じてしまうのではないだろうか。物事には必ず結果がある。結果は、何かしらの原因が存在してこそ起こりうることである。また、その原因はひとつやふたつではないだろう。さまざまな原因が複雑に絡みあい、結果が生じるのではないだろうか。
 ひとつの物事を考えるときには、多種多様な原因を考える、多角的な視点が必要となってくる。情報を利便性や趣味嗜好[しこう]で意図的に絞り込んでしまっては、得られる情報にどうしても偏りが生じてしまう。そうした点において、新聞にはあらゆる分野の記事があり、まんべんなく情報を得ることができ、鳥になったかのように新聞を広げ、俯瞰[ふかん]して情報を見渡すことができる。
 大学生になり、より専門的な分野を研究するようになったが、新聞を読むことで培われてきた、「多角的に物事を捉える」ということを忘れないように心がけている。江戸の時代から人々に愛され、親しまれてきた新聞とともにこれからも学びを深めていきたい。

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 ■NIE楽しくやさしく(4)=新聞社の工夫を知る
 新聞が読みづらいと感じたことはありませんか。各社は、「読みやすい紙面」とするために、①記事②文字③見出し④写真(図、イラスト等)⑤レイアウト(デザイン)をさまざまに工夫しています。
 特に近年の新聞では「大きな文字化」と「矩形[くけい]処理」が目をひきます。「大きな文字化」の背景には読者の高齢化と若者の新聞離れ対策があるといわれます。文字が大きくなり行間が広がることによって、ルビ(ふりがな)も見やすくなり、目にやさしく、読みやすい新聞となるのです。
 新聞は多くの場合1㌻15段の構成をとっています。明治から昭和初期まで各社は自由な文字の大きさや段構成を採用していました。戦後は紙不足が続いたため、段数を増やして記事を詰め込み、文字も小さくなりました。その後、1㌻15段、1段15字という規格に統一されましたが、現在は1段に入る字数は11字が多くなっています。
 静岡新聞は1段が10字、71行です。したがって1㌻に収まる文字数は10×71×15=1万650字、原稿用紙26枚半程度になります。これに全体のページ数をかければ1部あたりの最大使用文字数がわかります。しかし全面広告や紙面の広告等があるため、30㌻の朝刊は15万~20万字、夕刊10㌻なら8万~10万字程度の文字数となります。ほぼ新書1冊分(12万~15万字)が新聞の文字数なのです。
 一方、「矩形処理」とは、記事を長方形に区切られた枠内にまとめることです。文字の流れやつながりが分かり、読者にとって読みやすくなります。
 スポーツ面を見てください。相撲なら相撲、サッカーならサッカーと、どの記事にも必ず見栄えのする写真が掲載されるため、矩形に調整しやすく、読者は一瞬にして読みたい記事を選び、読むことができます。つまり「矩形処理」は読者を意識したレイアウトといえます。
 新聞を文字(数、大きさ等)やレイアウトに注目して読むと、これまでに経験したことのない新たな楽しさや発見に出会えるはずです。
(安藤雅之・常葉大大学院教授)