一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

Q&A
=授業と時期合わない

2014年05月25日(日)付 朝刊


 テレビやラジオなどで入った情報を新聞(活字)で確認し、これは使えると思うニュースについて新聞記事を活用しますが、授業のタイミングと一致することがなかなかありません。情報をためておいて、古い新聞を使うのは何か違う気がします。 (静岡・中学校教諭)
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 ■復習や比較学習に効果的

 【答】授業に使える記事がいつもあるとは限りません。しかし、たとえタイミングが合わなくても、工夫次第で新聞を効果的に活用することができます。例えば、すでに授業で学習し終わった内容に関連する記事が掲載された場合、その記事で子どもたちに「学習を再確認させて定着を図る」「学習内容は現実に起こっていることだと実感させる」ことができます。

 また、過去の記事であっても、子どもたちが「学習内容を身近に感じる」「学習内容と世の中とのつながりを知る」ことができるほか、「見出しや記事の大きさから重要性を実感する」「最新の資料や解説にふれる」「現在と過去を比較し、違いや変化を知る」などに利用できます。教科書やテレビ、インターネットなどとは違う「新聞ならでは」の効果がある場合に使うのがポイントです。

 そのためにも、「使える記事はないか」と普段からアンテナを高くし、記事を使うチャンスに備えてスクラップしておくとよいと思います。もちろん、新聞にはタイミングに関係なく使える記事もたくさんありますね。 (島田川根中・矢沢和宏=NIEアドバイザー)

Q&A
=積極活用の方法は

2014年05月18日(日)付 朝刊


 NIEの指定校になると、新聞が毎日届きます。閲覧コーナーも設けましたが、生徒に積極的に利用してもらうにはどうしたらいいでしょうか。
 (島田・高校教諭)

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 ■取り扱う部署を設けて
 【答】閲覧コーナーを設けたのは、良いアイデアでした。その場に行けば、常に新聞が置いてあるんだ、という意識付けができますからね。場の設定は結構重要な問題です。書見台やソファなどを置いて、ゆっくりくつろぎながら読める環境をつくると良いでしょう。
 さて、より積極的に生徒が利用できるようにするためには、学校生活の中のシステムに新聞を取り入れてしまうことです。つまり、委員会活動や学級活動で新聞を取り扱う部署を作ってしまうことです。そうすれば生徒も必然的に新聞に関わるようになるでしょうし、他の先生方もNIEに取り組みやすくなるのではないでしょうか。自分の学校の生徒の実態に即した方法で、教員も順番でオススメ記事を切り抜き、一言コメントするだけでもかなり違います。
 自分の好きな先生の紹介した記事ならば読んでみよう、と思う生徒もいることでしょう。卒業後の進路に関わった内容なら利用への積極性は促進されるに違いありません。
 (静岡市立高・実石克巳=NIEアドバイザー)

Q&A
=新聞の置き場所は

2014年05月11日(日)付 朝刊


 新聞を学校のどこにどのように置くかに悩みます。図書室に置くと生徒が読みやすいけれど、教員が授業に使いにくい。職員室では子どもたちが読めません。
 (静岡・中学校教諭)

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 ■掲示スペース設けて
 【答】学校施設の状況などにより、置き場所には工夫が必要です。いすなどを置いてサロン風のスペースにできれば理想ですが、それができなくても、「NIEコーナー」などの掲示スペースを設け、そこに新聞を置くだけでも、新聞活用の雰囲気を高めます。まずは、「そこに行けば新聞がある」ことを誰もが知っている環境をつくることです。
 子どもたちも教員も両方が活用できるように、置き場所を複数つくる方法もあります。例えば、「朝は届けられた新聞を職員室前の廊下に机を置いて並べる。帰りにはその新聞を図書室に移す。小規模の学校では、新聞を教室に持って行くこともできます」。
 新聞の移動は、できれば係などを決めておき、子どもたちの手で行うとよいと思います。子どもたちが新聞に触れる機会が多くなりますし、記事が子どもたちの話題にも上るようになります。
 記事についての話題を学級の時間や昼の放送で紹介させたりすると、子どもたちは新聞をより一層身近に感じるようになります。
 (島田川根中・矢沢和宏=NIEアドバイザー)

Q&A
=グループ学習の注意点

2014年05月04日(日)付 朝刊


 授業で新聞(記事)を使いながらグループ学習に取り組ませたいのですが、指導のポイントや気をつけることはありますか。
(島田・高校教諭)
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 ■全員参加促す教材の与え方を
 【答】「グループ」学習は、一斉学習と個別学習の中間に位置し、バズ学習(buzzはざわめきの意)とも言われます。この学習形態を実施する目的は、「会話(話す&聞く)の過程により他者と自己との視点比較が生じ、始発の思考が変化(=深化)する」ことです。故に、指導者としては教材選別・準備・発信・評価と周到な計画が必要となるでしょう。最も重要なことは、全員参加を促進するための教材の与え方。これは2パターンあります。
 ①教材細分法(分析型) 大容量の教材を分析し、協議する過程を通して学ぶ。【ケーキをどう切り分けるか】→実践例は記事比較など。
 ②分割担当法(創出型) 各員に異なる教材を与え、全てを有機的に組み合わせて課題を完成。【食材をどう組み合わせてケーキを作るか】→実践例は新聞つくりなど。
 また、リーダーの配置や役割分担、机を対面型ではなく風車型に設定するなど細かな配慮が必要になってきますね。
 (静岡市立高・実石克巳=NIEアドバイザー)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載
=新入社員研修に新聞講座 読む習慣つけ仕事に生かして-県内企業で増加

2014年05月03日(土)付 朝刊


 厳しい就職戦線をくぐり抜け、企業に就職した新入社員がまず受けるのが、社員研修だ。業種によってその内容は異なるが、新聞の読み方を学ぶ講座を研修に組み込む企業が県内でも増えている。若年層で進む"新聞離れ"に対する企業側の危機感が背景にあるようだ。

 4月上旬、島田市本通3丁目の島田信用金庫3階会議室。今年入社した男女19人が研修に臨んでいた。壇上には記者経験を持つ静岡新聞社員。スクリーンに、静岡経済研究所などによる調査結果を紹介する新聞記事が映しだされている。企業が新卒者に最も不足していると思うのは「一般常識・マナー」なのに、新卒者は「コミュニケーション能力」を重視している、という内容だ。講師は「コミュニケーション能力も大事だが、企業が求めているのは一般常識を備えた人材」と指摘した。
 一般常識を身につける上で必要な情報を得るメディアについては、「インターネットは速報性に優れるが、正確性に問題がある。新聞は速報性では劣るが、信頼性が高い」と分析した。
 講師は「信用金庫職員が話すことを顧客は信用する。責任も生じる。まず、信頼できる、正確な情報を持っていることが重要」と述べ、新聞を読むことの必要性を強調した。
 また、新聞記事が大事なことを最初に書く「逆三角形」の構造になっていることを説明し、「見出しとリード(前文)、第1段落だけ読んでも記事の概要は分かる」と新聞の効率的な読み方を伝えた。
 そして、「豊富な話題を持っていれば、人と人とのネットワークが広がる。ネットワークは社会人として大きな財産。新聞などを活用して、魅力ある社会人になろう」と結んだ。
 島田信金は10年ほど前から新入社員研修に新聞に関する講座を取り入れている。「地域の金融機関として、職員には地元の情報から国際金融に関する情報まで、幅広く持っていてほしい。そのためにはまず、新聞を読む習慣をつけることが必要と考えた」と、研修を担当する人事部の宮島浩美さんは説明する。同信金は新入社員の当番が毎日、新聞記事を基にスピーチをすることになっている。これも習慣づけのためという。
 新入社員に新聞を読む習慣がないことを危惧する声は多い。3、4年前から新聞の読み方講座を研修に取り入れている静岡市葵区の時計・宝飾専門店「安心堂」の管理部人事担当、内野龍樹さんは「最近の若者は本当に新聞を読まない」とため息をつく。同社の顧客には年配者が多い。内野さんは「新聞を読んでいないと、話題についていけなくなる」と懸念するが、最近は少しずつ研修の成果が表れてきているという。
 新入社員ばかりでなく、各種企業内研修に新聞の読み方講座を導入する例もある。静岡新聞は講座実施の申し込み、問い合わせを読者プロモーション局読者部<電054(284)8938>で受け付けている。 IP140418TAN000063000_01.jpg

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 ■NIE楽しくやさしく(5)=創刊の使命に思いはせ
 今年2月、日本の新聞史を大きく変える大発見が報じられました。本草漢学塾「山本読書室」跡(京都市)において、オランダ語で「新聞紙の写し」とタイトルが付けられた新聞が発見されたのです。これまで新聞と名の付く最古のものは江戸幕府の洋学研究機関・蕃書調書が「文久2年正月」(1862年1月)にオランダ語新聞を翻訳し、編集・発行した「官板バタヒヤ新聞」とされていましたが、日付が明記されていませんでした。しかし本紙には「文久2年正月元日」(1862年1月1日)と明確な日付が記されていたのです。
 また本紙の2行目には「本邦新聞紙ノ起源トセン乎(日本の新聞の起源であろうか)」と添えられています。本紙が翻訳ではなく、日本人自らの手で情報を集め、記事を書き、編集・発行した最初の新聞であるという編集者の自負がうかがえます。
 新聞が発行される以前(江戸時代の17世紀初めから19世紀後半まで)は社会的な事件が起きた時にのみ、絵と文字でその事件を伝える1枚刷りのビラ(瓦版)を街頭で読み上げ、集まった人にその都度売っていました。本紙も瓦版同様、和紙1枚(縦24センチ、横33センチ)ですが、海外事情や異常気象等の多様な記事が掲載されている点が異なります。
 現在のような体裁をもつ日刊紙は、明治3(1870)年12月8日に発刊された「横浜毎日新聞」が最初です。「海外の事情、国内の形勢なども考え合せて、国民の知識を発達させるため、この新聞を役立つものにしたい」と創刊号1面に発刊の趣旨が書かれていました。
 昭和16(1941)年12月1日に創刊された「静岡新聞」にも「我等の希求する強力な新聞」等のタイトルで多くの祝辞が寄せられており、新聞に対する当時の人々の思いや期待等を知ることができます。
 毎日届けられる新聞には、創刊号から何番目の新聞かを表した「号数」が1面上部に明示されています。創刊当時の新聞の役割や使命に思いをはせてみると、また新聞の見方も大きく変わってみえてきます。
 (安藤雅之・常葉大大学院教授)