一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

Q&A
=何か特別なこと?

2014年06月29日(日)付 朝刊


 「NIE」というと何か特別なことのように聞こえます。昔から新聞を使った授業は行われていたのでは。NIEって何をするの。 (浜松・保護者)            

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 ■子どもの情報活用力育成

  【答】NIEには「新聞記事の活用」「新聞作成の機能の活用」「新聞作り」の三つの領域があります。

 「新聞記事の活用」は、NIEの言葉が生まれる前から多くの人が取り組んできました。気に入った記事を切り抜いたりスクラップしたりすることは、大人から子どもまで誰もがしていることと思います。

 「新聞作成の機能の活用」は、新聞社が新聞作成のために取材し編集・発行する一連の手法を学び、子どもの情報活用の実践力を育成するものです。知りたい情報を手際よく取材するこつや、インタビューの仕方、大事なことを落とさずメモするポイント等、記者の仕事が学校教育に大変役立ちます。また、得た情報を分かりやすくまとめ表現する方法は整理記者の仕事が、写真の撮り方はカメラマンの仕事が参考になります。

 最後に「新聞作り」です。見出しや写真を使い、一番言いたいことを一目で分かるように表現する新聞の手法は、最近盛んに行われるようになったプレゼンテーションにも大いに役立ちます。 (浜松曳馬小・山崎章成=NIEアドバイザー)

Q&A
=コンクールに取り組む

2014年06月22日(日)付 朝刊


 生徒に新聞社主催の各種コンクールに取り組ませたいのですが、指導のポイントや気をつけることはありますか。 (島田・高校教諭)
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 ■教育目標明確に選別を

 【答】いろいろな新聞コンクールがありますね。大切なのは、生徒のどの能力を伸ばしたいのか教育目標を明確にして、それに合致したコンクールを選別することではないでしょうか。

 読解や文章力のアップを目指すのならば、「記事感想文」が良いでしょう。感想文といっても、根拠を明らかにして論理を展開する小論文の練習に該当する指導が必要不可欠だと思います。賛否両論がはっきりしている記事を選ぶのが、オススメですよ。

 継続性を重視し、真理を追究する姿勢の涵養[かんよう]には「スクラップ」が最適です。コツは一つのテーマに的をしぼって収集・保存していくこと。当然、複数の紙面を比較検討し、客観的なコメントを記載しなければなりません。

 「切り貼り」は瞬間的な情報獲得力を育成できます。一眼把握という新聞の特性を突き詰めた、ビジュアルなセンスが問われるコンクールですね。記事の連続性を考慮した配置や色付け、記号の工夫など創造性が必要です。 (静岡市立高・実石克巳=NIEアドバイザー)

Q&A
=投書に取り組むコツ

2014年06月15日(日)付 朝刊


 生徒に新聞への投書に取り組ませたいのですが、指導のポイントや気をつけることはありますか。 (島田・高校教諭)
               ◇……………………◇
 ■同年代の文章 読むことから

 【答】投書に取り組む際のコツは、まず最初に、同じ年ごろの人が書いた投書を読むことです。いきなり原稿用紙に向かっては、生徒もなかなか筆が進まないでしょう。とりあえず目を通しておけば、「そうか、こういうことを書けばいいのか」という指針にもなります。それに生徒は、意外に同年代の人間の書いた文章には興味津々ですよ。

 次の段階では、他の方の書いた投書の内容を、より良い方向に膨らませてみよう、という指導が効果的です。きっと元の筆者も読んでいることでしょうから、そこからさらにやりとりが発展すれば、素晴らしい経験になりますね。

 最終レベルでは、時事に直結したタイムリーな問題や、季節感あふれるテーマ、それに、「ほとんどの人は気が付かないけれど、私だけは気付いたのよ」というような意外性のある話題に挑戦させましょう。日常から社会に対して関心を持っていないと書けない内容になってくるので、結構難しいかもしれませんが。 (静岡市立高・実石克巳=NIEアドバイザー)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載
=サッカーW杯もうすぐ開幕

2014年06月07日(土)付 朝刊


■NIE楽しくやさしく(6)=夢や希望を紡ぐ新聞

 東日本大震災直後、情報の「ライフライン」として、紙媒体である新聞の機能に注目が集まりました。電気やガス、水道の供給がストップし、道路網も寸断された状況下で、新聞各社が可能な限り新聞の発行と配達を行いました。読者に新聞を届けなければいけない、という使命感を持っていたのです。

 「こんな時にも配達されたことがどれだけ励みになったか」-。被災者から届けられた感謝の言葉は無数にあったといいます。携帯電話やインターネットが使えなくなっても、情報の生命線を果たしたのは新聞だったのです。

 また、被災地の岩手県大槌町では、全国紙などでは伝えきれていない復旧・復興に歩み出した町の生活情報を届けようと、町民が「大槌新聞」を発行しました。町民目線で、町民に分かる記事で伝えています。地域のコミュニティーの維持に新聞が大きな役割を果たしています。

 さらに避難所となった気仙沼小学校では、避難してきた南気仙沼小学校の吉田理紗さん(1年生=当時)が中心となって、悲しみに暮れる人々を元気づけようと「ファイト新聞」を作りました。大人たちにはうつむいている人が多く、新聞は暗い記事ばかりであることを懸念したのです。人々が何とか明るい気持ちになるようにと、創刊号では「いろいろなごふべんがあるとおもいますが、みなさん、がんばりましょう」と呼びかけています。

 新聞の第一の役割は、日常のあらゆる場所で起こった多種多様なニュースを世間一般に伝えることです。さらに「社会の公器」として公正中立な立場で正しい報道を行うことが求められています。しかし、新聞は単に事実を報道するだけではなく、読者に、意識していなかった事柄への関心を呼び起こしたり、仕事や生活上の思わぬ手掛かりを提供したりして、社会に対する見方や考え方を深め、未来に向けての夢や希望を紡ぐ役割もあるのです。

 今、まさに、新聞報道の在り方や記事の取り上げ方を見直す時期を迎えているのではないでしょうか。

 (安藤雅之・常葉大大学院教授)

Q&A
=教科書に「新聞」?

2014年06月08日(日)付 朝刊


 小学校4年の国語教科書に「新聞記者になろう」「新聞をつくろう」が載っているのはどうして? (浜松市・児童)
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 ■大事なことを書くこと学ぶ

 【答】小学校低学年では、大事なことを落とさずに聞いたり書いたり話したりすることを学びます。「5W1H」の言葉こそ使いませんが、「いつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、なにを(What)、なぜ(Why)、どのように(How)」が大切なことを学ぶのです。

 低学年では、情報活用能力の基礎基本を身に付け、さまざまな教科領域の学習に役立てていきます。中学年では、数多くある情報の中から自分の学びに役立つものを選択収集し、課題に合った方法で整理し、分かりやすく発信する方法を学びます。

 こうした一連の手法は、新聞記者の活動が大いに参考になるため、中学年の国語の教材に「新聞」に関する教材が数多く扱われます。「逆三角形の文型」「見出し」等の新聞の特徴や取材方法をきちんと身に付け情報活用の実践力を養うことが、全ての学習を支える貴重な基盤になるのです。 (浜松曳馬小・山崎章成=NIEアドバイザー)

Q&A
=漢字が難しい

2014年06月01日(日)付 朝刊


 スクラップを作る際に、子どもたちが読めない漢字が多いため内容の読み取りが不十分です。読み方が分からないと国語辞典で意味を調べることもできません。漢字辞典を使って調べるには時間がかかります。一般紙を子どもが何とかして読めるようなアイデアがありませんか。
 (富士、小学校教諭)

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 ■写真、見出しから要点知ろう
 【答】新聞は、義務教育修了時の読解力を想定して書かれたものです。そのため、小学生が一字一句読みこなすのは無理があります。
 「1枚の写真は100行の記事に勝る」「見出し5割、リードで7割」とよくいわれます。記者が分かってほしいことは写真からも訴えかけており、多くの読者は直感的に意図を読み取っています。これは、文字だけに頼ることができない子どもたちこそ大きなウエイトを占めるはずです。
 新聞記事は逆三角形の文型で表されており、一番言いたいことは見出しやリードに書かれています。記事を最後まで読まなくても要点を読み取ることができることを、子どもたちに教えることをお勧めします。
 記事を毎日スクラップすることより、気になる記事を見つけ、難しい漢字を読み飛ばしても、写真や見出しから何を言いたいかを読み取る経験を重ねていく方が自然です。記事をさらに読み下したい時に辞書に頼るのは大人も含めて大切なことだと思います。
 (浜松曳馬小・山崎章成=NIEアドバイザー)