一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

県内教師の実践
=新聞を読み学び考える

2014年08月24日(日)付 朝刊


 「先生、日本代表逆転負けだったね」「コートジボワールに1―2で負けるなんて…」。これは、6月16日の朝、5年生の子どもたちと学校で交わした会話の一部です。普段、なかなか新聞を読むことのない子どもたちにとって、ワールドカップの記事は、新聞に興味を持つ絶好の機会となりました。
 本年度、三保一小は、NIEの実践をすることになりました。「三保」と言えば、昨年6月、「三保松原」が、世界文化遺産「富士山」の構成資産として登録されました。そんな快挙に三保は大変盛り上がり、今も活気にあふれています。このニュースも、新聞記事から話題になり、子どもの間でも盛り上がりました。
 実践をするにあたり、子どもたちに、新聞についての簡単な聞き取りを行いました。新聞を読んでいる子は少なく、新聞を取っていない家庭もありました。予想していたこととはいえ、とても驚きました。ニュースの閲覧や検索がより便利になったスマホやネット等の急速な普及に伴い、子どもたちの新聞離れ・活字離れが進んでいることを改めて感じました。
 実践の始めとして、国語「新聞を読もう」の学習を行いました。学習を通して、「見出しやリード文」「逆三角形の構成」等を学びました。また、同じ記事であっても新聞社によって表し方が違うことも学びました。この学習を終えてから、新聞の記事を切り抜き、その記事に関する自分の考えをまとめる子も出てきました。
 9月からの実践では、静岡新聞社に見学に行ったり、複数の新聞を読み比べたりします。この実践を通して、子どもたちには、今まで以上に新聞に興味をもってもらい、物事に対して、さまざまな角度から、多面的に捉えることができるようになってもらいたいです。そして、自分なりの自己判断力を向上させ、メディア・リテラシーにもつなげていけたらと考えています。子どもたちと行う9月からの実践が今からとても楽しみです。(稲葉研二/三保一小)

Q&A
=ワークシート活用法は

2014年08月17日(日)付 朝刊


  新聞社が作っているワークシートは授業の内容と合わないが、どのように活用したらいいですか。また、期待できる教育効果は。
 (浜松市・小学校教諭)
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 ■「今」に関心持ち、問題解く 
 【答】「『教科書を教える』のではなく、『教科書で教える』」という言葉があります。教科書そのものを覚えるのではなく、教科書を手段として使って社会で自立できる力を養うという意味です。
 新聞は、日々の社会の動きの中で読者に知って欲しいニュースや価値ある情報を提供するものです。その一方、学校の授業は発達段階を踏まえて学ぶべき内容が決まっています。そのため、新聞と授業の内容が一致するのは難しいのは当然です。
 新聞社が作っているワークシートは記事の中から学校現場で活用しやすいものを選び、「リサイクルは4年の社会科や総合的学習の時間で扱うことが多い」などと考えて問題を作り、対象学年・教科名を記しています。ワークシートの問題を解くことを通して、学校の学びを生かして今の社会について思いを巡らせましょう。
 ワークシートは、記事を読む時と同様に、興味のあるものを選ぶことをお勧めします。読解力、語彙[ごい]力は当然のこと、情報活用の実践力、思考力や判断力等、幅広く養うことができます。
 (浜松曳馬小・山崎章成=NIEアドバイザー)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=社会の動き関心高く NIE静岡大会から1年

2014年08月02日(土)付 朝刊


 「『学び』発見-ふじのくにから『やさしいNIE』」をテーマに、静岡市駿河区のグランシップで開かれた第18回NIE全国大会静岡大会から1年。県内を中心に1300人余りが参加し、パネル討論や公開授業、実践発表などが展開された同大会は、県内の教育現場に何を残したのか。県内NIEの現状を追った。

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 ■実践指定校に名乗り-富士田子浦小
 本年度、県内で新たにNIE実践校に指定されたのは9校。例年、県教委、市町教委の推薦を受けて実践校となる学校が大半なのに対し、本年度は自ら申請した学校が6校と3分の2を占めた。富士市の市立田子浦小も名乗りを上げた一校だ。「全国大会の前後、新聞紙面で大会に関する記事が非常に丁寧に掲載されていた。それを読み、NIEに学校として取り組みたい、子どもたちが社会に関心を持つきっかけにしたいと強く思った」と半田博子校長。
 具体的な展開は主幹の望月敏行教諭が知恵を絞った。指定校には4カ月間、県内発行7紙が配達される。これをどう生かすか。望月教諭が考えたのは、「保護者を巻き込む」ことだった。
 ボランティアに手を挙げた20人余りの母親が交代で"登校"し、図書室で新聞をスクラップしている。切り抜くのは「子どもたちに読ませたい記事」。切り抜いた記事にはコメントが添えられ校舎2階のNIEコーナーに掲示される。
 同校は既に富士市教委から、学習指導研究指定校に指定されていた。NIE実践指定校の活動が加われば、間違いなく教師の負担は増す。「教師が記事に関心を持って、教材の幅を広げられれば、教師にとっても大きなチャンスになる」と、半田校長は教師の意識改革を期待する。

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毎日、交代で集まり、「子どもたちに読ませたい記事」を切り抜くボランティアの母親ら=富士市の田子浦小

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 ■気になる紙面を掲示-島田高
 昨年の全国大会で、島田市の県立島田高3年5組(当時)は公開授業を行った。「大勢の人の前で授業を行ったことは、生徒たちに強烈な印象を残したようだ。一生の思い出になる、と言っていた生徒もいた」と、担当の高島美玲教諭は振り返る。
 同校は2011年度から3年間、実践校に指定されていた。校舎の一角に設けられた「NIEコーナー」には、指定が終わった今も節目節目の新聞紙面が掲示されている。「昨年までのように頻繁には変えられないが、気になる紙面があるときに変えるようにしている」と高島教諭。足を止めて新聞に見入る生徒も多い。
 今年、3年の担任になった教諭は、「新聞交換ノート」を始めた。前の生徒が貼った記事を要約し、コメントを加え、自分が気になった記事を貼った上で次の生徒に回す。読解力向上などとともに、他の生徒の目の付け所を知ることで、興味、関心の幅を広げることも狙いの一つという。
 また、今年他校から赴任してきた教諭は、大学に関係する新聞記事を教室の壁に貼る試みを続けている。高島教諭は「『NIEコーナー』などがあることで、新たに来た先生も新聞を活用した活動に取り組みやすい空気が校内に広がっているのかもしれない」とみる。

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NIE実践校の指定終了後も、「NIEコーナー」には節目節目の紙面が貼られ、生徒も足を止める=島田市の島田高

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 ■「論評ノート」続け成長-浜松三ケ日中
 2012年度に実践校に指定された浜松市北区の市立三ケ日中。担当の小川高明教諭は、「社会に対する関心の薄い生徒たちに、新聞記事を通じて、社会の出来事、社会の動きに関心を持ってもらいたいと思った」と、取り組み始めたころの思いを振り返った。
 まず、気になる記事を左ページに貼り、感想、コメントを右ページに書く「論評ノート」を生徒に作らせた。12年度は尖閣諸島問題、沖縄へのオスプレイ配備問題などが紙面をにぎわせていて、生徒たちも興味を示した。
 その一方で小川教諭は首長のリコール、無投票多選などの記事を提示し、政治の仕組みへも生徒の気持ちを引き寄せていった。
 そして昨年の全国大会での公開授業も経て、今年3月に卒業していった生徒たちは、2年間にわたって「論評ノート」を作り続けた。次第にノートは充実し、ネット通販に関する記事に対して、三ケ日地区内の商店への影響を論ずるコメントまで書かれるようになった。「NIEを通して、生徒たちは明らかに成長したと思う。少なくとも社会の動きに対する関心は高まった」と小川教諭。
 同校は本年度も全国大会枠で指定が続く。授業での展開は2学期からになるが、既に小川教諭は集団的自衛権に関する各紙の記事を用意しているという。「3年生は既に興味を示している」と手応えを感じている。

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三ケ日中で取り組んだ「論評ノート」。2年間続ける中で、多くの生徒に成長が見られたという

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 ■NIE楽しくやさしく(8)=親子で楽しむ新聞の世界
 8月に入り、夏休みもいよいよ本番。小学生や中学生の子どもをお持ちのご家庭では日頃の家庭生活のリズムが大きく変化し、特に、慌ただしく過ごしていた朝の時間が一変したのではないでしょうか。
 朝の果物は金、朝食は一日のエネルギー源などと言われるように、朝は私たちに一日の活力を与えてくれる大切な時間です。同様に、毎朝家庭へ配達される新聞も私たちへ大きなパワーを与えてくれています。
 近年、小学生向け、中・高校生向けの新聞も発行されていますが、家庭へ届けられる新聞は決して大人専用ではありません。新聞は堅苦しく難しいものではなく、「情報の宝箱」であり、情報を得る一つの手段になるものであるということを子どもに実感させることが大事です。
 そこで夏休みにはぜひ、親子で一緒に新聞を開き、見る、読んでみるという「新聞を楽しむ時間」を位置づけ、ごく普通に新聞を開くことが習慣化できるようにしたいものです。
 親子で新聞を楽しむことをファミリーフォーカスといいます。欧米や韓国で盛んに取り組まれている家庭でのNIEです。例えば、一緒に並んで新聞に掲載されている写真の素晴らしさを語り合ったり、気に入った写真や記事があったら切り抜いたりします。さらに気になることは親子で一緒に調べたり、博物館や公園、図書館などに出かけたりして「知る楽しみ」をふくらませます。また、夏休みの自由研究のテーマを見つけるきっかけをつくることもできます。まさにファミリーフォーカスは、新聞をみる楽しさや面白さを発見する機会となり、親子のコミュニケーションも豊かにします。
 大切なことは、保護者の方がさりげなく新聞に親しむ機会をつくり、つかず離れず、強制せず、一緒に楽しむことです。「新聞って楽しいね」-こんな言葉が子どもから発せられたら親としても最高の喜びです。
 この夏休みに、親子で一緒に楽しむ新聞の世界の扉を開けてみてはいかがでしょうか。
 (安藤雅之・常葉大大学院教授)

Q&A
=視写力高める使い方は

2014年08月03日(日)付 朝刊


 新聞を使って視写力を高めるにはどうしたらいいですか。
 (浜松市・小学校教諭)
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 ■「週刊YOMOっと静岡」活用 
 【答】「週刊YOMOっと静岡」を活用しましょう。小学生を対象に書かれているため、記事の内容を理解しやすく、読みにくい漢字に振り仮名が書かれているのも魅力です。興味を持った記事を10分間でどこまで書くことができるか計ったり、「あそviva まなviva」のようなコラムを何分で視写できるか計ったりすることを継続的に行うと、視写力の伸びを実感できます。
 日々の紙面でも、小学生が書いた投書は抵抗なく視写できるはずですし、関心がある記事を読めない漢字の意味を想像しながら視写するのも大切なことだと思います。
 視写は、文字を正確に素早く書く力を身に付けるだけでなく、読解力をつけたり語彙[ごい]を増やしたりすることもできます。小学生の視写する速さは、「10分間で学年×50~60字」が目安と言われています。6年生では10分間で300字以上視写することができるようになりたいものです。記事を視写しながら、社会の動きに興味を持つことができれば素晴らしいですね。

(浜松曳馬小・山崎章成=NIEアドバイザー)