一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

Q&A
=効果的な書き写しは

2014年09月27日(土)付 朝刊


 新聞のコラムを定期的に書き写させていますが、書かせっぱなしになってしまいがちです。何か効果的な活用方法はありますか。
 (裾野市・高校教諭)
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 ■記事の一部塗り、空欄埋める
 【答】コラムを筆写させる、そのとき、生徒の身に付けさせたい力はなんでしょうか? 小論文対策には、コラム筆写は不向きです。なぜならば、両者は全く異なる文体だからです。
 しかし、以前「アドバイザー講座」(2012年8月19日)で紹介した「守破離作文指導法」の「守」の段階として、とにかく、まずは書くことに、慣れる・抵抗感を取り除く、という目的ならば、書かせっぱなしで良いでしょう。そして、書けたことに対して思う存分褒めてあげると良いと思います。
 お尋ねはたぶん、「破」の自己流にアレンジ、自分独自のスタイル確立の「離」に至るまでの活用法なのではないでしょうか。お薦めは新聞記事の一部を修正液で塗りつぶし、その空欄に生徒が自分の言葉で穴埋めをする、つまり文章構造はそっくりそのまま利用させてもらう「破」。慣れてきたら「離」として、社説に片っ端から反論させてみましょう。証拠を挙げての反対意見の表明が、最も書きやすい「論」構築の第一歩となるはずです。
 (静岡市立高・実石克巳=NIEアドバイザー)

県内教諭の実践
=自分の意見 述べる力を

2014年09月21日(日)付 朝刊


 積志中学校は、NIE実践2年目となります。昨年度は、廊下にNIEコーナーを設け、新聞の一面記事と社説を見やすく掲示し新聞を読めるようにしました。一度に4紙の記事を確認できるようにし、自由にその新聞を手に取って読めるというものにしました。しかし、一面記事は自然と生徒の視界に入ってくるのですが、なかなか記事をしっかりと読むという生徒は増えませんでした。
 今年度は昨年度の反省から、新聞スクラップノートを作成させ、毎週一つの記事を取り上げ、内容を自分の言葉でまとめる。それに対しての自分の考えを書く。記事に関するものを調べる。ここまでを生徒に行わせることにしました。
 生徒は、最初は記事をまとめることが大変でした。また、何の記事についてまとめるかという課題設定が困難になる時もありましたが、次第に社会的事象に対しての説明ができる生徒が増えていきました。
 生徒の多くは、社会的事象を自分の言葉でまとめるということが苦手です。また、自分の意見をうまく表現できないということが特徴としてあげられます。授業でも、意図的に生徒同士が意見交換をする場を多く設置しています。自分の意見を根拠立てて表現することがまだまだ課題です。
 自分の意見を自信を持って表現できない背景には、自分の意見が「間違っていたら」という不安があると考えます。自分の意見を表現できるようにするというのは、社会に参画する上で必要な行為です。そういった生徒が今後多く育っていくことが私の使命であると考えます。
 取り組みの成果としては、ノートに自分の意見を記すということができる生徒は確実に増えてきています。さらに社会的事象に対して多角的に考えられる力を身に付けさせたいです。そのために、NIEの実践を基本に情報に触れさせ、さまざまな視点で自分の意見を持てるように取り組みを今後も実践し続けていきたいです。(若原昌史/浜松積志中)

新聞の活用術探る 図書館担当対象に研修-浜松・北区

2014年09月13日(土)付 朝刊


 浜松市内の小中学校の学校図書館担当の教諭や図書館補助員を対象にした研修会(市教育センター、市中央図書館主催)が12日、北区東三方町の市教育会館で開かれ、約210人が新聞の効果的な活用法を学んだ。
 日本新聞協会NIEアドバイザーで、市立曳馬小の山崎章成教諭が講師を務めた。山崎教諭は各地の実践例を紹介しながら、写真の情景を想像してもらったり、4こま漫画の題名や続きを考えてもらったりするなど、子供たちが取り組みやすい活用術を紹介した。
 大事なことを先に書く「逆三角形」型の記事の構成など新聞の仕組みも解説した。新聞の特徴として、ネットに載らない地域の情報やニュースの続報を提供する点を挙げた。
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新聞の活用法を学ぶ参加者=浜松市北区東三方町の市教育会館

Q&A
=新聞に興味持たせたい

2014年09月14日(日)付 朝刊


 新聞を開いてもなかなか積極的に手に取ってみようとする生徒が見受けられません。どのような方法で、興味を持たせることができるでしょうか。
 (裾野・高校教諭)
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 ■保護者と協力、家庭で話題に 
 【答】現在、新聞が身近に存在している環境にはなっているのですね。問題は次の段階としての、生徒自身が手に取り読もうとする「きっかけ作り」ということだと思います。まずは、保護者の方に子どもと一緒に新聞を読み、記事に対して話題に上らせるようお願いしてみましょう。
 「家庭で子どもとの会話が増え、しかも成績アップにつながります」。さらに、「企業研究に役立つので、就職にも有利になりますよ」と付け加えれば、協力いただけるのではないでしょうか。
 家庭への投げ掛けの次は、学校全体で取り組む姿勢を生徒に示すことです。先生方全員が毎日、新聞記事の内容に即した話をしてみましょう。自分の好きな教科担当や部活の顧問が、話のタネにしたのだから読んでみようかな、と思う生徒は実は結構たくさんいるはず。置いてある新聞に、赤ペンでザッと大きく囲んでおくだけで、生徒の手は確実に新聞にのびやすくなると思います。
 (静岡市立高・実石克己=NIEアドバイザー)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載

2014年09月06日(土)付 朝刊


 ■言葉や写真 組み合わせ表現 新聞素材に作品づくり-富士で「ことばの貯金箱」講習
 新聞を使ったワークショップ「ことばの貯金箱」(静岡新聞社・静岡放送主催、富士市内の8新聞販売店協力)がこのほど、富士市中央町のラ・ホール富士で開かれた。市内の小学生と保護者66人が、楽しみながら新聞に触れた。
 「ことばの貯金箱」は、新聞から気に入った言葉や写真を切り抜いて"貯金箱"に集め、たまったところで台紙に貼り、コメントをつけたり色を塗ったりして自由に表現する取り組み。考案した仙台市の元中学校教諭・渡辺裕子さん(NIE教育コンサルタント、白〓大講師)が指導した。
 渡辺さんが「難しく考えず、手を動かしてみよう。言葉は人を喜ばせたり元気づけたりすることができる」と説明すると、参加者は思い思いに好きな言葉や目についた写真を新聞から切り抜き始めた。色画用紙に貼り付けた作品を順番に発表すると、「富士山の写真が生かされている」「頑張ろうという気持ちになれる」と感嘆の声が上がった。
 参加した親子は「こんな新聞の使い方があるとは思わなかった。とても楽しかったので、家でもやってみたい」と満足した表情で話した。

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渡辺裕子さん(中央)の指導でワークショップを楽しむ参加者=富士市のラ・ホール富士

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作品を貼り付ける参加者=富士市のラ・ホール富士


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 ■NIE楽しくやさしく(9)=スクラップを楽しく
 新聞を楽しく読む方法の一つに新聞記事のスクラップ(切り抜き)があります。スクラップは小学生から高齢者まで幅広く親しまれています。「ネット万能の時代に、記事のスクラップなんて時代遅れだ」と言われるかもしれませんが、スクラップは私たち読者に大きな効用をもたらします。
 第1に、一つのテーマを継続的にみることで、個々の記事が繋[つな]がってみえるようになります。第2に、重要な記事を自然と選別できるようになるのです。自分にとって何が重要で何が不要なのか明確になります。第3に、スクラップは新聞を見る楽しさだけでなく、新聞の面白さや新聞の構成等を発見できるのです。スクラップを続けているうちに、どこにどんな記事が書かれているのか気付き、社会の事実に触れ、社会の動きや変化も発見できるようになります。さらに第4として、スクラップを長期にわたって続けることで、自分の興味や関心がどこにあり、どう変化したかも発見でき、新たな自分に出会うこともできます。
 しかしスクラップは手間がかかって面倒であるという理由から、切り抜きや添付作業で挫折する人もいます。
 私は何度も挫折しました。どうしたら長く続けられるのか悩んだ末、自分の興味ある記事、気になる記事だけを選ぶようにしました。またスクラップした記事はノート等には貼らず、クリアファイルにためていきました。ジャンル分けはしません。時系列でストックするのです。私は新聞を数社から取っているため、スクラップした記事には必ず新聞名と日付は入れるようにしました。また重要だと考える箇所についてのみ、線を引いたりマーカーで印をつけたりしています。スクラップした記事をあえて貼り付けないことによって記事を自由に活用することができ、楽しく続けられるようになりました。
 新聞記事のスクラップはどんな方法であれ大変手間がかかるものです。しかし手間がかかるからこそ、本当に自分に必要な記事を選び抜き、活用し、大切に残していけるのです。
 (安藤雅之・常葉大大学院教授)

県内教師の実践
=思考深め伝える力育成

2014年09月07日(日)付 朝刊


 「新校舎建設の期間はどのくらいですか」
 「新しい校舎の特徴を教えてください」
 すっかり新聞記者になりきった5年生の子どもたち。国語の授業で、夏から始まる新校舎建設をテーマにした新聞づくりに挑戦した時の一コマです。次々に質問する真剣な表情に、子どもたちの新校舎への期待とともに新聞づくりという学習への意欲を感じました。
 本校の研修は「NIEとは何か」から始まりました。NIEアドバイザーである川根中の矢沢和宏校長先生にご指導いただき、NIEの魅力や可能性を知りました。そして、子どもたちの実態に合った実践を積み重ねることで、子どもたちが確かな力を身につけていくことが大切だとわかりました。
 川根小の子どもたちは、恵まれた自然や地域の人に囲まれ、素直にのびのびと育っています。家族や慣れ親しんだ友達、地域の人たちとの安定した人間関係の中で、人を思いやるやさしさを育んできました。明るく元気のよい子どもたちですが、自ら意見を伝えることに課題も見られます。
 明日を生きる子どもにとって、自分の考えをきちんと人に伝えていく力は必要な資質、能力です。私たちは、とらえた子どもたちの実態から、伝える力の育成をNIEの重点に置きました。
 伝える力を高めるためには、事実や事象を見つめ、人の意見に耳を傾けながら、じっくりと考えることが大切です。思考は、意外な事実や自分とは違う意見に出会い、驚きや共感などを感じるとさらに深まります。この思考の深まりが誰かに考えを伝えたいという欲求をも突き動かすのです。さまざまな「人、もの、こと」との出会いを生むNIEは、こうした学びの場を広げるに違いありません。
 「へえ、~と私の生活は関係しているんだ」
 「こんな事件、信じられない。どう思う」
 新聞の記事や写真に驚き、友達と伝え合う姿を思い描き、子どもも私たち職員も楽しみながらNIEを進めていこうと思います。(小林正宣/島田川根小教頭)

Q&A
=教員の負担軽減するには

2014年08月31日(日)付 朝刊


 学校全体でNIEに取り組みたいが、できる限り教員の負担が少なくなるようにするには、どのような工夫が必要でしょうか。
 (静岡市・中学校教諭)
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 ■無理なく楽しく活動を
 【答】「新聞を使うことを前提にした活動」は教員の負担感が大きく、長続きしません。大切なことは「新聞の特徴を生かして」「できる範囲で無理なく」「生徒も教員も楽しく」取り組めるようにすることです。
 新聞には、「タイムリーな情報、吟味された多様な文章」「学習内容が現実に起きている実感」「じっくりと向き合える、加工もしやすい紙面」などの特徴があります。それを踏まえて、授業などに利用可能か判断し、利用できる記事があれば、コピーを渡す、NIEコーナーに掲示する、ネット上に公開されたワークシートを紹介するなどの方法を考えます。
 また、司書さんと協力し、図書館をNIEの拠点にすると、全校の取り組みになります。例えば、図書館に新聞記事を掲示し、その内容に合った本を紹介するなどの連携もできます。
 さらに、「新聞の運搬や記事の紹介などを専門委員会活動にする」「生徒がスクラップをリレーする」「朝自習や昼の放送をNIEタイムとして教員が交代で担当する」などの活動は負担も少なくて効果的です。その際、教員も記事の感想を発表したりすれば、生徒への大きな刺激になると同時に、教員自身が楽しめるNIE活動につながると思います。
 (島田川根中・矢沢和宏=NIEアドバイザー)