一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

Q&A
=企業研究に活用したい

2014年10月26日(日)付 朝刊


 就職活動に向けた企業研究にもっと新聞を活用したいのですが、どのような方法が考えられますか。
 (裾野市・高校教諭)
               ◇……………………◇
 ■記事切り抜き、掲示板づくり
 【答】生徒は有名企業ばかりに、目が行ってしまいがちですよね。
 まずは目に付きやすい「新聞広告」でさまざまな業種をピックアップしていき、さらに「求人欄」の企業情報で補完しましょう。とりあえずは、身近な地元企業の研究を端緒にすると、取り組みやすいと思います。次に、「投書欄」を毎日チェック! 労働・就職など、企業研究に少しでも関連する投書は切り抜いておくと、後々役立ちます。
 お薦めは、壁の模造紙に切り抜き記事を職種ごとに分類して、貼り付けていく「新聞(企業研究)掲示板」づくり。
 付箋を用いてどんどん自由にコメントを記入したり、蛍光ペンで重要と思われる箇所にアンダーラインを引いたり、アナログでの双方向情報交換の場の設定です。驚くほど横の連携が取れていない生徒を結び付ける効果と、仲間の発信する情報には情熱的にアタッチメントする、生徒の傾向が有効に活用できるでしょう。
 (静岡市立高・実石克巳=NIEアドバイザー)

県内教諭の実践
=教科書と現実をつなぐ

2014年10月19日(日)付 朝刊


 南伊豆中学校は伊豆半島の最南端に位置し、豊かな自然と地域の方々の温かい支えの中、教育目標「自ら学び、豊かでしなやかな感性を持った生徒」を目指した活動を行っています。本年度よりNIE実践指定校として新聞の無償提供を受け、新聞を活用した教育の実践にも取り組んでいます。
 ある時、家庭で購読している新聞について生徒に尋ねると、ほとんどの家が地方紙のみ、新聞を購読していない家庭も多くあることが分かりました。そこで、生徒が目についた新聞をいつでも手にすることができるよう、校内の廊下にNIEスペースを設置しました。また、「一面記事」「同じニュース」「割り付け(レイアウト)」「子どもが書いた記事」の四つを注目ポイントとして示し、共通点や違いを比較できるように新聞を並べています。真剣な目つきでページをめくる生徒、お気に入りの野球チームの記事を見つけてはうれしそうに報告してくれる生徒、一面の記事を見て「これ、昨日のテレビでやってたよね」と言いながら並んで通り過ぎていく生徒…反応はそれぞれですが、生活の中に新聞があることで、また違った生徒の姿を見ることができ、新鮮さを感じています。
 また、社会科では、「教科書に書いてあること」と「現実の世界で起きていること」をつなぐツールとして新聞を利用しています。世界のニュース記事の中に出てくる地名と地図帳で世界地図の中に書いてある地名では、生徒が持つイメージは大きく変わります。歴史の教科書に書いてある内容についての新しい発見の記事は、歴史がフィクションの世界ではなく、現代までつながり、実際の生活に影響を与えるものだということを、生徒に強く示しています。社会科に限らず、「今」を生徒に強くイメージさせる新聞は、学習を深めるための強い味方になると思います。
 新聞が身近な存在になるこの機会を、生徒とともにこれからも楽しんでいきたいです。(一森康佑/南伊豆中)

Q&A
=小学生も読めるコラム

2014年10月12日(日)付 朝刊


 コラムを読むと力がつくといいますが、小学生でも可能ですか。
 (浜松・保護者)
               ◇……………………◇
 ■記者の訴え理解を目標に
 【答】毎日全てのコラムを理解することは難しいかもしれませんが、小学生でも可能なコラムはあります。
 一面下のコラムは、取材経験豊富な記者が世の中のいろいろな動きを題材にして、記者の見方や感じ方を交えて書かれた文章です。読むだけなら数分あれば大丈夫です。
 コラムを読むと読解力をはじめ、時事力、文章力も身に付きます。意味が分からない漢字を辞書を使ったり家族に聞いたりして読むことができれば、語彙[い]を増やすこともできます。
 日によっては難しい内容が書かれているのも事実ですので、小学生で初めて挑戦する時は週に1度は最後まで読むことに挑戦し、中学、高校と進むにつれて毎日読むことができればと思います。
 コラムを読んだ後、主題を考えたり、視写や要約、題名を付けたりする取り組みができれば理解がより深まりますが、小学生の段階では、記者が何を言いたいかが分かれば素晴らしいと思います。
 (浜松曳馬小・山崎章成=NIEアドバイザー)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=図書館教諭 新聞学ぶ 授業導入の仲介役に-浜松で研修会

2014年10月04日(土)付 朝刊


 浜松市内の小中学校で学校図書館を担当する司書教諭らを対象にしたNIE研修会がこのほど、浜松市北区東三方町の市教育会館で開かれた。小中学校で新聞が置かれるのは、図書館が大半だが、図書館担当者はNIEにあまりなじみがないとされる。参加者は、研修で紹介されるさまざまな手法に聴き入った。

 研修は市教育センターと市中央図書館の主催。企画を担当した同図書館の中谷佳主枝指導主事は、「本を授業で使う場合は、図書館担当者が仲介役となる。新聞も同じ。小中学校で新聞活用を進める場合、その仲介役、発信元となる図書館担当者がまず、NIEを学ぶことが有効と考えた」と狙いを説明する。
 市内全小中学校149校の図書館担当教諭、図書館補助員計214人が、午前、午後の2部に分かれて受講した。講師は日本新聞協会NIEアドバイザーで、市立曳馬小教諭の山崎章成さんが務めた。
 研修の冒頭、山崎さんは、NIEの意味が分かる人がどの程度いるか、確認した。ぱらぱらとしか手が上がらない様子を見て、まずNIEという言葉の説明をし、①新聞記事の活用②新聞の機能の活用③新聞作り-の3領域がある、というNIEの基本的な展開を示した。
 山崎さんは、豊富な資料や小道具を駆使して研修を展開した。「新聞記事の活用は、スクラップが基本」と説いたうえで、1999年3月に、浜松市内で不発弾が見つかり、それが無事処理された、との記事のスクラップを披露した。そして記事に出てくる不発弾の大きさを模造紙で再現、「こうした工夫をすれば、子どもたちも記事の内容が身近に感じられるはず」と説いた。
 また、朝刊の全ページを横につなぎ合わせたものを用意し、参加者の前で広げて見せた。「これを、全て読むのは不可能」ということを示し、「見出しで5割、リードで7割、という。新聞は見出しとリードを読むだけで、内容がほぼわかるようになっている」と説明した。
 参加者が実際に新聞活用に取り組む演習も行った。新聞原稿の基本である「5W1H」の考え方を使って、図書館のキャッチコピーを作る試み。参加者は「いつ」「どこで」「誰が」などを項目にした表に、それぞれの図書館の特徴を書き込み、他の参加者とも話し合いながら、キャッチコピー作りに取り組んだ。
 図書館での新聞活用法として、「複数紙の1面の掲示」「いち押し紙面の掲示」や、見出しや写真の切り抜きの掲示などを提案した。また、新聞社のデータベースや、新聞社が提供するワークシートなど教材の活用も勧め、それぞれが気になる記事を切り抜いてワークシートを作る演習で研修を締めくくった。
 市立入野小の伊藤朋子教諭は「子どもでも取り組みやすいコツを教えてもらい、参考になった」と話し、実践に意欲を示した。

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さまざまな資料を示しながら、研修を進める山崎章成さん

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新聞を切り抜き、ワークシート作りに取り組む参加者=浜松市北区の市教育会館

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 ■NIE楽しくやさしく(10)=業界や地域つなぐ「新聞」
 先日、石川県輪島市にある「ふらっと訪夢(ホーム)」の愛称をもつ道の駅に立ち寄りました。そこで「Route Press(ルートプレス)21st.」(道21世紀新聞)と称する新聞にはじめて出あいました。
 本紙はNPO法人「人と道研究会」が、全国の道の駅を中心に1030カ所(平成26年4月4日現在)に無料配布しているタブロイド判16㌻のフリーペーパーです。平成17年9月の創刊号以来、隔月発行を原則に、これまで41号を発行しています。一般的なフリーペーパーとは異なり、書籍やインターネット等ではあまり取り上げない道路交通、道の駅周辺の観光、地域振興等についてのきめ細かいニュースが取り上げられています。
 私が手にした第41号の第1面は「夏だ。飛び出せ!『道の駅』」と大見出しが掲げられ、さらに五つのテーマで新聞が構成されていました。また各ページの下段には「駅長セレクション」と題した、各地の道の駅・駅長(48人)による道の駅自慢やPRが掲載されています。今まで各地の道の駅には立ち寄っていましたが、本紙の存在については全く知りませんでした。道の駅の役割や人と道の関わり等について知る貴重な情報源となりました。
 また私がお世話になっている理髪店には、いつも『玉川新聞』が置かれています。本紙は静岡市の玉川に魅せられた有志「安倍奥の会」によって年4回発行される新聞です。ガイドブック等ではほとんど取り上げられないような玉川の魅力や地域情報、さらには居住されている方々のお声等が掲載されており、まさに地域を輝かせ、地域をつなぐ新聞となっています。
 私たちの身の回りには、道21世紀新聞や玉川新聞のように一般紙等の手の及ばない世界を補い、業界や地域、人々をつないだり、専門的分野に特化して、その役割を果たしたりしている「新聞」が多種多様に存在しています。「新聞」に対する固定的イメージを広げ、紙面を通じて絶えず私たちに常に新しい息吹を注入してくれる「新聞」の醍醐味を味わいたいものです。
 (安藤雅之・常葉大大学院教授)

Q&A
=小規模校の活動は

2014年10月05日(日)付 朝刊


 小規模校で、NIEを担当できる教諭も多くありません。どのようなNIEの環境づくりが必要になりますか。
 (浜松市・小学校教諭)
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 ■全員が参加、楽しく活動 
 【答】小規模校は学校全体でNIEを推進しやすい環境にあると言えます。それを生かして、教員の負担軽減も図りつつ無理なく楽しく取り組むためには、「子どもたちと一緒に考える」「全員が参加できる環境を整える」などの視点で工夫してみたらどうでしょうか。
 「子どもたちと一緒に考える」の視点では、新聞のおもしろい活用方法について子どもたちと話し合い、そのアイデアを積極的に取り入れます。また、当番の子どもが新聞を図書館や職員室に運んだり、係の子どもが「NIEコーナー」に記事(または見出しや写真)とその感想を掲示したりするなど、できるだけ子どもたちの手で新聞を扱うようにすると、自然に新聞が話題となり、関心が高まっていきます。
 「全員が参加できる環境を整える」の視点では、「NIEタイム」などに、古新聞も利用して、子どもたち全員が毎日、新聞に親しめる活動を取り入れることをお勧めします。また、昼の放送や学級活動で全員の子どもたちが新聞記事の感想を発表することも可能でしょう。
 これらのNIE活動の計画や実施にあたっては、ぜひ校長先生や教頭先生にも参加・協力してもらい、子どもたちと楽しく活動できる場を設けるとよいと思います。
 (島田川根中・矢沢和宏=NIEアドバイザー)