一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

Q&A
=生徒の新聞作り目指す

2014年11月23日(日)付 朝刊


 記事に関して自分の意見を仲間と交換し、新聞を作る活動にまで発展させるにはどうしたらいいのでしょうか。
 (裾野・高校教諭)
               ◇........................◇
 ■「スクラップ駅伝」お薦め
 【答】お薦めは「NIEスクラップ駅伝」です。A4判のノートを見開きで使用し、左ページには関心を持った記事を貼り付け。右ページは次の4項目を設定しますが、最初のうちは字数を決めずに自由に書かせましょう。
 (1)COMMENT(本人記入)=記事への意見・反論・小論文の予想問題など何でも良い。
 (2)ADVICE(友人記入)=COMMENTを読んでの感想・疑問。必ず褒めよう!
 (3)REFLECTIONS(本人記入)=ADVICEを確認し、他者視点から考察。
 (4)KEYWORD(本人記入)=考えをさらに深めるための調査結果や、分からない漢字・意味調べなど。
 以上のノートをクラス全体で回しては再び自分に戻ってくるシステムですが、過去の経験上、週2回実施の頻度が最も効果的だったように感じます。
 文章だと、意見交換に対する抵抗感が軽減されますね。更に内容ごとに分類すれば、新聞作りの取材ノートにも転用できるでしょう。一石二鳥のメカニズムですよ。
 (静岡市立高・実石克巳=NIEアドバイザー)

県内教諭の実践
=新聞に投書 意見を発信

2014年11月16日(日)付 朝刊


 本校は旧東海道の金谷宿という風情豊かなところにあります。NIE実践指定校となり、2年目も半分が過ぎました。昨年からこれまで、どのような成果があったかをまとめてみたいと思います。
 本校には毎日数種の新聞が届きます。これは実にありがたいことで、授業に新聞をぐっと利用しやすくなりました。
 中央廊下には閲覧コーナーを設け、ソファーも置きました。まだまだ利用する生徒が少ないですが、教員は社会科以外の方も利用しています。最近は新聞を取っていない家庭もあるので、実際に授業中に生徒が手にとってめくる新聞があるのは大きいことです。
 私が2度の全国大会や学会に参加して、NIE実践をしている全国の教師とのネットワークができました。全国大会の様子は職員会議で報告をし校内で共有しました。昨年度の職員研修では、家庭科の授業におけるNIEを学びました。静岡新聞社とのつながりもでき、先日は出前講座を実施しました。
 また本校では、社会科で「新聞講読」(3年生対象)という授業を3年前から開講しています。毎回新聞記事を教材に使うので、生徒は新聞やニュースへの関心を持つようになりました。
 昨年の授業では、記事を使ってグループやクラスで討論をしました。「出生前診断」「学力テスト・校長名公表をめぐって」などの討論は、正解がないからこそ興味深い学びになったと思います。
 他にも、グループで記事を選んで発表したり、スクラップ新聞づくりをしたりと多種多様の学習活動に取り組んでいます。生徒は自分の意見を書いて表明したり、他人の意見から学んだり、共同で課題解決するなどの力をつけています。
 私たち教員も生徒の主体的な活動を意識した授業を企画することで、指導力を磨くことができました。
 また、生徒の意見を発信する場として「投書」にも取り組んでいます。実際に新聞に多数掲載されたことは、生徒にとって大きな励みになりました。(塚本徹/金谷高)

Q&A
=時事に関心持たせたい

2014年11月09日(日)付 朝刊


 政治・経済・社会情勢に関心を持たない生徒に、新聞を使っていかに興味を持たせ、夢を持つことにつなげていくか。
 (裾野市・高校教諭)
               ◇……………………◇
 ■身近な話題、投げ掛けて
 【答】今の高校生は政治・経済・社会情勢に無関心。じゃあ、お前が高校生の時はどうだったんだ、と反問されると沈黙するしか無いかな、という感じです。だけど今の時代、そうも言っていられないのが現状ですよね。
 やはり新聞を効果的なツールとして、身近な話題を教員が継続的に投げ掛けていく姿勢が大切でしょう。政治ならば高校生の財布をも直撃する消費税、企業の新規採用状況は社会情勢。つまり自分と密接に関わるトピックを、最もタイムリーに入手できるのが新聞だよ、と教える必要がありますね。
 しかし、新聞と夢を無理につなげる必要は無いのではないでしょうか。大上段に構えず、気楽に根気よくサジェスチョンしていけば良いと思います。夢は与えられるものではなく、内なる自分が芽生えさせ、育み、膨らめて、実現するために努力をするものだと思います。
 生徒の夢が生み出されるきっかけが新聞ならば、最高のNIEに違いありません。
 (静岡市立高・実石克巳=NIEアドバイザー)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載

2014年11月01日(土)付 朝刊


 ■NIE楽しくやさしく(11)=NIE活発化を目指して
 世界新聞・ニュース発行者協会(WAN-IFRA)は10月12日、日本新聞協会等12か国の新聞団体を「世界のNIE殿堂」に認定し、表彰しました。「NIE殿堂」は、各国の若者読者の育成活動を評価し、NIEが世界で活発化することを目指して今年創設されました。
 そもそもNIE(エヌ・アイ・イー)とはNewspaper in Educationの略で、「教育に新聞を」と訳され、学校などで新聞を生きた教材として活用したり、役立てたりする活動の総称です。1930年代アメリカで、社会奉仕・慈善事業を行う篤志家が新聞を買い取り、まとめて学校に寄贈したことが始まりといわれています。当初はNIC(Newspaper in Class)と呼ばれ、後に「Class=教室」から「Education=教育」の「E」に変わりました。
 日本でNIEが公式に認知されたのは、1985年の日本新聞協会主催の新聞大会(静岡大会)です。その後、日本新聞協会と教育界が提携して全国各地にNIE推進協議会を発足させ、現在では学校をはじめ、刑務所、高齢者施設、障がい者施設、移住者のための語学教室等で取り組まれています。
 このようにNIEへの期待が高まる今日、NIEが「やさしい」(易しい、優しい、優れている)と感じ、NIEに「たのしく」取り組める工夫が益々大切となってきました。
 本年3月、私は静岡県が発刊した『発見!富士山静岡空港』(学習素材集:小学生版・中学生版)の監修を担当しました。その際、中学生版ではすべての項目において新聞記事を重要な学習素材として位置づけました。新聞は社会のさまざまな事象や人々が必要とする情報を整理して伝えており、社会を知るための便利で極めて有効な学習素材だからです。
 学習素材集では、新聞記事から素朴な「はてな」を見つけ出したり、記事内容が「やさしい」と感じたりして、新聞を活用する「たのしさ」を実感しながら、子どもの知的好奇心を高め、探究力を育成する「しかけ」も工夫しました。
 今回の「NIE殿堂」の認定を機に、「たのしく、やさしい」NIEの活発化を図る一層の取り組みを教育現場に期待します。
 (安藤雅之・常葉大大学院教授)

県内教諭の実践
=グローバルな視野持つ

2014年11月02日(日)付 朝刊


 本校では、社会で起きている出来事と自分たちの生活や地域との関わりに気付き、持続可能なこれからの時代をつくる担い手を育てるための教育に取り組んできました。
 そのために重要視してきたのが新聞を活用したグローバル・アイ活動です。グローバル・アイ活動とは、これまで朝読書を行っていた時間に変えて、ひとつの新聞記事を全校の生徒が読み、それについて個人の考えを記述したり感想を述べあったりする活動です。こうした活動を通して、社会事象に関心を持つことはもちろんのこと、今現在の人・もの・ことについて深く考え、自分の意見を持つ力をつけさせたいと考えました。
 1年生に前期の活動を振り返った感想を聞くと、「新聞やニュース番組を通して社会に関心を持つようになった」「長い文章を読んだり書いたりするのが苦ではなくなった」といった感想が寄せられました。
 また、こうした活動の他にも、昇降口脇のオープンスペースに、「ぐろーばるーむ」というコーナーを設け、毎朝届く数社の新聞(ローカル紙を含め8社程度)を生徒がいつでも読めるようにしたり、各社の一面を並べて掲示し、トップ記事のタイトルや内容を比較する活動をしてきました。
 このような、読む→知る→考える→表現するといった一連の流れが、感じとる心や伝えようとする気持ちを育て、授業の中でも少しずつ見られるようになりました。
 今後、活動をさらに工夫しようと検討しているのは次のことです。
 ①グローバル・アイ活動で扱う記事を生徒が選ぶ②記事を毎日変えるのではなく、一つの記事をじっくりと読み込み、決められた文字数に要約し、それを口頭で説明したり質疑を受けたりする時間を設ける③討論集会(仮称)を企画し、記事をもとにパネルディスカッションやディベートを実施する。
 こうした活動を通してグローバルな視野で今を見つめ、何のために学び、これからをどう生きるか。生徒とともに考えていきたいと思います。(長谷川敏和/裾野深良中)