一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

Q&A
=つけたい力 共有したい

2014年12月28日(日)付 朝刊


 NIEを行うことで、生徒にどのような力をつけさせるかを学校教員に認識させるためには、どのような活動が効果的でしょうか。
 (浜松・中学校教諭)
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 ■同じ記事使い全校で学習
 【答】「読解力・文章力」「思考力・判断力」「表現力」「社会や地域への関心」「生き方を学ぶ」など、生徒につけたい力に応じて新聞の活用方法を工夫する必要があります。
 例えば、つけたい力が「読解力や文章力」ならば、生徒にニュース記事やコラム、投稿文などを読み取らせ、決められた条件に従って、「見出しを付ける」「要点を書く」「内容に対する自分の考えを書く」などの活動はどうでしょうか。教師も一緒に考え、全校で取り組めば、生徒につけたい力の共通理解を図ることができます。
 私の勤務校でも、「読解力・文章力」を高めようと、朝読書の時間に新聞記事をじっくりと読み、記事に関係する問題を解く「NIEタイム(通称・朝新聞)」を行っています。扱う記事の種類や内容によっては、「社会や地域への関心を高める」「積極的な生き方を学ぶ」などの目標でも可能な活動です。
 また、道徳や学級活動などの時間に全校で同じ記事を使って学習することも効果的です。「表現力」の向上を目指して、記事の内容について討論する「ディベート大会」を全校で行っている学校もあります。
 NIEの取り組みの様子や記事に対する生徒の感想・意見などを紹介する「NIEコーナー」を設けるのも全校の共通理解を深めると思います。
 (島田川根中・矢沢和宏=NIEアドバイザー)

Q&A
=子どもに個人差

2014年12月21日(日)付 朝刊


 子どもたちにNIEを学ぶに当たっての個人差がありますが、どうしたらよいでしょうか。
 (静岡市・小学校教諭)
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 ■記事を紹介同じ“土俵”に
 【答】先生方は毎朝新聞に目を通しているでしょうか。教師が教室で新聞を広げて気になる記事を見つけ、朝の会などで日々子どもたちに紹介することは、子どもたちを同じ土俵に乗せること(情報の共有化)となり、個人差を縮めていく第一歩につながります。
 低学年では季節の花や動物などの写真を見せ簡単に説明をします。中学年では写真を見せながらリード文を読み、写真では分からない事実を補足します。高学年では記事の概要と背景にあるものについて解説します。
 次に記事に対してどんなことを考えたかを尋ねます。子どもたちの生活経験や家庭環境の違いから記事の読みの深さ・考え方は一人一人異なりますが、次第にこつをつかみ、「記事選びは自分でやりたい」と言わせたらしめたもの! 「自分で情報を選び、自分なりの考えを持つ」というNIEの入り口に到達したことになります。まずは先生方がNIEに対するセンスを磨いてください。
 (静岡城北小・中村都=NIEアドバイザー)

県内教諭の実践
=「記事の海」入る手助け

2014年12月14日(日)付 朝刊


 本校でのNIE活動の一つとして2年生の選択科目である「現代社会演習」があります。約50人の生徒に対して、2人の教員がチームティーチングで教えていますが、授業では、配布された記事を要約して感想を書くトレーニングに加えて、月に1回、新聞を切り抜いて模造紙に貼る「切り抜き新聞」作りを行っています。1回目(10月)のテーマは「防災と危機管理」。2回目(11月)は「食と地域おこし」をテーマに、記事を集めました。
 NIEの実践指定校となり、9月から3カ月にわたって、主要7紙が1部ずつ毎日学校に届くという贅沢[ぜいたく]な環境になりましたが、50人が一斉に記事を探すには1カ月分の新聞ではとても足りませんでした。学校図書館所蔵の新聞を自由に切り刻むこともできませんし、かなり多くの生徒が自宅で新聞を取っていませんので、家から新聞を持って来てもらうこともできません。生徒が付箋を貼った記事を後から教員がコピーしたり、10台の「iPad」で記事を撮影させて印刷するなどの試行錯誤を繰り返しました。
 特定のテーマで新聞記事を集めたければ、インターネットでキーワードで検索すれば簡単に手に入る時代です。情報の「一本釣り」することが当たり前と思っている子が多い今だからこそ、「記事の海・新聞の山」に分け入る経験を学校が用意することが重要だと思います。ただ、たくさんの生徒がテーマに沿って記事を切り出すには大量の新聞が必要です。新聞社や販売店の皆様には、新聞を無料ないし廉価で学校に提供する仕組みを整えていただきたいです。
 2年生は、1月に沖縄に修学旅行に出かけます。現地の新聞社(琉球新報・沖縄タイムス)のご厚意で、過去1年分の新聞を廉価で調達するめどが立ちました。専攻系列別の研修では、新聞記者さんと那覇の街をフィールドワークをする企画も組んでいます。思い切りハサミを入れさせて作った「切り抜き新聞」を持参して、記者さんたちをうならせてみたいと思います。(伊藤智章/裾野高)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載

2014年12月06日(土)付 朝刊


 NIE実践指定校の静岡市立高松中(同市駿河区)でこのほど、新聞記事を活用した国語科の公開授業「新聞投稿文を作ろう 正義の味方になってみたい!」が開かれた。2年生28人が、投稿文が紙面に掲載される基準について考えた。

 生徒は事前に「生き方」「進路」「家族」「学校生活」「地域」「日本」「世界」の七つのグループに分かれ、それぞれ用意された中学生や高校生らの投稿文から1人一つずつ選んで授業に臨んだ。投稿文の大意▽投稿者が最も伝えたいこと▽自分の感想―の3点に関して意見を交わした。
 「世界」のグループでは、『みんなが望む戦争のない世界』『戦争を選ばず尊重し合う心』『南アで頑張れ移動図書館車』などと題した投稿文が並び、戦争と平和をテーマにした文章を中心に話し合った。
 「家族」のメンバーは、高校生による両親への感謝の気持ちや、家族と一緒に食事することの大切さに触れた投稿を選び、「自分の両親は2人しかいない大切なもの」「勉強や部活も大切だけど、家族との団らんも必要」などと述べた。配られた用紙にメモを取りながら、互いの意見を真剣に聞いた。
 各グループの代表者が、話し合った内容をホワイトボードを使って発表した。授業を担当した南條徹教諭(50)が黒板に並べられたボードを示しながら「それぞれのグループから出た意見の中で、共通することは」と呼び掛けると、「共感できる部分がある」「想像しやすい」「具体例が書かれている」「体験に基づく話で構成されている」などの声が次々と上がった。
 「世界」のグループの一居成君(14)は「戦争についての投稿に共感した。普段の生活がいかにぜいたくなのかが分かった」と話した。八木詩音さん(14)は「文章を書く時には、人にうまく伝えたいと思う気持ちが大切だと学んだ。自分の思いをしっかりと伝えている同世代の投稿文は参考になった」と語った。
 授業の最後には静岡新聞社の読者投稿欄の編集担当者が登壇。「文章には段落を付けて、結論を最後に持っていくと良くなる」とアドバイスした上で、「10代の今しか書けないものを書いてほしい」と呼び掛けた。
 南條教諭は「文章を書くときには読み手を意識することが大切。不特定多数の人に意見や思いを伝えるためにはどのような工夫が必要かを考えさせることに重点を置いた」と振り返った。

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新聞記事の投稿文について意見を交わす生徒ら=静岡市駿河区の市立高松中


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 ■NIE楽しくやさしく(12完)新聞のある暮らし

 新聞は配達員の方によって、雨の日も風の日も私たちの家に毎日配達されています。この新聞配達というシステムは日本独自のものです。その歴史は「東京日日新聞」(毎日新聞の前身)が創刊された1872(明治5)年2月21日の翌日、社員が購読者の家に届けたことに遡[さかのぼ]ります。しかし偽記者や悪質な売り子の横行等の理由から、戸別配達が制度化され、新聞社には専門の配達員が置かれることになりました。その後、新聞販売所を通して購読者に新聞を配達するシステムへと発展してきました。
 戦後、核家族化の進行や大都市への人口集中によって顧客獲得合戦が激化し、戸別配達が拡大しました。一定の販売部数を確保できる戸別配達は、新聞社の販売実績として広告を集めることができ、収益増にもつながるというメリットがあるからです。しかし、新聞本来の能力を低下させるようなことがあってはいけません。
 ニュースの速効性がかつてないほど高まっている今日、新聞離れやインターネット依存等が問題視されています。ところが日本新聞協会広告委員会「2013年全国メディア接触・評価調査」によると、新聞がテレビ、ラジオ、雑誌、インターネットと比べて「情報が整理されている」「バランスよく情報が得られる」「世の中の動きを幅広くとらえている」等のキュレーション(一定の価値判断に基づき情報を集め、共有すること)を実践している点が高く評価されました。また新聞の「印象・評価」でも「社会に対する影響力がある」「知的である」「自分の視野を広げてくれる」「情報源として欠かせない」「日常生活に役立つ」と回答した人も多く、新聞が日々の生活に根付いたキュレーションメディアとして認識されていることも明らかとなりました。
 新聞は「社会の今」を映す鏡です。新聞社は戸別配達で得てきた信頼を一層高め、人々は新聞を日常的な風景に位置づけ、豊かな生活づくりへのエネルギー源にしてほしいと願います。
 (安藤雅之・常葉大大学院教授)

Q&A
=授業にどう生かす

2014年12月07日(日)付 朝刊


 NIEをどのように授業に活用すればよいでしょうか。
 (静岡市・小学校教諭)
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 ■読み込めば引き出し増える
 【答】教師が世の中の情報を網羅した新聞をどの程度読み込んでいるかで、授業でのNIE活用の引き出し数が変わってきます。
 国語、社会、学活、道徳はもちろん音楽、図工などの技能教科でも十分に活用できます。
 たとえば音楽では、音楽会でのマナーを学ぶには投稿欄などを使うことがあります。図工では、広告面から紙面づくりのレイアウトを学んだりカラー広告の微妙な色合いを材料として使用したりすることができます。
 さらに教科としての垣根をはずし、合科的総合的に学ぶことも可能です。家庭科で料理の記事を紹介しながら、火を使っての化学反応と捉えたら科学として学べます。サッカーの試合結果を見ながら、シュートしたボールの軌跡をたどれば物理としても捉えることができるでしょう。
 このように、新聞を活用することは、教科書で学んだ個々の基礎的知識を結びつけ、生活に生かしていくことにつながります。
 (静岡城北小・中村都=NIEアドバイザー)

県内教諭の実践
=新聞テーマにスピーチ

2014年11月30日(日)付 朝刊


 「夏休みに楽しかったこと、うれしかったこと、嫌だったこと何でもいいから1分間で話してみよう」。リーダー塾での一場面。校長先生が子どもたちに呼び掛けました。さあ、1分間スピーチの始まりです。校長先生の手には、ストップウオッチもあります。「ぼくが、夏休みに楽しかったことは、野球で行ったキャンプです。そこでは、焼き物を作りました。それは、…」いい感じ。これは、1分間いくぞと思いながら聴いていました。ところが、2人目の子は、15秒ぐらいで、話が止まってしまいました。次の子は、30秒。あれあれ、メモを元に付け足しながら言えばいいのに。本校の子どもたち、自分の思いや気持ちを相手に分かりやすく伝えることが苦手です。結局、1分間しっかり言えた子は、1人もいませんでした。
 さあ、どうしたものかと頭をひねった結果、考えたのが、新聞の記事を話題にした朝の会での1分間スピーチです。日直の子が、日替わりでスピーチをします。選ぶ記事は、スポーツ関連がトップです。時々、大きく取り上げられている社会問題についてスピーチする子も出てきました。同じ記事が続くこともあります。しかし、話す視点が違うので、個性が出て新鮮です。
 9月の中旬ぐらいから始めた1分間スピーチ。だいぶ慣れてきました。全校集会での感想発表でも、4、5文の感想を言えるようになりました。表現力と思考力が、同時に高まってきたことを感じます。新聞の記事に興味をもち、自分なりに理解し考えをまとめることは、簡単なことではありません。しかし、そう遠くない将来、自立した社会人になるために、少しでも社会に目を向け、自分の考えを人に伝えるコミュニケーション能力を培っていってほしい、そんな願いを込めながら、毎朝のスピーチを楽しみにしています。(伊藤公子/浜松平山小)