一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

Q&A
=アナログな新聞 良さは?

2015年02月22日(日)付 朝刊


 デジタルコンテンツがこれだけまん延している中で、アナログな新聞のどの部分や良さをアピールしていけばいいのでしょうか。自分もほとんどの情報は、ネットから見つけてきます。
 (静岡市・小学校教諭)
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 ■読み直して考える場提供
 【答】児童が新聞を活用して情報を取得するのは難しいと言われますが、そんなことはありません。新聞は使い方ひとつで素晴らしい教材に大変身します。
 新聞記事には、情報を提供する他のメディアにはない緊迫感や切実感があります。内容を捉えるだけなら、情報がコンパクトにまとめられているリード文を読めばいいのです。状況を詳しく把握する場合は、文字・写真・図表などの表現方法から情報を多面的に読み取りながら、自分の想いも重ねていけます。
 さらに、新聞は一過性ではなく読み直して考える場も提供してくれます。テレビなどで一瞬にして流れてしまう情報を正確につかむのは簡単なことではありません。しかし新聞は文字が紙面に残るので、繰り返し内容を確認しながらじっくり読み込むことができます。
 教師が新聞の特性を理解し児童に活用方法を教えることで、確実に利用範囲が広がります。ぜひ新聞のおもしろさを伝えてください。
 (静岡城北小・中村都=NIEアドバイザー)

県内教論の実践
=論理的な文 読む訓練に

2015年02月15日(日)付 朝刊


 私が勤める静岡東高校は、大学進学を目指す生徒が集う学校です。生徒たちは進学に向けて日々懸命に学習に取り組んでいます。国語教師となって2年、私は授業方法を模索する中で、新聞を活用してみたいと漠然と考えていました。しかし、なかなか実践には踏み出せずに思案していました。
 そんな矢先、静岡市立高松中学校でNIEの公開授業が行われることを知り、すぐに参観を申し込みました。公開授業は中高生が投稿した記事をもとに話し合いをするもので、生徒たちが同世代の投稿に対して真剣に意見を述べている姿が印象的でした。
 参観することで、授業で新聞を扱う意義を再確認することができました。
 まず、新聞は論理的な文章を読む訓練に良い教材だということ。新聞には短い文の中に文章構成の基本が詰め込まれています。高校生は現代文の授業で論理的文章を学習します。しかし、日頃小説やエッセイなどに親しんでいる生徒にとって、論理的に読み進める作業は簡単ではありません。新聞はそうした生徒への良い教材になる可能性を持っています。
 次に、さまざまな人の意見が読めるということ。新聞には多くの意見文が掲載されています。評論家や学者をはじめ、市民の声までもが集まっています。今の生徒は思ったことをすぐ言葉にしてSNSなどに発信するのを得意としています。反面、物事を客観的に見て、考えをまとめることが苦手です。新聞はさまざまな人の視点を知り、自分自身の意見を築きあげていく教材としても活用できると思います。 
 生徒たちは今後さまざまな形でのコミュニケーション能力を求められることになります。今から多くの文章に触れて、読む力・書く力をしっかりと習得して欲しいと思います。
 どのような授業ができるか悩んでいる私に、NIEの授業は一つの示唆を与えてくれました。新聞を使って生徒と共に成長できる授業を作っていきたいと思います。(冨永優花/静岡東高)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=まわしよみ新聞 県内でも広がり 「気になる記事」で会話弾む

2015年02月07日(土)付 朝刊


 さまざまな年代、職業の人たちが、気になる新聞記事を互いに紹介し合う取り組み「まわしよみ新聞」が、県内でも広がりを見せ始めている。初対面でも、新聞記事が介在するとなぜか会話が弾み、思わぬ方向へ話が転がる。そんな不思議な魅力がじわじわとファンを増やしているようだ。

 1月中旬の夜。静岡市葵区の番町市民活動センターに、20代から50代の男女5人が集まった。センタースタッフの田口公一さん(31)が企画した「まわしよみ×ダイアログ」の参加者だ。
 田口さんがまわしよみ新聞に関心を持ったのは、東日本大震災の際、壁新聞で被災者に情報を伝え、大きな話題となった石巻日日新聞の存在を知ったのがきっかけだった。同紙を取り寄せて購読するうち、センターの事業として新聞を使ったワークショップを考えるようになった。具体的な展開を模索する中、インターネットでまわしよみ新聞を知ったという。
 田口さんは考案者である陸奥賢さんの取り組みを参考にしながら、「対話」を重視した独自の運営方法を構築。1月の「まわしよみ×ダイアログ」は、その"田口方式"で進められた。
 進行役を務める田口さんを除く4人が模造紙の広げられた机を囲み、ニックネームで自己紹介。静岡新聞、石巻日日新聞など4紙をそれぞれ手に取り、紙面をチェック、気になる記事を切り抜いていく。10分後、新聞を隣の参加者に回し、再びチェック。多くの記事が模造紙の上に並んだ。
 くじ引きで発表者に当たった参加者が、一つの記事をピックアップ、それを切り抜いた参加者に記事について質問する。そのやり取りで気になる言葉があれば、参加者は異なる色のフェルトペンで模造紙にメモし、そのメモを基にさらに対話を深めていく。
 この時は石巻市内の小学6年生の夢をまとめた記事が対象になった。最初は子供らしい笑顔の写真が話題になっていたが、夢の内容に「介護士」や「国交省で働きたい」などがあることから、話は子供たちの心に潜む大震災の影響におよび、対話は休みなく繰り広げられた。終わったときには、模造紙は色とりどりのメモでいっぱいになっていた。
 「まわしよみ×ダイアログ」の参加者の一人、清水玲子さん(46)は焼津市市民活動交流センターのスタッフ。清水さんは翌週、同センターで昨年12月に続いて2回目の「まわしよめ!焼津!」を開いた。3人が参加し、"田口方式"で対話を楽しんだ。
 このほか、浜松市中区のセミナールーム「黒板とキッチン」でも昨年、「まわしよみ新聞」が5回行われた。昨年6月の初回は同ルームのこけら落としとして開催、陸奥さんも招いた。同ルームの企画運営を担う「大と小とレフ」取締役の鈴木一郎太さん(37)は「多様な価値観を、楽しみながら実感するいい機会になる」とまわしよみ新聞の可能性に期待する。

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「まわしよみ×ダイアログ」を楽しむ参加者=静岡市葵区の番町市民活動センター


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【まわしよみ新聞】
 参加者が気になる新聞記事を切り抜き、プレゼンテーションし合う取り組み。大阪のイベントプロデューサー、陸奥賢さんが2012年、釜ケ崎の喫茶店で客同士が新聞を回し読んで盛り上がる光景に接し、イベントの企画として立案したのが始まり。切り抜いた記事の中からトップ記事などを決めて紙に貼り、1枚の新聞に仕立てるのが本来のやり方。「完全フリー&オープンソース」をうたい、特に断らずに実施しても問題にしない旨を表明していることもあり、さまざまな形で全国に広がった。

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■21日に「NIE実践報告会」
 県NIE推進協議会は21日午後1時半から、「NIE実践報告会」を静岡市駿河区登呂の静岡新聞放送会館で開く。県立金谷高、県立浜松城北工高、浜松市立積志中、裾野市立深良中教諭が発表する。対象は県内の教育関係者。参加希望者は10日までに、県NIE推進協議会事務局<電054(284)9152>に申し込む。無料。

Q&A
=情報読み解く力付く?

2015年02月08日(日)付 朝刊


 NIEを行うことで、「読解力」や「メディア・リテラシー」等が本当に身に付きますか。

 (静岡市・小学校教諭)

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 ■背景を探り、思考が深まる

 【答】現在ではネットから情報を取得することが好まれます。書物などを何冊も読んで必要としている部分を抜き書きするよりも、ネットで検索する方がはるかに簡単だからです。  しかし、子どもたちはこのあふれんばかりの情報をどのように吸収、消化しているのでしょうか。情報過多の時代だからこそ、自分が必要としているものを取捨選択する力や情報を読み解く力(メディアリテラシー)が必要であると考えています。  「知る」とは、外的情報を取得することではなく、その情報を用いて考えることです。ネットでは断片的な情報を取得した時点で「分かった」と勘違いすることがありますが、新聞の場合は記事を読みながら同時にその背景も探ることになるため、情報自体を総合的に捉え考えることにつながります。  新聞もネットも情報獲得手段の一つに過ぎません。しかし、「知りたい」と思ったならば、大いに新聞を活用してみてください。

(静岡城北小・中村都=NIEアドバイザー)

県内教諭の実践
=文章力向上へ新聞活用

2015年02月01日(日)付 朝刊


 県立農業経営高校と県立浜松城南高校が再編整備され、2006年4月に開校した浜松大平台高校には、全日制課程と定時制課程があります。私が勤務している全日制は総合学科であり、2年次から自分の将来を見据えた授業を選択することができます。卒業後は進学する生徒も社会へ出て行く生徒もおり、社会に通用する教養やモラルといったものを高校において学ぶ必要があります。
 職業観を養い、将来について考えるキャリア教育を目的とした「産業社会と人間」という総合学科1年次生の授業において、職業調べのまとめとして新聞を作成する時間がありました。小中学校段階で記事を書くという経験があったようで、教員の予想以上に1枚の用紙に上手くまとめることができていました。しかし、文章力が低く、読書以外で活字に触れる機会を国語科教員としてどのように授業内で作っていこうかと悩み始めました。
 その時、NIEが行っている「公開授業」を知り、静岡市立高松中学校の授業を参観させていただきました。2年生の国語において、「新聞投稿文をつくる」という目的に向け、その時間は「どのような投稿文が掲載されたのか」について話し合う時間でした。実際に掲載されている投稿欄から共通する点を探し、掲載された理由を考え、グループごと、ホワイトボードにキーワード等をまとめていました。全体発表において視覚的にも理解しやすく、中学生の生き生きとしている様子や自分の考えを相手に伝えようとしている姿勢に喜びを感じました。高校でもそのような活動を行い、活字に触れることで文章力の向上につなげるきっかけにしていきたいです。
 インターネットやテレビ、スマートフォンといった電子媒体が急速に拡大・発展している昨今、新聞を取っている家庭はもちろん、社会情勢を新聞記事から得るということはなくなってきています。だからこそ、学校における授業や校内活動の中で新聞を取り扱う機会を多く設け、生徒の社会一員としての意欲関心も高めていけるよう、今後も努めていきます。(加藤茉莉銘/浜松大平台高)