一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

Q&A
=題材は最新記事がいい?

2015年03月29日(日)付 朝刊


 授業で扱う新聞記事は新しいものの方がいいのでしょうか。半年ほどたったものは古いでしょうか。
 (島田市・高校教諭)
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 ■新旧とらわれず自由に活用
 【答】新しい記事も、過去の記事も、理科の授業で利用していますが、どちらも良いと思っています。
 理科の授業では、最新の科学ニュースの新聞記事を、よく取り上げます。大きな自然災害の場合、新聞各社の1面を飾り、テレビやインターネットでも話題になっており、生徒が自宅で目にする機会が多く、高い学習効果があります。
 新しい記事と過去の記事を組み合わせる方法もあります。例えば、昨年の御嶽山噴火災害の記事と、過去の大きな火山災害である雲仙普賢岳の大規模火砕流の記事を提示し、日本は火山列島であり、繰り返し災害に見舞われてきたことを紹介します。併せて、活火山富士山の火山防災に関する最近の記事を取り上げ、将来の噴火災害に備えることの大切さを考えさせます。
 それぞれの先生方がご自分の専門性や得意分野に応じて、新旧にとらわれず、多様な記事を自由にアレンジした授業展開を行うとよいでしょう。
 (清水西高・吉川契子=NIEアドバイザー)

Q&A
=学年内でも温度差

2015年03月22日(日)付 朝刊


 NIEへの関わりにおいて、学年内でも温度差がある。同僚は全てが初めての経験で、普段の学校業務に追われNIEまで手が回りません。
 (静岡市・小学校教諭)
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 ■「魅力」を他の先生に紹介
 【答】「やさしいNIE」の出番です。無理をすると長続きしませんので、「可能な先生が、できる取り組みから」始めればよいのです。
 先生方自身がNIEに魅力を感じなければ、子どもたちにNIEの楽しさを伝えることはできません。ですから、「子どもたちに見せたい新聞記事」や「おもしろいNIEの活動」などに出合った先生は積極的に他の先生に紹介することを心がけてみましょう。
 また、新たな活動を始めなくても、例えば、授業や行事のまとめ新聞づくりの際に「新聞づくりの基本を押さえる」など、今まで行ってきた活動に少し工夫を加えるだけで立派なNIEになります。「新聞スクラップを学級内でリレーして感想を書き合う」「スクラップを家に持ち帰って家族に意見を聞く」などの活動は子どもたちが楽しく取り組めると同時に、先生の負担を減らすこともできます。
 新聞を置く、NIEの掲示物を作成するなどの「NIEコーナー」の活動をできる限り子どもたちに任せて新聞に親しむ環境づくりを進めるのもよいと思います。
 (島田川根中・矢沢和宏=NIEアドバイザー)

県内教諭の実践
=要約で読む視点養う

2015年03月15日(日)付 朝刊


 「文章を読む」=「書き手との勝負」。この授業では、生徒たちにこのように投げかけています。
 静岡新聞に掲載されているコラム「大自在」を要約する学習を始めたのは、昨年の9月頃です。「今日から要約の授業を始めます」―。そう伝えると一斉に聞こえた「え~」。理由を聞いてみると「読むことが苦手」。「要約は難しいというイメージしかない」。という答えが返ってきました。さらに、要約をする題材は新聞のコラムだと伝えると、「難しそう」「無理無理」という生徒たち。
 そんな中、早速授業を開始しました。キーワードの入っている文章を中心文とすること、段落の文字数が少ない場合は、一文にまとめることが原則であるなどの「要約するための視点」をまず伝えました。すると、そこでがらりと生徒たちの文章を見る目が変わったことに気がつきました。そして、書いたものを掲示し、その中で誰のものが一席か生徒が選びます。どの「要点(段落を短くまとめたもの)」が一番書き手の意識を捉えているのか。回を重ねていく程、文章を読む視点が定まっていきました。
 ですが、本当に重要なのはこの次にあります。段落ごとから「大自在」の文章全体に目を移し、それを短くまとめる。文章の要約です。そこに、条件を加えます。キーワードを別の言葉に置き換えたり、語順や文の順番を変えたりすること。この条件の狙いは、「書き手が本当に語りたいことを捉える」こと。「大自在」の文章は、書かれていること以外の部分を読むことが大切だと考えています。書いている人は、何を書いて何を書かなかったのか―。その段階まで読み手が達するために、あえて先のような条件を付けて要約をしていくのです。
 始めたばかりの実践ではありますが、書き手と真剣に向き合う姿勢が見えてきました。コラムの要約はその点でも有効だと思います。(堀瑛平/静岡サレジオ中学校)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=4校が実践活動成果を発表

2015年03月07日(土)付 朝刊


 県NIE推進協議会(角替弘志会長)はこのほど、2014年度NIE実践報告会を静岡市駿河区で開いた。13年度から2年間、新聞を活用した教育を進めてきた中学、高校4校の担当教諭らが活動事例や成果を発表した。報告内容の概要を紹介する。

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 ■全校生徒同じ記事読む-松永光正教頭(裾野深良中)
 2012年度から毎朝、全校生徒が同じ新聞記事を読み感想を述べ合ったり意見を記述したりする「グローバル・アイ」という活動を始めた。生徒に「今、どんな社会に生きているのか」を考えさせるとともに、言語活動の充実を図ることが狙いだった。
 記事は教職員が選び、意見、感想に対するコメントも教職員が行うのが通常の形だが、生徒が記事を選んだり、保護者に感想を記入してもらうなど、発展させた形の試みも行った。
 本年度後期からは、一つの記事を3日間かけて扱う新方式を導入した。1日目は記事を要約、2日目に感想を書き、3日目は班内で意見を交換したのち、他生徒の用紙にコメントを書き込む。この方式により、記事をより深く読み解くことが必要になったほか、言語活動の充実にもつながっている。

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松永光正教頭

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 ■スクラップで世界知る-若原昌史教諭(浜松積志中)
 2013年度は廊下にNIEコーナーを設け、各紙の1面や社説、コラムの比較を行うとともに、長期休みの際には生徒にリポートを提出させるなどの実践を行った。生徒からは「新聞は大人だけの読みものではないと思った」などの感想が寄せられた。
 14年度は新聞スクラップノートの作成に取り組んだ。それぞれテーマを月ごとに設定、記事内容をまとめ、それに対する自分の意見を記述する形で週1回提出させた。「世界や地域について知る機会となった」などの感想があった。
 スクラップノートを作成しているクラスとしていないクラスで、新聞講読時間などを調べたところ、作成していないクラスは講読0分が56%を占めたのに対し、作成クラスは5~10分が88%、10~30分が12%で、0分の生徒はいなかった。

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若原昌史教諭

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 ■投書欄での掲載励みに-塚本徹教諭(金谷高)
 2012年度から、学校設定科目として「新聞講読」という授業を設けている。13年度の「新聞講読」では約30のテーマを取り上げ、記事を貼りつけたプリントを使って授業を展開した。数回、生徒にテーマを選択させたが、「ダイオウイカ」を取り上げるなど視点が新鮮で面白い授業になった。新聞への投書にも取り組んだ。実際に新聞に掲載された例もあり、生徒の励みになった。
 14年度は静岡新聞の記者経験者による出前講座を行った。インタビューのワークショップも組み込んで、新聞ができるまでを講義してもらった。
 生徒からは「新聞は歴史の記録としても大切なものと分かった」「インタビューで、どれだけ聞き出せるかは記者の腕次第だと分かった」などの感想があり、好評だった。

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塚本徹教諭

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 ■記者を招き環境講演会-飯尾美行教諭(浜松城北工高)
 地域を守る環境ボランティア活動を単位として認定するなど、学校全体として「環境」を重視する中、「NIEによる環境教育」に取り組んだ。
 環境に関する記事を貼ったワークシートを作り、内容をまとめるとともに、それについて生徒同士で話し合わせる授業などを通して新聞に親しませた。
 共同通信や静岡新聞などの記者を招いた環境講演会を開いたほか、地域の企業に環境への取り組みを聴くインタビューも行った。
 当初、「難しい」「文字ばかり」など新聞に対して負のイメージを持っていた生徒たちも、「意外と面白い記事がある」「テレビより詳しくニュースがわかる」など、一連の授業を通して新聞に親しみを感じるようになった。
 NIEによる環境教育は、実践的で効果的な素晴らしい授業方法だと考える。

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飯尾美行教諭

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 ■学校新聞制作指導の記録-富士の元高校教諭が出版
 富士市の元高校教諭西家文代さんがこのほど、学校新聞制作の指導に携わった28年の記録をまとめた「高校新聞ルネサンス実践集」=写真=を出版した。授業の中での新聞づくり、新聞部復活・創部のエピソード、新聞コンクールやNIEなどについて関係者寄稿も交え紹介した。
 西家さんは富士高、富岳館高、吉原高で新聞部を県学校新聞コンクール(静岡新聞社主催)最優秀賞に導き、全国高校新聞コンクール(大東文化大主催)でも富士高時代に文部大臣奨励賞(当時)を受賞した。
 B5判、295㌻、羽衣出版。

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「高校新聞ルネサンス実践集」

Q&A
=ニュース発表 指導法は

2015年03月08日(日)付 朝刊


 新年度から、毎朝、子どもたちにニュースを発表させたいと思います。指導するポイントをお教えください。
 (浜松・小学校教諭)
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 ■伝えたい記事 探させる
 【答】朝の会のニュースの発表は、プレゼンテーションの力を高めながら、社会とのつながりを意識させるために大変有効です。その一方、毎日子どもが理解できる記事を入手するのは難しいのも事実です。
 そこで、1週間程度の猶予を持たせ「これをぜひ伝えたい」という記事を探させることをお勧めします。発表者がしどろもどろになる危険を減らすことができます。
 取り組みの最初に、新聞記事は最初に結論が書かれ、その後に補説する文型であることを確認するのも大切です。最後まで記事を読まなくても、冒頭だけ紹介し「詳しく知りたい人は記事を貼っておくので見てください」という発表でも言いたいことは伝わるはずです。
 余った時間は、記事について考えたことを交流すれば発表者以外も思考を巡らせます。発表者の読み取りが甘くても、みんなで高め合っていこうとする機運を持たせれば、学級全体の時事力、コミュニケーション能力等を継続的に育てることができます。
 (浜松曳馬小・山崎章成=NIEアドバイザー)

県内教諭の実践
=記事読み考える大切さ

2015年03月01日(日)付 朝刊


 新聞記事はコミュニケーションツールの一つであると考えています。特に、静岡県内の記事、地元地域の記事、高等学校に関連する記事などを私は毎日チェックしています。これらは多くの人と会話をする際に話題として登場します。また、生徒にも提示することで高校生も社会の一員であることを自覚させることができます。
 私は商業科の教員として、常に経済や地域に敏感でなければならないと感じています。科目によっては法律や政治にも精通していなければなりません。商業科目は幅が広く、社会に直結している科目です。そして、その内容は日々変化している現状があります。それゆえ教材は教科書や問題集にとどまりません。体験や経験をすることがベストかもしれませんが、それには限界があります。だから「新聞」を読むことが商業科の教員にとって重要であることを日常的に感じています。
 そのような中、静岡市立高松中学校での「NIE」教育公開講座が開催されることを知り、参加させていただきました。興味や関心のあるテーマを討論し、投稿文を作成する国語の授業でした。事前に調べ学習など、生徒はしっかりと準備をして臨んでいました。不特定多数の読者がいる新聞に投稿し、掲載されるにはどのような表現や主張をすべきなのかを考えている様子は読者の視点からも、教員としての視点からも学ばせていただきました。
 今後、私もNIEを活用していきたいと考えています。商業高校からは多くの生徒が就職をしていきます。進学する生徒も数年先には就職が待っています。社会に出るために新聞記事を読み「知る」ことと、自ら「考え」、「意思」を持ち、それを「表現」していくことが重要だと考えます。これらを実践することは、高校生の段階においてビジネスマナーに対応できる文章表現能力や、コミュニケーション能力の育成にもつながります。NIEを通じて社会に貢献できる人材を育成すべく、自らも励んでいきたいと思います。(諏訪部利実/沼津商業高)