一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=本年度実践指定校の取り組み 社会に関心 考察力育む

2015年07月04日(土)付 朝刊


 日本新聞協会の2015年度NIE実践指定校に県内14校が内定した。近く正式決定する。指定校には新聞7紙が一定期間、無料提供される。各校担当教諭に本年度の目標や意気込みを聞いた。

 ■富士田子浦小
 昨年度から継続している保護者ボランティア作成の新聞記事スクラップをより効果的に活用します。授業やスピーチ資料、昼の放送のクイズ問題など、子どもたちの興味関心を社会の出来事に向けさせていきます。
 (望月千恵)

 ■静岡清水三保第一小
 本年度は主に6年生で実践を行う。社会の歴史や政治などの授業で積極的に新聞を活用していく。実践を行うことで子どもたちが物事をさまざまな角度から見て、その事象を多面的に捉えることができるようにしたい。
 (稲葉研二)

 ■東海大付属小
 「小学生も社会の一員」です。世の中の出来事に対し多面的に考えることができる子を育てたいとディベートを取り入れています。時事に着目し、子どもたちが10年後、20年後に直面する問題を議論に設定するようにしています。
 (山本雄登)

 ■島田川根小
 本年度は、子どもの近くに新聞がある環境づくりを行ったり、好きな写真や気になる見出しを使った学習活動を行ったりすることを通じて、子どもたちが新聞を手に取り、身近に感じることを目標にし活動を進めています。
 (松永繁生)

 ■浜松平山小
 低学年では言葉集め、中学年では学習の資料、高学年ではスピーチなどの題材として、新聞を活用していきたいと思います。また、子どもたちが新聞を身近に感じられるように、廊下や教室の環境も整えていきたいと思います。
 (伊藤公子)

 ■南伊豆中
 身の回りに新聞があり、いつでも手に取って読める環境をつくることで、生徒が世の中で起こっている出来事に関心を持ち、自分なりの意見を持って現代社会の動きをみることができるようにしたい。
 (一森康佑)

 ■裾野深良中
 毎朝10分間、取り上げた新聞記事を全校で読む活動(「グローバル・アイ」と呼称)に重点を置き、世の中に目を向け情報を的確に判断する力に加え、本年度は自分の考えを表現できる生徒の育成を目指しています。
 (北尾昌彦)

 ■静岡清水興津中
 国語科・社会科・道徳などの教科で、新聞を使った授業を工夫していきたいです。新聞を通して社会を知り、自分の考えを持てるようにさせたいと考えています。また、文章を読み、まとめる力の向上も目標です。
 (立林学)

 ■静岡高松中
 本年度は、生徒が気軽に新聞に接したり親しんだりすることを中心に活動していく。そして、新聞のスクラップや教材化を実践することで、社会に対する視野を広げ、情報の収集や発信の能力を高めていきたい。
 (野田修)

 ■浜松積志中
 本年度も新聞記事をまとめ、自分の意見を書き、気になったことを調べるスクラップノートを作成し、週1回程度提出する取り組みを行っている。授業内でも記事をじっくりと読み論述させる時間を設けていきたい。
 (若原昌史)

 ■裾野高
 「ICTを活用したNIE」をテーマに紙の新聞に加え各紙の「電子版」を講読、切り抜きや編集、タブレット端末の地図アプリとの組み合わせをしています。成果は、地元でのフィールドワークや沖縄への修学旅行で活用していきます。
 (伊藤智章)

 ■駿河総合高
 校内にプチNIEボードを設置しています。今年は報道部生徒が新聞スクラップ壁新聞の掲示を始めました。「語彙[い]・読解力検定」に挑戦して成果を実感する生徒を増やすことが今年の目標です。
 (深沢邦洋)

 ■島田商高
 生徒がさまざまなテーマの記事に関心を持ち、主体的に社会事象を学習することが目標です。記事に対して自分の考えを書きまとめて考察力を高めるとともに、他者と意見交換し、自分の考えを伝える表現力も育みます。
 (小平和美)

 ■金谷高
 3年総合コースの生徒が履修している新聞講読の授業で、新聞の種類や紙面構成の説明から始め、時々のトピックスを取り上げて時事問題の解説を主に行う。生徒による新聞記事のグループ発表や投書も実施する予定。
 (小川隆司)

               ◇........................◇

 【2015度実践指定校】
 新規=東海大付属小 継続=裾野高、駿河総合高、島田商高、静岡清水興津中、南伊豆中、静岡清水三保第一小、浜松平山小、富士田子浦小、島田川根小、金谷高、静岡高松中、浜松積志中、裾野深良中

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県NIE推進協議会総会で実践指定校推薦が承認され、抱負を語る各校担当教諭ら=6月下旬、静岡市内

県内教諭の実践
=新聞から学び自信につなぐ

2015年07月04日(土)付 朝刊


 新聞は苦手だ。読み終わらないうちに毎日新しいものが届くし、不惑を過ぎても政治家の名前の読み方すらおぼつかない自分には、難解な逐次刊行物でしかない。
 それなのに毎日少しずつでも必ず読むし、生徒にも記事を紹介したり、無理やり読ませて感想を求めたりする。そういえば学生時代も、新聞小説を結構楽しみに読んでいた。どうやら苦手なわりに嫌いではないようだ。
 確かにテレビニュースはわかりやすいし、すっと頭に入ってくる。しかし一部に恣意[しい]的な報道があるのも事実だ。もちろん新聞だって切り取られた情報を提供するものだし、見出しがなかば煽[あお]り文句のようなものもあるが、テレビと比べて発信者の思惑が入り込みにくい、ような気がする。
 また自分のペースでじっくりと繰り返し読めることも大きい。何でも簡便になった現代、自分で考えたり調べたりが苦手な子どもが増えるのも仕方ないが、だからこそ新聞に、ひいては自分に向き合う時間を提供したいと考えている。
 とはいえ、NIEを実践していますとはとても言えないのが現状。せいぜい社説の要約や感想を毎週書かせるくらいで、それに基づいたディベートを行う自信などない。それでも子どもたちは予想よりも楽しそうに社説の感想を書き、「就職試験で困らないように最近は新聞読んでるよ。受かったら読まなくなるかもだけど」と笑う。そして自治体の地方情報紙でも原稿を依頼されると本当に嬉[うれ]しそうに「俺でいいの?」と、真剣に書いてくる。
 国語が苦手だと思っていたのに「寄稿してください」と言われたこと、自分なりに一生懸命に書いたものがちゃんと活字になったこと…新聞の力はこんなところにも影響するようで、彼らは小さな自信を身に付けて、それが驚くほどの力につながって、いつのまにか希望進路を叶[かな]えている。
 新聞が苦手で、NIEを実践する力もない名ばかりの教員でも、こうして生徒と新聞を少しだけ仲良くさせることならできそうだ。

(田中雅浩/富岳館高)