一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=Q&A 実践指定校特集

2015年08月01日(土)付 朝刊


 実践指定校特集 今月は本年度NIE実践指定校から質問を募った「Q&A」拡大版。県内の新規、継続の小、中、高校の担当教諭の質問にNIEアドバイザーが答えた。

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 ■社会、国語以外で取り組む
 【問】社会科、国語科以外でどのように活用すればよいでしょうか?(南伊豆・中学校教諭)

 【答】理科は宇宙、気象から
 社会科や国語科以外にも、多くの活用例があり、インターネットや冊子でも実践が紹介されています。
 例えば、数学科では生活の中にある数字やグラフなどの活用。理科では最先端の科学や生物、宇宙、気象など。保健体育科では健康、身体特性、トレーニングなど。家庭科では栄養、調理、生活など。技術科では最先端技術や発明、コンピューター、など。美術科では作品や作者、展覧会情報など。音楽科では曲や音楽生活など、活用例は多種多様です。英語科の場合には国際社会の様子や子ども新聞の英文などが活用できます。
 教科以外にも、道徳や総合、特別活動などで有効です。特に新聞は「積極的な生き方をしている人物」をタイムリーで簡潔に紹介していますので、「生き方」の学びに向いています。他校の活動を紹介した記事も参考になり、生徒会や学級の活動に生かせます。
 「新聞タイム」などを設けて、記事を使用した問題に取り組ませ、読解力や表現力の育成を図るのも効果的です。
 (焼津大井川中・矢沢和宏)

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 ■記事要約のポイントは
 【問】文章を要約する力をつけるためには、リード文を記事の要約として参照することが一つの方法だと思われますが、リード文のない記事について、要約するポイントや具体的な方法がありますか。(富士・小学校教諭)

 【答】第一段落、見出し着目
 新聞記事は、逆三角形の構成になっています。子どもたちが日頃学習している物語文や説明文は最後に結論、大切なことが書かれています。一方、新聞では最初に結論が書かれ、その後で補説する形式になっています。一番大切なことが最初に書かれているのです。見出しやリード文で記事の内容を簡潔に表しているので、子どもたちに見出しやリード文に着目するように指導しましょう。
 リード文の形でなくても、記事の第一段落に概要が書かれています。この点も、子どもたちに指導し、着目させるようにしましょう。「見出し」を読むと記事で一番に言いたいことがどんなことかが分かり、「リード文」を読むと記事の概要が分かります。「記事の第一段落」がリード文の役割を果たしていると理解してください。
 多くの記事には、写真が添えられています。写真だけ見ても何を言いたい記事か分かることがよくあります。読めない漢字が多い低中学年の指導では特に役立ちます。
 (浜松与進北小・山崎章成)

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 ■園児もできる活動教えて
 【問】幼稚園や保育園に通う子どもにはNIEとしてどんなことをしてあげたらよいでしょうか。(静岡・小学校教諭)

 【答】色の紙面でコラージュ
 幼稚園や保育園に通う子どもたちが「新聞大好き」になれる新聞コラージュを紹介します。
 新聞コラージュは、記事や写真に注目する新聞スクラップと違い、カラー広告などの色や形から自分のイメージに合ったものを選び出し構成する活動です。新聞にはカラフルな広告がたくさん掲載されており、1紙面からいろいろな色を探し出すことができます。いわゆる緑色といっても、絵の具にも色鉛筆にも存在しない微妙に違うさまざまな緑色が見つかります。それらの中から例えば自分の葉のイメージや質感に合った緑色を選び、葉の形に切り取ります。形そのものを切り取って構成するわけではないので、従来のコラージュより場合によっては難しいかもしれませんが創造力がつくのではないでしょうか。
 新聞記事が読めなくても、新聞コラージュを通して楽しく活動することができれば、子どもたちはいっぺんに新聞を身近なものとしてとらえることができるでしょう。
 (静岡城北小・中村都)

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 ■キャリア教育に活用したい
 【問】進路指導、キャリア教育にどう活用したら良いですか? また、経済に強くなるための活用法を教えてください。
 (裾野・高校教諭)

 【答】記事から情報収集促す
 まずはキャリア教育に新聞を利用する場合、自分たちの学校では具体的に生徒のどの能力を伸ばしたいのか。その定義を教員・生徒が共に確認し合い、共通認識を確立することから始めましょう。
 次に、生徒に適正を自覚せしめ、進路や産業の動向に対する情報収集を促さなければなりません。それにはとにかく、全ての授業で新聞を読み、考え、文章を書かせるべし。自然と教科の縦断が為され、キャリア教育の求める汎用性が涵養[かんよう]されるはず。
 オススメは身近な企業の株式欄を毎日チェックし、ノートにメモすることです。さらに、経済面をざっと眺め、関連する記事は全部切り抜き貼っておきましょう。面接の際には物的証拠として提示し、この情報収集の結果、何をやりたいのか、自己発信の武器として活用するのです。
 アナログな手法ですが、キャリア教育の求める積み重ね・情報収集と発信・社会との関連の「能力」をアピールできる有効な手立てに違いありません。
 (静岡市立高・実石克巳)

県内教諭の実践
=スクラップでニュース理解

2015年08月01日(土)付 朝刊


 昨年の2学期から、担任している中学生のクラスで新聞スクラップを始めました。目標は、「コンクールで文部科学大臣賞!」と大きく掲げ、各自で興味のあるテーマを設定し、テーマに沿って新聞をスクラップしています。記事の要約、難しい語句を調べる、記事に対する意見をまとめる、という3点を必須としています。
 事前アンケートではクラスの3分の1が新聞未購読でした。中には、テレビ欄・スポーツ欄以外に新聞を読んだことがないという生徒もいました。そこで、保護者に協力をお願いし、その期間だけでも新聞を購読していただくようにしました。
 昨年は、マララさんのノーベル賞受賞やスコットランド独立問題、IS(イスラム国)など国際ニュースをテーマにした生徒が目立ちました。途中、各自のスクラップブックを全員で回し読みしコメントをつける、という相互評価を行いました。地図やグラフ・イラストを使ったものやレイアウトに工夫のあるものに関心が高く、相互評価後は、コメントや他の生徒のいいところを取り入れて、より良いものを作ろうという意欲につながったようです。
 スクラップを終えてアンケートを採ったところ、「要約に自信がついた」「テレビニュースで流し聞きしていたことがわかるようになった」「家族でニュースについて話すようになった」「自分が社会の一員であることを自覚した」などの意見が聞かれました。
 今年の傾向としては、自然科学と教育、子育て支援に関心が高いようです。昨年よりも要約・意見ともにレベルアップしており、毎週、スクラップブックが提出されるのを楽しみにしています。
 3月からは「静岡新聞の投書欄『ひろば』に意見文を送る」という取り組みを続けています。規定の400~500字というのは初めはなかなか埋まらない生徒にとっても、書き慣れてくるとむしろ物足りない字数です。その中でどう書いたら読者に伝わるのか、を意識して書くことを指導しています。「ひろば」に学校名は載りません。文責は各自にあるということも意識させ、「社会に自分の意見を発信する」ことを続けていきたいです。

(一木綾氏/加藤学園暁秀中)