一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

Q&A(月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載から)
=資源回収の前に

2016年04月02日(土)付 朝刊


 読み終えた新聞を資源回収に出す前に、何か活用することはできませんか。
 (浜松市・小学校教諭)


 ■スクラップで「出来事事典」
 【答】情報の宝庫と言われる新聞には、毎日200ほどの記事が載っているそうです。新聞記事を全て読むことは不可能で、ほとんどの人は紙面をパラパラめくり、見出しや写真を手がかりに興味を持った記事を読んでいるのではないでしょうか。
 新聞を処分する前に、今一度目を通すことをお勧めします。読み飛ばした中に面白い記事を見つけたり、一度読んだはずの記事でもより深く理解したりすることができるはずです。大きな事件や事故が起きた場合、新聞は「いつ」「どこで」「起きた」かを素早く伝えるものの、「何(全体像)が」「どのように」「なぜ・どうして」については伝えられないことが多々あります。数日分の新聞を読み通すと、続報を読むことで一つの出来事をより深くより広く読み取ることができます。
 読み終えた後は、スクラップをお勧めします。新聞記事の中には、私たちの生活や学習に役立つ情報がいくつもあります。「それ、新聞で読んだことがある!」「あの写真、たしか新聞で見たはずなんだけど...」という経験を多くの人がしていることと思います。気になる記事や写真をスクラップしておくと、手製の出来事事典を作ることができます。
 慌ただしい毎日ですが、宝物に気付かずに捨ててしまうことがないように、処分する前にもう一度手に取ることをお勧めします。
 (浜松与進北小・山崎章成=NIEアドバイザー)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=新聞から川柳、クイズ創作 朝学習で発表 気軽に親しむ好機に-富士宮・井之頭小

2016年04月02日(土)付 朝刊


 富士宮市立井之頭小の児童は2015年度、新聞の記事や写真を見て感じたことを、川柳やクイズにして発表する朝学習に取り組んだ。新聞を手に取り、目を通すことが日課の一つになった。教諭陣は「新聞を活用し、児童の思考力、判断力、表現力を育みたい」と教育効果に期待を寄せる。

 3月上旬、6年生の教室。運動場での朝ランニングを終えた児童が、机の上に新聞を広げた。何かひらめいた様子で、「5、7、5」と指折り数える。手際良く新聞記事を切り抜いた後、白い紙に貼り付け、そばに川柳を書き始めた。
 「複雑だ 避難時どこへ 行けばいい」。飛矢崎和さんは本紙連載企画「沈黙の駿河湾 東海地震説40年」を題材に川柳を作った。米大統領選候補者選びを報じる本紙記事を扱った浅野蓮君の作品は「米国の 大統領は トランプか」。白熱する予備戦の行方を川柳にした。
 2、3年生の複式学級では、新聞の写真を切り抜く児童の姿があった。児童の注目を集めた写真は、新幹線、ご当地キャラクター、高級魚など。松下征一郎君は本紙一面に掲載された浜松市のキャラ「家康くん」の写真を使い、「このゆるキャラは何でしょう」と同級生の前でクイズを出した。
 松下君はクイズを4択形式にした。家康くん以外のキャラを事前に調べ、ほかの3択には高知県須崎市の「しんじょう君」、熊本県の「くまモン」、千葉県船橋市の非公式キャラ「ふなっしー」を用意した。家康くんの知名度は抜群で、選択回答を求めたところ、全員が笑顔で正答した。
 「新聞を開く抵抗力が下がり、身近な存在に変わりつつある」。担当教諭は朝の新聞学習を通じ、変化を実感した。児童はインターネットを主な情報源に育った世代だ。家庭で新聞を手にする機会はほとんどない。しかし、昨年4月に朝の新聞学習を初めて以降、職員室で毎朝、新聞を立ち読みする児童が現れ始めたという。
 井之頭小は全校児童47人の小規模校(3月1日現在)。NIEの一環として当初、新聞記事を題材に感想を発表する「スピーチ活動」を展開してきたが、児童の興味関心が十分に高まらなかった。新聞を活用した川柳とクイズの朝学習は、気軽に新聞に触れ、楽しみながら目を通す機会を創出することを狙いに行った。
 校内の廊下には、児童が新聞の記事や写真を切り貼りし、発表した作品の数々を掲示した。授業参観に訪れた保護者にも好評を得た。教材として活用するため新聞は一定期間、校内に保管する。新聞はあちこち穴あき状態になるまで使い古され、役目を終える。
 朝学習を主導した芦川幹弘校長は4月に富士宮市立稲子小に異動となった。「次世代を生きる子どもには豊かな言葉力が必要。新聞を活用し、言葉のシャワーを浴びせたい」と語った。


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新聞に掲載された写真を使い、4択クイズを出題する児童=3月4日、富士宮市立井之頭小


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新聞記事を読み、川柳を考える児童