一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=社会へ広がる意識-新規実践校が意気込み

2016年07月02日(土)付 朝刊


 県NIE推進協議会はこのほど、2016年度の県内実践指定校13校を決めた。日本新聞協会が7月に正式決定する。指定校には一定期間、県内発行7紙が無料提供される。新規指定7校の担当教諭に本年度の取り組みについて聞いた。

 
 ■知見を深め読み比べ-三島南高 斎藤清司教諭
 私は、地歴・公民科の授業において生きた教材として、以前から新聞を活用していました。例えば、ゼロ金利・マイナス金利といった出来事をタイムリーに生徒に伝え、理解させるためには、新聞は最高の武器になります。
 今年度再任用で赴任した本校が、新規にNIE指定校に選ばれたことを有効に活用し、生徒の学習に役立てたいと考えています。学校の現状では全国紙と地方紙を同時に購読することは費用面から難しく、また新聞を購入していない家庭も増えている中で、生徒にとって貴重な体験になると思います。
 授業展開としては、池上彰氏の著書を参考にしながら新聞に対する知見を深めることから始め、各紙を読み比べることにより情報を多角的に検討し、互いの意見交換などをさせたいと考えています。消費税増税「延期」のように新聞社によって、多少ニュアンスの違いが出るような記事については、週刊誌・月刊誌とも比較して、内容を深めていきたいと考えています。

 

 ■史実と記事をリンク-静岡聖光学院中・高 伊藤大介教諭
 社会科を担当し、日頃の教育活動で新聞記事を意識的に活用してきましたが、改めて学校長から実践校への参加の話を伝え聞いた時には、今までの実践を振り返る意味でもいいきっかけにできればと考えました。
 最近の取り組みで印象に残ったのは、昭和最後の日の新聞記事を歴史の授業で活用した場面でした。時代の捉え方やその時代の出来事の話(「自粛」「高校ラグビー両校優勝」など)に真剣なまなざしで聞き入る生徒の姿から、教材として新聞を活用するヒントが数多くあると改めて感じました。社会に対する見方や考え方を広げていくためには、新聞記事は貴重な財産だと思います。
 肩ひじ張らずに自らも楽しんで、やさしいNIEを目指して今後も取り組んでいきたいと思います。

 

 ■生徒の対話、協同重視-裾野富岡中 森口智裕教諭
 本校の授業は、男女混合の4人班を基本として、対話と協同を重視した「学びの共同体」で行っている。本年度NIE実践指定校となり、新聞を各教科の授業で活用することはもちろん、学びの共同体をNIEの実践にも活用しようと考えた。そこで、毎月の「NIE週間」と、11月に「NIE集会」を計画している。
 NIE週間は、火曜日に担当教師が提示した新聞記事を個人で読み込み意見をワークシートにまとめる。そして、木曜日にその意見を4人班になって共有する。意見の共有を通して、自分にはなかった考え方を知ったり、さまざまな価値観に触れたりすることができ、考え方の深まりにつながることを期待している。
 NIE集会は、代表者によるパネルディスカッションを予定している。熱い議論が交わされることを願っている。
 生徒の思考・判断・表現の力が育つように、指導方法や記事の選定を工夫したい。

 

 ■政治理解深める好機-浜松可美中 村松聡一郎教諭
 本年度よりNIE実践指定校となりましたが、正直なところ、何をテーマに取り組んでいこうか思い悩みました。そんな折、選挙権が18歳に引き下げられて初の参議院議員選挙が行われることとなりました。そこで、このNIE活動を、参院選に向け関心を高め、選挙や政治の仕組みについて理解を深める社会科公民的分野の学習として、絶好の機会ととらえました。
 まず、本校3年生からNIE実行委員を募り、本校区で購読可能な7紙より、選挙権と参院選に関する記事の切り抜きを始めています。まだ始めたばかりで先は見えませんが、この活動を通して、生徒に気づかせたいことがあります。それは、同じ事象でもさまざまな見方ができ、多面的な見方をすると視野が広がり、理解が深まること。そして、さまざまな事象の見方には、それぞれの良さがあることに気づき、自分と異なる意見も尊重できるようになることです。

 

 ■気づき 人とつながる-静岡井宮小 伏見佑介教諭
 インターネットが普及している現在、新聞は子供たちにとって、どれだけ身近な情報紙であるでしょうか。
 本校では新聞をとっていない家庭がおよそ半数をしめる学級もありました。新聞が日常から遠ざかっている一例であると思います。子供たちの活字離れは大変進み、子どもたちの読解力は低下してきていると言わざるを得ません。
 そんな折、NIE実践校としてのお話をいただきました。これをチャンスと捉え、1年生から6年生まで、井宮小「みんなで」取り組み、「みんなで」社会に対するアンテナを高くし、「みんなで」正しく読みとる力をつけ、「みんなで」多面的なものの見方ができるようになる、そんなきっかけになればと考えています。
 「気づく力」「文章を通して人とつながる意識」この二つを念頭に置き、「気づく つながる NIE」を合言葉に、子供たちが、新聞をより身近な情報紙として感じられるように取り組んでいきたいと思います。

 

 ■1人1冊スクラップ-富士宮上井出小 望月真澄教諭
 「子供たちの伝える力が伸びるNIE実践」をテーマとし、新聞に「興味をもつ・慣れる・活用する」と段階を踏み、発達段階に応じた実践に取り組んでいきます。1年目の本年度は、まず、全校児童が1人1冊ずつ、新聞ノートを持ち、思い思いの名前を付けることから始めました。目に留まった記事や写真をノートに貼り、友達に紹介したり記事について話し合ったりしています。
 教師は、新聞は子供にとって難しいのではと心配していました。しかし、子供たちは新しい活動に意欲的に楽しく取り組む姿が見られます。また、教師にも意識の変化が見られ、事件記事を利用した生徒指導や授業と連動させた実践が行われ、この実践へのさまざまな可能性を感じつつあります。
 今後実践を積み重ねることにより、新聞がより身近になるだけでなく、子供たちが、思いや考えをより分かりやすく伝えることができるようになることを望んでいます。

 

 ■学年に応じた活用法-森小 兼子万紀郎教諭
 NIE実践指定校となり、不安を感じる半面、指定校になったことが、特に次の3点で本校の教育活動にプラスになることと捉えています。
 担当教諭として、情報化社会の今だからこそ、新聞の長所や活用方法について、研修の場を与えられたことはよい機会になります。
 そして、森小学校全職員へ普及させ、学校を挙げて取り組むことで研修の充実につながります。
 何よりも、子供たちにとって、効果的なNIEになれば学習環境が広がります。
 現在、学年に応じたNIE活用方法とは何かを考え準備を進めています。これからの取り組みの中で、低学年には、新聞に慣れてもらい、「新聞って楽しいな」と感じてほしいです。高学年には、新聞に親しみ、効果的に活用することで、「新聞って便利だな」「もっと知りたいな」という気持ちを抱いてほしいです。新聞を教育につなげるNIEが、子供たちにプラスになるよう、これから実践していきます。

 

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 【2016年度NIE実践指定校】
 ■新規
 三島南高、静岡聖光学院中・高、裾野富岡中、浜松可美中、静岡井宮小、富士宮上井出小、森小

 ■継続
 駿河総合高、島田商業高、静岡清水興津中、南伊豆中、東海大付属静岡翔洋小、富士田子浦小

 

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県NIE推進協議会総会で本年度の抱負を語る実践指定校の校長、教諭ら=6月、静岡市駿河区の静岡新聞放送会館