一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

Q&A(月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載から)
=少人数のゼミスタイル

2016年10月01日(土)付 朝刊


 本校には教師を囲んだ少人数のゼミナール活動があります。新聞記事を使うゼミは、広い意味でNIE実践の一つと考えていいのでしょうか。
 (静岡・中学校教諭)


 

 ■最も効果的な実践方法
 【答】いやいや、少人数で新聞記事を使ったゼミといえば、これはNIEの本道でしょう。人数が少ないと生徒同士の横の関係・教員との縦距離・濃密なゼミ時間というNIEの四次元空間を構築でき、最も効果が望めるスタイルですね。私が前々より提唱している、バズ学習(Buzzはざわめきの意味)としても理想的です。
 お勧めのやり方は、まず、これは進路実現に結びつける授業であると目的を明確にする。生徒が自分でテーマを決めるが、あらかじめ、途中変更可と伝達。利用した記事は各自でスクラップし、推薦入試などの際、いかに長期的スパンで考察してきているかをアピールする。さらに、データベースとして利用可能なように、系統ごとに付箋で色分けしておくと見栄がえする。時間を常に意識して話し合いさせる。教員が、さりげなく会話をリードする。これが一番難しいですね。話をしながら聞きながら、メモを取る訓練を課す。記事は明るい、将来に希望を持てる内容のものを選ぶ。授業の度に、教員も生徒も落ち込んでいたらシャレになりません。
 最終的に生徒の到達目標を次のように設定しましょう。新聞に書かれた事実を基にし、なぜそのような状況・状態に至ったのか、理由・原因を考える。根拠を明確にして、字数配置なども考慮しながら文章化する。関連する図表資料を作成し、提示しながらプレゼンテーションとして発表する。
 難しいかもしれませんが、ゼミ形式ならば大丈夫、できるはずです。頑張ってくださいね。
 (静岡高・実石克巳=NIEアドバイザー)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=教室にいつも新聞 発表や記事掲示 社会を知る好機-浜松与進北小の取り組み

2016年10月01日(土)付 朝刊


 新聞を教育活動で活用するNIE。関心はあっても、実際にどのように取り組めばいいのか悩む学校現場も少なくない。ハードルを上げすぎずに取り組むポイントやその効果を、NIEアドバイザーの山崎章成浜松市立与進北小教諭に寄稿してもらった。

 「6年1組の新聞係ですが、今日の新聞を取りに来ました」。
 本校の朝は、こんな言葉でスタートします。5、6年の新聞係は、職員室から全国紙3紙、ブロック紙、県紙を自分の教室に運びます。
 登校してきた高学年の子供たちは、その日の新聞を自由に読むことができます。大きな出来事があった翌朝は、各社の新聞を広げ、記事を読みながら話し合う姿をよく見かけます。
 子供たちが自由に新聞を読むことができるのは、登校してから朝の会が始まるまでの時間、朝読書の時間、休み時間、昼休み、放課後と、下校するまでさまざまな時間帯があります。
 教育活動の中での活用方法としては、授業での活用をはじめ、朝読書の時間、朝の会での紙面から見つけたニュースの発表、注目してほしい記事の掲示、ワークシートの活用等が日常的に行われています。
 授業では、新聞記事そのものを活用するだけでなく、伝えたいことを分かりやすく簡潔に表現する方法や写真の撮り方など新聞の機能や作り方は大いに参考になります。
 朝読書の時間では、本を読む子に混じって新聞を読む子もいます。短時間でも気になるニュースを二、三読むには十分で、紙面をめくる音が教室のあちこちで聞かれます。
 朝の会のニュースを発表する活動は、学校の学びを家庭や社会と結び付けることができます。「ニュースの発表をきっかけに親子の会話が増えた」「家でも新聞やテレビのニュースを意識するようになった」など、うれしい声を保護者から聞くこともあります。紙面から記事を選び短時間で発表する活動を通し、価値ある情報を選択し聞き手を意識した発信力を鍛えることもできます。質疑応答を行うことで、読み取りを深め合うこともできます。
 記事を掲示するコーナーを常設すると、興味を持った子が集まるようになりました。教師が意図的に考えてほしい記事を掲示すると「先生はどうしてこの記事を貼ったのかな」と疑問を持って読んだり、互いの思いを話し合ったりするようになりました。大事件が起きた時は各紙を並べて貼ると、子供たちは事件の大きさを改めて感じ取るとともに、多様な捉え方があることに気付くことができるようになりました。
 新聞記事のワークシートは、学校でも家庭でも行うことができます。子供が関心を持ちそうな一つの記事の問題を解く形式になっているため、新聞の読み方を学ぶ教材にもなります。また、教科書を繰り返し学ぶ学習とは違い、初めて読む文章から必要な情報を得る活動は普段の学習とは違った学力を身に付ける貴重な機会にもなります。
 本校では、図書室、職員室などにも新聞を常備し、タイムリーで多様な学びの日常化を図っています。