一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=記事要点 的確に紹介 説得力ある意見 主張も-東海大静岡翔洋小で公開授業

2016年12月03日(土)付 朝刊


 NIE実践指定校の東海大静岡翔洋小(静岡市清水区)でこのほど、新聞を題材にした公開授業が行われた。5年生が「ハッピーニュース」を発表したり、関心の高い話題をテーマに討論を行ったりした。

 児童16人が記事を活用した国語科の授業に臨んだ。前半の「ハッピーニュース」の発表では、犬の訓練インストラクターの紹介記事など、児童6人が新聞を読んで幸せな気持ちなった記事を示しながらニュースの要点と選んだ理由などを説明。クラスメートも友だちがどんな記事を選んだのか興味津々の様子だった。
 児童の選んだニュースの多くは動物の話題が占めた。そこで担任の松本傑教諭(42)は、子どもの関心の高い動物を切り口に「動物園の生き物は、野生に返すべきだろうか」と問題を提起。授業後半のディベート(討論)が始まった。
 「野生に返すべきではない」の反対グループは、動物園での平和で安全な暮らしなどの利点を主張。一方、「返すべき」の賛成派は、誰にも縛られない自由の大切さを訴えた。「どんなに安全でも親と離れて動物園で暮らすのは嫌」と、立場を自分に置き換えて反論する場面もあった。
 審判団のジャッジは野生に返すべきの「○」が3、返すべきでないの「×」は2と僅差だった。「×」の札を上げた審判役の横塚芯和君(11)は「野良猫が死んでしまう確率が高いというデータがあると知ってなるほどと思った」と理由を説明。一方、最後に「○」を上げた岩井美姫さん(11)は「『もしも自分が動物だったら、一生おりの中は嫌』という賛成グループの主張に説得力があった」と判断の根拠を示した。
 今回の授業の狙いは、人前で新聞記事の要点を的確に紹介すること、討論会で説得力のある意見を主張する力を付けることだった。
 松本教諭は今の5年生が、2年生の時も担任だった。「高学年になり発表の回数が明らかに減ったと感じていた。だが、討論を重ねるごとに、人前でも自分の意見をしっかりと発言する習慣が身についてきている」と手応えを語る。
 小寺建仁校長は、新聞を取り入れた授業を続けていることについて「日々の学習に対する関心を膨らませ、仲間と話し合いをするきっかけになる」と指摘。「児童の社会への関心を高め、自主的に学習に取り組む姿勢を育んでいくことができれば」と語った。

 

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自分で選んだハッピーニュースとその理由を発表する児童=静岡市清水区の東海大静岡翔洋小

 

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「○」「×」の札を上げてディベートのジャッジを行う児童ら

 

               ◇........................◇

 

 □NIE・Q&A
 ■新聞紙面で発信したい
 子どもたちが取り組んだ内容を、新聞紙面で発表する機会などはありますか?
 (静岡・小学校教諭)

 

 ■取材依頼や投稿欄に応募
 【答】子どもたちの取り組みが広く知られて価値付けられれば、子どもの自信や自己肯定感につながりますね。このようなとき、新聞は大いに役立つ発信手段となります。子どもたちの取り組みを新聞紙面で発信する方法にはさまざまありますが、ここでは、三つの方法をお勧めします。
 まずは、学校から新聞社(記者)に直接働きかける方法です。この方法には二つあります。一つは、学校に近い新聞社や支局に子どもたちの取り組みを知らせて「取材を依頼」し、紙面に掲載してもらう方法です。市町で学校の取り組みを集約して記者クラブなどに紹介している場合もありますので、それも利用します。もう一つは、子ども新聞などの「記事募集」に応募する方法です。この場合、写真も含めて学校で記事の形式にして送ることが多いようです。
 次に、読者の「投稿欄」を利用する方法です。子ども自身が取り組みの様子や成果を400字程度にまとめて新聞社に投稿します。全員が掲載されるわけではありませんが、10代の投稿コーナーもあり、掲載されると地域からの反響も多く、子どもの喜びも大きいと思います。
 最後に、コンクールなどに積極的に応募して作品や取り組みを掲載してもらう方法です。例えば、「学校新聞」や「新聞切り抜き」「ハッピーニュース」「新聞感想文」「いっしょに読もう・新聞コンクール」など、数多くあります。
 もちろん、NIE以外にも多くの応募機会がありますが、自分の名前が掲載されるだけでも誇りに感じることができるのが「新聞の効果」です。
 (焼津市立大井川中・矢沢和宏=NIEアドバイザー)