一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=児童自ら新聞積極活用 興味広がり意識変化-富士宮・上井出小

2017年04月01日(土)付 朝刊


 2016年度、NIE実践指定校の1年目を終えた富士宮市立上井出小。1~6年生92人が新たに朝学習に新聞を取り入れ、それぞれの学習進度に沿った取り組みに励んだ。児童が自ら積極的に活用に乗り出すなど、目覚ましい効果を上げている。
 

 2月上旬の同校。毎週月曜日を新聞の日とし、午前7時50分から15分間、全校一斉に取り組む。この日も各教室で児童が一斉に新聞を手にし、学習に取り掛かる。1年生は新聞アート作り。本紙の子ども向け新聞「YOMOっと静岡」に掲載のコーナーがヒントだ。はさみで新聞の写真を切り抜き、色とりどりの"切り絵アート"を完成させた。
 4年生は新聞づくり。スポーツや車、動物など興味のあるテーマごとに関連記事を切り取り、見やすい配置を考えながら新聞形式にまとめていった。6年生は家庭で新聞を読んで関心を持った記事を持ち寄り、グループごとに情報共有。エジプトでの新壁画発見のニュースからカピバラの長風呂対決まで、題材は多種多様だ。代表児童が全員の前で感想や意見を発表した。
 4年(当時)の佐野嵩太君(10)は「知らなかったことが分かるので楽しい。新聞が好きになってきた」と話した。6年(同)の斎藤菜月さん(12)は「いろいろな人の体験を知り、自分の生き方に反映させることができる」と振り返った。
 ほかにも授業で習ったカタカナや漢字を新聞から探したり、気になる記事をノートにまとめ、担任と感想のやりとりをしたり。1年を通して子どもたちが飽きないように工夫を凝らし、学年ごとの学習課程に沿った題材提供を心掛けてきた。
 そんな中、教諭たちが思いもよらぬ成果が表れた。1年(同)の渡辺健君(7)が、廊下に張り出された上級生の新聞形式の掲示を見て「僕たちもやりたい」と言い出し、児童の間に活動が広がった。
 NIE担当の望月真澄教諭は「やらなければいけないという意識ではなく、自発的に動いている」と驚く。学校が児童に聞いたアンケートでも、「語彙[ごい]が増えた」「コミュニケーション力が高まった」と高評価を集めた。
 「新聞に興味を持つ」を目標に掲げた1年。そこからさらに慣れる、活用する-につなげていってもらおうという狙いで始めた当初は手探りの状態だった。だが児童からの反響が思ったよりも大きく、新聞の日がない時には「今週はやらないの?」という声も。望月教諭は「特別なことはしていないが、児童は新聞に新鮮さを感じたようだ。確実に意識の変化につながっている」と手応えを語る。
 佐藤正和校長は「新聞を活用した学習が教師と子どもたちのキャッチボールになっている。学校での学びと社会で起きている出来事とのつながりができ、教育へのプラスアルファの波及効果もある」と話した。

 

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興味を持った記事を持ち寄り、グループ内で発表する6年生=富士宮市立上井出小

 

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テーマごとに記事をまとめ、新聞のつくりを学ぶ4年生=富士宮市立上井出小

 

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 ■紙面授業=英語-国際理解の原動力 静岡英和女学院中・高 滝本真琴先生
 イスラム圏7カ国からの入国禁止を指示した米大統領令をはじめ、移民に関するニュースが紙面をにぎわせています。学生時代に1年ほどイギリスでパキスタン人の家庭にホームステイしたことがあります。その家庭には私と年齢の近い娘さんがいて、すぐに仲良くなりました。
 しかしある日突然、彼女が私に家出の計画を打ち明けたのです。敬虔[けいけん]なイスラム教徒の両親が娘の将来にレールを敷いていたことが理由でした。本当は心理学に関心があり、大学進学を望んでいましたが、両親は女性にそのような教養は不要であると、美容の学校に行かせていました。
 当時の私はなんとか思いとどまるよう伝えたかったのですが、今思うと、何の束縛もなく自由に外国で過ごす日本人の私の言うことには説得力などなかったでしょう。結局何の力にもなれず、私が帰国する直前に彼女は家を出てしまいました。
 現在、日本ではさまざまな留学プログラムが推奨され、中学生、高校生のうちから海外で学ぶことも珍しくありません。
 例えば、私の勤務校の姉妹校があるカナダはまさに移民の国で、学校、寮、ホームステイ先のどこに行っても他国の文化を体験することができます。ステイ先の家庭がシリアからの移民を受け入れており、彼らが抱える問題や文化の違いを身をもって体験した生徒もいます。
 こうした経験は単に言語を学ぶだけでなく、その国の歴史や文化、宗教などの背景に関心を寄せ、同時に自分の環境や日本という国を外から眺めることにつながります。「外国語を話せるようになりたい」。この気持ちはとても大切で大きな原動力となります。
 今そのような考えがある中高生の皆さん、ぜひ一歩を踏み出してみてください。国や地方公共団体の留学プログラムや、各学校が主催する国際理解のための行事もあります。また日ごろから海外のさまざまなニュースに目を向けてみましょう。何か新しい未来へのヒントが得られるかもしれませんね。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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 ■NIEアドバイザーのワンポイント講座(1)=毎週「朝新聞」で文章題(矢沢和宏/焼津大井川中)
「やさしいNIE」を知っていますか。「誰でもどこでも可能」で、「生徒にも教師にも楽しく長続きする」といった新聞活用が「やさしいNIE」です。
 私が勤務する中学校では、「読解力や文章力(表現力)を向上させる」「社会・地域・他校への関心を高める」「魅力的な生き方を学ぶ」という狙いで、さまざまな「やさしいNIE」の実践を工夫しています。
 その一つに、全校で定期的に取り組む「朝新聞」と名付けた実践があります。生徒に読ませたい新聞記事を選び、その切り抜きを基に字数を制限した文章記述式の問題を作成します。毎週金曜日、生徒は朝読書の時間に記事を読んでこの問題に取り組みます。そして、解答例と解説を使って確認し、自己評価します。
 「朝新聞」の問題作成は教師だけでなく、生徒自身も行います。問題作成に取り組むことで、読解が深まり、表現力の育成にも結びついています。
 「やさしいNIE」の実践はほかにもたくさんあります。順次、紹介していきます。
 (焼津大井川中・矢沢和宏)
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 県内のNIEアドバイザーがNIE実践のこつを交代で執筆します。