一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=新聞活用 学年ごと工夫 語彙、読解力 向上狙う-森小の取り組み

2017年10月07日(土)付 朝刊


 NIE実践指定校2年目の森町立森小では、学年ごとに趣向を凝らした新聞活用の取り組みが行われている。6年生を中心に同校の実践を紹介する。
 

 「日本と関わりある国の新聞記事や見出しを探して調べてみよう」。教室に、担任で同校NIE担当の兼子万紀郎教諭(32)の声が響いた。6年生は2017年度、総合的な学習の中で興味を持った国を調べ、文化などを学んでいる。
 児童は1人ずつ新聞を手にし、紙面から外国に関する情報を探し始めた。「沼津に住んでいるタイの女の人が囲碁のアマチュア6段になったんだって」「掛川でやった高校生のアーチェリーの全国大会に韓国の人たちも出場したみたいだよ」。本紙の記事中に国名を発見すると、互いに教え合って感想を発表した。
 「北朝鮮やアメリカのトランプ大統領のニュースが多い気がする」。ある児童の意見に、周囲もうなずいた。「新聞を見るといろんなことを知ることができる」と神田絢音さん。朝も自宅で新聞に時々目を通す。外国のニュースはもちろん、地元森町の話題も楽しみだ。
 兼子教諭がこの日の授業で新聞を使った理由に、国際や経済、地域欄など分野ごとに情報が整理されている点を挙げた。子どもたちが興味のある分野から読み始めるように促したいとの狙いもある。
 6年生では授業以外にも、担任の裁量で自由に使える昼休み直後の15分間の「スタディータイム」に、新聞記事や図表を8分間で読み解き、設問に回答する実践も。また、自宅では関心のある記事を探して要約し、独自の見出しづくりにも挑み、教室の壁に成果のプリントを張り出している。
 同様の取り組みは全校に広がる。16年度の3年生は総合学習で調査結果をまとめる際に新聞のレイアウトを参考にし、6年生は気になるニュースを毎朝当番が紹介、他の学年でも授業で新聞を取り入れた。本年度は5年生が図工で新聞紙面の写真を題材に絵画制作に挑戦するなどしている。
 これらの取り組みの背景には、児童の語彙[ごい]力や読解力の向上につなげる狙いがある。
 「日常の授業では児童が長い文章に慣れる機会が少ない」と兼子教諭。全国学力テストにおいても「そもそも問題で何が聞かれているか分からず、長文を目にしただけで抵抗を感じる子もいる」として、日常的に新聞を目にする有用性を強調し、分からない言葉があれば積極的に辞書で調べるよう呼び掛ける。
 児童には新聞を通じて知識を増やしながら興味の幅を広げてほしいと願っている。「自分たちの暮らすまちでどのようなことが起きているかも知ってほしい。新聞をどう使えば効果的なのか、私も考えていきたい」と兼子教諭は話した。
 

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本紙から外国に関する記事や見出しを探す6年生=森町立森小(写真の一部を加工しています)

 

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6年生の教室には興味を持った記事を児童が要約したプリントが並んでいる

 

 ■紙面授業=英語・家庭-モンゴルの食体験 城南静岡高・中 松下真弓先生
 歴史上、地続きで一番大きな国を造ったのはどこか分かりますか。モンゴルです。馬に乗って世界を席巻し、世界最強の帝国を造りました。紀元前から草原遊牧国家が建設され、人々は環境に適応した生活をしてきました。
 モンゴルの民の生活は馬と家畜に支えられ、それらの動物を育むのは大地の牧草であることから、モンゴル遊牧民は大地を尊重し、家を建てる時は地面に柱を刺さない、畑を耕さない、墓碑を立てる文化もないそうです。
 そのモンゴルをこの8月、川勝平太知事が訪れるのに合わせた訪問団に、私も私学教職員海外交流派遣事業の一員として参加しました。知事とモンゴル大統領との会談の内容などは新聞でも報じられましたが、ここでは「食」に絞ってモンゴルの様子を報告したいと思います。
 モンゴルの食の柱は、肉(赤い食)と乳製品(白い食)です。主食は19世紀末移住した中国人が自分用に栽培した小麦から作られた小麦粉です。
 「赤い食」は零下30度にもなるという冬の食で、私がモンゴルを訪れた8月は「白い食」が中心となります。モンゴル人は遺伝的に生乳を飲むとおなかをこわす「乳糖不耐性」ですから、生乳は飲まず加工されるのが特徴です。遊牧民のゲルを訪問した時に、朝搾りたての牛乳をまきストーブで沸かして、目の前でチーズを作って食べさせていただきました。
 また、夏の時期限定で作られる馬乳酒も頂戴しました。酒と言うもののアルコール度数は1~3%程度で、水分、エネルギー、ビタミンC補給源として赤ちゃんからお年寄りまで飲用され、ヨーグルトに近い乳飲料として1日0・5~3リットルくらい摂取しているそうです。結核やウイルス性肺炎、胃炎、胃潰瘍、さらには糖尿病や高血圧といった生活習慣病に対しても効果があるとされています。腸内環境の改善、老廃物の排せつといった効果もあり、私は馬乳酒を飲んでから約1週間、デトックス効果のためかほとんど飲食ができませんでした。農耕民族の日本人には、刺激が強すぎたのかもしれませんね。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

 ■NIEアドバイザーのワンポイント講座(7)=ニュース発表 記事探しのこつ
 日々の社会の動きに興味を持たせ、自分が見つけたニュースを紹介することで情報活用の実践力を身に付けさせようと、多くの先生方が「ニュースの発表」に取り組んでいます。ぜひ気を付けて欲しいのが、次の2点です。
 1点目は、その日のニュースにこだわらないこと。先生方が、その日の新聞記事を授業に使おうとしても難しいと思います。「順番だから」と指名された子どもが戸惑うのも当然です。記事を探すのに数日余裕を持たせることで、「このニュースを皆に伝えたい」と意欲を高めることができます。
 2点目は、記事の一部の発表でも認めること。大きなニュースになると記事の量も膨大です。起承転結の文章表記に慣れた子どもは大切なことは最後だと信じ、文末に書かれているはずのまとめを探しがちです。新聞は、一番大切なことはリード文や第1段落に書かれています。見出しや写真、リード文などの紹介だけでも価値があることを教えましょう。
 1年を担任した時、切り抜き写真に一言添える取り組みをしたところ、子どもたちに好評で、成果も上がりました。
 (浜松与進北小・山崎章成)