一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=読まれる新聞作り議論 各紙比較や記者の講座参考-静岡井宮小・公開授業

2017年12月02日(土)付 朝刊


 NIE実践指定校の静岡市立井宮小(同市葵区)でこのほど、新聞記事を活用した公開授業が行われた。5年生36人が取り組むのは、興味のある問題をテーマにした新聞制作。記事の内容を分かりやすく伝える見出しの付け方などを熱心に議論した。
 

 新聞制作を通じ、自分と社会とのつながりを実感したり、コミュニケーション力を向上させたりすることが狙い。児童は、授業を受けたり新聞を読んだりすることを通して、交通事故や地球温暖化、犬や猫の殺処分など関心を持ったテーマを絞り込み、テーマごと3、4人のグループに分かれて、最終的に地域の人に読んでもらう新聞作りを進めている。今回の授業では、テーマについてそれぞれ課題や意見を400字以内にまとめ、その見出しを考えた。
 西田亮子教諭は授業の前半、上野動物園のジャイアントパンダの子ども「シャンシャン」について書かれた複数紙の記事を紹介。各紙の見出しの違いを示し、記事をより読みたいと思わせる言葉の選び方を考えさせた。同校で9月に開かれた本紙記者による出前講座の内容も振り返り、「見出しは短い言葉で分かりやすく」「文章の第一段落に大事な内容が含まれている」と学んだポイントを確認すると、児童は盛んにうなずいた。
 後半は、各自の原稿を持ち寄り、グループごとに「編成会議」を開いた。互いの原稿を読み合い、「これは分かりにくいかな」「この言葉の方が伝わると思う」など、適切な見出しについて話し合いは盛り上がった。
 次回以降はグループ内で記事を組み合わせ、ニュース価値を踏まえたレイアウトを検討し紙面を仕上げるという。
 児童の議論を見守った西田教諭は「新聞を題材にすると、子どもたちは楽しそうに夢中になって学ぶ。相手に分かりやすく情報や意見を伝えるという今回の趣旨も理解できていたと思う」と感想を話した。清水一磨校長は「出前講座で実際の記者の話を聞いたことで、子どもにいろいろな『はてな』が生まれた。教科書以外の経験も大切」と語った。

 

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適切な見出しの付け方を話し合う児童ら

 

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各紙の見出しの違いを紹介する西田亮子教諭(右)=静岡市葵区の市立井宮小

 

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 ■紙面授業=数学-新しい世界 挑戦を 浜松学芸中・高 松島義徳先生
 11月3日に文化勲章の親授式が行われ、光化学研究の東京理科大学長、藤嶋昭さんが受章されました。これに先立ち静岡新聞に掲載された記事の中で、藤嶋さんは「新しい原理の発見からしか(応用の)新しい芽は出てこない」と、基礎研究の重要性を主張しておられました。
 「新しい原理の発見」。これは決して簡単なことではありません。でも、未来を担う中高生の皆さんには、ぜひ将来チャレンジしてほしいと思います。なぜって、楽しいからですよ。固い常識の殻を破って新しい世界をのぞき見た瞬間の快感、これは何物にも代えがたいものです。ちょっと試してみましょうか。
 「0と1しか存在しない数の世界」というものをつくってみましょう。これは、普段何げなく使っている数の計算規則に「1+1=0」という新しい決まりを加えるだけで、簡単にできてしまうものです。まずは、足し算から。0+0=0、0+1=1、1+0=1、そして「1+1=0」。少なくとも、足し算については0と1だけで数の世界が完結できています。
 次に、1や0同士の掛け算や割り算ですが、(÷0は通常通り除外するとして)これはもともと答えが0か1にしかなりませんから、この時点で、数の世界が足し算と掛け算、割り算について0と1だけで完結していることが分かります。
 最後に、引き算について。1―1=0、1―0=1、0―0=0。ここまでは問題ないでしょう。では、0―1はどうなると思いますか? ポイントは、「1+1=0」であることです。言い換えれば「0=1+1」ですから、0―1=(1+1)―1=1となります。これで、0と1以外の数をいっさい用いることなく、足し算、引き算、掛け算、割り算を全て完結させることができました。「1+1=0」という新しい決まり事だけでできる「0と1しか存在しない数の世界」の完成です。
 見たことのない新しい世界に出合う楽しさ。一人でも多くの中高生がその楽しさに目覚め、将来「新しい原理の発見」に挑戦してくれることを期待しています。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。
 

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 ■NIEアドバイザーのワンポイント講座(9)=知るために考える
 新聞スクラップはNIEを進めていく上での基盤となる部分になりますが、「考える」ことの素地を作る場でもあります。
 哲学者・池田晶子氏は著書「知ることより考えること」の中で、「考えるとは、本当のことを知るために考えるという以外ではあり得ない。しかし、きょうび『知る』とは、外的情報を(できるだけたくさん)取得することだとしか思われていない。取得するばかりで、誰も自ら考えていない」と現在の情報化社会に警鐘を鳴らしています。
 新聞スクラップはまさしく「知るために考える」活動であり、主体性を育む手段なのです。自分自身が新聞と対話し、どの記事を選ぶかということが課題設定のスタートとなるでしょう。そして、答え探しのために試行錯誤する過程の繰り返しが、「考える」という行為につながるのです。
 11月に本校で行ったNIE公開授業の5年生も、日々の新聞スクラップから自ら課題を見いだし、友達と交流する中でさらに深い学びにしていきました。
 皆さんもぜひ新聞スクラップに挑戦してみてください。
 (静岡井宮小・中村都)