一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=この記事どう思う? 全校生徒がパネル討論 全クラスで意見交換、考え深める-裾野・富岡中

2018年01月06日(土)付 朝刊


 NIE実践指定校の裾野市立富岡中は、新聞を活用した取り組みの成果を披露する「NIE集会」を開いている。新聞記事に取り上げられたテーマで、全校生徒が一堂に会して意見を交わすパネル討論が開かれた。
 

 2017年11月下旬、同校体育館に全校生徒が集まって17年度のNIE集会が開かれた。昨年に続き2回目。パネル討論のテーマは「部活動週4日制について」。同年9月9日付の本紙朝刊に掲載された「静岡市教委 部活ガイドライン策定」の記事について、生徒たちは1カ月間、クラスで意見交換を重ねてきた。
 討論は最初、全校生徒の代表5人が賛成・反対・その他の立場で意見を発表。自由討議に移ると、参加していた生徒たちが挙手して意見を述べていく。男子生徒が「学生の本分である勉強に集中すべき」と賛成意見を述べると、女子生徒が「もっと部活動で技術を伸ばしたい」と反対の立場で主張し、議論は大いに白熱した。
 討論会を仕切った学習委員会委員長で2年の斉藤岬希さん(14)は「NIEを通じて新聞を読む重要性に気付かされた。自分には関係ない話だと思っていても、新聞記事は何かを考える素材になると感じた」と感想を述べた。
 同校は「NIE集会」以外にも、毎月末の1週間を「NIE週間」と位置付け、新聞を題材に生徒同士が意見を交換する機会を設けている。題材はNIE委員会に所属する担当教諭が選ぶ。
 生徒たちはまず、新聞記事を読み込み、自分自身の意見を紙に書き込む。次は4人組のグループで、紙に書いた意見をそれぞれが披露し、意見交換する。他の生徒の意見を聞いた上で、どう思うかを改めて書き込む。
 紙は各クラスの文化委員の元に集められる。そのうち1枚がクラス代表の「優秀作」として選ばれ、校舎の一角に設けられた「NIE掲示板」に掲示して、全校生徒で共有化を図る。生徒が選んだ「ハッピーニュース」の新聞記事も貼り出している。
 一連のNIE教育で、生徒たちの間には変化が生じた。NIE委員会委員長の加藤りよ教諭(34)は「生徒たちが社会的な事象に関心を持つようになった。クラスに届く新聞を読んで、話題にする生徒の姿が多くなった」と効果を指摘する。
 NIE週間以外にも、記事を題材に使った授業や、日直が終礼で気になる記事を発表するなどさまざまな形で、新聞を活用している。加藤教諭は「社会へ出る前に、いろんな事を知ってほしい。新聞はそのための良い教材」と強調する。

 

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全校生徒が集まって、新聞記事を題材にパネル討論が行われたNIE集会=2017年11月下旬、裾野市立富岡中

 

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生徒が選んだハッピーニュースやNIE週間の成果が貼り出されている「NIE掲示板」

 

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 ■紙面授業=英語-異文化理解 重要に 日大三島中・高 陶山健一先生
 2017年1月、インターネットの囲碁対戦サイトに突然現れて、日中韓のトップ棋士に無敗を誇った謎のアカウントは、米グーグルの子会社が開発するコンピュータープログラム「アルファ碁」の最新バージョンであったことが公表されました。5月には世界最強棋士とされる中国の柯潔九段と公開対局して、アルファ碁が3―0で完勝しました。
 このニュースは、AI、いわゆる「人工知能」が、今まで人間の方が有利だと思われてきたいくつかの分野で、圧倒的に人間を凌駕するようになったことを示しました。
 AIに大幅な進化をもたらした技術革新は、言語の機械翻訳の世界にも大きな前進をもたらしています。「ニューラル」は「神経の」という意味の英単語ですが、人間の脳のようにコンピューターが学習を繰り返して自分を強化していくニューラルネットワークの研究が飛躍的に進み、グーグルが開発したニューラル機械翻訳の技術は、おそらく学生の皆さんが使ったことのある「グーグル翻訳」の精度を驚くほど向上させました。以前は実用には程遠かった「グーグル翻訳」は、それほど遠くない将来に人間の通訳をしのぐでしょう。
 高いコストをかけて外国語を学ぶ必要が薄れた時、私のような英語教師はどのように仕事をしていけばいいのでしょうか。日本のようにやたらと英語のニーズが高い国はどうなってしまうのでしょうか。
 私は面白い時代になると想像しています。インターネットの普及が世界を狭くし、さまざまな文化や知識の接近や衝突を促したように、言語の障壁が矮小化されることで英語の一人勝ち状態は無くなるでしょうが、代わりに他の言語や文化との接触はむしろ増えると思います。バベルの塔の神話が逆進するのです。他文化への理解やコミュニケーションの重要性もより増大するはずです。
 外国語を学ぼうとする意思と能力は、そのまま新時代への適性ではないか、そんな期待をしています。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。
 

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 ■NIEアドバイザーのワンポイント講座(10)=読み聞かせ 取り入れて
 一般的に教室には、新聞を読む経験が十分ある生徒も、少ない生徒もいて、記事を読む速さは生徒によって異なります。しかし、新聞の利点は、各自の読解力に応じて内容をつかむことが可能であるという点です。
 毎日、新聞記事を話題にしていると、多くの生徒が社会の出来事に興味を持つようになっていきます。NIEの初期段階はその程度で構いませんが、より深い考察に挑戦してほしい場合、個々の生徒が内容を十分に読み込んでいないと、授業で目標とする考察を深めるのに至らないことは自明です。そこで行いたいのが、新聞記事の「読み聞かせ」です。
 記事を満遍なく読み上げるのではなく、重要なポイントに絞って、かいつまんで紹介することが大事です。
 最初に、写真を見せながら見出しに注目してもらい、次に、リード文の冒頭を読み上げます。
 例えば、インタビュー記事で、特に生徒に考察してほしいところを部分的に読み上げ、その後、生徒たちにその記事を丁寧に読むよう声を掛けます。
 限られた授業時間で生徒に教師の目標を知らせ、考察のヒントを示すことができます。
 (清水西高・吉川契子)