一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=読者意識した新聞づくり 全国で大臣賞 企業広報紙も 韮山高 写真報道部

2018年05月05日(土)付 朝刊


 新聞での情報発信にこだわり、成果を挙げているのが、伊豆の国市の県立韮山高写真報道部。2015年の部発足以降、熱心な新聞制作活動を進め、17年度の全国高校新聞コンクールでは、最高賞の文部科学大臣賞を受賞。企業などが高校生と連携して手掛ける新聞やフリーペーパーの制作にも積極的に加わり、学校新聞の枠を超え活動の幅を広げている。
 

 同校にはかつて新聞部があったが、約20年前に活動がなくなり、生徒主体での新聞発行が途絶えた。しかし14年、上杉剛嗣教諭の赴任をきっかけに、生徒による学校新聞が復活。15年に写真部を改称して写真報道部が発足した。以降、年3回発行のタブロイド判の「韮高新聞」と、週1~2回の頻度で発行するA4判1枚の「龍城学報」を制作している。
 そのほか、三島信用金庫が発行する企業紹介の新聞や、伊豆箱根鉄道の沿線自治体などで組織する協議会のフリーペーパーの制作にも、他校の生徒とともに参加。学校新聞では機会の少ない企業への取材など、貴重な経験を重ねてきた。
 同部が意識するのは「読者を大切にした新聞づくり」。生徒に興味を持ってもらえるテーマ設定、記事内容を考えている。中には、世間で議論されているテーマについて、生徒たちの考えを調査した特集も。その一つが、憲法改正に関する校内アンケートの結果をまとめた17年9月発行の韮高新聞の特集「韮高生の目で憲法を見る」だ。結果について同校の公民科講師による分析を加え、新聞記者や憲法学者のインタビューも載せて内容を深めた。
 中心となって担当した工藤奏多さん(2年)は、紙面作りに「一般紙が参考になった」と振り返る。新聞社が発表した改憲案を引用したり、改憲の論点を把握したりするのに活用。「新聞は情報の信頼度が高い」と語る。最高賞に輝いた高校新聞コンクールでは、この特集が審査委員長の講評で触れられ、評価を受けた。
 部をまとめる石井拓也部長(3年)の将来の目標は新聞記者。インターネットと比べ、新聞の利点を「自分が欲しい情報だけでなく、幅広い情報を得ることができる」と強調する。入部後、一般紙に目を通すようになるなど新聞との関わりが変化した。「これからも新聞を読み、知識を増やして目標に近づきたい」と力を込める。
 

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写真報道部が制作している「韮高新聞」や、企業との連携で発行された新聞

 

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紙面作りについて話し合う韮山高写真報道部の部員たち=伊豆の国市の同校

 

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 ■紙面授業=国語 文学「味わう」喜び 菊川南陵高 滝浪安則先生

 料理をするときには、まずメニューを決め、次に材料選定、下処理、調理、味見、盛り付け、提供となります。そして、いよいよ賞味(味わう)ということになります。この「味わう」というのは食に関することだけではなくて、実は芸術や文学の世界にもあることなのです。
 国語というと難解語句などの知識が必要だということから、厄介なものだと考えられる人もいるかもしれません。今、高校では2020年度から始まる「大学入学共通テスト」が大きな関心を集めています。3月には試行調査の国語の記述式問題で、正答率が0・7%と極端に低い問題があったことなどが公表され、新聞紙面でも大きく取り上げられました。こんな記事を見ると、なおさら国語が面倒なものに思えるかもしれませんが、決して難しく考える必要はないのです。
 料理の場合、個人差はありますが、おいしいと感じる時は口に入れてすぐだったり、咀嚼[そしゃく]を繰り返し、喉を通過する時だったりします。文学にもすぐに「味わう」ものから、何度も何度も読みを深めることで「味わう」ものまであるのです。含蓄のある食材(言葉)があると、ずうっと時間が経って、例えば数十年後に自らの経験やさまざまな思考過程の中でふと気付いて「味わう」こともあります。
 学校では学習の到達度を調べるために、定期的な試験があります。たとえその時理解できなかったとしても、安直に好き嫌いに結び付けずに、何度も咀嚼してもらえば自然と味わえるはずです。一度読み味わった作品でも、再読するとまた違った新たな味わいをすることもあります。「味わう」の先にある通じ合ったことへの喜びと感動というものにきっと出合えることでしょう。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。
 

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 ■NIEアドバイザーのワンポイント講座(14)=考え、議論できる「まわし読み」

 「まわし読み新聞」は仲間づくりと学びの要素を兼ねた実践と言われます。各自が気になる新聞記事を持ち寄ってグループの中で回し読みし、記事についてプレゼンテーションした後、意見交換の場を持ち、それを材料にして自分たちの新聞を作るからです。
 仲間づくりの要素としての良さは、プレゼンで分かりやすく伝える必然性を実感し、コミュニケーション力をつける手立てとなることです。少人数での話し合いの場は、話し下手の子どもの口を開きやすくします。
 学びの要素としての良さは、事前に与えられているテーマに基づき新聞記事を選択しているため、子どもたちが一定レベルの知識をもって授業に臨むことができることです。同じような記事を選択した場合でも、その選択理由が異なると多様な見方や考え方を知ることができます。
 これらのことから、「まわし読み新聞」は、従来の教科だけでなく今年度からスタートした「考え、議論する道徳」でも十分に活用できます。今を話題にし、たとえ結論が出なくても話し合いができることが、新聞を使って道徳を行う最大の利点と言えます。
 (静岡井宮小・中村都)