一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=新聞通じ、考え広げる 新規実践校が抱負

2018年08月04日(土)付 朝刊


 日本新聞協会はこのほど2018年度のNIE実践指定校を決定した。県内では、県NIE推進協議会が推薦した新規4校、継続10校が決まった。実践校には、県内で発行される7紙が一定期間無料で提供され、NIE活動に使われる。新規実践校のNIE担当教諭に抱負を聞いた。

 

■活字離れ歯止めかける 菊川西中 増田浩己教諭
 時代の流れとともに活字離れが深刻な問題となっている昨今、本校も同じ問題を抱えています。インターネットの普及により、動画やゲームの時間が増える一方、活字と向き合う時間はどんどん減っているのが現状です。
 毎日、朝読書の時間を確保しているものの、その効果は頭打ちと言わざるを得ません。そんなときNIEの実践校の話をいただきました。この活動が本校教育の新たな切り口になればと考えています。
 各校の先行研究を元に、"とにかくやってみる"を合言葉に研究を行っていきたいと考えます。その中で、菊西スタイルを確立できたらと思っています。子ども達の未来のために職員一丸となって頑張ります。

 

■表現力の向上にも期待 西伊豆田子小 小沢千寿子教諭
 本校の子どもたちは、多くの蔵書があるにもかかわらず読書をあまりしていないように感じます。しかし、子ども新聞の記事に興味を示し立ち止まって読んでいる姿を見掛けることがあります。
 NIEの活動を通して、子どもと新聞の距離を縮めていきたいと思っています。学年に応じて取り組みを工夫する必要はありますが、新聞を読むことを通して、自分の体験や経験と比較したり共通点を見つけたりして自分の考えを広げる子に育ってほしいと思います。
 そうした活動を継続していくことで、子どもが新聞の文章の組み立てをまねたり熟語を引用したりして、表現力を高めていくことも期待しています。

 

■活用進めて深い学びに 静岡清水飯田小 小川訓靖教諭
 「明日、習字で新聞を使うから持ってきて」
 「新聞とってないので持ってこれません」
 年々、このような会話が多くなってきています。新聞に目を通すどころか、触れることも少なくなってきている子どもたちが、NIEの実践を通して、新聞の良さや面白さに気付き、興味をもち、新聞を身近なものとして活用できることを願っています。
 本校で昨年度末から始めたことは、放送委員に「気になるニュース」を選ばせ、昼の放送で紹介するというものです。今では全校がこのコーナーを楽しみにしています。今後は、新聞を使った授業を展開する中で、「深い学び」ができるように、努力していきたいと思っています。

 

■学習内容と社会つなぐ 清水西高 吉川契子教諭
 生徒たちが学習内容を十分に身に付け、今後の社会生活に生かすために、学習内容と社会との関わりに気付くよう、折に触れてニュースを取り入れています。
 新聞記事は短時間で情報を得られるように工夫されています。慣れれば、効率よく情報を把握できます。新聞情報に慣れたら、学習内容に関連する新聞記事を読んで社会の出来事を知り、その原因を考えたり、また、出来事に対する自分の意見を持ち、それを文章で表現したり、口頭で発表したり、周囲の人々と話し合ったりする経験を積んでほしいと思います。
 繰り返すことで、学習内容と日常生活との関わりを十分に理解し、学習の意義を悟ることができるでしょう。この機会を生徒の学びに役立てたいと思います。

 

■2018年度NIE実践指定校
 新規:西伊豆田子小、静岡清水飯田小、菊川西中、清水西高
 継続:浜松西都台小、富士宮西富士中、静岡観山中、川根本町本川根中、遠江総合校、静岡聴覚特別支援学校、富士宮上井出小、静岡井宮小、三島南高、静岡聖光学院中・高

 

20180804.jpg

県NIE推進協議会の総会でNIE活動の抱負を語る新規実践指定校の教員ら=6月、静岡市内

 

               ◇........................◇

 

■紙面授業=国語 芥川教える楽しさ 浜松修学舎中・高 内田圭祐先生
 かの有名な文豪、太宰治もあこがれた芥川賞の今年上半期受賞作が発表されたのはつい先日のこと。新聞紙上でも大きく報じられました。お笑い芸人の又吉直樹さんが「火花」で受賞したのが最近のことのように思っていましたが、もう3年もたち、その後、受賞者が8人もいるのだから驚きです。
 このたび「送り火」で受賞した高橋弘希さんは、自分の出身大学の先輩で学科も同じということが分かりました。しかも世代も近い。それを受けて私の大学時代の仲間のグループラインはこの話題で持ちきりで、これは自分たちも負けていられないなと自分たちの希望の光にもなっています。
 そんな芥川賞も1935年に始まって今回で159回に至ります。こんなにも長く続く賞があるというのは珍しいことだと感じ、それだけ芥川龍之介は偉大だと感じさせられます。
 私は国語科教員です。高校の国語総合の授業を受けもった際には、必ず2学期の半ばごろに芥川の「羅生門」を扱います。この時期に取り上げるのは、じっくりと取り組むためです。「羅生門」を読み始めると、生徒は今までに取り扱った教材よりも文章が長いことと、初めに出てくる用語の難しさに面食らい、そこで気持ちが離れる子もいます。だから工夫をします。
 時には稲川淳二さんばりに「怖いなー怖いなー」と口調を変えて語ったり、生徒に登場人物である下人と老婆を演じさせたりします。すると途端に興味がわいてきて、生徒の「何で~」という発言が出ます。そういう時に得意げに教える生徒が出てくると、私は小さくガッツポーズをするのです。
 今年もどんな形で授業が進むのか楽しみです。そして私の夢の印税生活はまだまだ遠いのです。

 

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

               ◇........................◇

 

■写真新聞作ってみよう 25日、横浜で教室
 情報と新聞を学べるミュージアム「ニュースパーク(日本新聞博物館)」(横浜市)は、夏休みの思い出写真を新聞の形にまとめる「写真新聞づくり」教室を25日に開く。
 家族旅行やプール、キャンプなど夏休みの体験を収めた写真を、ニュースパークのスタッフの指導を受けながら、A3サイズに新聞の1面をまねて構成し写真新聞として完成させる。
 参加者は、写真データを10枚ほどSDカードまたはUSBメモリー、CD-RにJPEG形式で保存して持参する。写真については、掲載する優先順位と撮影日、撮影場所、短い説明文を考えておく。開催時間は午前10時、11時、午後1時、2時、3時、4時の6回で各回少人数。事前予約制。参加無料だが、ニュースパーク入館料は必要(一般400円、大学生300円、高校生200円、中学生以下無料)。
 申し込みはニュースパーク<電045(661)2040>(月曜以外の午前10時~午後5時)へ。

 
■新聞が伝えた明治を紹介
 ニュースパークは、今年が明治150年の節目となるのを記念して特別企画展「新聞が伝えた明治-近代日本の記録と記憶」を開いている。明治時代の重要な出来事を当時の新聞がどう伝えたかを、約300点の資料で振り返る。9月30日まで。月曜休館、要入館料。

 

               ◇........................◇

 

■NIEアドバイザーのワンポイント講座(17)=夏休みこそスクラップ

 夏休みに入り、教師も子どもも日々の生活に少しゆとりができたのではないでしょうか。そんな今こそ、記事のスクラップをお勧めします。記事の中には、数日、数カ月、数年後でも活用できるものがあります。今年の夏は、猛暑・酷暑が話題になっています。例年と比べ、どのくらい暑いのか、熱中症対策など、何度となく紙面に掲載されています。2学期のスタートに夏バテしない方法を身に付けていれば、どんなに心強いことでしょう。
 事件や事故が大きくなればなるほど、新聞は節目をとらえて特集記事を掲載します。それらの記事は、事件や事故の全体像を理解する絶好の資料になります。事件や事故が起きた時、「いつ」「どこで」「何が」「どうした」かは素早く報道されますが、「どの程度」かは続報に頼らざるを得ず、「なぜ」についてはなかなか分からないのが現実です。夏休みを通して、今まで点でとらえていたニュースを、線や面でとらえることができれば、日々の生活を教材にしたアクティブラーニングをすることができます。
 (浜松与進北小・山崎章成)