一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=全生徒に切り抜き記事 受験対策、読んで感想 視野広がり、時事に関心-三島南高

2018年10月06日(土)付 朝刊


 三島市の県立三島南高は本年度から週に2回、新聞の切り抜き記事を全校生徒に配る取り組みを始めた。生徒が日常的に時事問題に触れることで大学受験に役立てる試みという。

 NIE担当の教諭らが毎回順番で選定し、1年生から3年生まで同じ内容の記事を配布する。ジャンルは政治、国際、教育、子育て、女性の生き方、医療、文化などさまざまで、小学生新聞を配るときも。ショートホームルームなどの数分間を使って読み、感想を書かせ、教諭によっては業務の負担にならない範囲で回収して感想に目を通すという。
 9月までの半年間で実施した回数は22回。生徒には切り抜きをできるだけファイルにとじ込んでいくよう指導していて、1年生なら総数は卒業時に優に100㌻を超える計算になる。
 同校によると、時事問題は小論文のテーマになったり、面接で質問されたりと、大学受験で必ずと言っていいほど取り上げられるが、「(高校の)現場では具体的な対策が講じられていないのが実情」という。3年3組担任の亀田愛教諭(36)は配布当初と現在までの生徒の変化について「物事を広く見ようという意識が見えてきた。同じ時間内に書く文章量も増えた」と実感を込める。
 一方で、取り組みを提案した岩野隆教諭(40)は、受験対策はあくまで新聞を読むきっかけづくりに過ぎないと真の狙いを打ち明ける。「玉石混交の情報が飛び交う中、新聞の信頼性を知ることはこれから社会に出て行く彼らに必要だと考えるから」
 3年生の鳩岡未悠さん(18)は「新聞の文字の多さには抵抗があったが、要約する力が身に付いてきたと思う。何より、世の中で今何が起きているか詳しく知ることができる」と成果に触れた。

 

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本年度から始めた切り抜き記事の全校配布=9月中旬、県立三島南高

 

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切り抜き記事をとじたファイル

 

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■紙面授業-数学 情報精査力も養う 加藤学園暁秀中・高 渡辺喜徳先生

 皆さん、数学は好きですか? 数学は比較的「嫌われ者」の教科ですね。今年春ごろ、2020年度から始まる「大学入学共通テスト」の試行調査結果が発表され、新聞でも大きく報じられました。その中に「数学では3問が正答率1割未満、無回答5割」との結果が出ていました。「解く気にもならない」ということだったのかもしれません。
 「数学なんて、生きていくのに必要ない!」。こんな発言を聞くこともあります。本当に必要ないのでしょうか。
 例えば、2辺の長さとその2辺で挟まれた角の角度(30度)が分かっている三角形の面積を求めるとします。高校生なら、三角関数を用いるでしょう。「30度」に着目、角をなす1辺に対頂点から垂線を引いた上でその1辺を軸に三角形を180度回転させ、現れた正三角形から高さを求める、という簡単な解き方もあります。一つの問題を多様な視点で考えることが、数学を通して経験できます。
 この問題が提示された時、何人かは三角形の面積を求める基本公式「底辺×高さ÷2」を思い浮かべたはずです。これは無意識に「高さが分かれば、面積が求められる」とイメージしたことになります。面積を求める、という課題に対して、先の見通しを立てて、必要な情報を精査し始めたわけです。
 数学の問題を解くとき、①見通しを立て②一定の条件下で情報を精査し③不足データを整え④問題を解決する-という過程があります。このプロセスは数学以外の場面でも十分に活用できます。特にネットに情報があふれた現代社会では、先の見通しを立てる力、物事を精査する力は必要不可欠です。
 数学を通してこのような力が身に付くとしたら、数学は「学ぶべき価値のある教科」となりますか?

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(19)「聞く」精度高める新聞(中村都/静岡井宮小)

 1年生の担任をしています。生活科の秋見つけ発表会で「こうよう」という言葉が出てきた時、ほとんどの子どもたちはその意味がわかりませんでした。漢字を知らない1年生がひらがなだけの情報で意味を考えるのは至難の技なのです。
 「紅葉」と表現すると、「葉」が「赤くなる」ことだと分かります。なぜなら、聞いた言葉を漢字に変換して意味を理解するからです。漢字には意味があり、日本語で話を聞こうとする時、漢字の意味を理解していないと内容をつかむことができません。それは日本語が他の言語と大きく異なるところです。
 日本語において話を聞く作業は、漢字を中心とする語彙[ごい]力に支えられています。「聞く」精度を高めるためには、漢字熟語の語彙力が最も重要なのです。そのためには、書いて覚える練習は必至ですが、新聞記事はふりがなを振れば1年生でも読めるので、まずはひらがなに変換せずに漢字熟語の形で読む習慣をつけたいものです。
 新聞は、「聞く」ことの精度を高めるために最適な教材だといえます。ぜひ低学年から活用してみてください。
 (静岡井宮小・中村都)