一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=記事要約、1分で発表 ニュース選び興味を共有 授業への関心増す-本川根中の全校学習

2018年11月03日(土)付 朝刊


 川根本町立本川根中は週1回、放課後15分の全校学習で新聞を活用している。生徒は1週間のニュースの中で興味のある記事を持ち寄り、全員が持ち時間1分で記事の要約と感想を発表する。教諭陣は毎週の取り組みを効果的に生かす手法を模索している。

 放課後、記事の切り抜きに感想が添えられたワークシートを手に、全校生徒26人が教室に集まってきた。学年関係なく5グループに分かれ、一人ずつ関心のある記事を紹介していく。春田浩奈さん(2年)はプラスチックごみの抑制へ向けて紙製ストローの試験提供を始めた静岡市の取り組みを取り上げ「普及が進んでほしい。川根本町なら、木製のストローはどうか」と提案。男子生徒は台風24号の影響で発生した県内の土砂崩れの記事を紹介し「川根本町も山間部なので自分たちも気をつけたい」と話した。
 NIEの取り組みは実践指定校となった昨年度始めた。芹沢佳步さん(1年)は「新聞を読むようになったし、発表の場では他の人の選んだニュースも知ることができて楽しい」と話す。担当の羽入健太郎教諭(24)は「1分で発表することを通して、それぞれのプレゼン能力をつけられれば」と期待する。
 廊下には生徒のスクラップを掲示し、教師が持ち回りで気になる記事を紹介するコーナーも設けて人気だ。教科に関連のある内容を選んで授業への関心を高め、生徒とのコミュニケーションにも一役買っているという。
 約2年間の取り組みで課題も浮き彫りになってきた。スクラップを掲示した一角に複数紙を置き読み比べを促しているが、社会科の守谷知佐子教諭(40)は「こちらから視点を与えることも必要かも」と話す。
 切り抜く記事も、政治経済などさまざまな面に目を通すよう、生徒が選びがちなスポーツの勝敗を報じる記事は対象外にしたが、どこまで制約やルールを設けるか。一つのニュースを追跡する姿勢を生徒には求めているが、なかなか増えないのが現状という。羽入教諭は「より深い学びにつなげられるように考えていきたい」と話す。

 

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互いに気になったニュースを紹介する生徒たち=川根本町立本川根中

 

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読み比べを促すため、廊下に複数紙を設置しているコーナー

 

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■紙面授業-国語 物事の本質に迫る 星陵中・高 奥村裕樹先生

 「今日のニュース考察の発表は...○○さん」。本校ではSDGs(持続可能な開発目標)の解決策を探究のテーマに据えて、ニュースを考察することから学習しています。このため、どの教科も授業は必ずここから始まるのです。
 「『静岡市の紙製ストロー試験提供』の新聞記事について考察したいと思います」。そう言って生徒は記事の要約を話し始めました。
 静岡市は10月7日、市内で消費される使い捨てストローなどのプラスチック製品を紙製などの環境負担が低い製品に転換するよう促し、海洋汚染につながるプラスチックごみの抑制を図る取り組みに着手した-という内容。
 私はこれを聞いて「ストローはプラスチック製でリサイクルできるのだから、そんな漂流物はあり得ないのではないか」と疑問を持ちました。そこで「ごみ箱に捨てたはずのストローが海に大量に流れ出ているのはなぜ?」と問い掛けました。
 生徒はおのおの調べ学習を始めます。しばらくして、生徒たちのプレゼンテーションが始まります。
 生徒たちの発表内容をまとめると、「日本のプラスチックごみは洗浄されたものはリサイクルされるが、そうでないものは中国が買い取っていた。しかし、汚れを洗浄するときに出る洗剤などによる土壌汚染が深刻化し、買い取りをやめた。そこで行き場を失ったごみが投棄されることになった」というものでした。
 このような題材を通し、情報を受け止めるだけでなく、「なぜその事態が起こったのか」についてその根拠を学習することは物事の本質に迫る大切な時間です。この生徒たちが社会に出たとき、変わりゆく社会構造に負けず、未来をつくっていくのだと希望も持てます。今後も熱血授業を展開していきたいと思います。

 

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(20)記事で考える防災行動(吉川契子/清水西高)

 県内に大きな被害をもたらした台風24号。被害を報じる新聞記事を使えば、防災行動について生徒たちに考えさせることができる。
 まず、台風24号に関する新聞記事を切り抜く。切り抜きを、「大規模停電」「早めの警戒」「強風による被害」などのテーマで分類し、内容を小グループ内で紹介し合う。その後、教師が狙いを明確にした質問をして、意見交換をさせると良い。
 大規模停電により信号機も止まり、交通事故が発生した。停電に対する家庭内での日ごろの備えの具体策や、広域停電時の交通マナーを考えさせたい。
 公共交通機関等は早期に計画運休を決定し、事前告知した。中心市街地の商店も閉店時間を早めた。これらが、安全のために必要な措置であったことを記事を読んで発見させたい。
 強風による被害写真では、風害の恐ろしさを感じさせたい。暴風警報等が発令された場合は外出を控え、命を守るよう強調したい。
 今年は、狩野川台風から60年。節目の年に本県を襲った台風24号は、備えを見直す大切さを訴える自然からの警告かもしれない。
 (清水西高・吉川契子)