一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=実践7校 成果と課題(上)

2019年03月02日(土)付 朝刊


 教育に新聞を活用する取り組みを展開する県NIE推進協議会(安倍徹会長)はこのほど、2018年度NIE実践報告会を静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で開いた。実践指定校として2~3年間活動してきた富士宮市立上井出小、静岡市立井宮小、浜松市立西都台小、静岡市立観山中、静岡聖光学院中・高、県立三島南高、県立遠江総合高の7校の担当教諭が、取り組みの成果や課題を説明した。全7校の発表内容の概要を2回にわたり紹介する。前半は、富士宮上井出小、静岡観山中、県立三島南高。
 

■「伝える力」を伸ばす-富士宮市立上井出小 杉山恵子教諭
 子どもの「伝える力」を伸ばすことを目指した。全校で関心のある記事を切り貼りするノート作成や、各学年の取り組み成果を紹介するコーナーの設置を進めた。
 新聞に不慣れな1年生の授業では、難しい言葉を教員が説明するなど工夫した。上野動物園でジャイアントパンダ「シャンシャン」が誕生したニュースに強い興味を示していた。2年生はファーブル昆虫記の記事を参考に、生き物に関する新聞作りに挑戦した。近隣の学校と協力し、記事の感想を言い合う活動も展開。他校と交流する手段として新聞を活用できた。
 NIEに関する全校アンケートでは、多くの児童が「勉強のためになった」「新聞を使った勉強は楽しい」と回答。文章構成力などが身に付き、国語の教科などに生きた。近隣の中学校とも連携を図り、9年間を通した活動を進めたい。

 

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■出来事知る 習慣付け-静岡市立観山中 滝志保教諭
 生徒のアンケートでは、新聞講読している家庭でも読んでいない生徒がいるほか、情報源はテレビやインターネットが多くを占めることが分かった。読書や会話の際に文脈を読み取る力を高めるため、語彙[ごい]力の育成を目標に掲げた。
 記事の見出しや「いつ」「どこで」などの5W1H、感想を書き出すノート作成を行った。記事の選択は教員が担当。日本でのカジノ開業の賛否など意見の対立があるものや、成人年齢の18歳への引き下げといった子ども世代と関わりがある内容を取り上げた。
 時事問題テストも実施。多岐にわたるテーマから出題し、期日に向けてニュースを把握しておくように呼び掛けた。重大な出来事を覚えようとする習慣が付いた。取り組みの結果、新しい言葉や知識に触れる楽しさを感じたり、何回も読み返して深く理解したりする生徒が出てきた。

 

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■小論文や面接対策に-三島南高 岩野隆教諭
 新聞を「あって当たり前のもの」にするのが狙い。NIEを実践する上でのターゲットとして、生徒よりもむしろ指導する教員側の意識改革に力点を置いた。小論文や面接対策としてNIEを導入し、進路実現に生かそうと呼び掛けた。
 3年生の選択科目の授業で、通年で新聞を活用した。紙面構成や読み方を学んだ後、討論や新聞作成を実施。情報活用力や発想力、対話力を身に付けてもらうことを目指した。学校全体でも、記事切り抜きを週2回ほどのペースで配布。新聞閲覧コーナーも設けた。
 生徒の活動が実際に新聞に載ると、喜びがじわじわ広がり、さらに前向きになる様子が見てとれた。授業を通して多くの人と関係を深めることができた。新聞には取材の手法や記事の書き方など、多くの技術が詰まっている。「守るべき伝統産業だ」との思いを持つようになった。

 

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■紙面授業-理科 現代も身近な恐竜 静岡聖光学院中・高 斎藤泰正先生

 今日、私たちの生活の中で多くの「恐竜」を見掛けます。公園の遊具になっている恐竜や文房具になっている恐竜、映画の中で活躍する恐竜もいます。ホテルの受け付けをこなすAI(人工知能)の恐竜の登場は、「変なホテル」として新聞紙面でも取り上げられ、関心を集めています。
 6600万年前に絶滅した過去の生物が私たちの見慣れた存在として普及しています。毎月、何かしら恐竜の話題がニュースになることから、恐竜に対する世の中の関心の高さが伺えます。
 中でも人気が高いのがティラノサウルス・レックスです。ティラノが暴君、サウルスがトカゲ、レックスが王という意味があります。大きな体と大きなアゴ、太い歯、獲物を狙う目などから、ハンターとして完成していたことが分かります。
 名前にあるように、サウルスがトカゲという意味であることから、恐竜を大きなトカゲと思われる人が多いかもしれません。トカゲが属する爬虫[はちゅう]類は体温が低く変動しやすく冬眠が必要な変温動物で、卵は産みっぱなしです。
 しかし、恐竜は体温が一定に保てる恒温動物であり、子育てをし、群れで生活をしていたことが昨今の研究で分かってきました。そうすると、トカゲというより、どちらかといえば鳥類の方が近いように感じます。1995年にはティラノサウルスの仲間の化石から羽毛の跡も発見され、大きな話題となりました。
 最近では鳥類の遺伝子を研究し、ニワトリの遺伝子から恐竜を再生できないかという研究が進められています。ひょっとしたら数年後には生きた恐竜をこの目で見ることができるかもしれません。今後も恐竜たちに関する新しいニュースを楽しみにしてください。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(24)字体、文字の形も情報源

 新聞の情報は記事だけと思って読んでいませんか。
 新聞記事の書き出しのそばにあって、色やデザインで目立たせているカットも大きな情報源なのです。カットのついた記事は連載の目印になるだけでなく、読者は色やデザインから受けるイメージで、記事の内容を一瞬で感じ取ることができます。
 さらに、担任している1年生と新聞の中のひらがな言葉見つけをした時のことです。「にほん」という言葉を幾つも切り抜いた子が、「字の形が違う」とつぶやきました。いわゆる明朝体・ゴシック体など、新聞の中にはさまざまな字体が存在し、それによっても印象が異なるということに気付いたのです。また、同じ字体を使った言葉でも、「適当」と書くのと「テキトー」と書くのでは視覚的に同じ意味の言葉とは受け取れません。情報に適した字体や文字を選択することで、伝えたい情報の微妙なニュアンスを読者に感じ取ってもらうことができるのです。
 情報は紙面全体のあらゆるところに存在します。記事だけでなく、色や形、デザイン情報にも注目してみてください。新しい発見があるはずです。
 (静岡井宮小・中村都)