一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=実践7校 成果と課題(下)

2019年04月06日(土)付 朝刊


 教育に新聞を活用する取り組みを展開する県NIE推進協議会(安倍徹会長)はこのほど、2018年度NIE実践報告会を静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で開いた。実践指定校として2~3年間活動してきた県内の小中高7校の担当教諭が、取り組みの成果や課題を説明した。全7校の概要を紹介する後半の今回は、静岡市立井宮小、浜松市立西都台小、静岡聖光学院中・高、県立遠江総合高。
 

■「歴史」と「今」つなぐ-静岡市立井宮小 西田亮子教諭 中村都教諭
 低学年では新聞を読み解くことよりも言葉遊びに重点を置いた。広告や写真を組み合わせるコラージュ作品作りや、文中から片仮名を探す言葉探しを行った。図工科目での活用により、言語的な部分だけでなく色や形、質感など感性を磨く要素を含ませた。
 中学年の児童は、取り入れた情報の共有と新聞作りなどに臨み、実際の新聞を手本に見出しや紙面構成を考えた。高学年の授業では、駿府城天守台の発掘調査で豊臣秀吉が家臣に築かせた城跡が見つかった記事を授業に取り入れた。教科書で学ぶ「歴史」と新聞が伝える「今」をつなげ、自分たちの話題として考えられるように意識した。
 新聞は授業だけでなく、日常的にあらゆる場面で活用できる。NIEは生涯学習になりうるテーマと考えているので、今後も自分たちなりに追求していきたい。

 

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■生活と絡めた学びに-浜松市立西都台小 鈴木秀平教諭
 「主体的に学びを求める子」の育成をテーマに展開した。新聞に距離感がある児童も多い。無理せずに新聞に触れられるようにするため、目に付きやすい場所に閲覧スペースを用意した。児童の発達段階に合わせて活用するようにした。
 2年生の授業は、記事を読んでクイズを出す形式で進めた。懸命に紙面から回答を探すなど、新聞に親しんでいる様子が見られた。6年生では、帰りの会での1分間スピーチで新聞を生かした。それまで授業の報告のみになるなどマンネリ化していたが、新たな視点が加わることでスピーチの質も上がった。生活と絡めた学びを進めることができた。
 教員の間でもニュースの話題が増え、時事問題への意識が高まった。学校生活の中で効果的に新聞を活用するには、使いたい場面に備えて記事を収集、整理しておく必要があると感じた。

 

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■社会への想像力育む-静岡聖光学院中・高 伊藤大介教諭
 楽しく易しいNIEを目指した。担当の自分が熱を持って取り組み、興味が強い生徒や教員を中心に他の生徒たちにも新聞の魅力を発信してもらおうと考えた。
 授業で使う記事は、学習単元に関連の深い内容に絞った。2紙以上を用意して比較することや、共同的な学びに向け討論の時間を確保するように努めた。夏季課題で切り抜き記事とコメントをまとめるノート作りを実施。外部の評価を受けようとコンクールにも応募した。奨励賞の受賞もあり、生徒の力が付いたと感じた。
 別の教員が自発的にNIEを取り入れ、職業体験学習を新聞形式でまとめる活動などにも発展していった。
 新聞は、事実の正確さと大切さを学ぶことができると思う。一度に多くの事実に触れる一覧性の機能もある。生徒たちが社会への想像力を育むことにつながった。

 

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■キャリア教育に有効-遠江総合高 江間喬教諭
 生徒に社会で自立する力を付けさせることを目標にした。新聞を読むことによって社会について考える機会になる。キャリア教育の展開を模索する学校には、NIEは有効ではないかと感じた。
 本校ではスクラップリレーを展開した。生徒が気になった記事をノートに貼り、別の生徒が意見を書き込む活動を続けた。他者の感想を読むことで、やる気が出たようだ。また、生徒が毎日通る階段に新聞掲示板を設置。コメント用紙を記事に合わせて貼ってもらった。教員からも「生徒の興味が分かる」と好評だった。
 生徒や教員へのアンケートでは「文章から必要な情報を取り入れる訓練になった」「深い学びにするために、もうひと手間が必要」などの感想や課題が出た。生徒の力を伸ばすことに一定の成果が出たと考えている。

 

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■紙面授業-美術 ざいんコトハジメ 知徳高 柴田寛志先生

 東京五輪・パラリンピックも1年後に迫りました。シンボルマークや新国立競技場の建築デザインの選定に関する一連の騒動は当時、連日新聞紙面で大きく報じられました。全国民がにわかデザイン評論家!?にでもなったかのような「炎上」ぶりは、生来のものぐさがたたってシンボルマークのデザインコンペに応募しそびれた私にとっても、非常に印象深い出来事でした。
 「デザイン」って何でしょう? 「デザイナー」って何をする人のことなのでしょう?
 人間が作り出したものは、カタチのある、なしにかかわらず、全てデザインされています。例えば今、私はこの原稿を、日本語をデザインしながら書いています。あなたは今朝、この紙面を見る前に、家族に「おはよう」と声を掛けましたか? その「おはよう」は通学中に友達に掛ける「おはよう」と、たぶん声のトーンなんかのデザインが違いますよね? こういった意味では、人はみんな、日々をデザインしながら生きるデザイナーといえます。明日からみんな、「パーソナルライフスタイルデザイナー」とでも名乗りましょうか。
 話が観念的になりすぎました。ここで少し、カタチのあるデザインの話を。
 ここに「日」という漢字があります。誰もが毎日何度も目にする、あるいは毎日自分の手で書く漢字ではないでしょうか。真ん中の横棒の位置に注目してください。実は横棒は「真ん中」にはありません。少し上にあるんですよ。気付いてました? ローマ字の「H」とか「X」の交点なんかもそうですね。「知ってるよ。あったりまえじゃん!」という人はグラフィックデザイナーの素質あり!
 こういった「気付き」がデザインの勉強の入り口です。
 めくるめくデザインの世界へようこそ。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(25)「令和」の時代予測 挑戦

 昨年から今年にかけて、「平成」という時代を振り返るさまざまな特集記事が掲載されてきました。特別活動や総合的な学習の時間、各教科などで、これらを扱い、新しい時代「令和」が、平和で明るく、希望に満ちた時代となるよう願って、30年後の未来を児童・生徒に予測させてみてはいかがでしょうか。
 教員の専門性や、児童・生徒の興味関心に応じて、「科学」「医療」「情報」「スポーツ」「防災」「農業」「工業」など分野を絞り、考えるヒントとなる記事を示して、具体的な予測をさせるとよいでしょう。
 記事を読んだ後、各自に考えさせ、それをメモした上で、小グループ内で発表させてみます。思考を整理し、相手に分かりやすく説明するために、メモさせることは大切です。友達の発表の要点も記録させます。各グループで出た意見をまとめ、代表者が発表するとクラス内で情報を共有できます。
 子どもたちの自由な発想を引き出し、新しい時代をつくりあげて行く担い手として活躍するために、日々の学びを地道に積み上げることの大切さに気付かせたいと思います。
 (清水西高・吉川契子)