一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=新聞が教材 ワークシート 豊富に用意、学習支援 作成の矢沢校長(焼津 豊田中)紹介

2019年10月05日(土)付 朝刊


 2020年度から順次施行される新学習指導要領では、小中高全てで初めて「新聞の活用」がうたわれた。しかし授業で新聞を活用する経験のない教員にとっては、高いハードルに感じられてしまうだろう。そこで、手軽に使えるNIEとして、本紙はホームページで「NIEワークシート」を提供している。作成者の一人、日本新聞協会認定のNIEアドバイザーである焼津市立豊田中校長の矢沢和宏さんにワークシートについて原稿を寄せてもらった。

 「NIEワークシート」を知っていますか。新聞社のネット上に公開されたり冊子になったりしている、新聞記事を利用した便利なシートで、誰もが利用できます。新聞は生きた教材を提供してくれます。
 しかし、使いたい記事がタイミングよく掲載されるとは限りません。スクラップしておけば後で役立ちますが、狙いに合った記事を毎日探すのは大変ですね。
 そこで、このシートが「やさしいNIE」の実践を手助けしてくれます。シートを活用し、手軽に新聞の魅力に触れてみましょう。シートは全教科、道徳、総合的な学習、学級会・生徒会などで活用できるよう豊富に用意されています。
 子どもたちには、シートへの記入だけでなく、記入した内容をテーマに話し合わせたりすると深い学びにつながります。
 私の学校では、社会への関心と、読解力・文章力の向上を目的に自校でシートを作成し、「朝の新聞タイム」と名付けた活動を行っています。
 シート作成のポイントは「どんな目的で取り組むのか」です。子どもたちに、「社会や地域への関心を高めたい」「積極的な生き方を身に付けさせたい」「文章を要約する力や限られた字数の中で表現する力を伸ばしたい」など、目的によって選ぶ記事や問う内容は違ってきます。
 取り組んだ子どもたちからは、「いろいろな種類の記事があって、次にどんな記事と出合えるのか楽しみ」「新聞の良さや新聞学習の楽しさを知った」「違う立場から考え、いつも自分の意見をもつようになった」「文章を読んだり、書いたりすることが苦手でなくなった」「文章を読むのが速くなった」など、前向きな感想がたくさん寄せられています。

 

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矢沢和宏さんが作成した「NIEワークシート」の一例

 

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「NIEワークシート」を使った授業に取り組む生徒たち=焼津市立豊田中

  
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■紙面授業-家庭 紙の新たな可能性 沼津中央高 深沢園美先生

 私は家庭科の教師ですから、被服の新素材開発には興味があります。マニラ麻を使用した「紙の服」が最近作られ、若年層をターゲットに販売を展開しています。「紙」では洗濯すると溶けてしまうのでは? と疑問を持つかもしれませんが、紙繊維に撚[よ]りをかけて糸にしているので丈夫です。ジーンズ、ワイシャツのほか、帽子やバッグなども作られていて、微生物分解により環境への負荷が軽く、ゴミ問題にも配慮していること、高温多湿な日本の風土に対して吸湿性が高いことなどから人気があるようです。
 昨年7月に米コーヒーチェーンのスターバックスが2020年までに全世界の2万8千以上の店舗で、プラスチック製のストローを廃止し、紙製のストローに切り替えていくと発表した際は新聞でも大きく取り上げられました。いま、「紙」は環境面で注目されている"新素材"の一つです。
 本校では、毎年ファッションショーを行っています。エコを意識した生徒たちの発想はとても豊かで、花束を作る時に用いられるフラワーラップ素材や、英字新聞やトイレットペーパーを利用した衣装なども製作し、文化祭の演目に花を添えています。
 1ロールの長い紙(布)から、衣装が完成するまでは気が遠くなるほどの長い工程を要しますが、衣装を身にまとい、観客からの歓声を浴びる喜びは言葉にならないようです。
 「ものづくり」は文化です。古き良きものを受け継ぎながら、新しいものに形を変え、その時代をつくっていきます。県東部の私立学校の中で最も長い歴史を持つ本校は、間もなく100周年を迎えます。形を変えつつも、文化を伝承し、生徒達が新時代の礎を築けるように、私はカミ(神)に祈りながら、日々授業に向かうのです。

※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

  
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(31)考察の文章化 社説活用

 大学推薦入試の要項が発表になった。ここには、小論文が避けて通れない関門となって立ちはだかっている。今回は、その突破方法と新聞利用についてご紹介したい。
 「小」とついているが、れっきとした論文であることを認識しよう。
 論文とは事象から思考を経て文章化した場合、読んだ人が「確かにそう考えられるよね」と同意されるものである。「でも、こうも考えられるんじゃない?」となるのを論の発展と呼ぶ。故に、論理的な文章を書くことで最も重要なのは「理由」があるということだ。「こう書いてあるからこう考えられる」-これが考察の文章化であり、小論文たり得るのだ。
 しかし、この文体は練習しなければ獲得できない「技術」である。すなわちトレーニングが必要で、それには学校の先生に添削指導を頼むのが最も良い。
 具体的には、静岡新聞朝刊の社説を読み、この文体をまねるのがお薦めだ。考察とは主張であり、説得である。読み手に己の考えを納得させねばならぬ。社説は時事の諸問題に対して考察し、基本に則ったスタイルで発信している。
 ぜひともまねすべし。少し難しい内容かもしれないが、練習である。頑張ろう!
 (静岡高・実石克巳)