一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=「秋の写真」選んで発表 新聞活用 伝達力磨く 論理的に考え主張 西伊豆・田子小

2019年11月02日(土)付 朝刊


 NIE実践指定校の西伊豆町立田子小は、論理的思考力や情報伝達力を磨くため新聞記事を活用している。同校は全校児童48人。小規模校ならではの柔軟な取り組みで、読み書きにとどまらない実践を展開。1、2年生では写真を使い、自分の意思を相手に分かりやすく伝えることを目指す。

 10月上旬に行われた1年生の生活科の授業。「秋を見つけよう」をテーマに、紙面から写真を選び、内容や感想、選んだ理由を発表した。松浦碧さん(7)はコスモス満開を告げる写真を取り上げ、「コスモスは秋に咲く花。ピンクと白の花びらがかわいい」と秋にふさわしいと主張した。発表を聞いて他の児童からは「花の近くにハチがいる」「他にもコスモスが多く咲いていてのどか」など一つの意見に対し、新たな発見や感想が上がった。
 同校では、単語や固有名詞をつなぎ合わせ、文脈があいまいな会話をする児童が多いことを、教職員が以前から問題視。平馬誠二校長は「論理的思考力の不足が原因」と分析し、「自分の意思を的確に主張できる力を身に付けさせたい」と、論理的に展開し、5W1Hの要素を含む新聞記事に着目し活用を始めた。
 NIEに取り組み始めて半年、児童が書くリポートは文章量が増え、色や大きさ、形など客観的な情報を盛り込めるようになったという。1年担任の落合つかさ教諭(26)は「物事の仕組みや問題背景を論理的に捉える力が養われる。コミュニケーション力や学力の向上につながるのではないか」と効用を強調する。
 同校は全校で学年に応じたNIEを展開し、高学年では総合的学習の一環で、小学生が犠牲になった交通事故の記事を用いて、自分たちの通学路に潜む危険箇所を調査したことも。教職員は新聞の一層の活用方法に知恵を絞る。

(松崎支局・市川幹人)

 

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新聞記事を活用し、論理的思考力を身に付ける授業=10月上旬、西伊豆町立田子小

 

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発表を聞いて自分の考えをまとめる児童(画像の一部を加工しています)

  
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■紙面授業-美術 キャラクターの力 常葉大菊川中・高 内山節男先生

 東京五輪・パラリンピックの開幕が間近に迫ってきました。昨年7月には大会のマスコットキャラクター、今年3月には競技種目のピクトグラムが発表され、新聞でも紹介されました。
 今では当たり前のように目にするピクトグラム。実は1964年の東京五輪でトイレや注意を示すための視覚記号(絵文字)として生まれたことをご存じですか。外国人観光客が一目で分かる案内表示として日本の家紋をベースに考え出されたそうです。それが今では世界中に広がっています。
 そして、五輪に欠かせないのが大会のマスコットキャラクターの存在です。東京2020大会の「ミライトワ」「ソメイティ」は、日本伝統の市松模様や桜を身にまとい、日本の文化や魅力を世界に発信する存在として重要な役割を担っています。
 五輪のような大きな舞台ではありませんが、私たちの身近にもキャラクターパワーを持ったものが数多くあります。その一つが地域の特性や情報を単純化して伝えるゆるキャラです。
 私の授業の中でも自分自身をゆるキャラ化する取り組みを行ってきました。メインである「自分らしさ」だけでなく、弱点や情けないところ、苦手なものなども表現するというところがゆるキャラならでは。自分を客観的に見ることにもつながります。
 数千字かけて熱心に自分をプレゼンテーションするよりも、一目で分かるキャラクターを用いた方が端的に伝えられるのではないでしょうか。作ったゆるキャラを紹介し合う活動では、生徒同士の交流を深めることもできました。皆さんも自分のゆるキャラを作ってコミュニケーションに生かしてみませんか。自己紹介・PRにうってつけですよ。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

  

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(32)生き方学べる「コラム」

 新聞を活用した「喜怒哀楽探し」という活動を知っていますか。「喜怒哀楽」を4人で分担して、それぞれに関係する記事を探し、どの記事が多いか比較する活動です。
 最初に、「一番多いのはどれか」と聞きます。すると、ほとんどの人が一面や事件・事故の記事の印象が強いためか、「哀しみ」や「怒り」に関係する記事が多いだろうと予想します。ところが実際に比べてみると、「喜び」や「楽しさ」の方が多い傾向があるのです。
 「喜び」に関係する記事は、特に地方版やスポーツ、コラムに多いように思います。中でも、「コラム」は前向きですてきな生き方に出合えます。文章量も少なく、読みやすいものが数多くあります。
 私が最近読んだ静岡新聞の夕刊コラム「窓辺」では、若月佑美さんの文章が印象に残りました。アイドルグループ「乃木坂46」を卒業した25歳の若月さんですが、自分の生き方について本当に深く考えていて、驚くと同時に勇気をもらいました。
 本と同様、「どんなコラムに出合うかは人生を左右する」と言えるかもしれません。このようなコラムを多数掲載している点も新聞の特徴の一つです。
 (焼津豊田中・矢沢和宏)