一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=矢沢さんのやさしいNIE こんな時こそ 新聞切り抜き 話し合いながら楽しく

2020年05月02日(土)付 朝刊


 新型コロナウイルスの感染拡大により県内の小中高校も一斉休校となり、子どもたちが家庭で過ごす時間が増えた。この機会に、新聞を身近な学習素材として活用してはいかがだろう。在宅学習の助けになるだけでなく、家族とのコミュニケーションツールにもなる新聞の使い方を、静岡新聞NIEコーディネーターの矢沢和宏さんが紹介する。

 

 なんと言っても、おすすめは「新聞スクラップ」。家族でそれぞれが気に入った記事を切り抜きます。まずは、お父さん、お母さんから。楽しく、興味深そうに、お話ししながら、にぎやかに切り抜きましょう。

 とても楽しそうにやっていると、子どもたちは気になりますし、「自分もやってみようかな」という気持ちもわいてきます。そうなったら、声を掛けるチャンス。「一緒に切り抜きをやってみよう」と誘いましょう。

 スクラップには不思議な魅力があります。切り抜く前の記事はあくまで、新聞紙上の「他人事[ひとごと]」。ところが、切り抜いた記事を手にした瞬間に「自分事」になるのです。「自分だけの大切な情報」になるという魔法をもっているのです。各自が記事を切り抜いたら、それを家族で紹介し合いましょう。どんなところが気に入ったのか話したり、感想を伝え合ったり質問し合ったりすると、話が弾みます。それとともに子どもの個性や関心も分かってきます。

 切り抜いた記事はぜひ、スクラップノートに貼り一言感想を書いて残しておきましょう。価値ある家族の成長記録にもなります。大切なことは、あくまで「自分の好きな記事、気になる記事」とすること。そして、教え込んだり、叱ったりすることなく、楽しく話すための材料とすること。それが長続きさせる秘訣[ひけつ]です。このように、新聞記事を材料に家族で話す様子が寄せ鍋をしている姿に似ていることから、「家族・新聞鍋」と名付けた人もいます。

 「新聞スクラップ」はそんな家族の楽しい時間になると思います。

 

 やざわ・かずひろ 静岡新聞NIEコーディネーター。県中部の中学校校長を歴任したほか、焼津市教育委員会に勤務し、2020年3月、定年退職。専門は社会科。学校教育に新聞活用を広めるNIEアドバイザーを13年間務めた。同年4月から現職。歴史地理学会会員、元焼津市史編さん委員。焼津市在住。

 

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■紙面授業 英語 コトバは出合いの種 東海大静岡翔洋高・中 高塚純先生

 子どものころ、父親に「分からない言葉に出合ったらすぐに辞書を引け」と言われました。おかげで人並みの語彙[ごい]力は手に入った気がします。英語の教師になった今も「分からない言葉に出合ったらすぐに辞書を引きなさい」と生徒には同じことを言っています。

 さて今、全世界が新型コロナウイルスの脅威にさらされており、新聞もテレビも関連ニュースでもちきりです。そんな中、よく見聞きする言葉がありますね。クラスター、パンデミック、オーバーシュート、ロックダウンなどがそうです。

 その時に皆さんはどうしますか。この言葉はそういう意味なのだと単純に理解しますか。それとも本当にこの意味でいいのかなと疑いますか。

 例えば、クラスターという言葉は「感染者の集団」という意味で使われていますが、もともとは花や果実の房という意味です。何となくイメージはできますね。ちなみに、英語のつづりは"cluster"です。

 では、オーバーシュートはどうでしょうか。言葉を聞いて、絵をイメージできますか。コロナウイルスの文脈においては「患者の爆発的急増」という意味で使われていますが、本来は、(場所を)うっかり通り越す、(予算を)使いすぎるなどの意味で使われています。

 また、アメリカ海軍の病院船「コンフォート」が医療支援を行うためにニューヨークに派遣されました。コンフォートとは快適さ、安らぎというまさに病院船にぴったりの名称で"comfort"とつづります。

 この度、学校が休校になり、自由に使える時間が増えたと思います。メディアで新しい言葉に出合ったら、ぜひ普段と違う角度から調べたり考えたり、接してみてほしいと思います。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(38)日常から世界を変える

 新型コロナウイルス感染拡大の影響により、筆者の勤務校では3月からオンライン授業が始まりました。4月も年度始めから生徒の自宅に向けてライブで授業を行っていますが、筆者の授業の中で早速、新聞を活用した場面がありました。

 高校1年生の政治経済の授業で、複数の新聞を手に取って1面を比較して画面に映しました。なかなか外出できないこのような状況だからこそ、社会をより広く深く学ぶチャンスであるということを伝えようとしたところ、画面越しの生徒が新聞の見出しを食い入るように見つめる姿が印象に残りました。

 また、別の場面では米大統領選挙の記事を生徒に見せ、時事問題に興味をもたせようと試みました。

 自分の目で文字を見て読み、考える。じっくり立ち止まって考えさせる新聞の良さを、現在のような厳しい環境だからこそ授業で再確認できました。

 以前、筆者が高校サッカー部の顧問として指導者講習会に参加した時、「日常から世界を変えていこう」という言葉を研修担当者から聞きました。現在の厳しい環境から、今度は新聞で日常を変えていきたいと思っています。

 (静岡聖光学院中・高・伊藤大介)