一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=学校新聞 休校中ネット配信 3カ月56回 情報で生徒つなぐ 韮山高 写真報道探究部

2020年06月06日(土)付 朝刊


 新型コロナウイルス感染拡大に伴う臨時休校期間中、県立韮山高(伊豆の国市)の写真報道探究部は学校新聞の速報紙「龍城学報」の発行を続けた。生徒たちの学校生活の情報不足や不安に応えようと、制作と配信はネットを活用し、3月から5月末までの約3カ月間で計56回発行。普段のペースを上回る充実ぶりだった。

 記事は新型コロナをテーマに、高校生活への関わりを切り口にした企画を打ち出した。オンライン授業やマスクの作り方、自宅での過ごし方といった身近な話題から、9月入学案や10万円給付金の使い道などを考える全校アンケート結果など社会情勢を踏まえた企画も展開した。
 入学後間もなく休校期間に入ってしまった1年生向けには、例年4月に地域を巡る遠足で訪問する予定だった史跡を写真付きで解説する回もあった。
 全国高校総体中止に伴う各競技の代替大会の動向や全国高校総合文化祭の縮小開催など高校生ならではの話題も記事化した。
 速報紙はこれまで週2回ほどのペースで制作して校内に掲示してきたが、休校中は生徒同士が顔を合わせられないからこそ、情報を積極的に発信して自粛生活に役立ててもらおうと、ラインやフェイスブック、ツイッターで生徒に配信した。
 部員は在宅でネタ探しや執筆を分担し、レイアウトは顧問の上杉剛嗣教諭とネットでやりとりして決定。4月18日以降は土日曜と祝日を含めて毎日発行を続けた。
 校内掲示だけでは見る生徒が限られていたが、ネット配信によって全生徒の元に届くため、読まれる機会が増え、「他の生徒の様子が分かり楽しかった」「ほっとした」といった反応が寄せられた。
 部員は「休校中も生徒やクラス、学校全体をつなげる役割を果たせた」と胸を張る。部長の鈴木翔馬さん(3年)は「これまでの速報紙発行の経験がネットでも生かせた。部員の企画力は確実に伸びた。今後の長期休業期間中の発行方法も変わってくる」と振り返った。情報発信の大切さを改めて感じたという次期部長の加藤大智さん(2年)は「これからはまだ活動できていない1年生のスキルアップに力を入れたい」と抱負を語った。

 

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休校期間中も発行を続けた学校新聞の速報紙を手にする鈴木翔馬さん(左)と加藤大智さん=5月、伊豆の国市の県立韮山高

 

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(左)9月入学案に対するアンケート結果を掲載した速報紙 (右)地域の史跡を紹介した速報紙

 
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■紙面授業 日本史 過去と現在 比較を 西遠女子学園中・高 氏原秀先生

 新聞を見ると、新型コロナウイルス関連の記事がほとんどを占めています。特に、一人の教員として学校の休校やオンライン授業関連の記事は見落とせません。
 ICT関連産業が発展した現代社会では休校によるオンライン授業の実施・導入が叫ばれていますが、昔の学生たちはどのような授業を受けていたのでしょうか。
 日本史の授業では、律令制下の大学や国学、空海がつくった綜芸種智院[しゅげいしゅちいん]に加えて足利学校や寺子屋など、さまざまな教育機関が登場します。そのうちの足利学校では、自学自習が中心でした。そのため、卒業のタイミングなども生徒一人一人に任されていたそうです。江戸時代の庶民の教育機関である寺子屋も、先生が一人に対して生徒複数の教育が行われていましたが、一斉講義ではなく、寺子屋の先生が生徒一人一人に対して個別の内容を教えていました。
 今、授業と言えば、教室で同時に同じ内容を学ぶ一斉講義型の授業を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、その歴史は実は浅いものです。18世紀中ごろから始まった産業革命がターニングポイントとなりヨーロッパで採用されたこの形式が、明治時代を迎えた日本にも導入されていった結果、今の学校教育が成り立っていきます。
 昔の学生たちは自ら学ぶ意欲に満ちあふれ、まさに主体的に深い学びに取り組んでいました。現代でも科学やテクノロジーが発達し、産業社会から知識社会に変化していく中で、対話的で主体的な深い学びが求められています。
 イギリスの歴史家E・H・カーの言葉、「歴史とは、過去と現在との絶え間ない対話である」の通り、今起きている事と過去の出来事を比較する視点を持って、過去と対話してみてはどうでしょうか。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
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NIEアドバイザーのワンポイント講座(39)新聞で培う「自分の学び」

 学校の休校措置が長引きましたが、「自分の学びができた」と前向きに捉える機会はあったでしょうか。
 娘が5年生の時、社会科「これからの食料生産」で「食」に関心を持ち、新聞を使って夏休みの自由研究を行いました。「食」に関する記事を切り抜いたものを分類(食生活・添加物・農薬・健康食品・その他)し、ジャンルを問わず気になった記事にはシールを貼ってスクラップしながら、記事の要約や感想などを書きました。そうすることで、自分が「食」のどの分野に興味があるのかが分かるだけでなく、社会の中での「食」の問題の傾向をつかみ、自ら追究していく内容を絞りこむことができました。
 当時59円に値下げしたハンバーガーの記事を基に、研究テーマは「59円ハンバーガーから見えてきたもの」となりました。
 最近の「食」の問題として、「食品ロス」が挙げられます。話題のSDGsと意識せず、「食」のテーマの一つと捉え、年齢に合った目当てを設定すれば、誰でも自分の学びができるのではないでしょうか。学び方の入り口が見つからなかったら、ぜひ、新聞を手に取ってみてください。
 (静岡井宮小・中村都)